「黒塚マクベス」【ご来場ありがとうございました!!】
劇団アニマル王子
ブディストホール(東京都)
2010/09/16 (木) ~ 2010/09/19 (日)公演終了
満足度★★★★
ロック風味の和装マクベス
セリフの速度に滑舌が絡んでなに言ってんだかわからない部分が多々あり、隙間なくハイスペースで展開されたりもするので詩情を感じるヒマもないのだけれども、観せ方がきちんと整理されていて長時間の観劇でも案外疲れを感じなかった。
The Heavy User
柿喰う客
仙行寺(東京都)
2010/02/27 (土) ~ 2010/03/02 (火)公演終了
満足度★★★★
ジャパニーズホラー
柿喰う客の何が好きかって、なによりも音楽的な気持ちよさがもろ自分のツボなとこなのだが、音に特別重点を置いたという今公演は、だからもうそれだけで個人的には見所十分大満足。
音響がない中であれだけ音楽的な(それは五線譜に統制されない原始的な音楽に近いように思う)魅力のある舞台を作るというのは、単純にすごいと思う。
けれど物語は夏の怪談話のような特殊な洗練がされていて、少し物足りなさを感じた。
「彼ら」という考えを宗教的背景が根本的に異なる仏に持って行く試みはとてもワクワクするのだが、正当に違和感を突きつけるようなコンテクストの肉片が垣間見えるかというと、ちょっと無邪気すぎる感。
8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』
8割世界【19日20日、愛媛公演!!】
ART THEATER かもめ座(東京都)
2010/07/07 (水) ~ 2010/07/11 (日)公演終了
満足度★★★★
民間教員の可能性
脚本だけみると文句無しの☆5。舞台として観ると『欲の〜』が☆3、『ガハハ〜』が☆5。
『ガハハ〜』義務教育に関わる(ろうとしている)人は必見。実際の中学生にもぜひ観てもらいたい作品。
以下長らく書いてたものが消えたのでまた今度・・・
新明治仁侠伝
劇団め組
吉祥寺シアター(東京都)
2010/08/04 (水) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★★
明治武士
ちょうど「龍馬伝」が薩長同盟結ばれるや否かを放送していたので、なるほどこの先そんなんになってゆくのかと勉強になった。
歴史に明るくないのでどこまで史実でどこから物語なのか判断つかなかったが、それでもなんとなくかなり史実に忠実に、隙間に物語を組み込んでいるんだろうなーと感じた。歴オタだったらもっと楽しめたのかしら。
体感時間は長かった。というより、一つの場面が大河ドラマの一週のように、いちいち盛り上がり暗転するタームの積み重ねで、終わりかなと思ったら終わってないというのが何度か続いたので体内で終わりのタイミングを逃した感。
個人的に、関ヶ原後のカブキ者みたいに生き延びてしまった虚しさを反骨パフォーマンスとして変換していくような、愛嬌のある思想の方が共感を持てるので、葉隠思想な侍魂は根本的に受け付けないんだなと気付かされた。
真・侍ヘンドリクス
おにぎりスキッパーズ2
テアトルBONBON(東京都)
2010/01/27 (水) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★
「野暮だねぇ」
手法とか思想ではなく、風味としての現代エキスがほんの少し入っている「お江戸でござる」とでもいうか、懐かしいベタさ。セットや着物や小道具の入念さと豪華さといったらない。
ロロ vol.4 ボーイ・ミーツ・ガール
ロロ
王子小劇場(東京都)
2010/08/18 (水) ~ 2010/08/22 (日)公演終了
満足度★★★★
「もう後は結構どうでもいい」
という言葉がこの公演の真実だなあと。「きみとぼく」がどうなりかすればいいハリウッド的ラヴ世界の穴、「あいつ」の世界の存在の出現。
盲目とも醒めてるとも違って、役者も演出も、どこか嗤う視点を持ってるとでも言ったらいいのか。そこが欠点にも見え、リアリティにも見え。不思議だなあ。
十三月の男 -メメント・モリ-
無頼組合
テアトルBONBON(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★★
男
男好きする芝居と言えばいいのか(ミリタリとか政治)オタク好きする芝居と言えばいいのか。あまり触れてこなかった類いのジャンルなのでどうも何とも言い難し。これがハードボイルドというものか。
物語構造の渋さなど好きな要素はあったものの、説明や直接的な教訓台詞が多く、そこはかとないとか醸し出されるといった言葉にぐっとくるタチの自分は「ひゃー」という印象の方が強く残り。いまいちそのカッコよさの美学が自分には馴染まなかった。
MEはすごく好み。
丸ノ子ちゃんと電ノ子さん
芝居流通センターデス電所
「劇」小劇場(東京都)
2010/04/14 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了
満足度★★★★
パンパカパーンを待ちわびて
表現者になりそこなった人生であっても、表現者であることにしがみつくしかないだろう無意識にでも。「私」と「あなた」のための、やさしさ渦巻くファニーでブラックな舞台。
単純なのに本質を掬いとる言葉の説得力。思わずうならずをえない場面が多数。
演技や技術的な面で引っかかるクセやラストの方に物足りなさが残ったので☆4を付けたが、観客に提示していたものに対しては☆5を付けたい。
渋々
親族代表
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/12/12 (土) ~ 2009/12/20 (日)公演終了
満足度★★★★
笑えるかどうかを基準にすると
期待しすぎたか。残念ながら前説から、あと一歩痒い所に手が届かない。
展開や面白い要素はあって、演技も出来ている。
なのにこの歯痒さ。
それは自分の笑いの琴線が究極台詞や演出ではなく、役者の演技に対する意識に反応するためだろう。
どうも結果的に笑わされてしまう演技というものには、普通の演技力とはどっか一個違う回線の存在を意識した上で(それは多分客体化と密接に関わっている行為のように思う)それを無意識レベルにまで見えないようにしてるように感じる。
今回それを感じたコントは2つほど。
あとはフッと笑えるものに留まった。
日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『老花夜想』
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2010/05/07 (金) ~ 2010/05/09 (日)公演終了
満足度★★★★
リーディング演出
太田省吾戯曲が性に合わず途中何度か寝そうになったがなんとか堪える。
本を開く、背もたれから背を離す、身体の向きを変える、といった朗読の邪魔をしない最小限の動きだけで演劇的な空間の移動が見えて見事。今回の企画が自分にとっての初リーディング体験だったので、なーるほどなこれがリーディングで演出するということかと興味深く観させてもらった。
最後の今回の演出3名が揃ったアフタートークも、小劇場演劇の今後に対しての3様の意識を聞けて大変有意義だった。
ところでリーディングと朗読の違いってなんなのだろうか。
広島に原爆を落とす日
RUP
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/08/06 (金) ~ 2010/08/22 (日)公演終了
満足度★★★★
ヒロシマ
内容は色々とザワザワさせる要素満載なので触れないが、つかこうへい直系の舞台は初見だったので演劇史的な意味で興味深かった。なるほどアングラの後に登場して80年代以降の演劇の一端を用意したというのが納得。
アーリークロス
9-States
OFF OFFシアター(東京都)
2010/02/17 (水) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
オッサンの生態
オッサンらのダメ愚痴に苦笑。女子の必殺技「かわいい」でも乗り切りがたい、妙に生々しいオッサンの哀愁と欲望がチラチラ見えるので、若い女性だと観ているのが結構キツいかもしれない。
恐らく、ふと入った飲み屋にいた地元の常連さん達の会話に聞き耳を立ててチラチラ覗いている、ぐらいの気分で観るのが理想的。
最後のはっちゃけ具合は気持ちよく楽しめたけれど、全体になんだか面白そげな雰囲気が物足りなかった。面白くなるような事はやってるんだけれど・・・。なるほど「今後に期待」と言いたくなる気持ちがわかる。
TOP GIRLS-トップガールズ-
ミズキ事務所
アイピット目白(東京都)
2010/11/30 (火) ~ 2010/12/05 (日)公演終了
満足度★★★★
女性たち
よく考えさせられる脚本。ただ「現代フェミニズム」ではなく「80年代フェミニズム」。初演も83年ということなので、当時の「現代」と考え、歴史として観るのが正しい。
ウーマンリブを体現する新しい女性たちと男性中心の社会、都会に出た者と田舎に残ったもの。どの立場も抱えるジレンマが大きかった時代だったんだろう。
しかしラストのセリフが見据えるのは「現代」なんだろうと思わせるあたり、さすが。
翻訳物の演技なので最初違和感が強いが、途中でほぼ慣れる。過去のトップガールズたちとの会食会、他人が喋ってようと構わず喋り続けるイギリス式会話術はすさまじい(笑)。
ただ場転の長さや場面の繋ぎ方など演出のつくりこみ方がもったいない。休憩に入った時、一体何が起こったんだと思ってしまった。あとチラシの絵は正直ちょっといただけない。
[※25日(日)13:00追加公演決定!!] 脳内TRIPアルゴリズム!!
オッセルズ
シアター711(東京都)
2010/07/21 (水) ~ 2010/07/26 (月)公演終了
満足度★★★★
画が強い
とかく画のインパクトが強い。しかし、アイデンティティがコメディであるということに対して抱く期待ほどには笑えず。
もちろん好みの問題も大きいだろうが、女性が笑いにくいんじゃないかなと思われるラインに入っている下ネタ絡みの笑いがけっこう多かったので、そこで引いてしまった分キツかったかなと。
西方の人
4RUDE
シアターX(東京都)
2010/01/29 (金) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★
恐らく
自殺に至ることとなる晩年の芥川の生活や精神と作品の交差を描いてる。
つまり作品を含めた「芥川論」なので、芥川龍之介に詳しくない自分は半分ぐらい寓意を掴み損ねてるんだろうなと思いながらぼんやりと観劇。
でも確かに「舞台」を上手く使いこなしており、その使いこなしによって生まれる一つ一つの空間構成が美しい。
しかしとにかく緩慢。「これはあれかな」と考えながらぼけーっと観ている分には非常に魅力的なのだが、めくるめく展開の物語性を期待しているとやきもきじれったくなる。危なく寝てしまう所だった。
シアター・オブ・インプロ
インプロ・ワークス
Xanadu(東京都)
2010/05/27 (木) ~ 2010/05/27 (木)公演終了
満足度★★★★
訓練された即興演劇
即興演劇も役者の力がちゃんとあれば面白いライブになるんだなと関心。
観客と対峙する緊張感を常に保っているから全然飽きさせないし、ふわっとした状況になったらすぐさま誰かのフォローが入る。
メインの、トレインなんとかという場面連結型即興なんかは特によかった。
いくつかの場面が直列で並んでいく前半と、前半に出てきた人物や状況があちこちに混入し物語に回収されていく後半。
荒技のような総括でパズルのピースが巧いこと嵌ったラストシーンに落ち着いてちょっと感動。結局この日は生命の進化と家族の話になったのかな?
歌などちょっとした小ネタもありつつ、ほどよく観客参加もありつつのポジティブな楽しい時間だった。
今回のように軽く飲み食いしながら好きなように観るのがベストなスタイルの舞台かも。
光子の裁判 ★ご来場ありがとうございました。
青年団若手自主企画 渡辺企画
アトリエ春風舎(東京都)
2010/11/30 (火) ~ 2010/12/07 (火)公演終了
満足度★★★★
みつこ
数学の論題を解くような揺るぎなく明快な検証と実験。観客が疑問を抱くタイミングで舞台でも疑問としてフィードバックされ、スタイルで進めずに着実な速度で進行されるのがよかった。量子力学の池上解説といった趣で、よい授業を受けた気分。
量子力学はどうも「解釈」を通して理解しないとやってけないものらしく、その解釈を巡って色々るようだが、この芝居はその中でも確率解釈寄りになってるらしい。元々知っていた形がおそらくパラレルワールド的な解釈だったので、ちょっと混乱。
あと青年団系の自己同一性が保たれない演出が量子力学の理論と矛盾なく成立すると実証されたのは自分にとってかなり大きな収穫だったかも。
交響劇第二番嬰イ短調
劇団再生
APOCシアター(東京都)
2010/11/13 (土) ~ 2010/11/14 (日)公演終了
満足度★★★★
鉄パイプ空間
とにかく第一部の劇場論という名の雑談が微妙。個人的にあれはなくしてほしいのだが、それでもトークをするならちゃんと内容のあることを喋ってほしい。
内容は前半かなりアングラ抽象的な実験演劇かとみせかけて、意外と中盤・後半はピュアストーリーもあり、予想していたほど解りにくいものではなかった。ただ「コギト」にしろ「神さま」にしろ、キャラクターが背負う象徴性が物語に先行しているような感覚はあった。
男性の動きにしばしば惹き付けられるものがあったが、喋りに変な自意識が付いてしまっていてもったいないな、と。
しかしなんだかんだ言って自分がこの舞台が嫌いじゃないのは、とにかく劇場の使い方がよかったという点。
鉄パイプが会場全体を覆って、役者が観客の頭上に張られたパイプを移動したり隙間から降りてきたり四方の頭上から声が聴こえたりと、立体的な空間効果がかなりいい出来。舞台を物語よりも空間的な面に、特に第四の壁をダイナミックに揺らがせるような空間性に楽しみを見いだす人にとってはかなりワクワク空間だと思う。こういうことを許可する度量のあるAPOCシアターに拍手。
punctum プンクトゥム
MacGuffins
pit北/区域(東京都)
2010/11/19 (金) ~ 2010/11/21 (日)公演終了
満足度★★★★
ファイト、バカども
ツバをすごい速度で飛ばしていくような熱いバカ展開だが、演者が変に誤摩化しをせずにきちんとやりきっているのですんなりと笑える。水越健なんてキレが大変よく、ちょくちょく挟む小ネタですら振り切って演じており観ているだけでにやにや。暗転のない場転を的確に整理する演出のセンスもよく、全体的に観やすい舞台だった。
でも個人的に後半は微妙。
月並みなはなし[2010]
時間堂
座・高円寺2(東京都)
2010/03/11 (木) ~ 2010/03/14 (日)公演終了
満足度★★★★
ふつうの演劇
6人の中から1人を選出する状況下でナチュラルに空気を読む相対的な協議は「12人の怒れる男」よりもやはり「12人の優しい日本人」に近いと感じさせる。
すんなりふつうにいい感じで観れる作品なのだが、漠然と「おしい」という感覚が残った。
相対主義が強いせいか、キャラクターの個々の想いの絶対性という点においては、未来の人と月までの距離感が現在とは異なるということを留意していても「え、そんなもんか」と感じた。
言っても「ふつうの人」が月に移住するのは初めてだという文脈や、かなり厳しい選考試験をくぐり抜けてきたらしいという状況があって、
それとキャラクター個々や持つ敗者復活戦の協議で明かされる月への想いとの間に、自分の中で納得できるバランスが取れる支点が上手く見つけられなかったのがその原因。
全体の繊細さやパンの人の想いにはきちんと納得させられるものがあったので余計なにか「あと一歩」という気持ちが強い。
もう一段階下の深度を掬っていたならば、自分にもきっと「ふつうの、すごい演劇」として納得できたと思うのだが。