満足度★★★★★
【キッド咲麗花の回】観劇!
大好きなお芝居、懐かしく、どうしても涙が流れてしまいます。
ネタバレBOX
客席に入ってすぐ、下手側の渡り廊下とその前の花壇を見て、ああ懐かしいなと思いました。前回観たのは2008年4月のパルコ劇場。忘れていた部分も多く、大好きなお芝居だけに今度こそ忘れないようにしなくちゃと思います。
ライターを盗んだと誤解して殴った大貫。翌日大貫がパコの頬に触れたとき、誰もが信じられないことでしたが、パコはそのおじさんが頬に触れたことを記憶していました。肉体的、精神的にショックな出来事だっただけに普段の記憶とは違った脳の部位に蓄積されたのでしょう。しかも、殴られたという記憶ではなく、触れたという記憶で蓄積されたところが何とも絶妙です。
パコは毎日が誕生日。「ガマ王子vsザリガニ魔人」の絵本には、お誕生日おめでとう、これから毎日読んでねとママが書いています。眠っている間にママが来てくれたと喜ぶパコに思わずもらい泣き、一番好きなシーンです。
パコと両親の乗った車がトラックに追突され、車は崖から転落して両親は死亡、パコは新しい記憶が一晩寝ると消えてしまう障害を脳に受けたもの。龍門寺が撃たれたのは、山から遊びに来ていた猿のジュンペイが拳銃の引き鉄を引いたせい。室町が自殺未遂を重ねるのは、子役時代に可愛いと言われるのが嬉しくて少女漫画雑誌ばかり読んでいたために、大人の俳優になり切れず、オカマ風なしゃべりしかできなくなったせい。看護婦の光岡はそんな彼を子役時代から追っかけていたとのこと。消防車に轢かれて入院していた消防士の滝田は室町を助けようとして一緒に4階から転落してまた足を骨折したために恐らく現役復帰は難しいだろうとのこと。大貫をからかう変なおっちゃん堀米は、この絵本の作者だったという驚愕の事実。時々訪ねてくる専務の浩一は、大貫の弟の孫で看護婦の雅美の夫。その息子浩二の許に堀米が訪ねてきた所から話はスタート。
ガマ王子は池の仲間の家を壊したりする意地悪者でしたが、仲間がザリガニ魔人に殺されると立ち上がり、やられてもやられても立ち向かっていき、最後は絵本通りかどうか分かりませんが、劇中劇ではガマの毒のようなものでザリガニ魔人を倒しましたとさ。キャラクター的にはザリガニ魔人の前に出て来るヌマエビ魔女が強烈。劇中劇のラストで、心臓発作で倒れた大貫の看護に専念した光岡に代わって室町は普通のしゃべりでナレーションをこなしました。大人の役者として復活できるかもしれません。
絵本は最後の一枚が無いのではなく、破られたページをみんなで分けあったためにもっと不足していたのが真実。そして、浩二はこれから当時の関係者を探訪し、全てのページを回収して絵本を復元させようと思い立ったのでした。必ずや彼は復元させるはずです。
交通事故の保険金詐欺のために入院しているようなおばさん木之元役の広岡由里子さんはハマり役だと思いましたが、大貫役の西岡德馬さんは元々いい人っぽく見えてしまい、看護婦役の安倍なつみさんや川崎亜沙美さんに至っては、前回観たときの新妻聖子さんと月船さららさんに比べると影が薄い感じがしてしまいます。それでも本当に素晴らしいお芝居です。
最後、大貫にパコの頬を触らせてあげたかったなと思いました。
東京都心は1969年以来45年振りの大雪の日。西岡さんの、雪の中来てくださってありがとう、今も降っています、気をつけてお帰りくださいも嬉しく、横殴りの雪の中を帰路に就いたのでした。
満足度★★★★★
しっとり、しみじみ、しんみり、
落ち着いたこんなお芝居もいいものです。
ネタバレBOX
『雨空』 今はお互いに好いたもの同士と認識しているものの、女の方に縁談があって断り切れず、指物職人の男は東京を離れようと考えるそんな大正9年頃の男女の話。
元々は姉の方を好いていた男ですが、大工だった女の父親が死んで困窮した家を救うために姉が商家へ嫁ぎ、失意したところを初めから男のことが好きだった妹に優しくされて、二人はいい仲になったようです。
女が三味線をたしなんでいたり、家に出入りする役者がいることや、その役者の言葉の端々から、父親が生きていた頃は随分と粋な感じの家だったことが窺えます。2月にお亡くなりになったのが十二代目ですから古い話になりますが、堀越の旦那なんて九代目市川團十郎のことらしいです。
思うように行かない世の中ですが、最後女が声を掛け、さて…、何も起こらないのか、何か決断でもするのか、余韻の残るお芝居でした。
『三の酉』 14歳のときに関東大震災で身寄りを無くし、以後芸者として生きてきた女が、彼女の言葉で言うところの「心の棲家」、即ち心から安心できる家庭というものを一度持ってみたいとしみじみ考えていたことを、馴染みの男がしんみり思い出す話。
昭和30年頃の粋な遊び方、心構えのようなものを教えられました。
満足度★★★★★
濃密
全ての人に濃密なドラマがある群像劇でした。
ネタバレBOX
気難しい90過ぎの大地主である父親と、父親の死を待つ商才の無い子どもたち、そして彼らを取り巻く人々の話。
ラストを見れば老いた人が尊厳ある死を選択する終活の話として帰結しましたが、全体としては全ての登場人物に濃密なドラマを設定した群像劇でした。
父親が急にまだらボケになったのには唐突感がありました。正常な意識の時に実行しなければならないとはいえ、いくら南方で辛い経験をしてきた元軍人だからといって、そして他に手段が無かったからといって、包丁で首を切りつける方法で自殺するものかなと思いました。
イケメンは罪作りです。三男と付き合い妊娠した看護師に嫉妬して、三男に好意を寄せていた高級マンションの男性職員は看護師を階段から突き落としました。でも赤ちゃんは無事でした。
老人には自殺させ、赤ちゃんには命を与えました。長田さんは、ここ最近実在の人物ばかり扱ってきたため歴史上の制約を受けてきましたが、今回初めて人を殺したり生かしたり、人の命を自由に弄んだなと思いました。やりたい放題は大好きです。
様々な相続を巡る悲喜劇がありました。地主の北澤家も相続破産すると言っていました。資産が不動産に偏重し過ぎて流動性が乏しいとそうなるのかなと思いました。
同じ高級老人ホームの階下に父が住む息子の話では、105歳のおばあさんよりも先に父が死ぬと、家が叔母のものになってしまうとのことでした。この息子は死にそうな父を生かそうと延命措置を取りましたが、おばあさんの死後今度は植物状態で生き続ける父が重荷になり苦しんでいます。
そのようなことも起こるのだろうと長寿社会の皮肉な現実に素直に驚嘆しましたが、良く考えてみると、子どものいない未亡人であれば義理の親の死後起こり得ることも考えられますが、このケースでは父が死んでも息子は代襲相続ができるので特にそのようなことにはならないのではないかと思い直しました。
客層には高齢者が多く、これらの演劇ファンが他の小劇場にも足を運んでくれたらなと思いました。
満足度★★★★★
『凝り性のサンタ、苦労する』観劇
明るく楽しかったです。
ネタバレBOX
子供の欲しいプレゼントを調べ上げ、父母に伝えるお仕事をしているサンタクロースが、一人の男の子の本当に欲しいものが分からず、苦労するミュージカル。
みんな可愛く、明るく、素敵な一時間。そして、次の30分は即興劇によるお楽しみイベント会でした。
追っ掛けも存在するくらいのアイドル性の高さでした。
満足度★★★★★
美しい!
鷹の羽の動きがとても綺麗でした。役者の妖しげな美しさと表現力に感服!
ネタバレBOX
あやかしは人を殺すと鳥になると云う。あやかしを恨む弟によってあやかしはあらかた殺され、今では絶滅してしまい見ることはできない。そして人は、悩みながら、協力しながら黙々と生き続けている。
それにしても、少年社中のビジュアルは素敵です。色合いといい、容赦なく傷つけ、容赦なく殺す、歌舞伎の世界のような美しさを堪能しました。
満足度★★★★★
最後の最後まで
幾重にも重なった仕掛けられた層の中に引きずり込まれました。
ネタバレBOX
ああそう来たのか、ちょっと奇をてらっているような気もしましたが、さらにもう一回来てからはどっぷりハマりました。最後の舞台挨拶でももう一回ヤラれた感じでした。
マンションの一室で男女のもつれから女がナイフで男を刺す、しかしそのナイフは手品用の刃が引っ込むタイプのものだった、気持ちは伝わるが事故にはならなかった。で、演出家のダメ出し。ああそう来たか。演出家が自ら役になって指導中に本物のナイフで刺殺され、さあここからお芝居の世界から現実の愛憎劇へ移動してさらに人が死んで、と思ったら演出家のお褒めとダメ出し。現実もまたお芝居の世界でした。もう一回来ました。そして真犯人役だった役者が恋人と将来のことを話していると、それは妄想の世界で、そのことを別の役者たちが話していて、ああもうどの次元にいるんだろうと思っているところで演出家登場、ようやく終わりました。
と思ったら、演出家が演出家さんこれで良かったですかと演出家を呼び出し、究極のメタフィクションでした。
首を絞められたり刺されたりはちょっとベタでしたが、確かに腕時計が光って見えるなど細かいところにも気が配られていて素晴らしかったです。
ただ一つ、友人の連帯保証人になって保証債務に苦しむ男がいましたが、男の恋人も同じく連帯保証人になっていたのは何とも納得できませんでした。連帯保証人を二人必要とする借入だったとしても、それは当の友人の方が別ルートでもう一人探すべきで、よしんば本当に頼まれたとしてもそこは断るべきで、フィクションの世界ですからそういうこともあったのかもしれませんが、ちょっと強引な筋立てに思えました。
満足度★★★★★
これが実態なのか
無性に怒りがこみ上げてきました。
ネタバレBOX
無理偏にゲンコツと書いて云々のような理不尽な高校野球の世界を描いたストーリーかと思いながら観ていましたが、途中から地方の名士とも言える立場を利用した監督によるパワハラ、セクハラどころではない暴力犯罪、性犯罪の実態を知らしめる重苦しい展開となりました。
フィクションだとしても火のないところに煙は立たずで、多かれ少なかれ高校スポーツの世界ではこのようなことが行われているのかと思うと、腹が立って腹が立って仕方がありませんでした。
随分可愛い劇団名に騙され、題名も意味が良く分からないまま観ましたが、野球部がマインドコントロールして自由に操ることのできる人材を作り出す工場のようだという意味だと観終わってから理解できました。
ところで、冒頭の試合中継の場面で、ツーストライクワンボールとかの表現がありました。ストライクを先に言う時代の話なのかもしれませんが、それならば球場の電光掲示板がBSOの順番になっていたのは変で違和感を覚えました。
満足度★★★★★
やはり凄い!
終始音楽に乗せての台詞回し、改めて凄いと思いました。
ネタバレBOX
橋本さとしさんのバルジャンの許にコゼットとマリウスが集い、周りにファンテーヌとエポニーヌ、それに学生たちが見つめているシーンは、やはり感動的でした。
満足度★★★★★
一途
モニターが集められたのは、歌舞伎町2-45-2のビルの4階、まさにここでした。
ネタバレBOX
心理実験に集まったのは5人、初日は夕方から始まり、三日目は午前中で終わる合宿型。日程は観客にも知らされており、その通り実施されると思っていましたので、素早く二日目の朝食後に事件が仕組まれていたことで一気に緊張感が増しました。良かったです!
朝食のサンドイッチに遅効性の毒が盛り込まれていて、解毒剤争奪戦を巡る心理実験の様相でしたが、実はワンダーフォーゲル部の冬山歩きで一緒に行った恋人を亡くし、失望感と責任感から引きこもりになり、オンラインゲームの世界で二人で一緒に冒険したり、まったりと遊んだりして、ゲームの世界に永遠に閉じこもったままの状態に陥った女性の心を開放させるために、ゲームの中の彼女を死なせてゲームを終わらせようとしたワンゲル仲間の壮大な企画でした。
この会場自体がネット上の仮想空間でした。気持よく騙されました。
最後、一つ残った解毒剤を恋人に飲ませ、彼女は死を選択しました。ゲームの中の恋人は生き残ったはずですが、操作する人がいなくなったため恋人も動かなくなりました。切ないですね。
腐れ縁のように言いながら、一途な彼女が素敵でした!
ところで、彼氏が解毒剤を飲む直前に蓋を取ったビンを手にしていましたが、そんなに傾けていたらこぼれてしまうと思いました。他の人たちがビンを落としたときも本当にこぼれたのか良く分かりませんでした。実際に水ぐらい入れておけばよかったのにと思いましたが、カンパニーの誰も信じられないのかなと勘ぐったりもします。
満足度★★★★★
もう一度の決意表明!
解散を決めたある劇団の最終公演後の話ですが…、バラシのテクニック、劇団の人間関係、役者と才能、気持ちのことなど、普遍的な内容がコメディの中にギュッと凝縮されていて素晴らしかったです!
ネタバレBOX
大食い競争のように電光掲示板を使って90分のカウントダウン開始、時間内に撤収完了できるか興味津々。
野球を生涯の職業と志す者は、甲子園を目指す5回のチャンスで自分自身で見極めを付けることができるという。将棋も基本的に同じですね。
俳優は自分で見極めを付けることができない。いっそ法律を作って、30歳くらいで才能の無い者を定職に就けさせるようにしたらどうか。むしろホッとするんじゃないかって。
でも、そう単純じゃないからこそ、バラシた後にもう一回組み立ててお芝居やっちゃうんだねぇ。
結局解散せずに、元主宰も戻ってきて、またお芝居やるんだ。後で後悔しても知らないっと!!
満足度★★★★★
衝撃的
リアルで迫力ありました。
ネタバレBOX
日本人は抵抗しないと思い込んで大暴れしたフーリガンに立ち向かい、フーリガンをぼこぼこにしたことで、意に反して外国人排斥運動のカリスマに持ち上げられた男を中心に、一般から青と呼ばれた彼らの顛末を描いた話。という訳で、青とはサムライブルーの青でした。
ネウヨが現実世界で狂暴化して殺人する様や、男の本性を試そうとバットを振り下ろすシーンなど暴力表現にリアルさがありました。
ラストシーンもリアルで衝撃的でしたが、日頃の行動からするとかんぬきは掛けていたはずで、少し都合よすぎるかなとは思いました。
女性を監禁してDVを繰り返していたのが元々の男の本性だとすれば、狂暴性の根源が説明できて理解できますが、DVシーンは大嫌いであるとともに、悪いのは自分だと自虐的に振る舞う女性の存在も見るに堪えませんでした。
満足度★★★★★
凄かった!!
いやあ、凄い内容でビックリしました!
でも、ニュースでは同じようなことを報道してるし…、
ネタバレBOX
島尾の奥さんはこの家に何度も来ているのに、最初のシーンでけつまずいていたのはどうかなって。
落語の「らくだ」のように、立場の逆転が面白い。
満足度★★★★★
距離感と、
距離感の変化が良く表現されていました。
ネタバレBOX
イラク戦争の取材中に死にかけの負傷をしたフォトジャーナリストのサラが、現地の病院で付き添ってくれたジェイムズとともにニューヨークに戻り、リハビリを経て、リハビリ中に人間関係を再構築して、再び取材のために戦地に赴こうとする話。
登場人物はフォトジャーナリストとして使命感に燃えたサラ、編集部員としてジャーナリストと営業マンの両面を持つリチャード、サラとともにイラクに行っていたものの、取材中に目の前で爆発が起こり、肉片等を浴びて精神的に参り帰国していたジェイムズ、リチャードの恋人でイベントプランナーをしている若いマンディの四人。
そこにもう一人、ジェイムズが帰国した後でサラが愛するようになったフィクサーのタリクが重要人物として存在していました。タリクはサラが負傷した際に死亡しましたが、ジェイムズからすると今もなお嫉妬の対象でした。
当初の戦争報道に対する熱意は、サラ、ジェイムズ、リチャード、マンディの順でしたが、最終的にはサラ、リチャード、ジェイムズ、マンディの順となりました。
マンディは私に近い存在でした。サラに、どうして死にかけの子どもがいるのに助けないのと聞きます。サラは、悲惨な状況を世界に伝える使命感を話し崇高振っていましたが、別のシーンで現地の人から写真を撮るなと叱責され倫理的に苦しんだことも告白していました。また、悲惨な方にばかり興味を示すサラやジェイムズに対し、明るい現実を見ることも大切だと力説していました。さらに、マンディは、リチャードが話した例え話の内容を聞いてくれました。薬物中毒で死んだロック歌手とその恋人の名前のことでしたが、そんなん知らんがなでした。
サラとジェイムズはいったんは結婚したものの別れました。リチャードの出版社から出すサラの写真集の文章を担当したジェイムズは、下書きの段階ではタリクの存在を一切無視した書き方しかできませんでしたが、サラとの生き方の違いを悟り達観した後は、フィクサーとしてのタリクの存在の大きさを感謝する形で表現することができるようになりました。
そのフィクサーですが、フィクサーとは取材の段取りをつける人のことで、フィクサーなしでは何もできないと言われると、取材そのものの在り方に何がしかの虚しさを覚えます。
マンディは赤ちゃんを産んでから子育ての重要さに目覚め、仕事に復帰することをやめました。ジェイムズは戦争から離れた感じの作家兼ジャーナリストの方向に舵を切り、穏やかになり、新しいパートナーも見つかりました。そして、サラは戦地に向かうことになりました。
ところで、サラがファインダーを覗くラストシーンは必要だったのでしょうか。サラは右目を閉じてから望遠レンズを付けたキヤノン製のカメラを構えました。常に周囲の状況を把握しなければならない戦場カメラマンがそもそも片目を閉じて写真を撮るのでしょうか。人それぞれだとしても、そんなに初めから片目を瞑るものでしょうか。余計な所作で馬脚を現してしまったように思えて仕方ありませんでした。
満足度★★★★★
笑い、悲しみ、感動!素晴らしい!!
横浜の地で、この日にちに、このお芝居が観られたことが本当に良かったと思いました。
ネタバレBOX
最初は知っていたのに、座長を始めとする一座の話が面白いので、つい特高に睨まれる中で演劇をするコメディのように思い込んでいると、突然空襲シーンとなり、市民や一座の関係者たちが逃げ惑う中、地名を挙げながら被害状況や被害者数が淡々と語られ、とても悲しくなりました。そして、空襲から二日後くらいになるのでしょうか、約束の夜明けに劇団員たちが集まって国定忠治をやるところは感動的でした。
それにしても、重油を撒いてから焼夷弾を落とす、研究し尽くした悲しい方法です。
空襲で破壊されたこんな悲しい時こそ音楽やお芝居が必要なのだという台詞は、震災後の今にも通じます。
生涯てめえらという子分たちがぁ…、台詞に込められた又の再会、又の一座復活の約束、戦後果たせたことを信じています。
座長役の剣持直明さんはさすがのベテランの味でした。板東宗太郎役の中嶋ベンさん、面白い!中村清次郎役の小暮美幸さん、しゃきしゃきしていて良かったです。
ところで、横浜大空襲は5月29日午前9時30分頃からです。舞台全体が暗く、夜の空襲のように見えました。白昼に行われた惨事だということが伝わればより良かったかなと思いました。
最後の芝居の最中に戦闘機が二度飛んで来ました。機銃掃射の恐ろしさを知っているのに、誰一人逃げようとかお客さんを守ろうとかしなかったのは疑問でした。まさか日本の飛行機ということは無いと思うのですが。
満足度★★★★★
素晴らしかったです!
本歌取りとはいえ奇想天外な展開、ツボを心得た笑い、凝った手法、そして楽しそうな役者さんたち、素敵でした。
ネタバレBOX
月人の念力光線を手鏡で反射させる技を持ちながら、ついかぐやのスカートの中を覗く誘惑に負けて光線を受けてしまうおバカさ…、団結を謳いながら全員が抜け駆けしている…、そして一人はかぐやのタカピーな要求に応じなかったのかと思っていると、いきなり母親が冷蔵庫を持って現れる…、本当に笑いのツボを心得ていると感心しました。
地球人にとっては何の影響もありませんが、月人は月人に対して顔や容姿を変えたように見せられるという催眠術的変身能力を持っています。ブサイクな母親がかぐやに変身したときは我々は地球人の立場から見ているので容易に理解でき、月人ってバカだねーと笑い飛ばすことができましたが、本来ゴリラのような体育教師が普段イケメンに変身しているという現象は、彼がイケメンに見えるだけにどうも我々も月人の立場から見ているようで、頭が気持良くこんがらがってしまいました。
月の姫だった母親の息子だけがイケメンと言っていて、他の生徒が否定していたことが理解できましたが、この自分の立ち位置を困惑させる凝った手法はさすがだなあと、作・演さんの才能に驚かされました。
姫が生存していたことが分かり、自由恋愛故に逃走したことも明らかになり、留学制度も一週間という短いものではなく、もっと自由に行き来できるようになることも想像できます。月と地球の未来が明るくなってとっても嬉しいです!
そして何より、生徒5人の楽しそうな雰囲気が素敵でした!
満足度★★★★★
千秋楽
ちょっと悲しい側の、スケールの大きな物語、とってもいいです。
ネタバレBOX
かつて四季のあった星で過ごし、今は一年に秋が三回ある星の誰も住まないニッポンにいる女性、どっちが地球なのか頭がクラクラしますが、遠い遠い未来の昔話のお話です。
最初の男と女の会話からは原発事故のことがとんでもない誤解だったかと思いましたが、終盤の会話からはやはりそれでも良いのだと思い直しました。
これだけは言っちゃいけないような気もしますが、アテ書きの妙、大西さんは本当にゾウガメにピッタリでした。福寿さんも藤川さんも。そう考えると、林さんの柴犬のワン公も見たかったなと、松本さんには申し訳ないですが今さらながら思ってしまいます。
満足度★★★★★
女子パワー炸裂!
常に動きがあり、明るく元気で本当に楽しかったです。
ネタバレBOX
著作権の問題があるのか、ある風なのか、鼻歌でごまかしたりして、キン肉マンと断言しているのか、していないのか微妙ですが、キン肉マンをリスペクトしているのは確かで、そのキン肉マンたちの娘さんが通う超人女学園における超人女子高生たちの友情とバトルの話。
石原さんが黒子になって立体的にプロレス技を見せるなど高さもありました。
女子で立体的と言えばひげ太夫…、ひげ太夫が日替わりゲストの日が楽しみですね。ぜひ組体操で鍛えられてください。
満足度★★★★★
究極の選択
このくらいのパラレルワールドが丁度いいと思いました。
ネタバレBOX
預かった金庫は単なる金庫ではなく、実は三種の神器の一つである剣を保管するためのものであり、タイムマシンでもあったということから起こる大騒動。
同時期に一人の人間がダブって存在したことによってタイムパラドックスが生じ、この世界や神話などの虚の世界が崩壊するということで、タイムパラドックスを解消するために、①ホワイトな選択として、せっかく競馬で10億円儲けたことをフイにしてまでリセットするか、②ブラックな選択として、ダブって存在した林修司さん演じる不動産屋の社員をそもそも歴史上存在しなかったことにしてみんなで10億円を山分けするかの究極の選択を迫られ、登場人物と観客全員が意思表示をしてエンディングを決めました。
林修司さんのファンが多いせいか、この回はホワイトな結末になりました。
ルドビコ★のパラレルワールド物といえば、 『深沢ハイツ302~もう一つのニュートンの林檎~』が思い出されますが、深沢ハイツ302では金持ちになったかと思えばそんなこと無くなったり、もう作者の勝手でしょと言わんばかりに何でもありのパラレルワールドが延々と繰り返されました。その点本作品はスッキリしていました。
ただ、善良なお客さんが多いことや林修司さんのファンが多いことで、ホワイトな結末ばかりが演じられるようなことになれば少し残念です。最初から10億円を山分けしてウハウハしつつ、何かの拍子にかすかな記憶が蘇り、リセットするというのもありかなと思いましたが、先ずは単純に多数決によって、ブラックな結末である一人約60百万円を手にして大騒ぎする正直バージョンを見てみたいと思いました。
満足度★★★★★
こういう長編が観たい!
短編の内容が適度に飛んでいて、美味しく絡んで、イライラ、本音があって楽しかったです。
ネタバレBOX
お笑いにハマった女友達のこと、クズな芸人、派遣先の女子仲間、結婚できないサラリーマンたち、結婚できるかもしれない男女…。
やはり結婚できないであろう男たちの酔っ払い方が半端でありませんでした。靴を片方失くし、脱いだワイシャツをタスキのようにして斜めに結んだ姿は初めて見ました。
そして、私の一生を決めた食べ物は杏仁豆腐でした、みたいな優しいエピソードもあって、とっても素敵でした。
美しい女優さんの存在も嬉しかったです。CM中ドキドキしていました。
満足度★★★★★
考えた!
『狂おしき怠惰』の形式の原点。形式は慣れました。二本分堪能。
ネタバレBOX
序で電力が如何に必要かを謳い、前半で東日本大震災から数ヶ月後の被災地の人間ドラマを描き、後半は前半の人々の十数年後の話で、テロに怯えながらも原発再建設に進む国の中枢部署における近未来サスペンスSF話。
国内製造業の空洞化を防止するには安い電力が必要ですが、新たに頑丈な原発を建設するには海外向けの高金利円建て国債を発行せざるを得なくなり、その結果外国に公債市場を握られ、いずれ中国により日本の金利の安定が大切か尖閣諸島の領有権が大切かを迫られ、どちらの形にせよ侵略されると説いています。
もう既に超経済大国ではないのだから、少なくとも中国による支配は防止しよう、そして、効率の良い太陽光パネル、樹木の葉っぱが光を受けるのに一番効率が良いのですから、樹木型の太陽光発電装置を道路脇や公園などの公共の土地に設置して、起死回生を図ろうと主張しています。
このような海外向け国債とまで言わなくても、現在だって国債残高は国民の金融資産残高ぎりぎりのところまで来ているのですから、同じ発想が求められる訳ですね。
原子爆弾のような大掛かりのものは必要なく、原発事故で生じた放射性物質を拡散させるための爆発装置だけでテロができるというありそうな現実に恐ろしさを感じました。これからの事故処理で生じる高レベル廃棄物の厳重な管理が最重要課題だと思い知りました。
大災害発生時における緊急避難的な対応の是非、被災地の現況を報道するマスコミのあり方などを考えさせる前半部分と、日本の方向性を真剣に戦略的に考える後半部分、どちらも良かった3時間20分でした。
それにしても、高校生、お姉さん、ボランティアの女子大生等々、彼らの十数年後の変貌振りには、役者さんって凄いなあと感心しきりでした!