満足度★★★★
虚しい、虚しい、
みんな成れの果てでした。
ネタバレBOX
一度死んだら絶対に生き返らない、奇跡は起きませんでした。
賽の河原の近く、石の数を数え続ける無限地獄。何度数を数えようともいつかは不可思議にまで到達できるのではないか、あるいは何年かに一度布で岩を撫でて、それを繰り返しているうちに岩が無くなるというくらいの時間を掛ければいつかは壁に穴があくのではないかと、生き返る希望があるうちはいいのですが、そんなことは全くないことを知って希望がついえたときの絶望の大きさが身に沁みました。
特に自殺者には。そして、彼らを管理している鬼も、まだ鬼にもなり切れていない抜け殻たちと同じ自殺者の成れの果ての哀れな存在でした。
現世利益などあるはずもなく、夢が叶わなくとも死ぬでない、死んでから気づいてももう遅いぞよと言っているようでした。
それにしても、左前の着物にはいつも特別な気持ちにさせられます。
満足度★★★★
【♦ダイヤチーム】観劇
とても楽しいストーリー、アンサンブルも豪華でした。
ネタバレBOX
「ペテン師と詐欺師と詐欺師」
そもそも、ジャッカルと呼ばれるアメリカ人詐欺師が来ているという新聞記事を読んだ老練な詐欺師ローレンスが寸借詐欺師的なペテン師フレディをジャッカルと誤解したことが騒動の発端でした。アメリカソープクイーンに選ばれたというクリスティーンがたまたま当地を訪れていたことから、縄張りを賭けて彼女から金を奪う競争をしたものの、フレディを愛していたのに5万ドルを盗まれてしまったと嘆くクリスティーンに同情してローレンスが5万ドルを渡しましたが、結局二人はクリスティーンに手玉に取られていたのでした。
ここで終わらないのがいいところです。不動産投資を持ち掛け、客を集めて当地に戻って来たクリスティーンがローレンスとフレディに再会すると、三人が組めば最強になると誘いました。そして新しい詐欺グループの結成を高らかに歌い上げるのでした。
俳優さんたちは声量もありました。それでも半音ずれているようなところが好きではありませんでした。
満足度★★★★★
ぶっ飛んだ前提
ブラックなSFで、面白かったです。
ネタバレBOX
細かい、と言っても相当大きく、一個じゃなくバラバラと数多くの隕石が落ちると、次に宇宙人が襲撃してくるらしいです。その前に隕石から有毒ガスみたいなものが出てくるため、地球上の人間は皆死ぬらしいです。ニュースなどで流れた情報です。
非公開の情報として、唯一アフリカ中央のサバンナにはガスが届かないのか、バリアがあるのか、そこだけがとりあえず無事らしいっす。そして、ロケット付きエレベーターというものがいくつかあって、隕石の落下と同時に乗り合わせた人がサバンナに行くことができるというぶっ飛んだ前提でした。宇宙飛行士のお姉さんが宇宙人と接触してこれらの情報を得た模様です。
サバンナには数人の日本人がいて…から始まる、ブラックなSFでした。
その中には弟もいました。最初姉が乗るはずが手違いで弟が乗ってしまったのかと思いましたが、姉は自分はロケットで脱出し、唯一の身内である弟についてはエレベーターに乗せて助けようと考えた結果のことでした。あとの人たちは偶然乗り合わせただけですが、ここに来た人類だけを絶滅危惧種として宇宙人は保護しようと考えたわけです。
動物を食べるということ、動物を愛玩すること、動物を虐待すること、人間の都合に合わせて動物の個数をコントロールすること、数が減ると急に保護したりすることなどが、宇宙人の出現で人類にみーんな跳ね返って来てしまいました。
動物愛護センターの職員とホテルの料理人がたまたまいたこともあって、特に食育面が強調されていたようでした。姉が、弟が嫌いと言うセリフがありましたが、それでも遺伝子の近い者を助けようとする業のようなものも感じました。
アフタートークでバッサリという言葉が出て来ましたが、弟を除く人間全員がチータに噛み殺され、姉も実はロケットに隕石が衝突して死んだいたということで、その他大勢をバッサリ排除してしまういさぎよさに感動しました。
マサイ族はどうしたのだろうとか、ガスにやられるのは人類だけなのかとか色々考えましたが、エレベーターが大気圏外を飛ぶご時世ですから、細かいことは気にしない気にしないです。
ああしかし、男一人だけではいずれ人類は絶滅してしまうことになり、悲しい結末ではありました。
満足度★★★★★
楽しかったぁー!!
何度も笑わせてもらいました!
ネタバレBOX
下ネタ…、と言っても小学生が使うようなウンコネタでしたが、大いに笑い、あの役者は本番中にウンコをしに行って撮影を遅らせたという噂が広まるであろう芸能界の怖さや、今度は時間稼ぎのためにわざとそうしたと美談に持っていこうとする芸能界のしたたかさが伝わって来ました。
悲哀を卑猥と聞き違えるのはどうかと思いました。別にキノコ人間がアレらしく見せているようにも見えなかったので、大人の下ネタの方は要らないように思いました。
確かキノコ人間Cの役者さんは、以前のお芝居でも滑舌が悪いとツッコマれていたような記憶があります。そんな役者さんに手術などという難しい発音の入った長台詞を言わせるなんて、もし終盤の本番シーンでトチったらどうするんだろうと思ってしまいました。もしそうなったら、監督さんは怒りまくり、みんなも本当にそうなっちゃったとか言いながら、もう一度本番をやるのでしょうね。そして2時間10分が2時間15分になってと、そんなシーンも観てみたかったなと思います。
ヤフー知恵袋への質問から一転、ヤフー知恵袋へ回答する立場になることで事態を好転させるなんて物凄いアイデアです。着想の素晴らしさに感嘆しました。
顔出しにこだわった俳優、何とか顔出ししようと試みるも実力の無さや仮面ライダーのイメージもあってカメラには一切顔が写らない俳優、こういう描き方も素敵でした。
キノコ人間Aの人にはファンがいて、いい演技もできて、それでも芸能界を去るのでしょうか、厳しい世界ですね。
満足度★★★
不満足
いくつもの階層のあるストーリーでしたが中途半端でした。
ネタバレBOX
アトリエ全体が未来のおぼんろ博物館。しかし、日本では東西戦争が激しく、今や博物館は避難所と化しており、私たち観客はそこに避難してきた避難民という設定でした。そこには立体映像を流す展示品があり、映像を流すと、『泣き方を忘れた老人は博物館でミルとフィーユの夢をみる(爆撃の音を聞きながら)』が上演されるのでした。
おぼんろ博物館で、おぼんろという劇団を懐かしむ老人が、たまたま居合わせた老人や人形たちに末原拓馬、高橋倫平、わかばやしめぐみの三人の役者を降臨させ、『ゆめみるふぃーゆ』という伝説のお芝居をさせます。かつて三人はこの公演中に爆撃を受けて死んだのですが、あの世への帰り際、三人は劇団を懐かしむ老人がこのお芝居に出演していなかったさひがしジュンペイに似ていることに気付きます。そのことを指摘すると、老人も自分がさひがしであることを思い出し、サイボーグとなって長年生き延びていたことを再認識したのでした。
そう言えば、博物館の外で地雷を踏んでもピンピンしていたはずです、チャンチャン。
複雑な階層の、今どこを見ているのか混乱するようなストーリーでしたが、ミルはフィーユの見る夢の中にいて、寝れば夢を見ることもあり、いずれまた会えるかもしれないなどという肝心のミルとフィーユの話がつまらなく、全体を中途半端にしてしまいました。
満足度★★★
ワクワク感が無い
立って行う新作落語のようでした。つまらないものと少しつまらないものがありました。
ネタバレBOX
ブルー&スカイさんの新作『火につよいアイツ シリーズ』は、火をつけられても大丈夫な人たちを巡る何本かのシュールなナンセンスコメディ。発想は豊かです。
『東京大パニックメガネ』は、メガネ型宇宙人の襲来とでも言うべきSF超大作でしたが、急いで筋を追っかけているだけでした。
『爆走遊戯』は、とある俳優が役者を目指すきっかけになった学芸会でのウサギとカメをモチーフにしたシニカルな賭けマラソンの話でしたが、本当に学芸会のようでした。
一人で2時間10分、50歳、大変なのは分かりますが、頑張ってるで勝負されても困りますと思いました。
満足度★★★★
真の終戦とは
本当に井上ひさしさんのメッセージかどうかは確認のしようがありませんが、そうだとして、確かに井上さんのメッセージは受け取りました。
ネタバレBOX
戦争をしたのだったら、あんたたち最後まで責任持ってよね。沖縄の占領軍基地が無くなるまでが仕事だからね。
舞台中央にしめつけの木があって、登ったり下りたり大変そうで、よく落ちないで演技ができるものだと思っていましたが、ラストシーンで木が随分直立したのを見て、意外と傾斜があったことが分かりました。見せ方が上手かったです。
木の上に逃げた上官と新兵の話。最初は敵を倒そうとする緊張感があったものの、米軍の野営地のゴミ捨場から食が調達できるようになると、タバコは分け合わずに見つけた者のものにするなどと次第に状況が変わり、最後は米軍は二人を知っていて生かされていたことに気付くと、投降して生き恥を晒すことへの葛藤に悩むのでした。
この島出身の新兵と本土出身の上官というのが絶妙な組み合わせでした。占領軍基地が無くなるまでは沖縄に終戦が来ないということですが、占領軍基地と現在の米軍基地が全くの同意語とも言い切れないところが少々悩ましい点ではあります。ただ、地位協定なんかを見ると、やっぱり占領軍と言えるのかもしれませんね。
満足度★★★★
同期
のときのセピア色が綺麗でした。
ネタバレBOX
映像作家の男とバンドの成功を夢見る女子の、まるで関係のない二人とそれぞれの友人や関係者たちのおよそ一年間に亘る群像劇。
才能がある故に疎まれ、才能に嫉妬して友人が離れていくのも辛ければ、才能がない故にメンバーが抜けても名ばかりでバンドが存続しているのも悲しいものです。
クリスマスパーティに行く奴はまたパーティのことを考える頃になる、特に何がどうしたということもない一年でした。
男の才能について自分だけが理解し、隣家を盗聴していた事実を自分だけが知っていると思っていた女性の鼻っ柱が折れたときは精神的などんでん返しを見たようでした。人の性癖については余程のことがない限り触れない、大人の付き合い方の奥の深さを当たり前のこととは言え再認識しました。
気持ちがテルミンを介して空気を伝わっていき、同期させるのは何のこっちゃでしたが、そのときなどのダンスに際しての照明が黄色っぽいセピア色で、とても綺麗でした。
ところで、2007年の『不確かな怪物』以来久し振りでしたが、記憶違いでなければ相変わらずシコシコが好きなんですねという感想を持ちました。
満足度★★★
そうでしたか
思わぬ展開には驚きましたが、そりゃそうだろうと思うところもありました。
ネタバレBOX
ペットボトルのラベル剥がしのアルバイト、しかも自宅での内職…、ム、聞いたことがない、そりゃそうだろうと思いました。
警察の内偵捜査のために従業員の女の子たちを一時的に休業させたって、まあ強引な話で、本当に補償できるんかいなと思いましたが、笑ってしまいました。
ラベル剥がしの青年との結婚を真剣に考え、結婚資金を準備するために風俗で働こうとした彼女…、オー・ヘンリーの短編のような健気さはありますが、キャッチフレーズにある最低だったけど最高だったという気にまでは残念ながら至りませんでした。
満足度★★★★
全編粗野で暴力的
こんな父親とこんな家族があったのかと思いました。
ネタバレBOX
父親が子どもたちに暴力を躾けていた一家の成れの果てでした。
夜中に父親に突然起こされて子どもたち同士が殴り合いをさせられる、そんな躾をされたらこんな好戦的な兄弟になってしまうのでしょう。長男だけは少し教育を受けたせいか暴力が嫌いな人間に育ちましたが、あとは本当に愚連隊一家でした。そのくせ父親は言い訳を付けて決闘から逃げ回る卑怯者でした。長男やその妻は父親の本性を見透かしていて、次男も分かっていたとは思うのですが、三男以下は父親の言い訳の武勇伝を信じてしまう鉄砲玉的思考能力しかありませんでした。
散々暴力をはやし立て、そして自分は参加しない父親とその息子たちが招いた最後の悲劇、五男の死を前にしてもまだ逃れようとする父親のクソッタレ振りに、クズのクズを見た思いでした。
全編粗野で暴力的、酔っ払っているのですが、時々父親や次男の友人などが一人芝居的に演じるシーンがあって役者さんの見せ場もありました。若い役者さんたちは粗野を全面に出したり酔っ払いを演じたりするため、大声になったりと大変だったと思いますが、少し棒読みっぽく感じました。
父親役の役者さんは親分肌で恰幅も良く演技も素晴らしかったのですが、あれなら誰と喧嘩しても負けないだろうと思える体格でした。もしかしたら実際の父親はもう少し貧相な男だったのではないかという気もしました。子どもの立場から父親を見ると大きく見えるという象徴なのかもしれませんね。
満足度★★★★
【雲の上編(過去)】観劇
どこが過去なのか分かりませんでした。
ネタバレBOX
最初のシーンで無人島に漂着した女性に、私の肉を食べませんかと言ったのが過去なのでしょうか。着物を着ていたのでそうかと思いますが、救助が来る来ないのセリフからはあまり過去をイメージできませんでした。助けが来るとか言った方が雰囲気が出るような気がしました。
その後は再婚したい父親と戸惑う娘に関する話がメインでした。小学生の娘と、友だちになった少女の二人が本当に子どもらしくて素晴らしい演技だったのですが、彼女たちが少女らしくあればあるほど子供向けのお芝居のように思えてしまいました。過去のこととか、人魚のこととか、不死身の人の存在とか、そんなもの今回の筋立てに必要あったのでしょうか。不死身故の哀しみなど何も伝わって来ませんでした。
人間の恨みが形を成してできたロボットのような存在に対して、至極当然にカタカナ言葉を使っていましたが初耳でした。時間を止めているはずなのに、勝手にその空間に入っていけるのも意味がよく分かりませんでした。
未来編を観なければ理解できないとしたらあまりにも不親切で、全体で一本の作品を作るべきだと思いました。
ただただ、少女役二人の元気さや少女らしさが際立っていたという印象です。
満足度★★★★★
面白くてほぼ完璧!
たくさんの要素を盛り込んだ非常に完成度の高いワンシチュエーションコメディ、笑いました。
ネタバレBOX
優秀だけど技術のことしか考えていないような、患者の気持ちに思いが至らない鼻持ちならない外科の研修医が主人公のワンシチュエーションコメディ。
勘違いから来るドタバタ、繰り返し、二役、究極の放置プレー、考え抜かれていました。
役者さんも良かったです。特に目のくりくりっとした棚橋幸代さんの天真爛漫さが秀でていました。昨年12月に観た『ゴジラ』でもゴジラの婚約者を演じられていましたが、上品で美人で天然なところがいいですね。
いちごオーレの繰り返しとジグソーパズルが壊される繰り返し、ちゃんと回収されているのは立派でした。
交通事故の原因が、タクシー運転手が一方的に悪いと噂された段階から、熱血高校教諭が失恋の痛手から自暴自棄な運転をして自殺を図ったのではないかとの懸念が浮上してきてちょっと悲しかったのですが、どうも恋人にいいところを見せようと苦手な運転を頑張ってしていたのではないかということが分かり、事故は事故ですが前向きな方向に進んでホッと温かくなりました。
なにげな研修医の成長も素敵です。
そして何と言っても、今日の送別会に参加する面々が乾杯もせず、苦情も言わずに延々と和民で待っているという絵が浮かび、まさに究極の放置プレーに笑ってしまいました。
お母さんと子供の二役はもっと早替えで回数を増やしてほしかったです。やくざの人が病院に来ていることをお母さんは知らないはずなので、お母さんが検査衣になった意味は不明でした。
満足度★★★★
緊張と弛緩と思考
どうしても哲学という言葉に引っ張られてしまいがちですが、何十万人もの死者が出た戦場のまさにその現場の話でした。
ネタバレBOX
薄暗い、時には暗闇のオーストリア軍兵舎の中での話。
哲学者が考えたことですから難しそうですが、テーブルの上のパンやソーセージを山脈や川に、少し離れた椅子をハンガリーに見立てるなど、物を使って別のことを想像できるのが人間で、物ではなく言葉を使うともっと様々なことが理解でき、そして説明できるようになると、人間とチンパンジーの違いに今気付いたと言わんばかりの驚きようでした。
しかし、理解できないことは説明できず、戦争には勝つかもしれないし負けるかもしれないと100%押さえたような言葉は説明したことにはなりません。
恐らく数学も哲学ですから、弾道計算も哲学なんでしょうね。
友人の死を伝えるのが目的でもなく、二人の友情を再確認するでもなく、友情の存在を知っているというありのままをありのままに記したという友人の死を伝えた友人のお母さんからの手紙は素敵でした。
満足度★★★★
確かにピンキーバイオレンス
女子力の勢いを見せつけられました。
ネタバレBOX
写真集出して、ショムニに出て、写真集出して、2007年THEATER/TOPSでの『明日にかけるはし』は割り箸工場の話、私の中の小橋めぐみさん、懐かしく拝見しました。
総務部と経理部の対立、経理部長と総務部トットちゃんの社内恋愛、トットちゃんに横恋慕する係長の盗撮騒動、経理部長の横領した10億円をトットちゃんが保管、その金を巡る詐欺騒動、総務部と経理部の全面戦争で10億円は焼失、浮気に怒った奥さんが斧を持ちだして殺戮、そんなメインの話に町の清掃活動のドタバタや先輩後輩のOLさんが絡んで、出演陣のほとんどが女子のぶっ飛んだ話。
こういう世界もあるのねと、たまにはいいものです。
どうせ見せパンだし、ちょっと遠いし、エロではありませんでしたが、とにかくスタイルのいい人のパンツ見せまくりは色っぽくて嬉しかったです。
満足度★★★★
無縁社会
絆を深めるのも無縁社会になるのも心掛け次第だとつくづく思いました。
ネタバレBOX
遠い親戚に一人はいるとかいないとか、あんな人が身内にいたらあー嫌だって感じの兄でした。
田舎ですし、長男の家だと勘違いする女性の言動のようなお芝居の内容でのイライラは好物ですが、最初に出会ったときの、あっ、えっ、あっ、ええーっと二人が同時にしゃべるところなどは古いコントを見ているようでベタすぎて、別の意味でイライラして全く面白くありませんでした。
弟夫婦の気持ちは分かりますが、遺産分割協議書だってできていないでしょうし、単に出て行ってくれで済むとも思えませんでしたが、兄貴は意外とすんなり出て行きました。
と思ったら、兄貴は借金まみれで、連帯保証人欄には弟の名前が記載されていたと踏んだり蹴ったりでした。まあ弟の自署じゃないし貸し手は弟に保証意思を確認しているわけでもありませんから、毅然とした態度が取れればいいだけの話ですが…。
本来は遺産分割のことや今後のことを含めて、親戚の叔父さんとかに間に入ってもらうべきですが、若手自主企画ではそんな役者さんは呼べないのでしょうかって感じで、少しばかり現実味に欠けていました。
いずれにせよ、絆、絆と叫ばれている中、これでまた無縁社会の人間が確実に一人誕生したわけですね。
満足度★★★★
とにかく本が良い!!
渡辺源四郎商店畑澤聖悟さんの作品で、2005年の全国高等学校演劇大会で最優秀賞を受賞した演目だけのことはありました。
ネタバレBOX
青森の高校生が沖縄に修学旅行へ行った三日目くらいの宿での話。
戦争体験者の体験談にはちょっと考えさせられるけど、どんな年代にも本音と建前があって先生から感想を求められると模範解答でやり過ごし、やっぱり異性のことが気になるもので、そしてカイト君のことで色々揉めて、どんでん返しもある楽しい60分の秀作でした。
ソフトボール部の女子生徒が部屋の中でバットの素振りをする様子や音はまるでヘリコプターのようでした。すぐそばの布団の生徒はいつバットが飛んでくるかと脅威に感じているのに対し、ちょっと離れた布団の生徒は全然気にならないという、米軍基地問題における沖縄県民と県外の人たちの温度差の違いを表現しているようで、さすがだなあと思いました。ここだけで最優秀賞確実ですね。
モテ少女と自他共に思い込んでいたら、まさかのどんでん返し、ワハハですぅ。これで最優秀賞は盤石です。
ただ、カイト君に好きな女子は誰かという質問をしていないのに、いきなりカイト君が話し始めたのには驚いてしまいました。アフタートークで先生が早く部屋に入ってきてしまったために質問の箇所を飛ばしたということが判明しました。先生は日替わりだし、色々ありますね。
先生が部屋を出た後に班長が改めて質問するなどのアドリブを求めるのはやっぱり酷ですかね。酷ですよね。
今回の公演では、出演者の年齢を考えると中学生が高校生を演じているケースが多く、どうしても幼く見えてしまいました。等身大ではありませんでしたが、内容的に面白かったのは確かです。因みに、5月にザ・スズナリで本家である渡辺源四郎商店がこの『修学旅行』をやるそうです。
満足度★★★★★
素晴らしい!
バカバカしくも切実で切ないテーマ、それにこちら側を惑わす手法が素晴らしく、センスの良さを感じました。
ネタバレBOX
こちらが勝手にどんでん返しと受け止めてしまいました。
あっ、これはロック版『楽屋』かと思いました。ロックへの夢が破れ、チャゲスタイルに落ち着いた元ロッカーの兄弟が幽霊となって練習スタジオの控え室にいるのかと思いました。そして、ロックに限界を感じた男にしか見えないのかと思っていました。
そうしたら、おっさん、というか若年寄、精神的におっさんになった三人兄弟のことが、夢に対する限界を感じない若者には全く見えていないという構図でした。
おっさんとは夢を諦めた人間のこと…、夢にまっしぐらな若者にとって、そんなおっさんは見えないだけでなく、触れることもできず、存在すらしていないのでした。素晴らしい発想です。
おっさん全員がバンダナ巻いてサングラスかけてチャゲスタイルになったり、身体を楽器に見立てて演奏したりと笑いどころも多く、ラストの新曲「俺がヤギでもその手紙だけは食えない」に、そう言えば本作品の題名はこれだった、すっかりヤギのことを忘れていたことに気付かされ、彼らがもう一度ロックに目覚めなければもしかしたら、「I wanna be 公務員」が題名だったかもしれないと思った次第でした。
満足度★★★
基本とってもいい話。
観たことありそうな話。
ネタバレBOX
親離れ、子離れの話。
自動車に轢かれても、刺されても、内臓破裂したかもしれないくらいに蹴られても誰も死なず、お子様向けのような甘々な感じがしました。ただ、アライグマの父親が自動車に轢かれたのは主人公のネコのせいなのに彼が謝罪をしないところなどはお子様向けとしてもどうかなと思いました。
また、ボスの息子がボスに対して武器を使って不意打ちを食らわすなど卑怯なシーンもありましたが、膝をついたら負けだなみたいな台詞を言って去っていくボスはカッコ良かったです。
全体としてありふれた話で心に響いて来ませんでした。役者さんたちが上手いだけに何か勿体ない、時間の無駄をしているのではないかと思いました。
満足度★★★★
範囲が広い
事前情報からてっきり休憩ありの3時間だと認識していましたので、一気にお終いまで行ったのには驚きました。結局休憩なしの3時間10分でした。
ネタバレBOX
桓武天皇の皇子の頃から、彼の亡き後彼の子息が天皇になって薬子の乱が起き、また別の子息が嵯峨天皇になった頃までを描いた大河ドラマ。桓武天皇が天皇になれた経緯、最澄が僧を志すきっかけや桓武天皇との関わり合い、結果的に蝦夷征伐になってしまった蝦夷との関係、天才的空海の出現、そして最後、最澄の念願だった新しい戒壇が死後認められ、そして鎌倉仏教に繋がっていくというところまででした。
歴史アイドルというだけあってとても可愛い小日向えりさんの解説で進行しましたが、歴史を追っかけているという感じがしました。
澄んだ心の最澄を描こうとして、その背景を、関係した人々を、そうしたらこんな事件があったなどとどんどん話が膨らんでいって、何かを省略すると歴史ファンからツッコミが入るかもしれませんし、結局こうならざるを得なかったのかと思いました。しかし、こうした中では堕落した奈良仏教を立て直したという歴史的事実は説明できても、人間の苦悩故の仏教のあり方を描くのは大変だなと思いました。
実際はどうだっか知りませんが、まじないの嫌いな桓武天皇という設定には好感が持てました。医者と僧侶は違うなど、祈祷で病気が平癒することなどあり得ないと認識しつつ、また人が救われるまじないなどあり得ないことが分かっていながら、そういうものを求めてしまう人間の弱さが表現できていたことも良かったと思いました。
本公演終了後すぐ名古屋に向かわれるという本仮屋リイナさんなど話題性はありますが、年配の方の演技は申し訳ないのですがちょっと棒立ちっぽく見えてしまいました。
満足度★★★★★
清々しい!
観終わった後、清々しい気分になりました。
ネタバレBOX
陸上自衛隊に辞表を出し、自分の殻にこもり、特殊部隊が潜入して人質を救うような真似事をしていた堂島が、なぜニコニコしながらサバイバルゲームに参加できたのか不思議でした。あれはどう見ても精神を病んでしまったようにしか見えませんでした。
傭兵になって実践でもしたかったのかとも思いましたが、堂島も含めて自衛官たちは、出番は最後の最後になるものの、国防に生き甲斐を感じているようでした。自衛隊の在り方について、文民統制下の自衛官らしい考え方を持っていたので安心しました。
サバイバルゲームにおける熱い男たちのドラマといった感じで終始するものと思っていたので、日本のどこかで、あるいは日本近海のどこかで本物のテロが発生した展開に、物語としての素晴らしさを感じました。
たまたまスクールの本部に居合わせた海上保安庁の職員が戻り、警視庁のSATや外務省の高級官僚たちも帰っていく、先ずは紛争の最前線に立つ人間の緊迫感が伝わって来ました。ただ、自衛官の一部が、明日帰営しますと報告していたのは堂島の精神的苦悩を斟酌したとしてもやはり妙で、堂島にもスイッチが入ったはずですから即座に帰るべきだと思いました。
持ち場持ち場で頑張ろうとする男たちのストリートファイター後の姿、そして現代日本の自衛官の考え方に清々しさを感じました。
ところで、サバイバルゲーム自体は、参加者の考え方などを舞台上で披瀝させるには仕方なかったのかもしれませんが、本部側が一切攻めない持久戦方式では模擬戦闘シーンが無く、面白くはありませんでした。