KAEの観てきた!クチコミ一覧

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ロンドン版 ショーシャンクの空に

ロンドン版 ショーシャンクの空に

東宝

シアタークリエ(東京都)

2014/12/11 (木) ~ 2014/12/29 (月)公演終了

満足度★★★★

こちらは王道作品でした
以前観た河原演出舞台は、映画とは全く趣が異なる、意表をつく作りで、舞台としての意外性には富んでいましたが、どうも映画ファンからすると、あまりにも別物で、違和感も感じて観ていました。

こちらは、映画と同じストーリー運びでしたが、映画以上に、終始暗い雰囲気ではありました。

前者と後者の中間ぐらいが一番観たい舞台ですが、どちらかを選ぶなら、今作を選びます。

アンディとレッド以外の囚人達も、皆さん芸達者な方ばかりで、それぞれ存在感があって、リアル度も、今作の方が高かったように思います。

最後のシーン、舞台だと白けないかなと心配でしたが、さすが、白井さん、舞台人としてのご経験が長いだけに、舞台ならではの表現法を心得ていらして、感服しました。ただ、スタッフの力量がちょっとそれに見合わなかったような気配が感じられたのは、やや残念でした。

何となく、また再演があればいいのにと思う舞台でした。

ネタバレBOX

アンディの機転で、囚人達が、20分だけ、青空の下で、休憩時間に、ビールを看守のおごりで、飲むシーン、涙が自然に流れてしまうような素敵な空気が流れていました。

映画でも、泣きましたが、やはり、トミーの死は衝撃的です。トミー役の三浦さん、大変好演されていて、魅力的でした。

谷田さんの、問題囚人も、迫力があり、怖くてなりませんでした。

板尾さんは、本当に、こういう小狡い人間を演じるの、お上手!フィクションだとわかっていても、小憎らしくなりました。(笑い)

佐々木さんのアンディは、聡明な感じはよく出ていましたが、もう少し、アンディのバイタリティを感じさせるような役作りでも良かった気がしました。
映画程、アンディと、レッドの心の交流が描かれていないのも、やや不満な部分でした。

最後のシーン、舞台で二人の再会を描くのか、変に作った背景が出て来たりしたら、嫌だなと、不安な気持ちで、見守りましたが、少しだけ、光が見えるという演出は、気が利いていました。ただ、暗幕の上げ方が、少し、ギクシャクしたのは、如何にも、舞台装置といった雰囲気を感じさせてやや残念でした。
モーツァルト!

モーツァルト!

東宝

帝国劇場(東京都)

2014/11/08 (土) ~ 2014/12/24 (水)公演終了

満足度★★★★★

やはり珠玉の名作ミュージカルでした
井上ウ゛ォルフガング楽を拝見しました。

先日の観劇時は、長期公演の弊害的な惰性めいたものを感じてしまったのですが、さすが、この日は、井上さんの、東京公演楽日ということで、役者陣の気合も半端なく、名作ミュージカルの味わいがたっぷりでした。

それぞれの登場人物のソロナンバーが、珠玉の名曲ばかりで、一々、歌詞が深く胸に沁みて、涙腺が緩みっぱなしになりました。

初演の頃は、キャストの歌唱力に、バラつきがあり、特に、せっかくの「星から降る金」の名曲が泣くようなキャスティングの時もありましたが、今回のキャストは、歌唱力がある方ばかりなので、安心して、舞台に陶酔できて、ありがたく思いました。

ネタバレBOX

いつも思うのですが、アマデ役の子役の名演ぶりに泣かされます。

今回の未来さんも、立居振舞だけで、アマデの感情をしっかりと体現され、素晴らしい演技力でした。カテコで、将来は、コンスタンチェをやりますと宣言されていましたが、本気で、彼女のコンスを拝見できる日が来ることを楽しみにしています。

中川さんが、カテコに登場されたことも、ファンには嬉しいサプライズでした。

モーツアルトという稀有な存在を通して、普遍的な家族劇に仕立て上げた、この作品の作者とスタッフ、キャストに、心から、敬意を表したい思いでいます。

改めて、このミュージカルに出会えたことに感謝した一日でした。
GREAT EXPECTATIONS -大いなる遺産-

GREAT EXPECTATIONS -大いなる遺産-

Studio Life(スタジオライフ)

シアターサンモール(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2015/01/12 (月)公演終了

満足度★★★★

やっとテーマが見えた気がします
「大いなる遺産」は映画で観たのですが、その時は、何だかだからどうした?という印象しか受けず、あまり好きな作品ではありませんでした。

でも、スタジオライフがやるなら、きっと、私にも理解できる作品になるのではと期待して、拝見しました。

案の定、映画より、ずっと深みを感じる作品に仕上がっていました。

Bowlerhatチームを拝見しましたが、笠原さん、松本さん、及川さん、山本さん、奥田さん、石飛さんなどの、ベテラン勢の好演もあり、それぞれの人物の造形が深く掘り下げられている印象がありました。

ライフの役者さん達の、発声が、きちんとしているのにも、感心しました。
その夜、家に帰って観た音楽番組に、出演していた、ある男性集団グループの発声があまりにも酷かったので、余計、ライフの役者さんの日頃の精進を体感できたことを嬉しく思いました。

亡くなられた河内さんも、さぞ喜んで、天国から見守っていらっしゃるのではと思いました。

ネタバレBOX

後半の石飛さんの演技に、何度も、目が潤みました。先日観た「モーツアルト!」とも重なって、親と子の御互いの想いが、ズレて行という、、家族愛の悲劇的な普遍性を、噛み締める作品でした。

挿入歌が、なかなか胸に沁みました。

クリスマス観劇で、ライフ合唱団のおまけもついて、楽しいひと時でした。
くれない博徒

くれない博徒

蜂寅企画

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/12/25 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★

役者力も殺陣も、セットもスケールアップ
蜂寅は、旗揚げ公演からほとんど拝見していますが、観る度、劇団力がアップしているなと実感させて頂いています。

内容的には、「リア王」とか、それをモチーフにした「天保12年のシェークスピア」に想を得たような雰囲気を感じましたが、所々に、中尾さんらしい、独自の気の利いたセリフが配されて、エンタメ作品としても、一定のレベルに到達していたことを嬉しく感じました。

蜂寅お馴染の役者さん達に、それぞれ、華が具わって来たなあと、それも嬉しく思いました。

殺陣が、以前より、迫真度が増して、時代劇としての体裁が整いつつあると実感させて頂きました。

今回のセットは、更に、重厚度が増して、洒落ていて、大変気に入りました。

ネタバレBOX

旗揚げから拝見しているので、もはや身内感覚で、孫の成長に目を細める心境でした。

最初の頃は、中尾さんの脚本は、高水準だったものの、衣装もセットも、役者力もまだ、素人に気が生えた感じで、初々しくもありましたが、今回の舞台は、もう立派に、時代劇劇団を名乗れるプロ集団の作品として拝見できました。

何しろ、役者さんのレベルに、個人差がなく、それぞれが、役を好演されているのが、本当に嬉しく、安心して観られました。

益々、蜂寅の進化が楽しみになりました。

流行りの壁ドン、愉快でした。
星ノ数ホド

星ノ数ホド

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/12/03 (水) ~ 2014/12/21 (日)公演終了

満足度★★★

全てが頭脳ゲーム的
想像していた以上に、頻繁に同じようなシーンが繰り返される芝居で、これは、脚本家も、演出家も、キャストも、観客も、すべての人に頭脳ゲーム的思考を強いられる作品だと感じました。

決して、わかりにくくはないのですが、特に最初のシーンは、あまりにも頻繁に、あらゆる可能性を示唆したセリフのやりとりが何度も繰り返されて、舞台の世界観に浸るような雰囲気にはなれず、もう少し、人間描写を主体に据えた作品であれば、良かったように感じました。

後半になるにつれ、演劇作品としての異彩を放つ構成なだけに、最初のシーンの人工的な技巧がマイナスに感じてしまいます。まるで、最初の方は、役者のワークショップを見学しているような気分になりましたから。

ネタバレBOX

ある日、偶然バーベキュー会場で出会ったローランドとマリアン。

その二人の男女の出会いから、濃密な関係性が生まれるまでの、交際の軌跡が、あらゆる可能性を示唆しながら、徐々に進行して行く構成の、実験劇的演劇作品でした。

後半になるに連れて、本当の二人の行程は、これだったのだろうと観客も予想がつくようになりますが、初めの内は、まるでゲームのように、瞬時にカチッという音を合図に、何度も似て非なるシチュエーションのセリフが繰り返されるので、その場その場での、役者の感情移入も追いつかず、まるで、ワークショップを見せられているような気分で、舞台にのめり込むことができないのが残念でした。

浮気の告白に、男女差が出て、これは結構、現実に即しているなと、笑いました。

セットに関しては、土反さんのご意見に同感です。
新しい祝日

新しい祝日

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2014/11/28 (金) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★

もっと毒を効かせてほしいと欲が出る
前川さんのイキウメにしては、あまり意外性がないのが意外でした。

浜田さんが主役なのは、個人的に嬉しかったのですが…。

いつもの群像劇風な感じではなく、主要キャストが、浜田さんと安井さんのお二人というのは、構成的には新鮮でしたが、それが、逆に、前川風味を抑えてしまったように感じました。

部活のシーンが、長くて、単調なので、もちろん、その単調さが、テーマだったのだろうとは思いつつ、眠くなりました。

ネタバレBOX

相変わらず、セットが気が利いています。

会社で一人残業をする男に、親友だと名乗るピエロ風な男の姿が見え始め、やがて、二人は、会社員の男の半生をタイムスリップして行きます。

男が、学生時代の部活で、一体何部なのかわからない、終始、アップの繰り返しに、疑問を感じながらも、迎合して行く様は、多くの人間の生き方を象徴して、確かに胸が痛むのですが、あまりにも、そのアップの単調な動作が繰り返され、さすがに、途中で、眠気が誘発されました。一人の部員が、嫌気がさして、自殺するのも、前川さんなら、もう少し、ひねりを効かせた描き方ができるのではと、ちょっと残念に思いました。

これなら、他の作家でも容易に描きそうな構図で、イキウメらしからぬ、王道なストーリー展開に、やや物足りなさを感じてしまいました。

最後に、空っぽの箱の山が残り、道化の男は、「もう大丈夫だよな」と男の元を去り行き、一人残された男が、段ボールに書かれた机の側面を、絵合わせゲームのように、重ねて行くラストシーン、あれは、どういう未来を象徴しているのか、私の固い頭では、ちょっと理解でき兼ねました。

惰性に流されて生きて来たことを悟って、明日からの生活に、何か変化があるのか、否や?

何となく、今回は、私の好みから言えば、消化不良なイキウメ。
もっと、毒に満ちて、でもその先に、人間同士の愛情や信頼が見え隠れする、そんないつものイキウメタッチの方が好みです。
十一月新派特別公演

十一月新派特別公演

松竹

新橋演舞場(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/25 (火)公演終了

満足度★★★

勘九郎鶴次郎は時期尚早
「鶴八鶴次郎」は、大好きな作品で、10代の頃から何度となく観ました。

物心ついた頃から、新派の舞台は、招待券で軒並み拝見させて頂いていましたが、あまり新派好きでない私の、これは一番好きな演目でした。

鶴八役は、先代の八重子さんが、最高でした。

鶴次郎は、18代目勘三郎さんの最後のシーンの名演技に泣かされたことが、記憶に新しいところです。

大好きな作品ですから、若い中村屋兄弟が、どう演じて下さるのか、とても楽しみに観に行きました。

七之助さんの鶴八は、初役にしては、及第点だったと思います。
でも、残念ながら、勘九郎さんの鶴次郎は、まだまだでした.

もう少し、年齢を重ねた後の、勘九郎鶴次郎に期待したいと思います。

「京舞」の方は、この日のゲスト女優さんが、勘三郎さんを語るのを観たくないため、失礼して、帰宅しました。

ネタバレBOX

「鶴八鶴次郎」は、男女の恋愛の機微を見事に描いた名作です。

お互いに、幼少の頃から、芸の上での兄妹の関係で、それがいつしか、男女の恋心に変わる鶴八と鶴次郎。でも、二人は、何かと言えば、芸のことで、諍いを重ねてしまいます。

一度は、結婚を誓い合ったのに、鶴次郎の焼きもちから、また喧嘩別れとなり、コンビを解消した鶴八は、大店に嫁ぎ、鶴次郎の方は、酒に溺れて、田舎の小屋で、身を持ち崩してしまいます。

縁あって、再会を果たした二人は、もう一度、共に舞台を務めようとしますが、鶴次郎なりの、鶴八に対する思いやりから、またもや、鶴八に喧嘩を仕掛けて、この共演は、身を結ぶことはありません。

最後の酒屋の場面での、鶴次郎の、新内流しを聞いた時の、心情表現が、この芝居の核だと思いますが、まだまだ、若い勘九郎さんには、この悲しい男心を表現するには、無理があったと思いました。
それに、お父様と違って、勘九郎さんには、好きな人を諦めた経験がないからかもしれません。

いつか、お二人が、更に人生経験を重ねられた後に、再び、この演目を演じて下さる日を楽しみに待ちたいと思いました。
ブロードウェイミュージカル「Once ダブリンの街角で」

ブロードウェイミュージカル「Once ダブリンの街角で」

キョードー東京

EX THEATER ROPPONGI(東京都)

2014/11/27 (木) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★

アイリッシュバーの空気感を満喫
開演前と、幕間に、舞台上のアイリッシュバーが、本当に営業しているのが、心憎い演出。

セットがよくできていて、そのまま、芝居が始まるので、何となく臨場感を持続して、ステージの空気に溶け込めそうな雰囲気が素敵でした。

でも、残念ながら、開幕まで、「撮影禁止」の大きな看板を抱えて係のお姉さんが客席を縦横無尽に歩き回ったり、スーツの緊張しまくった若い男性係員が、SPさながらに、舞台の両サイドから、客席を監視していたり、舞台上のアイリッシュバーの客が、何気なく、セットの椅子に座ると、即座に、係員に注意勧告を受けたりと、出演者が作りたい和やかな空気を遮断してしまうかのような、制作サイドの過剰な気配りに、かなり違和感を感じてしまいました。
せっかく、舞台を解放するような粋な計らいをしているのに、任務遂行に忠実な日本側スタッフの仕事ぶりははっきり言って、空気読めない感満載でした。

舞台が、始まってからの、ステージ進行は、シンプルながら、アイルランドのバーを見事に再現したような、洒落た演出で、大いに楽しめました。

ただ、活気ある1幕に比べて、2幕の終盤は、普通のセリフ劇の趣きになり、楽曲が、バラード調であることも手伝って、やや眠くなる場面もありました。

ネタバレBOX

アイリッシュバーのカウンターの後ろに設えてある鏡が、そのバーの年代を感じさせる汚れ具合で、そこに映る主人公二人のギターやピアノの演奏姿が、実に生き生きと客席に見えるのが、大変効果的でした。

他の出演者も、全員が、楽器演奏も、演技も、ダンスも、歌も、何でもござれの、真のアーテイスト揃いで、日本のミュージカルシーンでは、なかなかお目に掛かれない光景に、本場の層の厚さを痛感しました。

つい先ほどまで、アイリッシュバーだった場所が、たちどころに、ダブリンの街の夜景になった時には、かなり舞台鑑賞が、日常的な私も、ちょっとビックリ。
スタッフの手際の良さに舌を巻きました。

お互いに、心では惹かれあう男女が、それぞれの相手の事情に配慮して、恋心を封印して、相手を気遣いながら、別れを選ぶラストシーンに、心がキュンとなりました。

是非、今度は映画の方も観てみようと思います。
吉良ですが、なにか?

吉良ですが、なにか?

アタリ・パフォーマンス

本多劇場(東京都)

2014/11/21 (金) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

吉良でないですが、なにか?
とタイトル変更した方がいいのでは?と思うくらい、全く、忠臣蔵ものとも吉良上野介とも、無関係この上ないコメディでした。(笑い)

でも、最近、心が疲弊しきっていて、とても重たい芝居は観る気になれないでいましたから、この緩い感じのコメディは、打ってつけの心の処方箋jになったようです。

伊東さんのご子息の孝明さんと、鶴瓶さんのご子息の駿河太郎さんの、愛嬌のある演技に、心がほっこりしました。

安心のキャストで、心行くまで、ただ単に笑いたい方には、おススメ舞台ですが、忠臣蔵との共通性や意外性を求めて、観劇される方は、きっとはぐらかさせて、「だから、何?」となりそうで、あまりおススメはできません。(笑い)

ネタバレBOX

カテコでの、伊藤四朗さんのお話ぶりでは、この芝居、当初は、時代劇の予定だったそうです。

ラサールさんは、大石蔵之介役で、戸田さんは、伊東さん扮する吉良の奥方役の予定だったのだとか。

それがどうしたことか、実際の舞台は、現代の病院の待合室での、吉良家の家族のてんやわんやのお話でした。

吉良家の長女役の馬淵さんの、すぐに切れ気味になるキャリアウーマンぶりが愉快!瀬戸さんの、すぐに、家族や夫をとりなそうとする、気配り次女ぶりに共感。吉良の部下(家来?)役の阿南さんのコメディに不可欠な動作の上手さにニンマリ。戸田さんの名演ぶりは言わずもがな。二人の芸人の遺伝子を嬉しくなる程、体内から放出されて、舞台上で輝く、名優のご子息お二人。
そして、もちろん、伊東四朗さんのご健在ぶり。

脚本の意味は、相変わらず?で、「観終わって何も残らない」を目指す三谷さん流の味わいでしたが、キャストの連携プレイの妙味が嬉しく、大満足の観劇タイムとなりました。
ファースト・デート

ファースト・デート

東宝

シアタークリエ(東京都)

2014/11/22 (土) ~ 2014/12/04 (木)公演終了

満足度★★★★★

愉快痛快ミュージカルを満喫
それほど期待せずに観に行きましたが、このところの、身近な人間の不誠実極まりない行状に、憤怒の感情が渦巻いて、爆発寸前だった私の心の鎮静剤になるような素敵で小粋なミュージカルでした。

つくづく観劇が趣味で良かったと思うこの頃です。

中川さんと新妻さんの初共演は、相性も抜群で、実に新鮮な組み合わせでした。

共演者の演技も歌唱も、そつがなく、舞台構成も演出もお洒落で、ユーモアに溢れ、万人が楽しめるミュージカル作品に仕上がっていました。

最近、心がイラつく人には、おススメです。
あ、それから、男女の機微に疎い方にも。(笑い)

ネタバレBOX

ブラインド・デート(全く面識のない男女の初デート)をする、アーロンとケイシーに、レストランのウエイターの3人だけが、そこに実在する登場人物。
ここに、二人の心の中の声を語る、ケイシーの姉とゲイの友人レジー、アーロンの元カノのアリソンと、彼の親友のゲイブ。この、その場にはいない4人の関係者に見守られて、二人の初デートの様子が、実況中継されるようなスタイルの小粋なミュージカルです。

ポップでコメディタッチでありながら、二人の男女の内面をなかなかリアルに描写して、斬新で小粋な脚本と、的を射た音楽と演出に、終始、和やかな気分で、観劇の楽しみを満喫しました。

新妻さんは、相変わらず、演技も歌唱も達者で、安定感があり、中川さん、今井さん、古川さん、昆さんのコメディセンスには、大いに受けました。

特に、昆さんの踊る、グーグル検索エンジンのダンス(?)には大笑い。

最近の男女は、初対面にも関わらず、相手の素性や過去の醜聞も、容易に検索できてしまう、今の社会情勢の現実を、うまく、笑いの種にしつつ、軽く問題提議しているような、脚本家の構成センスにも、感嘆しました。

客席には、終始、和やかな笑い声が溢れていました。

できれば、もう一度観たくなるくらい、元気を貰える、素敵なステージでした。
モーツァルト!

モーツァルト!

東宝

帝国劇場(東京都)

2014/11/08 (土) ~ 2014/12/24 (水)公演終了

満足度★★★★

初育三郎ウ゛ォルフガング
前回の育三郎さんの公演は見逃していたので、初めて、今回拝見しました。

初演時は、通いまくった「モーツアルト!」でしたが、数年ぶりに拝見して、どこか、出演者に、長期公演にありがちな惰性があるのではと気になりました。

期待した、花總さんのナンネールでしたが、高橋由美子さんの姉の悲哀表現が忘れられず、少し、薄味のナンネールだと感じてしまいました。

アマデの存在感は、相変わらず、この作品の核ですね。

ソニンさんのコンスタンツェは、歌唱力抜群で、安心して観られましたが、彼女の可愛らしさがもう少し露出できたら、良かったかなと思います。

ネタバレBOX

市村さんの復帰公演、まだ少し本調子ではない気がして、心配になる部分もありましたが、健さんの訃報を聞いた矢先でしたので、改めて、市村さんの今後のご活躍を祈念しました。

育三郎さんのウ゛ォルフガングには、そつがないのですが、その分、彼の危うさの演技表現に気迫が足りないようにも感じました。改めて、中川さんのあの役への感情移入を懐かしく思い出してしまいました。

アマデが、ウ゛ォルフガングの腕を刺して、その血で、楽譜を書く場面では、昔も必ず涙しましたが、今回も、胸を打ち、知っていても、動揺してしまいそうになりました。
ブロードウェイから45秒

ブロードウェイから45秒

加藤健一事務所

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/15 (土)公演終了

満足度★★★★

全員善人芝居
出演者も演技力抜群な方ばかり。カトケン事務所公演。大好きなニールサイモンと聞いて、ずっと心待ちしていた公演でした。

ニールサイモンらしい、人情の機微が詰まった素敵な芝居でしたが、どうも、心なし、物足りない気分にならないでもない。

どうしてかなと思ったら、誰もが善人過ぎて、登場人物間に、ほとんど摩擦も葛藤も生じないからかなと思いました。

実際の社会が殺伐とし過ぎているから、せめて、芝居の中でぐらい、こういう緩やかな人情噺に浸りたいという方には、とてもおススメしたい作品でした。

ネタバレBOX

観る前からわかっていたことですが、本当に、出演者全員が、舞台俳優として、実力を兼ね備えている方ばかり結集して、それだけで、大満足な舞台作品でした。

新井さんは、カトケン芝居に欠かせない重鎮役者さんですが、今回も、芝居を愛する素敵なコーヒーショップのオーナーとして、存在感で、観客を魅せて下さいました。

倉本さんのテレビドラマで、俳優デビューされた天宮さんも、台詞や佇まいが、今や舞台俳優として確たる地位を占めている重鎮役者さんに成長されたなあと目を見張ります。

加藤忍さんと佐古さんの、演劇ファン同士の観劇感想会話も楽しく、石田さんや山下さん、田中さんなど、ベテランの心配のない演技にも陶酔しました。

子供の頃、よく拝見していた滝田さんは、最初の内は、声を出すシーンがなく、このままお声を聞けないのかと危ぶんでいたら、後半、意外な展開があり、あのお声を聞くことができて、嬉しくなりました。

舞台を観ている間、ずっと和やかな気持ちになれる佳作だとは思いますが、個人的見解で言えば、もう少し、現実の人間社会のように、ストーリーが起伏に富み、葛藤や諍いもあった上での、ハッピーエンドに帰結する人情劇の方が好みではありました。
黄昏にロマンス ―ロディオンとリダの場合―

黄昏にロマンス ―ロディオンとリダの場合―

(公財)可児市文化芸術振興財団

吉祥寺シアター(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/10 (月)公演終了

満足度★★★★

良い芝居には人が集まるを実感
いやあ、驚きました。実は、このチケット、9月に早々と予約していたというのに、雑事に追われ、発券をコロッと忘れていて、仕方なく、当日券に1時間45分前に並んだのです。そうしたら、私の前に既に12人が並んでいらして、その後も列は果てしなく続くのです。その皆さんの年齢に驚きました。
還暦の私さえまだひよっこと思える程、後期高齢者の方々が杖をついて、列に並んでいるのです。
ある方は、「一度観たけどまた観たくて…」、またある方は「、関西からの上京のついでに、素敵な芝居が観たかったから…」と、同じ関西の方と意気投合して、長時間の待ち時間も苦にならない様子で、観劇を心待ちしていらっしゃる。
観劇前に、こんな素敵な光景を見て、演劇ファンとして、至上の喜びを感じました。

熟年の平さんと渡辺さんのコンビは、カトケン事務所の加藤さん、戸田さんコンビよりは、ドラマチックな展開ではなく、静かに心の交流を深めて行くといった、日常の機微を丁寧に再現される演じ方で、味わい深い舞台でした。

渡辺さんが、ご主人様を亡くされたばかりなことを知っているので、より、胸に響く作品になったのかもしれません。

ネタバレBOX

作品の設定年齢よりは、たぶんご高齢なお二人ですが、それだけに、静かにお互いの心が近づいて行く様を、品よく演じていらっしゃいました。

カトケンの舞台の方が、二人の掛け合いがドラマチックに描かれ、退屈しなかったので、時々、物足りなく思う瞬間もあったのですが、元の脚本が秀逸だし、これからも、様々な組み合わせで、この芝居が上演されたら嬉しく思います。

昔観た、松緑さんと杉村さんのコンビも印象深かったことを懐かしく思い出しました。
SINGIN'IN THE RAIN ~雨に唄えば~

SINGIN'IN THE RAIN ~雨に唄えば~

パルコ・プロデュース

東急シアターオーブ(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

最高のエンタメステージ
昔映画で夢中になった「雨に唄えば」。正直言えば、観る前は不安もありました。

アダム・クーパーがミュージカル俳優なわけではないので、歌唱力や、セリフなどにどの程度の力量があるのかが不明だったからです。

でも、その心配は杞憂でした。映画のイメージを壊すことなく、しかも舞台作品としての魅力も加味されて、本当に看板に偽りなしの、誰もが微笑まずにはいられない、愛すべきミュージカルステージでした。

しかも、カテコで、撮影許可が出るのが嬉しい!

とても、お洒落で心がホッコリする、素敵なショータイムを堪能しました。

個人的に、記念すべき日に、愛する息子と観劇できて、幸せな一夜の思い出ができました。

ネタバレBOX

映画では、劇中劇の映画撮影シーンが、作品の映画シーンと区別がつきにくく、繋がった視覚でしか観られないのですが、この舞台では、映画撮影のシーンは、レトロな雰囲気の当時の映像を再現したような、スクリーンに映し出されるため、雰囲気が伝わって、より愉快なシーンとなりました。

アダム・クーパーの歌は、普通に上手いし、他のキャストは、どなたも実力派アクターばかりで、視覚も聴覚も、心地よく刺激されて、観客としても、ワクワクする公演内容でした。

最後のシーンでは、自然な成り行きで、観客も、登場人物として、舞台に参加できてしまうお洒落な演出にも、嬉しくなりました。

全ての演劇愛好家に観て頂きたくなるステージでした。
扉座イカサマ歴史劇シリーズ第1弾 『おんな武将NAOTORA』

扉座イカサマ歴史劇シリーズ第1弾 『おんな武将NAOTORA』

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2014/10/23 (木) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★

横内脚本の台詞の質感の問題
そうそう、昔から、スーパー歌舞伎などで、横内さんの時代劇をずいぶん拝見してきましたが、大劇場の歌舞伎公演でない時に、漠とした違和感のようなものをどこかに感じていたのです。

その違和感の理由を、今回の観劇で、初めて納得できました。

扉座の皆さんの演技は、押しなべて、実力を感じさせて下さる方が多いし、客演主演の有森さんの居住まいは、当て書きだということもあり、誰よりも魅力的でした。

でもでも、こういう舞台空間での、横内さんの書かれるセリフの洪水には、どうも眠気が誘発されてしまいます。たぶん、どの登場人物も、真っ正直に、心情吐露し過ぎのセリフの山だからではないでしょうか?

ネタバレBOX

イカサマ歴史劇と銘打つだけあって、衣装も、Tシャツを工夫した作りだったりして、歌舞伎のように、純粋時代劇の様相ではありません。

そのこと自体は、とてもいいと思いました。

ですが、セットのない裸舞台で、繰り広げられる横内さんの編み出す時代劇には、何故か、目に見えない背景を想像喚起させてくれるだけの、舞台芸術の求心力が不足していました。だから、自然と眠くなってしまうのだと思うのです。

横内さんご自身が、当パンで、述べていらした、セリフ量の多い芝居への意気込みには、問題なく賛同した私ですが、残念ながら、横内さんが、若き日に傾倒された、つかさんの書くセリフとは、似て非なるものだと感じました。

つかさんの書くセリフには、観客の意表を突くセリフの応酬に、あり得ない程の醍醐味があったのです。

でも、横内戯曲の登場人物の喋るセリフには、何の意外性もありません.
皆が、舞台に出てきては、予定調和のセリフを朗じて、去りゆくの連発。
だから、舞台の進行に前のめりになる高揚感も、推理力も必要なくて、つい睡魔に襲われてしまうのだと思います。

何度か、ウトウトして、置いてきぼりに会いそうなのに、容易に理解できてしまう舞台進行には、残念ながら、舞台芸術の魅力が欠落していたように思います。


劇団員のお母様達の観終わってのご感想、「解り易い芝居だったわね」が、全てを物語っている気がしました。

不条理劇で、あまりにもチンプンカンプンなのも、嫌ですが、ここまで、解り易い芝居も、どうなのかと、ちょっと感じてしまいました。

解り易い芝居=面白い芝居ではないということを、実感した観劇体験でした。
ジャンヌ・ダルク

ジャンヌ・ダルク

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2014/10/07 (火) ~ 2014/10/24 (金)公演終了

満足度★★★★★

あっぱれ初舞台
当初観る予定はなかったのですが、家族が観たいと言うので、行って来ました。

私としては、堀北ジャンヌの印象があまりにも鮮烈だったので、有村さんのジャンヌには、正直それほどの期待感はなかったのですが、脚本にも、演出にも、有村ジャンヌに即した工夫があり、熟練男優陣のまさに助演にも助けられて、お見事な初舞台、初主演舞台を務めていて、あっぱれの出来映えでした。何よりも、意外にも低音の響き渡る有村ジャンヌの発声に驚きました。

傭兵役の堀部さん、尾上さんが、共に好演。

ジャンヌ・ダルク物って、ともすると、キリスト教に精通していない日本人には、わかりにくい作品が多い中、中島さんの脚本は、万国共通、どの宗教理念の人にでも、共感しやすい切り口で、ストーリーを形成しているので、最後まで、気持ちが遊離することなく、舞台に集中することができました。

視覚効果で、戦況を表現したり、戴冠式の重厚感を、照明一つで、表出したり、スタッフ技術の賜物の、舞台芸術を堪能させて頂きました。

ネタバレBOX

オルレアン解放の時の、戦闘場面において、イングランド軍と、フランス軍の戦況が、舞台上で駆け回る軍隊の服の色で、視覚的に、観客に理解させる手腕に感服しました。まるで、運動会の玉入れのよう。だんだんに、フランスのグレイの軍服が、舞台上で増殖して行く様は圧巻で、息を呑む感動がありました。

神の啓示とか、裁判の時の、それぞれの宗教的な思惑とか、キリスト教に詳しくない観客は、取り残されることの多いジャンヌ・ダルクの物語を、中島さんの脚本は、シャルルとジャンヌが、異父兄弟だったという視点で、再構築し、物語の核にしたことで、日本人にも、受け入れやすい、筋立てになっていました。

演出と、脚本構成力に力を借りて、有村さんの初舞台が、見事に花を咲かせた公演だと思います。
鷗外の怪談

鷗外の怪談

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/10/02 (木) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

たらればで、三兎社の一員になりたかった
私と同年代の永井さんは、高校から演劇を始められて、大学時代に二兎社を結成されたのですよね?

その頃、永井さんとお知り合いになれて、私も加えて頂けていたらなんて、たらればの妄想が膨らむぐらい、「永井愛さん健在」の喜びを感じさせて頂ける秀作舞台でした。

たぶん、永井さんて、全くのオリジナルストーリーで勝負されるより、ある程度の史実や実在人物を、永井流にアレンジした芝居に仕立てる方が、劇作の真骨頂を発揮されるタイプの作家なのではと感じました。

大逆事件を扱いながら、こんなに笑える芝居を書けるなんて、凄すぎると思いました。

それに、どの役者さんも、実に生き生きと役を演じていらっしゃる。普段、演技の仕方が苦手な若松さんも、今回初めて、好きだという思いで、賀古鶴所役を演じていらっしゃる若松さんの演技を楽しませて頂けました。

実在の人物と、役者さんが、どこか面差しが似ているのも、一興でした。

芝居で語られるたくさんの書物をどれも読んでみたくなりました。

ネタバレBOX

森鴎外は、私の大好きな作家です。正直そうなところが好きでした。

でも、この芝居を観るまで、こんなに二つの道の狭間で、苦悩して生きた人とは知りませんでした。

鴎外も、荷風も、平出も、鴎外の妻も、母親も、実に生き生きと舞台上で生きて語って、笑わせて、考えさせてくれました。

以前、ドキュメンタリー番組で、かなり詳しく大逆事件の顛末を学んだので、ドクトル大石などの、庶民に優しい愛情を注ぎこんだ人物が、こんな大層な事件を目論んだとはとても思えないし、昨日の韓国の、産経新聞に対する、反民主主義的な行為を考えても、巨大権力による、「作られた真実」の消えない人間社会には、常に、平民は、少ない知恵を駆使して、荒波を泳ぐように、生きて行かなければならない定めかしらと、どこかで落胆しつつも、でも、鴎外や永井さんのような、文学作家達が、苦しみながらも、どこかで、良い知恵を貸して下さることに勇気づけられながら、元気に生き延びて行きたいとも思いました。
炎 アンサンディ

炎 アンサンディ

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2014/09/28 (日) ~ 2014/10/15 (水)公演終了

満足度★★★★

岡本健一さん、圧巻
奇しくも、北海道の大学生が、イスラム国戦闘に参加する寸前に、公安に事情聴取を受けたというニュースを耳にした日にこの芝居を観ました。

いよいよ、日本人にも、中東問題が卑近な出来事になったと衝撃を受けたばかりだっただけに、より心に食い込む芝居として印象深く観劇しました。

役者さんあってこそ、成功した舞台だと感じます。

中でも、岡本健一さんの、「狂演」とも呼べそうな熱演ぶりには、臨場感があり過ぎて、胸が押しつぶされそうでした。

ただ、最終場面の描き方が、急にリアルさが薄れ、演劇的な雰囲気になったのには、若干違和感を感じました。(「レミゼラブル」のラストシーンを彷彿としました)どなたかも指摘されていたように、いきなり、双子の子供達にアウエイ感を感じてしまって…。

中東版のギリシャ悲劇的なストーリー展開。

麻実れいさんの立ち姿が美しく決まって、元宝塚男役トップの面目躍如といった見た目の感動もありました。

ネタバレBOX

ほぼ裸舞台で、時や場所が交錯する割には、今どこのシーンなのかということが如実にわかり、演出の手腕を感じました。

遺書を、双子の子供達に見せることを託された、公証人のエルミルが、何度か繰り返す「確かに、確かに、確かに…」の台詞、この世に、確かなことなんて存在するのか、でも、認めたくなくても、確実に、確かな事実は存在する。そんな作者の思いがこだまするような気がしました。

自分達への愛情がないと感じていた母親の真実にたどり着いた時に、双子が発する慟哭の科白、「1+1は、1」という種明かしは、気が利いた作者の発想だと思いましたが、それ以上に、双子の娘ジャンヌが、どんな計算でも、必ず最後は1に帰結すると、シモンに向かって、計算式を唱え続ける場面が、むしろ、暗示めいて、観客の気持ちを鷲掴みにする効果テキメンでした。

岡本健一さんは、6役全てを、見事に体現され、本当に実力俳優さんになられたなあと感無量の思いがしましたが、特に、最後の役、ニハッドの演技には、戦慄が走りました。

歌いながら、人を殺戮し、その直後に、その死者の表情を激写し、満足げにほくそ笑む…。
どんな戦場写真を目にするよりも、衝撃的な光景として記憶に残りそうです。

二幕で登場した、2体の死体もとてもリアルで、至近距離の席で観ていたので、ずっと、目を逸らしたい思いに駆られました。

頭ではなく、体と目で、いろいろ考えさせられる舞台作品でした。
ミュージカル『ファントム』もう一つの“オペラ座の怪人”

ミュージカル『ファントム』もう一つの“オペラ座の怪人”

梅田芸術劇場

赤坂ACTシアター(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/29 (月)公演終了

満足度★★

とてもプロの演出とは思えず…
城田さんがファントム演じると知らされた時からずっと待ち焦がれていた公演でしたが、心底ガッカリしました。

この作品は、宝塚で2度、大沢さんのファントムで、一度観ていて、その度感動した舞台でした。

以前、城田さんがコンサートで、この楽曲を見事熱唱され、大変期待に胸を膨らませて観劇したのですが、キャストのせいではなく、あまりにも、演出がチープで、セットも、この作品の世界観を壊す作りで、その上、役者の出捌けが、ご都合主義で、ストーリーの流れを分断し、矛盾だらけで…。

随所に、あり得なさ満載の、残念極まりない舞台になっていました。

せっかく、山下リオさんのクリスティーヌの歌唱も良かったのに…。

ネタバレBOX

オペラ座のセットが、無機質な、スチール梯子様の階段をメインにして、それを場転の度に、スタッフがギシギシと動かし、まるで、舞台世界の情感をぶち壊しなことにまずビックリ。

シャンドン伯爵役の日野さんには、当時の伯爵の気風は微塵も感じられず、その上、2階席には、台詞が不明瞭で、何を喋っているのか、全く聞き取れず。

カルロッタのマルシアさんがソロを歌う場面は、オペラ座と言うより、「ジキルとハイド」の娼婦の館風な雰囲気の空間だし、エリックの父である、支配人ゲラールが、息子の本性を危惧して、エリックやクリステーヌを諭すために登場するシーンは、たとえ説得に失敗しても、台詞が終わると、あっさりと、心を残すこともなく、退場するし、どこもかしこも、これが、演劇のプロによる演出舞台とは、俄かに信じ難いシーンの連続でした。

オペラ座の重厚さを、全て体感させてくれと無謀な希望は致しませんが、たとえ簡素なセットであっても、観る側の空想力を刺激するような説得力のある簡易舞台にしてほしかったと思いました。
それでいて、ファントムが、クリステーヌに愛を告白する場面は、夢の中という設定なのか、そこだけ、まるで「真夏の夜の夢」のような幻想的な美しい舞台背景で、それまでの世界観とあまりにもギャップがあり過ぎて、それはそれで、かえって白けました。

アンドリューロイドウエバーの怪人に比べて、人間描写が優れているこの「ファントム」、大好きな作品だっただけに、本当に悔しい思いさえしました。
ファントム(エリック)の造型も、どうかすると、現代の引きこもりニート青年風で、違和感を覚えました。

今まで必ず、涙なしには観られなかった、ゲラールの息子への懺悔のシーン、彼のソロナンバーは、この作品の要なのに、吉田栄作さんの心もとない歌唱につき合わされて、学芸会を見守る保護者のように、ハラハラして、感動どころの騒ぎではありませんでした。

改めて、演出の手腕は、舞台の必須要素だということ、かつての宝塚版、小池修一郎さんの演出は素晴らしいということを痛感させられた舞台でした。
ザ・ヒストリーボーイズ

ザ・ヒストリーボーイズ

シーエイティプロデュース

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/08/29 (金) ~ 2014/09/14 (日)公演終了

満足度★★★

日本での上演の難しさを痛感
興味深い内容、興味深い出演者、スタッフに惹かれて、楽しみにしていた公演でしたが、如何せん、歴史教育を題材にした作品故、自国での上演なら、観客の共通認識があって、当然説明不要の部分が、日本人には、一般的に理解困難な台詞や設定があって、充分理解するには、骨が折れる舞台だと感じました。

また、生徒役のキャストも、見分けがつかないメンバーが若干いたことや、役名と人物認識に時間が掛かったことも、作品世界に同化するのには、悪条件だったように思います。

とは言え、斬新な演出、琴線に触れる台詞、松坂さん、太賀さん、中村さん等、若手キャストの好演もあって、退屈に感じる瞬間は、微塵もありませんでした。

これが、他の教科の話だったら、もう少し、万国共通の教育問題演劇作品として、多くの観客に受け入れられやすい作品になったのかもしれませんが、でも歴史教育をテーマにしているからこその、作品の深さも感じるので、評価は難しいところですね。

イギリスの歴史に精通している方になら、自信を持って、おススメできる佳作舞台だと思います。

ネタバレBOX

大学入試に向けて、正統派の教育をする若いアーウインという教師と、自己流の考え方で、生徒に人生を教えようとする、いろいろな意味で型破りな老教師ヘクターの二人の男性教師と、女性教師のリントット。ここに、学校を経営面と評判でしか測れない校長と8人の男子高校生が加わる12人だけの舞台。

モノトーンの簡素な舞台に、大きくグレーの床が設置してあるのかと思えば、それを生徒達が破って、メモにしたり、答案にしたりで、内心かなりな衝撃を受けました。(笑い)
長く、演劇を観て来ましたが、ここまで、意表をつく演出は初めて観た気がします。

浅野さんの、授業の台詞が、3階席ではちょっと聞き取り辛かったのが、残念。

アーウインが、何かと言えば、口にする、ヘンリー8世のたとえなど、イギリス人には百も承知の歴史事項がたくさん出て来るので、歴史認識があまりない観客向けに、芝居に関連ある事項についての、無料の資料配布などがあれば、内容を理解するのに、役立ったのではないかと思うのですが…。

リントットの言う、何故歴史教師には、女性が少ないかという説には、しごく納得。
結局、歴史は、単細胞の男達が作るものだから…。
そう言われれば、女性が歴史を動かしていれば、もっと、戦争の少ない歴史があり得たのかもと思ってしまいました。

ヘクターが、事故で亡くなった理由が、ちょっとシニカルで、笑えました。ある意味、深い悲哀を感じてしまう。こういう部分も、日本人気質では、理解し難い設定かもしれません。

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