KAEの観てきた!クチコミ一覧

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眠りのともだち

眠りのともだち

イキウメ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2008/02/27 (水) ~ 2008/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

イキウメ初見で、即ファンになりました
昔から、変な夢を観ることでは、人後に落ちない自信があるので、この作品、人事には思えず、見入りました。
サスペンスタッチでありながら、SF的でもあり、夫婦の愛憎劇でもあり、こんなにひとつの作品に、たくさんの魅力を加味できる、前川さんの才能に、一目で、熱狂的ファンになりました。
夫役の浜田さんも、素敵な役者さんで、小劇場にこんなにも愛着を感じることができる劇団が存在したことに、至福の喜びを感じました。

MUSICAL「ザ・ヒットパレード ~ショウと私を愛した夫~」

MUSICAL「ザ・ヒットパレード ~ショウと私を愛した夫~」

ワタナベエンターテインメント

ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)

2007/07/10 (火) ~ 2007/07/31 (火)公演終了

満足度★★★★★

泣きたくなるくらい、懐かしかった
こtれも、再演は観ていないけれど、初演で、感涙にむせんだ舞台です。
子供の頃から、「ザ・ヒットパレード」、毎週観ていたんだもの。
お目にかかったことのある、渡辺晋さん、みささん御夫妻に、お二人の雰囲気がよく似ていたし、聡さん、裕美さんの鈴木コンビの秀作舞台の一つでした。
クレジー・キャッツを、変に物真似させないのも、成功でした。

Angels in America

Angels in America

TPT

ベニサン・ピット(東京都)

2007/03/20 (火) ~ 2007/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

役者魂の宝庫的舞台
途中休憩を挟み、両方観劇。寒かったけれど、椅子は痛かったけれど、その苦痛を払拭する役者さんの熱演に感動しまくりの舞台でした。
中でも、エイズ患者役を、全裸で好演された斉藤直樹さんの熱演には、涙が禁じえませんでした。
エンジェル役を大熱演していた、チョウ・ソンハさんにも、この公演で、初めて注目。
長い観劇体験でも、新しい演劇を目にして、カルチャーショックを受けました。

ミュージカル 『レディ・ベス』

ミュージカル 『レディ・ベス』

東宝

帝国劇場(東京都)

2014/04/11 (金) ~ 2014/05/24 (土)公演終了

満足度★★★★★

天にも昇る気持ち
何しろ、ずっと待ち侘びていた花總さんの主演舞台復帰作、拝見できただけで、夢見心地でした。

花總べス、山崎ロビン、吉沢メアリー、古川フェりぺ、石丸アスカムのキャストスケジュール日でした。

一番目を奪われたのはセットの美しさ。簡易なセットなのにもかかわらず、映像と照明で、その場をそれらしく感じさせるスタッフ技術に息を呑みました。

べスにとっては、敵役の、石川、吉野コンビの見事な息の合い方にも拍手喝采もの。

曲は、難解なものも多く、訳詞があまりはまっていないようにも感じましたが、全体的に、キャストがすこぶるはまり役ばかりで、これは、久しぶりに、リピートしたくなるミュージカルでした。

ネタバレBOX

先日、別の劇場で、「9デイズクイーン」を観たばかりだし、たまたまテレ東の歴史情報番組で、ヘンリー8世の知識を仕入れた矢先だったので、幾らヨーロッパの歴史に疎い私でも、人物関係が容易く理解できて、助かりました。

「9デイズクイーン」の後日譚でもあり、その舞台では、上川さんが演じたロジャー・アスカムを石丸さんと山口さんが演じています。

濡れ衣を着せられ処刑された、悲劇の王妃アン・ブーリン役の和音さんの透き通るような歌声が、わが子べスを見守る亡霊として、慈愛に満ちて、素晴らしい歌唱ぶりでした。

べスを亡き者にしようと画策する、ガーデイナーの禅さんと、シモン・ルナールの吉野さんの名コンビが、相性ピッタリで、歌も、台詞も息の合い方が気持ちいい!二人のデュエットシーンは、極上の一言でした。

ロンドン塔に幽閉されて以降の、花總さんのべスには、気品と威厳が供わり、待ち侘びた甲斐があったと、心が舞い上がる心地でした。

ロビンは、虚構の人物なんでしょうか?これまで観たエリザベス関連の映画や舞台では、知らなかった人物ですが、彼が、どうしてべスの心を射止めたのか、今ひとつ理解できず、二人のラブシーンにはあまり共感できないのですが、育三郎さんよりは、加藤さんの方がこのシーンには向いていそうなので、急遽、加藤ロビンも拝見する予定を立てました。

先日の、テレ東の番組で、ロンドン塔を実際観ただけに、べスが、船着き場に着くシーンが胸に沁みました。幽閉された壁だらけの寒そうな部屋から、ちょうど断頭台が見下ろせるのですね。あの部屋で、精神の異常をきたさずに、しっかりと自分を保つことができたエリザベスは、やはり、偉大な女王になるべき運命だったのだろうと、実感します。
ミリオンダラー・カルテット

ミリオンダラー・カルテット

TBS

東急シアターオーブ(東京都)

2012/09/05 (水) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

陰の名プロデューサーの悲哀に涙
たぶん、日本広しと言えど、こんな気分で、泣きながら、この舞台を観ていたのは、私一人だけかもしれない。

この歴史的一夜の出来事は、私がまだ2歳の冬。ですから、当然、この出来事に個人的思い入れも皆無なら、プレスリーを、当時、テレビ映像で観た以外は、後の3人の歌手のことはほとんど知りません。

では、何故、こんなに、涙が頬を伝うのでしょう?

それは、この作品が、陰の名プロデューサーの悲哀をきちんとドラマ化しているからだと思うのです。

祖父や父や叔父や主人を通して、これまで、たくさんの無名な名プロデューサーのその世界(出版界、演劇界、映画界、音楽界)への愛情と悲哀の歴史を、山ほど見聞して来ました。

先日も、演歌界のゴタゴタのニュースを見たりしました。

だから、この舞台に登場する、サン・レコードのサムが、私には、祖父や父や夫の姿に見えました。何もかも、心の琴線に触れて、涙を堪えることができませんでした。

ロックンロールの上手い下手はよくわからないのですが、キャスト陣、噂に違わず、超一流揃いでした。

もっと、物真似ショー的なステージを想像していたのですが、さにあらず!
本当に、素晴らしい人間ドラマでした。

何だか、宣伝が、画一的で、ロックンロールファンでないと、観る価値がなさそうに感じる宣伝の下手さが、この作品の素晴らしさを一般に伝えていない気がして、非常にもったいないなと思いました。

経済とHの佐藤さんが、現地でご覧になった感想をネットで発表されていて、大絶賛はされていなかったので、逆に、観てみたいと思ったのですが、行って本当に良かった!!劇場も、大変観易くて、素敵でしたし、これは音楽ファンでない方にも、是非おススメしたい舞台でした。

ネタバレBOX

構成が、なかなか巧みでした。

奇跡のセッションの単なる物真似ショー的な、ストーリー性の弱いステージを想像していましたが、全く違います。

細かい部分まで、登場人物の心象表出がしっかりと演出されています。

ところどころで、サムの回想シーンをうまく織り交ぜ、4人のシンガーの代表曲の披露などもあり、エンタメと、人間ドラマの交互の見せ方が上手でした。

プレスリー役のエディーさんの歌唱は、耳に覚えのあるプレスリーにそっくり。ジョニー・キャッシュ役のデレクさん、プレスリーの恋人役の女優さんの歌が抜群!カール役のリーさん、サム役の男優さんの演技の確かさ、ジェリー・リー・クライス役のリーウ゛ァイさんは、演技も、ピアノ捌きも文句のつけようがない、芸達者ぶり。

久しぶりに、質の高い来日ミュージカルに魅了されました。

最後に、サムが育てた歌手が、皆自分から離れて行くことを知らされた彼が、「記念写真を撮ろう!」と提案して、シャッターを切った瞬間、一瞬場内が暗くなり、フラッシュがたかれ、明るくなると、実際の4人の本物の記念写真が壁に映し出され、客席に歓声が沸きあがりました。

何と、感動的な幕切れかと、更に涙で、見えなくなってしまいました。

その後の、カーテンコールでの、ミニコンサートは、往年のファンの方には溜まらないスペシャルサービスのひと時でした。
コペンハーゲン

コペンハーゲン

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2007/03/01 (木) ~ 2007/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

信じられないけど、面白かった!
鵜山さんの大ファンなので、物理学の芝居なんてチンプンカンプンだろうと、予想しつつ、観に行ったら、驚くことに、非常に面白く観られました。
村井さんてやっぱり名優だなと再認識。新井純さんと今井さんと、3人のベテラン役者さんと、名演出家のお陰で、万人受けする芝居になっていて、感嘆しました。

トーチソング・トリロジー

トーチソング・トリロジー

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2006/11/20 (月) ~ 2006/12/07 (木)公演終了

満足度★★★★★

篠井さんの名演に、同じ時間を生きたように共感
橋本さとしさんを観たさに出かけ、思わぬ名舞台に出くわし、帰り道は、篠井さんの大ファンになっていました。
本当に、人間描写が秀逸で、何度涙したことか!
一緒に行った友人が号泣して、劇場の人に追い出されるまで、席を立てない舞台でした。
是非、もう一度再演してほしい舞台の一つです。

ネタバレBOX

木内みどりさんと篠井さんの、母子の葛藤場面が特に秀逸で、何度も泣いてしまいました。
横濱短篇ホテル

横濱短篇ホテル

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2013/04/19 (金) ~ 2013/04/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

小粋で、誰もが楽しめる芝居
どうしようかと迷った末、予約した舞台でしたが、本当に観に行って良かったと嬉しくなる作品でした。

まるで、ニールサイモンの芝居のように、小粋で、アフター5に、中高年カップルが、映画感覚で、気軽に観るのに相応しい感じの作品でした。

マキノさんは、引き出しが多いから、この手の芝居は、お上手だなあと、改めて感心しました。きっと、青年座との相性も抜群だと思います。

あるホテルの1室で起こる短編芝居は、先日も、ある劇場で拝見したことがありますが、その作品に比べて、練り上げられた構成の妙が、気持良い舞台作品でした。

那須さんが退団されてしまった今、椿さんは、私にとって、青年座一、魅力的な女優さんです。何か、あの男前なところが好き!
出番の少なかった、加門さんも、ダンディで素敵!
横堀さんは、軽佻浮薄ならぬ、軽妙洒脱な演技が、相変わらず、魅力的!
香椎さんの、見せる演技には、新鮮な驚きで、先が楽しみな女優さん。
小暮さんから、津田さんへの流れは、キャスティングの妙を感じ、大成功だと思います。
大家さんは、役によって、荷が重いのではと感じさせられることもある役者さんですが、今回は敵役で、はまっていました。
映画監督役の、小豆畑さんには、何故か、養成所時代の8割世界の鈴木雄太さんの演技を思い出させられました。
若いカップルを演じた、須田さんと田上さんも、コンビぶりが、しっくりして、好配役。

とにかく、全編を通じて、マキノさんの作劇センスと、宮田さんの上品な演出のマッチングが絶妙な作品。主要人物二人の役を、お一人の女優さんで通さなかったのも、大成功の要因ではと感じました。

あまり、難しいことを考えたり、現実に即して、嫌な気分になることなく、こうして、気持良く笑える芝居を観られるのは、何よりの幸せです。

特に、「人間観察」の、加門さんと、加茂さんのシーン、すごく好きでした。

青年座のフレンド会員でいて良かったと、心から思いました。(青年座は、全員の役者さんに実力が備わっているので、演技面でも、本当に、安心して観ていられる貴重な劇団だと、再認識しました。)

ネタバレBOX

たぶん、私が、幼少時に、何度か訪れた思い出のホテルが、舞台だと思います。
ホテルのセットがそれらしく、始まりから、好感触の幕あきでした。

女優志望の、ハルコ役の香椎さんは、最初、たどたどしさが残る演技で、おやっと思わせておいて、後半、役柄上、実にリアルな豹変ぶりで、客の目をも釘づけにするお見事な演技力。彼女のハルコの演技に説得力がないと、それ以後の6篇の芝居が全て成り立たなくなる、最重要な役どころを、真摯に演じきられたことに、拍手を惜しみません。

次の場面の「人間観察」では、ハルコの友人のフミヨが、ハルコの名前だけを口にするだけなので、これは、主人公がリレーして行く類の作品かと思いましたが、あにはからんや。
主軸の登場人物である、ハルコと、フミヨの友人関係と、その周囲の人びとが、長年の時の流れの中で、織りなす素敵な小品芝居の結集でした。

近頃の芝居に、珍しく、誰も悪意の人間が登場しないのも、観ていて、心地よい作品です。

最後の、ハルコに対するフミヨの複雑な思いが語られる「ネックレス」には、ある、演劇部が前身の劇団Jの、あのお二人や、今は、劇作家と放送作家の道に分かれた、N社のあのお二人の、才気溢れる、女性演劇人の相互関係を彷彿とさせられたりして、クスッと笑ってしまいました。何となく、劇作で、モデルにされたのではと、感じました。

個人的には、一度離婚したフミヨと洋介が、ひょんなことから復縁に至る「離婚記念日」が、殊の外、おしゃれで、ニールサイモン風な芝居の味わいがあり、素敵でした。だけど、洋介は、ペンション経営はどうしたのか、ちょっと気がかり。そこも、台詞で、ちょろっと教えてほしかった。(笑)

千秋楽でなければ、もう一度、誰かを誘って、観に行きたくなる芝居でした。
八月のラブソング

八月のラブソング

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2013/03/08 (金) ~ 2013/03/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

戸田さんの魅力が、余すところなく発揮される舞台
何もかもが、譬えようもないくらい素敵な素敵な珠玉舞台。

お二人の共演は、「ランフォーユアワイフ」以来の観劇ですが、あの爆笑コメディとは、全く雰囲気の異なる、大人のファンタジーといった趣の、極上の二人芝居でした。

鵜山さんの演出だけあって、舞台装置も、照明も、舞台内容と見事にマッチングして、大人の絵本を見ているような夢の世界のようなラブストーリーでした。

戸田さんの魅力が、最大限生かされている芝居で、同性の私でさえ、うっとりしてしまう素敵さに満ち溢れていました。

私も、死ぬまでに、もう一度、こんな風に心を通わせられる異性に巡り合いたいと痛切に思いました。

ネタバレBOX

ある意味、「セイムタイムネクストイヤー」にも似た、若くない男女の、心の交流を美しく描いた大人のメルヘンのような芝居でした。

二人が出会った8月のたった一月のエピソードが、適度なバランスで、構築された脚本も秀逸なら、それを演じる、加藤さんと戸田さんの、役者としての技量、魅力。簡素で小粋なセットと、照明の美しさ。鵜山演出が冴えわたる舞台は、戸田さんの女優としての魅力を最大限生かす役どころで、歌やダンスのシーンが、より素敵なストーリーの調味料として、大事な要素を加味しています。サーカスでの舞台の様子を戸田さんが再現するシーンの美しさと言ったら、私の60年近い観劇歴の中でも、ベスト10に入る名場面。

戸田さんと加藤さんが、チャールストンなどを楽しげに踊る場面は、何故か無性にこみ上げる感情があり、涙が流れました。

男性の妻と、女性の一人息子の死を語られる場面の、説明過多にならない、程の良さは、秀逸で、だから余計に、涙を誘われます。

戸田さん演じる女性が、同業の夫の愛人に芸を仕込む気持ちを回想して吐露するシーンは、以前、戸田さんが一人芝居で演じた都蝶々さんともダブる部分があり、こういう複雑な女性心理を演じられる、戸田さんの演技力に感服と畏敬の念を感じました。

ずっとずっといつまでも、眺めていたい舞台でした。
華麗なるミュージカル音楽の世界 ガラコンサート2012~サットン・フォスター来日記念スペシャル~

華麗なるミュージカル音楽の世界 ガラコンサート2012~サットン・フォスター来日記念スペシャル~

サンライズプロモーション東京

新国立劇場 中劇場(東京都)

2012/09/15 (土) ~ 2012/09/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

申し訳ないような気分
トニー賞を2度も受賞された、サットン・フォスターさん、皆さん、日本のミュージカルシンガーが口を揃えて、「可愛い!」とおっしゃっていた通り、お人柄も素敵な雰囲気で、日本キャストの中にも自然に溶け込んで、全てに魅力的な女優さんでした。

歌良し、ダンス良し、演技良し、スタイル良し、性格良しで、非の打ち所がない感じ。

他の日本側の出演者も実力派揃いで、日本にいて、こんなチケット代で、堪能させて頂けるなんて、幸せな一夜でした。

ネタバレBOX

サットンさんは、特別枠で、ご出演なのかと思っていたら、普通に、日本キャストと同じ配分で、歌唱曲数も、出演時間も、特別扱いなし。

それを、嫌な顔もせず、真面目に、ステージを務めて下さる姿に、一目でファンになりました。

毎年、トニー賞の授賞式はテレビで観ているので、目の前に、本当にサットンさんがいるだけで感激!夢のようでした。

いつもなら、しゃしゃり出過ぎな俳優さん達も、サットンさんがいるからか、悪目立ちする人もなく、静かに、ミュージカルの名曲を、心ゆくまで、堪能することが出来ました。

サットンさんは、もちろんのこと、いつもより10歳は若返って見えた綜馬さん、
歌がどれもピッタリだったシルビアさん、キュートな昆さんと藤岡さんの微笑ましいデュエット、保坂さん真骨頂の「マンマミーァ」、姿月さんの「レベッカ」、石井さんと彩乃さんの「ウェストサイド」のデュエットなど、見どころ、聞き所満載でした。

玉野さんも、「クラブ7」が終ってすぐの振り付け、ご出演で、大変だったでしょうに、見事に、統一の取れたステージを見せて下さいました。
最後の、サットンさんの「モダン・ミリー」は、日本キャストの上演を観なくて正解だったとつくづく思わされました。英語の歌詞はわからなくても、表情と歌い方で、彼女が如何に演技力が素晴らしい方か、存分に思い知らされた歌唱に息を呑みました。

サットンさん主体の選曲なので、無理もないのですが、最初に、日本のミュージカルファンには、比較的馴染みの少ない、コール・ポーターの曲を集中させた点と、「エニシング・ゴーズ」で、アンサンブルのタップの音がややうるさかった点を除けば、選曲、構成共に、充実した内容だったと思います。

ただ、欲を言えば、綜馬さんと石井さんの「チェス」の女性デュエット曲の選択は、やはり選曲ミスではと感じました。

先日の「ミリオンダラーカルテット」と言い、トニー賞受賞者を3人も、日本にいながらにして拝見できて、何だか申し訳ないような気分です。

そうそう、気になっていたことがあり、演劇ライフを見たら、じゅれさんのご感想で、腑に落ちました。レミゼの「ワンディモア」のアンジョルラスの陰声はどなたかと思っていたら、どうやら姿月さんだったようです。
今思えば、2度と拝聴できないレミゼカンパニーですね。しっかり記憶に留めます。でも、できれば、姿月さんのアンジョルラス、肉眼で観たかった!
(以前、記念公演の余興で拝見した、大浦アンジョの雄姿が未だに忘れられません。)
演劇集団 砂地 『Disk』

演劇集団 砂地 『Disk』

演劇集団 砂地

シアタートラム(東京都)

2013/01/24 (木) ~ 2013/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密かつ秀逸極まる!
今まで観た全ての芝居が陳腐に思えると錯覚してしまう程、まるで上質な翻訳劇のような、味わい高度な作品でした。

人物の一挙手一投足、台詞の一字一句に、目も耳も一瞬たりとも離せない、濃密度の濃い舞台でした。

こういう硬質な演劇を構築できる船岩さんの才気に、衝撃を受けます。だって、私の長男より、年下でいらっしゃるのに…。

途中まで、この作品の観劇には不釣り合いな若い女性のけたたましい笑い声が後ろから聞こえたのですが、後半は、固唾を呑んで凝視していたような気配。彼女に、感想を聞いてみたい気がしました。

これ、外国語に翻訳して、オフブロードウエイとかで上演したら、トニー賞とか取るようなレベルの舞台ではないでしょうか?

ネタバレBOX

開幕前に田中さんがひたすら走るのも、落下物と共に人物が登場するのにも、きちんとした意味合いが理解できて、どこかの誰かさんのマンネリ演出とは雲泥の差を感じました。

カバンや衣類の落下は、対人する人間の心の中に、その人物の存在がドスンと音を立てて、落下するという印象を受けました。

言い争いなどの台詞の応酬に、自然さが溢れ、まるでドキュメンタリーを観ているかのよう。

説明台詞がほとんどないにも関わらず、この登場人物一人一人の心象描写が機目細やかで、彼らのこれまでの人生の呻きが、自分の経験かと錯覚するような、不思議な感覚が走りました。

死んでしまった恋人が、何度も、恋人に向かって「描かないの?」と同じ台詞を口にしますが、観客は、その都度、この主人公の心の内に同化して、疑似体験することで、この繰り返しの台詞が、どんどん重く響く感じがするんです。

兄と妹の関係、二人の両親の関係が、観ている私にまで、伝染し、心が呻くような思いがありました。

他の登場人物達の何気ないような台詞の中にも、たくさん共鳴する部分がありました。

砂地体験は、これで3度目ですが、これだけ、独自性のある息詰まるようなオリジナルを生み出せる船岩さんには、これからも、どんどん、古典をモチーフにしない創作も期待してしまいます。

最後のシーンで、外国にあるという設定の自販機に、伊右衛門らしき、純日本的なペットボトルが見えたのだけが、やや残念でした。

あー、それにしても、田中壮太郎さん、ファンになって10年くらいになりますが、益々好きになりました。

妹役の小瀧さんも、かなりご出演作を拝見していますが、今回が最高!昔観た「ミスターグッドバーを探して」を思い出してしまって、自分には全く経験ないこの女性のトラウマが、己の過去のように感じて、自分も、昔、兄にキスを迫ったような気さえしました。私、一人っ子なのに…。
こんばんは、父さん

こんばんは、父さん

ニ兎社

世田谷パブリックシアター(東京都)

2012/10/26 (金) ~ 2012/11/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

永井さん復活!
ここ何作かの永井さんの新作には、幾分がっかりする部分があったのですが、久々に、永井さんが、誰の思惑にも踊らされず、本当に、書きたい題材を書きたいように作品化された芝居だったように感じました。

3人の配役が素晴らしく、均衡が取れていて、舞台を拝見している間、ずっと気持がワクワクとしてしまいました。

ただ、ひとつ、腑に落ちなかったのは、長い間、行き来がなかった父がどうして、鉄馬の携帯番号を知っていたのだろうかということ。昔から携帯番号を変えていないというのは、この鉄馬の状況では考え辛く、ちょっと虚構的に感じてしまいました。

今回の作品、個人的事情から、溝端さん演じる、闇金の取立て屋の青年に一番感情移入してしまって、複雑な気持ちで観劇したのですが、それでも、この配役の妙と、永井さんの綿密仔細な計算の上に成り立った戯曲の魅力には、心躍る思いがしました。

できれば、また再演してほしい演目でした。

ネタバレBOX

平さんと佐々木さんの父子役が、お二人の雰囲気も似ていることから、違和感がなく、絶妙の配役だと感じました。

お二人とも、舞台上では、落ちぶれた風体ですが、壁の上がった空間で、以前の第一線で活躍していた時代を演じる場面があり、一瞬にして、その勝ち組時代を体現される演技力の巧みさに、感嘆しました。

そして、先日の観劇でも驚いた、溝端さんの舞台役者としての資質に、嬉しさがこみ上げました。スーパーボーイコンテストの結果が出る前に、才気が認められ、人気が出ただけのことはあるのだなと、改めて納得!

ソフト闇金の社員である、山田青年が、ブラック企業なのにも関わらず、必死に店長を目指して、ある意味、奮闘努力する様は、今の自分の心的状況を刺激して、胸が痛くなりました。

終盤、佐藤父子が、亡き母であり、妻である、町工場のおかみさんの一生を語る場面では、彼女の苦悩がやはり胸に沁みます。
登場人物は、男3人なのに、何故か、この薄倖の女性の健気な生き様を、一番、鮮明に観客に想起させるように感じました。

軋んだ階段の上に腰かけ、幼い鉄馬が、職人である父の仕事ぶりを注視していたという配置が、物語の途中で、座る位置が逆になり、階段で父が、かつて自分が座っていた椅子に座る息子に語りかけ、それが、終幕では、やはり、過去の配置に戻ります。

きっと、こういう細部まで、永井さんが計算され尽くして演出されているのでしょう。そういう、意図的な演出が鼻白む場合もありますが、今回の舞台では、名配役が功を奏し、全てが、うまく構成されていたように思えました。

鉄を扱う工場で、息子に鉄馬と命名した父。自分のような下請工場で、息子の人生を終わらせたくないと、私立のエスカレーター学校に進学させ、経済社会でのし上がって行くように、父に人生を決められた息子も、やはりバブル崩壊の中で、投資詐欺に合い、負け組の人生を歩みます。
妻とも離婚し、離れて暮らす、鉄馬の一人息子の名は、勝馬。

でも、これからの日本で、勝馬君も、名前負けする人生を歩むことになるのだろうと思うと、ただただ切なくなるばかりでした。
イーハトーボの劇列車

イーハトーボの劇列車

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2013/10/06 (日) ~ 2013/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

本、演出、キャスト三拍子揃う佳作
あまり期待していなかったのですが、井上さんの戯曲の中でも、かなり出色ではと思う、構成力抜群の芝居でした。

鵜山さんの演出は、押しつけがましさがないのが、気持良い!

こまつ座お得意の、オープニングのキャスト勢揃い場面が、他の演出家の時には、やけに、わざとらしくて、生理的に嫌悪感を感じる場合が多いのですが、何故か鵜山演出だと、スーッと、舞台に導入されて行く感覚になり、不思議です。

宮沢賢治の評伝と賢治作品の登場人物を彷彿とさせる人間達がうまく物語に折り重なり、ユーモアとペーソスのバランスも、絶妙でした。

食の問題、貧困と富裕層の格差、宗教論争等、いろいろなテーマを含有していながら、核がしっかりしていて、散漫にならず、戯曲のお手本になりそうな作品でした。

「あまちゃん」の好演が記憶に新しい木野花さん、ベテランの辻さん、他、キャストの皆さんも、それぞれ、役を楽しく味わい深く造型され、どの場面も、見応え充分でした。

ただ、井上さんは、ハプスブルグ家チックな貴公子然とした佇まいが、賢治の泥臭さを出すには、やや無理があり、作業着とかが、お仕着せ感いっぱいで、全員で舞台に立つ時、一人目立って浮いた印象がありました。
方言でそれらしく見えると思ったのも束の間、2幕の標準語で話す場面では、
品が勝ち過ぎて、賢治らしく見えなくなり、ちょっと違和感を感じてしまいました。以前、映画で賢治を演じられた三上博史さんのイメージが強すぎたのかもしれませんが…。

賢治の作品は、一度も読んだことがないと、今まで思いこんでいましたが、セロを習っていたというシーンになって、子供の頃、絵本がボロボロになるまで読んだ「セロ弾きのゴーシュ」が賢治作品だったことに思い当たり、曰く言い難い感動が胸に去来しました。

井上ひさしさんは、一体、どんな「思い残し切符」を私達に残して下さったのかなあと、最後は、感慨深く、劇場を後にしました。

ネタバレBOX

各場のエピソード構成が、溜息が出る程、気が利いています。

鼻もちならないくせにどこか愛嬌のある、福地第一郎と妹のケイ子役の、石橋さんと松永さんのコンビが最高!この二人、近親相姦までしちゃったそうだけど、何だか、憎めない関係で、たくさん笑わせてもらいました。

下宿屋の未亡人、木野花さんの「星めぐりのうた」の歌い方の可愛らしいこと!
この女将さんを判事にして、繰り広げられる、父親と賢治の宗教論争が、真山青果のコメディ版のような、台詞劇仕立てで、実に愉快でした。
父親役の辻さんの、ベテランの味わいに酔いしれました。

熊撃ちの三十郎の、賢治への思いには、共感し、涙腺が緩み、みのすけさんの車掌が、「思い残し切符」を渡しに、舞台に登場すると、何故か、胸に熱いものが込上げ、終始、心が穏やかに揺さぶられる舞台でした。

「木偶の坊の日蓮」と「強い日蓮」という視点も、興味深いものがありました。
賢治は、強い日蓮は嫌いだったという台詞、井上さんの創作なのでしょうが、妙に納得できました。

子供の頃、画期的な発明として習った記憶のある、エスペラント語を、賢治が教えている場面も、ある意味、目から鱗の情報だらけで、瞠目もの。

もし、、井上さん御自身が、震災後に再演されたなら、最後の場面での、思い残し切符の台詞は、もっと違う内容に改訂されていたに違いないと思いました。

そして、井上さんご自身は、どんな思い残し切符を、車掌さんに託されたのか?

井上さん、山崎豊子さん、やなせたかしさん、岩谷時子さん…改めて、偉大な創作家達を次々と失った喪失感で、胸詰まる思いがしました。
ハンナとハンナ

ハンナとハンナ

TACT/FEST

あうるすぽっと(東京都)

2010/08/14 (土) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい秀作に涙しました
フライヤーから想像した通り、「モジョ・ミキボー」の女の子版的ストーリーでしたが、それ以上に、描かれた世界は哀切な感情を湧き起こす芝居でした。

全くの2人芝居。双子のお2人だからこその、ハーモニーの美しさが随所に光る、期待以上の秀作舞台で、2人の舞台挨拶が終わった後も、拍手は鳴り止まず、再登場したお2人の清々しい笑顔に、心が洗われました。

公演期間が短かったので、是非、また再演してほしい作品です。

それにしても、2人の声の美しさには感動しました。

ネタバレBOX

あの「二人っ子」のマナカナちゃんが、もうこんな素敵な大人の女性になったかと、まず感嘆!実は、お二人の舞台を観るのは初めてでした。

人間性とかでは以前からファンでしたが、こんなに実力を身につけた女優さんに成長されているとは思っていませんでした。

イギリス、マーゲットに在住のイギリス人ハンナと、コソボ難民のハンナの、16歳の同名少女の出会いと別れの物語。

イギリスのハンナは、佳奈ちゃん。キュートな現代少女振りが可愛い!
コソボのハンナは、茉奈ちゃん。コソボで、悲惨な体験をして、どこか陰を引きずっている。
名前は一緒でも、立場や体験が異なる二人は、反目しつつも、ある事件で、心が通じ合い、お互いに、音楽好きで、一緒に楽しく歌って、一気に仲良くなるのに…。

舞台は、素舞台。両側の映像が、観客の理解と想像を助け、効果的。
ほぼ、二人交互の説明台詞で、ストーリーは進みつつ、時々、話の中の人物を演じる形で、進行します。
小道具は、数個の大きさの異なるスーツケースのみ。
簡易な舞台空間が、二人の少女の心の軌跡を、スケール豊に想像させる、秀逸な演出で、プロの演出の醍醐味を味わいました。

二人が、時々歌う歌は、演奏つきもあれば、アカペラの場合もあり、その両方の歌唱とも、大変魅力的でした。
二人の少女の人生の岐路で、歌う、アバの「マンマミーア」の歌詞が、見事、その時の二人の思いと重なり、この曲を聴いて、こんなに涙することになろうとは…。二人の心と声が一体化して、胸を打つ、素晴らしい歌唱でした。

声高でなく、こういう静に、民族の争いや、戦争の悲惨さを、語る作品こそ、本物なんだと、また強く感じて、本当に、見逃さずに済んで良かったと思いました。

佳奈ちゃんは、コメディエンヌとしても、楽しみな女優さんでした。双子のお二人が、キャラクターの違う少女を共に好演され、また楽しみな女優さんをみつけたと嬉しくなりました。(今更ですけれど…)
真田十勇士

真田十勇士

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2013/08/30 (金) ~ 2013/09/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

最高の高揚感で楽日を満喫
台風の中、半年以上も心待ちした舞台故、何も躊躇せず、行ってまいりました。

神のご加護か、往復とも雨には降られず。

キャストも、装置も、見せ方も素晴らしく、大満足!!

台風だと言うのに、満場の客席からは、何度も本気のスタンディングコールが…。

何人か、知らない役者さんもいらしたので、クオリテイを心配したりもしたのですが、全くの杞憂で、私の認識不足でした。特に、倉科カナさんの2変化振りには感服しました。

十勇士それぞれを同じ配分で描くことはせず、必要最小限の登場人物に絞ったのも賢明でした。

馬木也さんファンとしては、十勇士にキャスティングされたら尚嬉しかったのですが…。

それにしても、猿飛佐助の命名理由の説明には、ある意味、驚き!
とてもまことしやかで、信じてしまいそうですが、作り話ですよね?

ネタバレBOX

とてもスタイリッシュな見せ方でした。

十勇士それぞれに、同じ配分で焦点を当てるのでもなく、彼らと幸村の出会いなどに言及することなく、光を当てる登場人物を絞ったことで、ストーリーが散漫になりませんでした。それでいて、殺陣などのシーンは、幸村も含めた10人や、大野兄弟などにも、均一に各人の見せ場をきっちりと作り、男優さん、役者冥利に尽きるだろうなというおいしい場面が全員に用意されているのが、観ていても大変気分爽快でした。

家康に時代劇の重鎮里見さんを配したのも成功の要因です。真田十勇士が主役だと、普通の舞台では、家康は、年配の俳優さんならいいかなんて、間に合わせ的な配役の場合もありますが、今回の舞台、役者さんが全員適任者揃い踏みでした。こういう機目細やかな配役が、舞台を重厚なものにしたと思います。

若い俳優さんが多かったので、殺陣の出来栄えも不安でしたが、皆さん、身のこなしも鮮やかで、感心しました。

「半沢直樹」ばりに、うまく観客騙しをやってのけたり、脚本と演出も、熟練の技。

中島脚本を、宮田さんが演出されたことで、いつもの新感線のようなおふざけシーンや、「シャキーン」という効果音が多用されないのも、じっくり落ち着いてストーリーを堪能できた一因だったかもしれません。

上川さん、馬木也さん、葛山さん、松田さん等、声音がしっかりされている役者さんが多いことも、舞台に箔をつけました。

装置も、工夫が凝らされ、あれだけで、それぞれのシーンに使い回す技術には圧倒されました。

わけあって、十勇士ではなく、9勇士が次々と倒れ、その姿にスポットが当たり、最後に、幸村が、中島みゆきさんの迫力ある歌声の中で、絶命する様は、本当に、目に美しく、演劇のマジックを堪能させて頂きました。
彼らが、舞台に倒れたままで、幕を閉めるのではなく、その後の世の中の解説者として、彼らが復活したのも、ファンには嬉しい心遣いでした。

DVDが発売されるそうですので、楽しみに待つことに致します。
吉例顔見世大歌舞伎

吉例顔見世大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2016/11/01 (火) ~ 2016/11/25 (金)公演終了

満足度★★★★★

ニ左衛門さんの至芸に酔う
成駒屋さんの襲名公演以上に、もう一度、ニ左衛門さんの綱豊卿を拝みたくて、夜の部を観劇しました。

何度も、観た御浜御殿ですが、拝見する度に、綱豊のキャラクターが確立される様に圧倒されます。

それに、本当に、真山青菓の台詞劇の巧みさには、その都度、舌を巻くばかりです。

一時期、歌舞伎役者としての演技がふら付いた感のあった染五郎さんの助右ヱ門も、見事に復活されて、安堵しました。

肝心の、芝翫さんの「盛綱陣屋」の方は、幸四郎さんの台詞が籠り、3階席にまでは明瞭に聞こえなかったのが残念でした。
そのため、周囲の席の方々も、左近君の登場までは、眠くなったと、異口同音に話していました。

成駒屋への掛け声以上に、「高麗屋!」の掛け声が、連発されるのも、ちょっと考え物だと思えてなりません。

ネタバレBOX

口上での、成駒屋さんの3人のお子さんの成長に、目頭が熱くなるばかりでした。

三田寛子さんのアイドル時代からのファンなので、どんなにか、息子達の成長振りに、目を細められているかと思うと、同じ母親として、いろいろな思いが交錯します。

新、橋之助さんには、特に、兄弟の長としての風格があり、本当に、今後のご活躍が楽しみでなりません。

「芝翫奴」は、福之助さんの初日のようでしたが、腰はもう少し、落とした方が良いとは思うものの、若さが溌剌とした舞踊に、大いに元気をもらいました。

お父様のペナルティを、3人の頼もしいご子息が、払拭してくれると、信じています。
DADDY LONG LEGS ダディ・ロング・レッグズ

DADDY LONG LEGS ダディ・ロング・レッグズ

東宝

シアタークリエ(東京都)

2012/09/02 (日) ~ 2012/09/19 (水)公演終了

満足度★★★★★

大人向きの足長おじさん、素敵尽くめ!
小学生で、読みふけり、中学生で再読。アニメ化されたら、子供に託けて夢中で観た、大好きな物語。
それを、ケアードさんがどんな風に、ミュージカル作品として、アレンジされるのかが楽しみで観に行きました。

素敵!佇まいが圧倒的に、素敵な舞台作品になっていました。

奥様の今井麻緒子さんの翻訳、訳詞も素敵でした。ご夫妻で、こういう共同作業ができて、素敵!

井上さんと真綾さんの初共演も、なかなか相性良かったと思いました。

陰に隠れていた演奏者がカテコで、舞台に登場されたら、その中に、林アキラさんがいらしたのも、素敵!

最後の、足長共同基金へのお願いも、素敵な方法で、これなら、自然に募金したくなるなと思いました。

久しぶりに、いろいろ憧れていた少女時代に気持ちがタイムスリップして、ウキウキルンルンで、劇場を後にしました。

秋に再演が決まっている「ジェーン・エア」とセットで観ると、更に、楽しめる要素が強くなりそうな予感がします。

ネタバレBOX

全く、二人だけの登場人物。場転でスタッフさえ出て来ないのが、気が利いていて、お洒落な佇まいの、佳品ミュージカル作品でした。

最初は、ジルーシャ一人の独白から始まり、養護施設の先生の口真似などもするので、こういう風に、ずっと進むのかと、やや落胆したら、井上さんのジャーウ゛ィス登場後は、二人の掛け合いで、進行し、素敵な舞台空間が、演出されていました。

メロディは、やや単調で、印象に残る楽曲は少ないものの、二人の心象描写が丁寧なので、むしろ、ストレートプレイのような雰囲気で、歌詞の1つ1つが、胸に残りました。

ジルーシャが、「知らなかった」と歌う文学や歴史事項を、今の自分は、ほとんど知っていて、「ジェーン・エア」のストーリーもわかっていたのは、観劇の役に立って、余計面白さが加速した感じでした。

ジャーウ゛ィスが、足長おじさんは実は自分だと告白できずに、苦悩して歌う「チャリティ…」の歌は、歌詞が殊の外沁みて、目頭が熱くなりさえしました。

子供の頃は、児童文学としての印象しかなかったのですが、こうして観ると、なかなか社会派の、大人の恋愛模様としても傑作物語なんだなと、溜飲が下がりました。男女の恋の駆け引きとか、教育、政治の問題、身分制度などの社会問題等、台詞の中に、たくさん含蓄を含む言葉が詰まっていました。

いいなあ!ケアードさんの演出!以前、昨日観た芝居の演出家が、ケアードさんを「才能のない演出家」呼ばわりされていましたが、私は、ケアード演出の方が、ずっと才気溢れていると感じます。

できれば、毎日でも観たくなるような、素敵な舞台作品でした。

井上さんの足が、本当に長いのが、これまた素敵!
非常の人 何ぞ非常に ~奇譚 平賀源内と杉田玄白~

非常の人 何ぞ非常に ~奇譚 平賀源内と杉田玄白~

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2013/07/08 (月) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

名作ではないでしょうか
マキノさんの舞台はずいぶん拝見していますが、面白い時とそうでもない時が両極端で、正直、この舞台には、それほど期待していませんでした。

でも、観てビックリ!とても切り口が斬新で、素敵な人間賛歌の作品だったように感じました。

キャストが、これまた秀逸!岡本さんの舞台もかなり拝見していますが、今回の杉田玄白役、私は、最高に好きです。たくさんの役を演じ分ける、篠井さん、奥田さんの演技力も、魅力のひとつ。

特に、篠井さんは、ありとあらゆる脇役を楽しげに演じていらして、こちらまで、嬉しい気持ちになれました。

高校時代、「天下御免」で、平賀源内には興味を持った私ですが、彼の内面の悲劇には、その頃は思い至ることはありませんでした。今回の舞台を観て、改めて、源内の生涯に興味を感じてしまいました。

それにしても、マキノさん、万人受けする劇作の方法を体得された気がします。この作品、杉田玄白や平賀源内のことを何も知らなくても、十分楽しめる作品です。空席があまりにももったいないので、是非、皆さまいらして下さい。
もちろん、蔵之介さんファンには必見舞台間違いなしです。

ネタバレBOX

先人というのは、とかく、その時代には受け入れられないものですが、源内の悲劇的な最期は、観ていてかなり辛い気持ちになりました。

あまりにも天才過ぎて、彼の気持ちに同調する人間がいなかったのだろうとする玄白の言葉が胸に応えました。

長く庇護して来た佐吉を庇って、殺人の身代りを名乗り出る場面で、佐吉を抱きしめる蔵之介さんが、暖かそうに抱いていると思ったら、その後源内が、「佐吉を抱いて、人は暖かいと初めて感じた」というような台詞を言うので、驚きました。蔵之介さん、そこまで、人物の気持ちを体現できる役者さんなんだと改めて、感動!!

源内と玄白をどういう視点で描かれるのかと興味があって、観劇したのですが、ただの年表芝居にはならず、二人の人間関係と、性格の違いに主軸を置き、丁寧に、歴史上の人物を舞台上に蘇らせた、キャスト、スタッフの力量に、演劇の楽しさを満喫できる、見事な名舞台だったと感じました。

素直に笑える要素がふんだんにあった点も、とても嬉しくなる作品でした。

ただ、私は、大学時代、西鶴の書物を読み漁ったので、衆道、男色、蔭間などの言葉の意味はすぐにわかりますが、他の観客にはどうだろう?とちょっと気がかりな部分はありました。
傾く首~モディリアーニの折れた絵筆~

傾く首~モディリアーニの折れた絵筆~

ジャンクション

赤坂RED/THEATER(東京都)

2008/10/25 (土) ~ 2008/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

吉野さんの成長ぶりに感涙
お得意のダンスを封印して、全くミュージカル要素のないストレート・プレイ主演に、ファンとして、非常に心配しながら、劇場に出向きましたが、全くの杞憂で、モディリアニを見事に体現されていて、涙が出ました。
私が企画したCDにご参加頂いた頃は、ほぼ無名に近い役者さんだったのに…。
作品としても、当時の貧乏画家達の生き様を、的確に描写していて、見応えある舞台でした。

ひめゆり

ひめゆり

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2010/07/08 (木) ~ 2010/07/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

これこそ、戦争を語り継ぐべき名作舞台
何度観ても、胸が潰れる思いがします。何度も、同じ場面で、胸が苦しくなります。そして、いつも、ラストシーンで、心に、希望が湧き上がり、人間の逞しさと生きる力に、静謐な感動で、心が満ち溢れ、勇気が湧いて来ます。

もう、5回ぐらい観た舞台ですが、観る度に、これは、長く上演され続けて、未来の子供達にまで、戦争の愚かさや悲惨さや逆境を生き抜く人間の素晴らしさを語り継ぐ使命を全うしてほしい作品だと、強く感じます。

主役のキミちゃんは、亡き本田美奈子さん、島田歌穂さんの名演を拝見しましたが、今回の知念里奈さんも、素晴らしかったです。

客演のミュージカル俳優さんだけでなく、ミュージカル座の若い皆さんが、再演を重ねる毎に、実力ある方々ばかりになって、この劇団の進化にも目を見張りました。

もし、ミュージカル座、食わず嫌いの方がいらしたら、是非、この作品だけでも、一度、騙されたと思って、ご覧になってみて頂きたいと、思うくらいです。

ネタバレBOX

いつも感心するのですが、冒頭から、短いシーンで、沖縄に迫り来る戦禍の嵐を的確に、観る者に伝える演出が見事です。
ほとんど会話のない、ミュージカルで、歌で、登場人物の思いを表現しながら、沖縄戦の様々な事実や悲劇が、たくさんの情報量で、観る者の心に響きます。戦争に教え子を引き込んでしまった教師の苦悩と後悔までもが、きちんと描かれていて、感心します。
説明台詞ではなく、各登場人物の心情表現の中で、それらが表出されて行くので、沖縄の歴史を知らない人間にも、それらの悲しい事実が、実体験の如く、胸に響いて来ます。
この作品を書くに当たって、作者のハマナカさんがどれだけ、歴史を調べられたかは存じませんが、相当の志を持って、取り組まれたことは、この舞台を観れば、感じられます。
知り合いの多いらしい客席の誰もが、息を呑んで見入っているのが、わかりました。
こういう作品こそ、多くの学校などで、是非上演してほしいと痛切に思いました。

ただ、いつも腑に落ちないことが一つだけ。檜山上等兵が、どうして、病院にいるのかが、疑問です。とても元気そうだし、別に怪我とかもしていないように見えるので…。

今回のキャストは、皆さん、ほぼ良かったのですが、婦長役だけは、やや不満がありました。元在籍劇団の癖がまだ抜けず、お一人だけ、歌に感情がこもらず、芝居染みてしまって、残念でした。以前の、鈴木ほのかさんや土居裕子さんの名演が記憶に残っているので、これだけは、とても惜しいと感じられてなりませんでした。

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