KAEの観てきた!クチコミ一覧

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Come Fly Away カム・フライ・アウェイ

Come Fly Away カム・フライ・アウェイ

テレビ朝日

Bunkamuraオーチャードホール(東京都)

2012/07/24 (火) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

至福のひと時
ダンス好きな友人と行きました。

私は、ダンスのことはちっともわからないのですが、とにかく、観てて常に美しさが光っているステージングでした。

磨かれた肉体美の男女のペアの踊りが、一体化して、まるで、1つの肉体のように見えました。

シナトラの往年の名曲に浸りながら、美しいダンスに見とれていたら、夢の世界に誘われて、時々居眠りしてしまったようで、見逃した部分がありそうで、残念でしたが、日本の憂える現状を一時忘れて、まるで、ニューヨークにいるような至福の時間を過ごせて幸せでした。

ネタバレBOX

来日ミュージカルは、時として、向こうでは、まだ養成所クラスレベルのカンパニーだったりで、ガッカリすることも多々あるのですが、これは、一目で、実力あるメンバー揃いだとわかりました。

たった14人のメンバーが、とにかく、目くるめく、踊り続けるだけでも、驚きなのに、そのダンスのテクニックがまた難度高そうなものばかり。動く芸術品という感じでした。

まさかの「ラック・ビー・ア・レディ」の軽快なナンバーから始まり、スペシャルカーテンコールの「マイ・ウエイ」まで、とても贅沢な至福の時を満喫することができました。

最後に、バンドの後ろに輝く、電飾の肖像画のようなシナトラの姿が、シナトラらしさを表出していて、とても感動的でした。子供心に憧れた、ダンデイなシナトラそのものでした。歌声が、加山雄三に似てるとずっと思っているのですが、また今日もそう思いました。

バンド演奏も、プロ中のプロといった感じの方ばかりで、音楽とダンスの融合に、心から酔いしれたひと時でした。
Woo!!man

Woo!!man

LEMON LIVE

紀伊國屋ホール(東京都)

2012/08/02 (木) ~ 2012/08/07 (火)公演終了

満足度★★★★★

嬉し涙が溢れました
とても楽しい芝居でしたが、観客を愚弄しない、真摯で丁寧な、脚本、演出、役者陣の演技に、心から、この舞台を拝見できた幸せを感じて、終盤、涙が溢れて困りました。

まだそれ程、知名度のない劇団のせいか、客席の空席が目立つのが、とてももったいないと思いました。

数年前、大好きな山路さんが客演されたのをきっかけに、この劇団に出会えたので、山路さんにも、改めて、感謝の気持ちでいっぱいです。

それにしても、役者さん、皆さん、演じ分けがお見事!まるで、美味しい鍋料理を堪能した後で、その鍋の残りで、また美味しい雑炊を頂いたような気分。
ありとあらゆる、名人芸が集結した舞台でした。

そうそう、このタイトルも、見終わってから、見ると、実に、上手いと、感心しました。座布団10枚って感じ。

ネタバレBOX

新宿2丁目のオカマバーにいる、レコード会社勤務の息子達と、その息子達の陰の応援を兼ねて、温泉旅館に繰り出した、韓流好きな母親達。
岡田さん、植本さん、きださん、松本さん、岩渕さんは、この息子とその母の二役を担当。

山路さんは、オカマバーの経営者であるヒカルに返済を迫る役目のやくざと、温泉旅館の古参の中居さん。恒吉さんは、オカマバーのヒカルと、温泉旅館を亡くなった母親から受け継いだばかりの若女将。

恒吉さんのヒカルがどうしても、男の子には見えなかった点を除けば、この一人二役の演じ分けが、あまりにも皆さんお上手で、登場される度に、心の中で、何度も拍手喝采してしまいました。

特に、山路さん、植本さん、きださん、松本さんの二役は、絶品ものです。

とにかく、感嘆したのは、オカマバーでは、女装した男性役、旅館の方は、全くの女性役を皆さん演じてるわけですが、同じように、女性の服装をしていても、しっかり、性別を体現される演技力を具えていらして、素晴らしいんです。
旅館の方の山路さんは、まるで、キムラ緑子さん並に、チャーミングで、女性としての和服の所作も、申し分ありませんでした。

松本さんも、スタジオライフに入られた頃から拝見している俳優さんですが、男役もこんなにお上手なことを初めて知りました。

きださんも、お名前は存じ上げていましたが、こんなに、演技派でいらしたとは!桃役の恒吉さんも、可憐で、素敵でした。

植本さん演じる拓也の母が、若女将を慰める場面、大好きでした。私も、あんな風に、他所の娘さんを慰められる人になりたいと憧れさえしました。

たっぷり笑える喜劇なのに、ドタバタにはならず、作品の底にそこはかとなく流れる、人情の匙加減が絶妙で、登場人物全員に好感が持てて、芝居が跳ねて、別れる時間が来てしまうのがとても残念に思えるような、素敵な味わいのあるお芝居でした。

母親達が、皆、スマホの使い方に慣れていない様子も、自然な描き方で、思わず、微笑ましい気持ちになります。

最後に、旅館の若女将が、ヒカルの姉だったとわかる演出も洒落ています。

本当に、何から何まで、演劇好きな私には、ご褒美のように宝がいっぱい詰まった素敵な舞台でした。
「僕と彼の彼女達」

「僕と彼の彼女達」

セロリの会 

「劇」小劇場(東京都)

2012/07/26 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★

話の流れは面白いのですが
どうも、今まで拝見したヒロセさんの作品の中では、まだかなり推敲が必要な未完成さを感じました。

謙介の兄、庄司が、終始一貫、作者の造型した架空人物の域を出ず、そのせいで、庄司を取り巻く女性たちの台詞が、空虚に聞えて仕方がありませんでした。

主人公の謙介役、尾方さんと、この店の従業員役の女優さんが、とても素敵な演技をなさっていたので、もっと作品にリアルさがあれば、ずっと感動的な舞台になったかもしれないと、惜しまれます。

ここで愚痴っても詮無いことですが、後ろのカップルが、楽しくご観劇だったのはいいのですが、出演者以上に、おしゃべりをされて、まるで茶の間でドリフでも観ているかのように、「えー、そうなっちゃうの?」とか、「あら、捨てちゃうの?まずくない?」とか、一々、舞台の進行に感想や驚きを露呈されるので、客席環境が最悪だったこともあり、酷暑の中、わざわざ観に行くことはなかったなと後悔しました。
開幕前のお二人の会話から推察すると、このカップルは、関係者のお知り合いのようでしたので、折あらば、生の舞台を観ている時は、観客は私語は慎むように、お伝え頂けると幸いです。

ネタバレBOX

謙介の兄の元妻と、その友人が登場するまでは、なかなか面白く舞台は進んでいて、あー、やっぱりヒロセさんは作劇がうまいななどと呑気に観ていられたのです。

ところが、謙介の兄、庄司を慕う女が次々立ち現れて、「私が庄司の恋人」と覇権争いをする段になると、突然、芝居が陳腐なものになりました。

庄司の最後の恋人が誰なのか、彼女が登場した途端、読めてしまいましたし、シンデレラのガラスの靴のように、婚約指輪をはめて、ピッタリの女性を彼の恋人と認定しようだなんて、ファンタジーとか不条理劇ならいざ知らず、橋田さんのワタ鬼みたいな雰囲気のこの手の芝居では、白けるばかりです。
だいたい、指輪なんて、同じサイズの人はたくさんいるでしょうに…。(ちなみに、私の母の指輪を叔母達に形見分けした時、ほとんど誰もサイズ直しする必要がありませんでした。あの指輪がピッタリな人間が、7人中2人だけという設定は、あまりにも芝居じみて感じます。)

初めから、もっと徹底したドタバタコメディなら、こういう設定もありですが、途中まで、人情喜劇風に進むので、リアルな筋立てと不協和音を起こしたように感じられました。

舞台に登場しない人物は、役者の演技力で、味付けはされないので、よっぽど作者が血肉を通う描き方をしなければ、魅力的な人物にはなりえません。
庄司の魅力は、この作品の一番主軸になる部分なので、もう少し、熟考して、庄司という人間に、命を吹き込んで頂きたかったなと思いました。

楽日だというのに、遠藤さんが、庄司の名前を間違えたのも、如何なものかと思いました。

全体的に、作者にも、キャストにも、庄司への愛が少なかったような印象でした。(それが証拠に、あれだけ、何ヶ月も行方不明の庄司を恋しくて仕方なかった筈の元恋人達が、最後の彼女に、「彼は末期癌で余命幾許もない」と聞かされても、誰一人、彼の身を案じないんですから。あれには、大変驚きましたが、もっと驚いたのは、後ろでさんざん感想述べてた男性が、この件には全く突っ込み入れなかったこと。たぶん、御同好には楽しめるお芝居なんだと思いました。)
ルドルフ ザ・ラスト・キス

ルドルフ ザ・ラスト・キス

東宝

帝国劇場(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

感謝の気持ちでいっぱい
4回目、そしてマイラスト観劇。

こんなにも、心を揺さぶられたミュージカルは久しぶりでした。

たぶん、「モーツアルト!」(中川バージョン)以来でしょうか。

何度も観ても、どこにも厭きる場面がなく、全ての台詞に深い意味が籠められていて、これ程、完成形の舞台にもなかなかお目に掛かれないと思いました。

最初は、違和感を感じた、坂元ターフェも、どんどん演技が深くなって、進化していました。

竜真知子さんが、ミュージカルの翻訳に携わられるようになって、もう10年くらいになるのでしょうか?

当初は、歌詞が曲に馴染まなかったり、歌いにくそうだったり、聞き取れない部分が多かったりして、やはり、岩谷さんの穴を埋められる訳詞家はいないなあと感じていたのですが、今回の「ルドルフ」の竜さんの訳詞は、素晴らしいと思いました。それもあって、このミュージカルが、より心に沁みるのだと思います。

ネタバレBOX

明日で楽だからか、キャストの皆さんのパワーが炸裂していました。

それが、ちょっとオーバーに感じる部分もあり、ステージの出来栄えとしては、先日ぐらいの匙加減が塩梅いいように感じました。

初見の日は、村井さんのマイクの調子が悪く、雑音が気になったせいで、幕開きすぐの、皇帝と皇太子父子の確執場面が堪能できずにいましたが、その後の観劇では、まずこの場面で、既に涙腺が緩みました。

ルドルフが、「何故ですか?聞こうとしない」と語るように歌い出すシーンは、珠玉の宝石のようなきらめきを感じます。父親と口論して、思わず、皇帝が座っていた椅子に腰を下ろし、はっと我に返る表情に、胸が切なくなります。
いづれ、座る筈だったこの椅子に、もうルドルフが二度と座ることはないと観客は既に知っているから…。

こういう、細かい演出が、心憎いまでに上手なルウ゛ォーさんです。

ターフェが、チェックスを連れて来ようとするマイスナーに向かって、わざと焦らして、チェックスの妄想を掻き立てようと、人心の惑わし方を伝授するシーンは、なるほどねえと、大変勉強になったりしました。

観れば、観る程、良くできていると感嘆しきりのミュージカルでしたが、それだけに、最後の場面のピストルの音が、あまりリアルでなくて、残念でした。
しのぶさんも書いていらっしゃるように、ベットも、何だか形状が残念に思いました。あそこだけは、亜門さんの方が好みだったかもしれません。

ベットが出て来てもいいのですが、もう少し、羽布団ぽいとか、具体性のない形の寝具の方が良かったように思います。
しみじみ日本・乃木大将

しみじみ日本・乃木大将

こまつ座

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2012/07/12 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★

風間さん、お疲れでしょうか?
予備知識なく行ったので、まずこういう設定のお話だったのかと、ちょっと驚きました。

アイデアがいいですね。

縦横無尽な吉田さんの快演ぶりに比べ、主役の風間さんが、お疲れなのか、台詞をとちったり、動きが鈍かったりで、ちょっと心配になりました。

元宝塚の朝海さん、香寿さんには、愉快な見せ場が用意されていて、ファンの方には嬉しい場面だと思いました。

出演者の年齢も高く、題材も題材だけに、還暦間近のこの私が、最年少かと思うような客層には、ちょっと残念感がいっぱいでした。

囃し歌など、ちょっと長過ぎるようにも感じましたが、作者が亡くなってしまったのですから、もっと短くというのは無理な注文ですね。


ネタバレBOX

乃木大将と夫人が退場した後、3頭の馬の中から、6人のベテラン俳優さんが次々と顔出しした時には、ビックリしました。そして、その中に、乃木大将だった風間さんもいらしたから…。してやられたりの快感あり!

馬の前足と後ろ足が、それぞれ、自己主張したり、違う馬と徒党を組んだり、面白おかしく見せながら、徐々に、この芝居の本質に気づかせて行く、井上さんの構成とアイデアに唸ります。

風間さんは、ちょっとお疲れ気味でしたが、その他の役者さんが、それぞれ、楽しげに、役を演じていらして、それを拝見しているだけで、幸せな気持ちになれました。

特に、吉田さん、山崎さん、大石さん、根岸さんが、与野本町から、テイクアウトしたいくらい、素敵な演技を見せて下さいました。

7、千田少尉の報告場面の、朝海さんの児玉源太郎、香寿さんの山県有朋は、宝塚男役様式で演じれらるので、塚ファンの方には、ご馳走場面だったと思います。
9、将軍たちのお茶の会のシーンでも、お二人の宝塚演技は、大ウケします。
朝海さんは、退団されてからの女性役しか存じ上げなかったのですが、意外にも男役の方がキャラ立ちされる方なんだと認識しました。

最初はぞんざいに扱われていた連隊旗が、天皇の分身として、崇められる対象に変容して行く様は、喜劇タッチでありながら、深く考えさせられる問題をたくさん含んでいたように思います。

改めて、こういう難しいテーマを、笑いに転じて、観客に提示できる稀有な劇作家が他界されてしまったことが、心から無念に思えてなりませんでした。
ミュージカル「スリル・ミー」

ミュージカル「スリル・ミー」

ホリプロ

天王洲 銀河劇場(東京都)

2012/07/15 (日) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★

いろいろ戦慄が走るミュージカル
初演を見逃して、すごく後悔したので、今度は、早々とチケットを買いました。

結果的に、初演を見逃して正解だった気がします。

良知さんの「私」と、小西さんの「彼」の組み合わせがとても良くて、私には、ベストコンビに思えたので。

内容的には、犯罪心理学的テーマも内在していて、何だか、光市の母子殺害事件の裁判を傍聴したかのような、気持ちが重く澱む芝居でした。

歌も、あったんだっけ?と思う程、ストーリーが戦慄過ぎて、印象に残りません。まるで、ストレートプレイのようでした。

何度も観たい内容ではありませんが、芝居の構成としては、大変よくできていて、役者の側からすれば、得難い体験ができる良作芝居なのだろうという気はしました。

ネタバレBOX

「女殺し油地獄」を最初に観た時と同じくらい、衝撃的な芝居でした。

ラスコーリニコフ的に、自らを特別に選ばれた人間だと思い込む彼と、彼に傾倒して、彼の意のままに動く同性愛の私の、究極の選択。

光市の事件や、サカキバラセイトや、秋葉原の通り魔や、大津のイジメ自殺事件や…、とにかく、知ってる限りの様々な陰惨な事件とその後の経緯が、脳裏を過ぎり、胸が苦しくなりました。

最後の、「私」の告白は、栗山さんの「グレイに演じろ」という演出が効を奏したのか、如何様にも、受け取れる結末でした。

眼鏡を事件現場に落としたのは、「私」が彼を独り占めするためにわざとやったことだという告白ですが、もしかしたら、それは、「私」の後付けの理由だったかもしれないとか、「私」は、彼の意に添うためだけに、犯行を重ねたのだから、彼が死んだ後では、もう再犯はしなだろうと、仮釈放の判定がなされたのだろうけれど、果して、そうだろうか?
社会に戻ったら、「私」は、また別の誰かに「彼」を求めることはないだろうか?とか、とにかく、芝居を観ながら、いろいろ脳裏を過ぎることが多過ぎて、心身グッタリしてしまいました。

そういう意味では、今日は、楽しいアフタートークに救われました。

四角いセットが、様々な場所に変幻自在に変容し、秀逸でした。

栗山さんは、善人が主人公の芝居より、この手の悪行芝居の演出の方が、お上手なのではないでしょうか?

小西さんの「彼」が、罪もないいたいけな少年を殺す目的で近づいて、革手袋をはめながら、「送ってあげるよ」と囁くように歌う場面が、怖ろしすぎて、悪夢を見そうな程、鮮烈な印象でした。

松田さんの訳は、歌詞も含め、名訳のような気がしましたが、3階席のせいか、所々、聞き取れない部分があったのは残念でした。
組曲『回廊』

組曲『回廊』

空想組曲

OFF OFFシアター(東京都)

2012/07/19 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

やっぱり好きです、この作品世界
前回公演はパスしてしまったのですが、今回、観て、やはりこの劇団は観続けたいと思いました。

「組曲空想」の時より、作品世界に一貫性があって、好きでした。

この劇場の貧相と言っていい舞台で、あんな夢の中のような素敵な舞台空間を具現化してしまえる才能に、恐れ入りました。

最後は、自然に、気持ちの良い涙が流れました。

役者さんも、皆さん、魅力的!ほさかさんが、各人の特性をしっかりと把握された上で、役を造詣されている様子が伝わる作品でした。

これだけ、多種多様な個性的な役者さんがいるのに、お互いの演技を潰さない統一性が保たれていることに、驚きます。

きっと、ほさかさんは、作家としても、演出家としても、才気に満ちている方なのでしょうね。

ネタバレBOX

作家役の中田さんが、とにかく魅力的です。

言うに言われぬあの台詞回しが、絶妙です。

まるで、ドキュメンタリーでも観ているかのよう。全く、演じてる感がないのですもの。

変則短編集ということでしたが、私には、しっかりと1本筋の通った長編のように感じられました。

ミズキとユウジの何年かに1度の逢瀬が、とても魅惑的でした。ユウジ役は、替わる中、ずっとミズキ役を演じる武藤さんの愛らしさが、愛おしくてなりませんでした。

小劇場には、珍しく、見目麗しい男優さんが多くて、より作品世界の素敵な香りが、濃厚になりました。

櫻井さんは、大手の劇場のロミオより、よっぽどロミオらしくて、感激しました。

小玉さんの初登場場面は、確かに彼女の魅力炸裂なのですが、この作品には、やや異色過ぎて、あーいうキャラクター作りは、ちょっとやりすぎではと感じてしまいました。「ドロシー」の時のように、しっとり系で統一しても良かったのでは?バーのシーンの彼女がとても魅惑的なだけに、この感じで通して頂きたかった気がしました。

川田さんは、「1%ラブレター」の思い込みの激しい女性と、「物語のてほどき」の作家の元カノ(たぶん、離婚した妻)の毅然とした女性の情愛を、見事に演じ分けられて、素敵な女優さんだなと惚れ惚れしました。「ファミレス・リベンジ」のアクションも切れが冴え渡っていました。

同じ映画を観た男女が意気投合して語り合うシーンが、個人的に一番好きでした。タイムスリップものが大好きなので、何度も相槌を打ってしまいました。

作家が言う、「SF]の意味にも、大ウケしました。こういうところに、洒落っ気があって、とても作家のセンスを感じます。

ルドルフ ザ・ラスト・キス

ルドルフ ザ・ラスト・キス

東宝

帝国劇場(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

何と崇高な作品か!
3回目にして、やっと全てを堪能して来ました。

1度目は、B席なのに、オペラグラスを忘れ、2度目は、睡眠不足の連れが舟を漕ぐのを阻止するのに、気を取られ、満喫できなくて。

観れば観る程、この作品の完成度に目が眩む気持ちがします。

二人のデュエットが、2回目観劇の日から、今日までずっと頭の中でリフレインしていました。

先日のトークショーで、出演者から、「私もこの舞台を客席から観たい。ルウ゛ォーさんの演出舞台を日本にいて観られる幸せを噛み締めて下さい」という発言がありましたが、本当に、そう思います。

「人形の家」も、かつて出演したことがあるのに、全く理解できていなかった部分が、彼の演出舞台で、全て明白となったのです。

本当に、非の打ち所のない演出!!

台詞やシーンに、一切の無駄がなく、人物の苦悩や心の動きが手に取るようにわかる。
たとえ、歴史を知らなくても、これ程、観客が自分に引き寄せて、舞台を直視できる普遍性を描ききれるなんて、天才的演出だと感嘆しました。

本当は、毎日でも観たいのですが、そうも行かないので、後1回行く予定です。

ネタバレBOX

今日も、トークショー付きでしたが、あえてそれは観ずに帰りました。

あまりにも、井上さん、和音さんが、舞台上の人物になりきって演じていらしたので、素の彼らを観たくなかったから。今日は、ルドルフとしての井上さん、マリーとしての和音さんを、ずっと目に耳に焼き付けて客席を後にしたかったのです。

最近、演劇の将来にも悲観することが多いのですが、こういう、プロの仕事を拝見すると、まだ諦めなくても大丈夫かなと、勇気100倍。

長く演劇を愛してやまない1ファンとして、この舞台を上演して頂けたことに、心から、感謝と敬意を表します。
千に砕け散る空の星

千に砕け散る空の星

ゴーチ・ブラザーズ

シアタートラム(東京都)

2012/07/19 (木) ~ 2012/07/30 (月)公演終了

満足度

絵に描いた家族(餅ならぬ)
大好きな役者さん、中嶋しゅうさんと倉野章子さんの共演が楽しみで、出かけたのですが、名優だけでは、名舞台にはなり得ない見本のような舞台でした。

3人の作家が共作したようですね。私は、共作とか、リレィ戯曲とか、ロボット演劇とかって、邪道な気がして、あまり好きな形態でない上、そういう形態ならば、演出家が、作品としての一貫性を押し出し、1本の筋道をしっかりと定める必要を強く感じるのに、今回の演出には、そういう技量が不足していると思いました。

どうも、5人の兄弟と母親の人間関係の描かれ方が、表層的で、ストーリー重視な偏りを感じました。人物の肉付けが薄っぺらい印象で、まるで、ワークショップを有料で見せられているような舞台でした。

所々、心に引っかかりそうな場面もあるのに、それがそこだけで、ぶちきれて、持続性がないのです。

台詞で語られる登場人物の情報と、役者の見た目にも、落差がありすぎ、描かれている世界を斜めに観ることしかできませんでした。

玄人の仕事ぶりが一番感じられたのは、音響スタッフさんでした。

私の後ろに座っていらした、一般客に迷惑を掛ける演劇記者だか劇評家さんも含め、プロの仕事を見せ付けて下さるのが、中嶋さん、倉野さん、西尾さん、音響さんだけというのが、ちょっと残念でした。

ネタバレBOX

何かの理由で、地球が間もなく消滅するという日、余命幾許もない長男が、最期は家族一緒に過ごしたいと、手術を拒絶し、離れ離れだった兄弟が故郷の、長兄と末子と母親が暮らす家に集まって来ます。

50歳の長兄は、中嶋さん。とても、私より、8歳下には思えません。車椅子で、歩くには杖が必要だったのに、次のシーンでは、支えなしに、母親に体を洗って貰っています。

末っ子のフィリップは14歳。こちらも、演じる牧田さんは、その年齢には見えませんが、まあそれには目を瞑るとして、彼はどうやら、洋服が似合わないくらい太っているらしいのです。台詞で、何度もそう語られます。ですが、牧田さん、むしろガリガリ君です。

表層的な戯曲に、演技力で補完して、人物に、心血を注いでいるのは、中嶋さん、倉野さん、西尾さん。後のキャストは、更に、人物をすっかり、虚構の世界の人に押し込めてしまう俳優さんもいて、絵に描いた餅ならぬ、絵に描いた家族感満載でした。

兄弟間の確執や、母親への愛憎等も、ただストーリーとして作者が考えただけで、血肉の通った人間描写にまでは至らなかったように思います。

翻訳も含め、もっとブラッシュアップが必要な作品だという気がしています。

地球の最期の瞬間に、客電が、一度煌々と点くのも、現実に引き戻されて、白けました。だいたい、兄だけでなく、自分達ももうすぐ、一生を終えるという、覚悟も恐怖も、この作品には欠落してるのですが、まさにそれを露呈したような終幕の印象でした。

中嶋さんの語尾が聞えにくい点、新人の頃から、並々ならぬオーラを感じた古河さんの演技に、やや変な慣れを感じた点も、ちょっと残念に思いました。

倉野さんの素敵な母親ぶりを拝見できたことが、唯一の利点でした。
私(わん)の村から戦争が始まる

私(わん)の村から戦争が始まる

非戦を選ぶ演劇人の会

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2012/07/18 (水) ~ 2012/07/19 (木)公演終了

満足度★★★★

沖縄が身近に感じられることの大切さ
私は、同年代の友人の中では、比較的、ニュースも見て、世の中の動きにも敏感な方だと思うのですが、それでも、沖縄には足を踏み入れたこともなく、時々、ニュースで報道される範囲でしか、沖縄問題を考える便のない人間です。

ですから、こうして、リーディング芝居の形で、目の前に具体的に提示して頂けると、自分の身に摺り寄せて、頭で感じ取ることができて、本当に、行って良かったと思いました。

ちょうど今日、高江のヘリパット建設工事が再開されてしまったそうで、アフタートークで、宮城さんが、解説して下さった、「こういう場合、指示した防衛局は責任を取らず、クレーン車を運転した人だけが、免許停止にされて、責任を被せられることになる」というお話に、先日、ある、助成金をもらっていた演劇団体が、俳優一人に責任を押しつけた構図と全く同様だなと、国という巨大組織も含め、組織というものの、冷徹巧妙な非人情さの様々な具体例に、やるせなさばかりを感じました。

ネタバレBOX

「オスプレイ」という言葉を何故最近になって、急に耳にするようになったのか、理由がわかりました。
ずっと、昔から決められていたのに、先月初めて、沖縄にオスプレイを配備する計画が、住民に知らされたのですね。

TBSで放送した「運命の人」のお陰もあり、大分、沖縄の歴史と現状を理解したようなつもりでいましたが、今日のリーディングで、こんなにも、たくさんのレイプ事件が頻繁に起こっていたことを知り、愕然としました。私が、ニュースで知ったレイプ事件は、たぶん5件ぐらいだったのに。

ベトナム戦争の戦闘稽古のべトコン役を、沖縄住民が務めさせられていたことも初めて知りました。枯葉剤が、確信犯的に、沖縄の地に埋められたことも…。

よくニュースで耳にする普天間基地が、日本軍の既製の地ではなく、住民が収容所に入れられている間に、アメリカが勝手に建設したということも、恥ずかしながら、知らずにいました。
それで、やっと、沖縄返還の時点で、返してもらう筈の土地なんだという認識ができました。
それなら、勝手に取った土地の代償を要求すること自体、無謀な論理なわけですね。

結局、いじめっ子が、「彼とは友達。ただ遊んでいただけ」と言うのと同じで、日本は、アメリカに友達なんて煽てられていても、裏では、完全に下に見られて、日本の住民、特に沖縄住民は、ヒトトしての扱いを受けていないわけですね。
自国の国民を守るべき政府は、いつでもアメリカの言いなり。
なかなか、解決のつかない難題ばかりのこの国の将来を心底憂えるばかりでした。

これからも、この会は、こういう知られざる事実を広く、観客にわかりやすく流布するためにも、ずっと続けて頂きたいと思いますが、ただ、客席に本当に思いを届けたいのなら、出演者は、言葉や台詞をつっかえたり、言い直したりすることなく、ご自分の言葉として体に落としてから、きっちりと発信して頂きたいなと思いました。そうでなければ、ただ一瞬のイベントで終ってしまうと思うので。
今日、客席にいた全員が、帰宅後も、ずっとここで得た知識や、湧き出た思いを、引き摺るような、吸引力のある発信源であって頂けたらと念じました。
ルドルフ ザ・ラスト・キス

ルドルフ ザ・ラスト・キス

東宝

帝国劇場(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

今日はペア券で
(家族が出てる舞台ではないので、観ただけ書きます)

この間、久しぶりに、心底堪能できるミュージカルを観て、でも、オペラグラスを忘れ、一路さんも認識できなかったので、今日は、ペア割りで、おまけにトークショー付きという、嬉しい再度の観劇と相成りました。

今日は、1階で、塩田さんもしっかりと、目に入り、それはちょっと気になりましたが、改めて、デウ゛ット・ルウ゛ォーの演出の素晴らしさを再認識しました。

今日は、ステファニーとマリーの教会の場面が、心に沁みました。

ステファニー役の吉沢さん、四季にいらした女優さんですが、若い頃の有馬稲子さんそっくりで、華がある女優さんで、演技もしっかりとされ、今後のご活躍が楽しみです。

ネタバレBOX

スケートシーンが、本当に、印象的なのですが、今日のトークショーで、わかったのは、井上さん、スケート未経験だったそうです。

普通の稽古の後で、居残りで、スケート場面の猛特訓があったそうで、先日の、パン職人の役と言い、飲み込みの早い役者さんなのだとまた感嘆しました。

ルドルフとマリーのデュエットの額に手を翳す仕草は、稽古の段階で、井上さんが編み出した振りだそうで、そういう稽古逸話から知る、ルウ゛ォーの独特な演出法が、一層興味深く思われました。

難しい歌も、台詞として、感情の流れの中で自然に歌に入って行くので、さして、歌を歌うという意識がなかったと、井上さん、和音さん、共におっしゃっていました。

先日観た友人も「久しぶりに、ストレスを感じないミュージカル。前回は、楽曲は良いのに、話は三流みたいな、二人の感情の流れや時代背景が軽くあしらわれていて、二人の不倫が正当化されて、これでいいのかと疑問が残ったけど、…」と、今回のルドルフ大賛辞のメールを寄越しました。

全国の井上ファンは、絶対見逃しては後悔する舞台だと確信します。
リ・メンバー

リ・メンバー

ジェットラグ

シアターサンモール(東京都)

2012/07/13 (金) ~ 2012/07/17 (火)公演終了

心臓に悪い芝居でした
たまにしかお芝居観ない方には、フィクションとして、面白くご覧になれる作品かもしれないのですが、いろいろ社会の仕組みがわかって来た自分には、戦慄が走る程、怖ろしい芝居でした。

誰にともなく、「私、観に行って大丈夫?」と質問したけど、どなたも「KAEさんには向きません」とお返事下さらなくて、すっかり、フライヤーに騙されて観てしまって、後悔しきりです。

役者さんには、何も不満はないですけどね。

悪夢を見そうで、しばらく安眠できないかも。

ネタバレBOX

詐欺集団グループの、変な仲間意識と、恋愛事情と、自分勝手な犯罪論理が主テーマなのかな?

人を騙すなんて、犯罪だという通念を持っている私には、理解不能な芝居でした。

昔から、山崎豊子さんの小説ファンで、自分も、想像で、詐欺の戯曲を書き掛けたことがあり、だいたい、詐欺の手口は、思った通りでしたが、それでも、慄然としたのは、医者がグルになって、失業者などを精神病と診断して、生活保護を受けさせ、医療費ただを利用して、精神薬をどんどん処方し、それを闇社会に流して、あぶく銭を稼ぐというやり方。

なるほどねえ。いろいろ勉強になりましたが、精神衛生上、よろしくないです。
(汗)

5年前に、自殺した、藤本君は、きっと、今回の大津の中学のイジメ自殺のように、自殺に追い込まれたのかしら?それとも、自殺に見せかけた他殺かな?

詐欺チームが、スポーツ選手のように、円陣を組んで、仲間意識を高めて、カモを騙しに行く場面は、観てて悪寒が走り、気絶しそうな気分になりました。
ガリレイの生涯

ガリレイの生涯

演劇集団円

シアタートラム(東京都)

2012/07/06 (金) ~ 2012/07/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

いろいろ思うところありました
休憩10分挟み、何と、3時間15分。トラムの椅子に座り続けるのは、ちょっと苦痛でしたが、見応えたっぷりの、考えさせられる舞台作品でした。

ガリレイって、シェークスピアと同じ年に生まれたんですね。

知らないことが、多過ぎて、いろいろ勉強になった上、今の日本の現状に示唆に富む台詞も多々あり、是非、橋下さんや野田さん達にも観て頂きたいなと思いました。

まあ、私には、心に響く台詞がたくさんありましたが、彼らには、馬の耳に念仏だろうけど。

あ、それから、余談ですが、カンフェティのチケットで、観劇に出向くと、何故か、受付けで、邪険な扱いを受けたり、ぞんざいな対応をされるのは何故?

昨日、今までのそういう体験は、ほぼカンフェテイチケットの時ばかりだったと気づきました。

業界では、カンフェテイの観客は、本当の演劇愛好者ではないという固定観念でもあるのかしら?業務観劇人ではない、私のような一般観劇人は利用しないと誤解されてるのかしらん?

ネタバレBOX

以前、宗教裁判の様子や、拷問道具の展示を見たことがあるので、科学者として、カトリックの異端者扱いをされる、ガリレイの苦悩が、ありありと想像でき、長い上演時間がさほど苦にならない、展開でした。

ただ、昨日の猿之助さんの「黒塚」同様、長台詞のリズムが耳に心地良く、1幕は不覚にもウトウトして、大事な台詞をずいぶん聞き漏らした気がします。

2幕からは、俄然、ドラマ性が大きくなり、目が離せない舞台展開となり、気持ちも前のめりで、集中できました。

存じ上げない役者さんがほとんどでしたが、やはり、円は、実力ある役者さんが多いなあと痛感しました。高林さんの演技だけが、異質で、ブレヒト劇には不向きな印象でしたが。

来年、文学座でも上演するようですが、私の勘では、円のこの舞台の方がレベルが高いのではと思います。

「真理を知らない者は、愚か者であるが、真理を知りながら、それを偽りだと言う者は、犯罪者だ」という、ガリレイの台詞がありましたが、私も、ここ数年、そういう台詞をぶつけたくなる人間をたくさん見て来たので、大いに共感する部分の多い作品でした。

終幕の、ガリレイとアンドレアの再会、アンドレアと、子供達の会話が、秀逸極まりなく、やはり、ブレヒトって凄い作家なのだなあと、今更、気づかされました。

森さんの演出も、無駄がなく、とても整理された舞台装置等、見せ方のセンスを感じました。「今、まさに取り組むべき作品だと確信し、上演に至りました」とその森さんが書いていらっしゃいますが、本当に、原発の問題など、今の日本の有り様を想起せずにはおれない、重要な命題を内服している名作でした。
七月大歌舞伎

七月大歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2012/07/04 (水) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

やはり観て良かった
昨夜深夜に、戻り券が1枚出て、高いしどうしようと躊躇するも、大英断で、観に行って本当に良かった!

それに、普段の行いが良いせいか、悪天候に見舞われずに済みました。(笑い)

やはり、予期した通り、中車さんには、青果モノが似合います。

遅いスタートなので、中車さんには、青果や、長谷川伸の股旅モノを是非制覇しつつ、歌舞伎役者としての道を精進して頂きたいと思いました。

襲名口上で、一度もつっかえないで、一番堂々としていた、團子君には、本当に感服しました。

浜さんのご出産を喜んでいた母の指輪をして、観劇して来ましたが、お盆になってから、一緒に行けば良かったかなと後悔しました。

あ、そうそう。生で見た、福山さんの祝い幕、なかなか素敵でした。

ネタバレBOX

「将軍江戸を去る」…客席の反応を聞いていたら、ほとんどの方がちんぷんかんぷんのようでした。でも、私は、一部暗記している程、大好きな演目ですので、飛び上がりたい思いで、観ていました。右近さんは、しばらく拝見しない内、台詞回しがおかしくなって、ほとんど聞き取れないのには、閉口しました。意外だったのが、海老蔵さん。きっと、何かのきっかけが、彼を歌舞伎役者として生きて行く腹を括らせたのかと思う程、居住いが、正当歌舞伎役者のそれになっていました。静の役どころを、こんなに上手に演じられるようになられて感無量です。成田屋さん父子の成長ぶりが嬉しい演目でした。
今の為政者達にも、是非こういう芝居を観て、どうあるべきかを考えて頂きたい思いがします。

「口上」…少人数だったせいか、皆さんのお人柄が滲み出て、良い口上でした。大人が皆さん、とちったりする中、團子君だけが堂々としていて、本当に、役者のDNAの素晴らしさを痛感しました。彼の今後が楽しみでなりません。

「黒塚」…踊りが上手な新猿之助さんには、ピッタリな襲名演目でした。ただ、ちょっと最初が長すぎて、老婆の長台詞の間、ウトウトしてしまいました。猿弥さんの踊りが愉快。鬼女になってからの猿之助さんのメイクが、まるでトーテンポールのようだったのは、口上で海老蔵さんが話していたように「ライオンキング」が大好きな猿之助さんだからでしょうか?
昔、先代の黒塚を観た時は、もっと真っ黒なメイクだったけど…。

「楼門五三桐」…猿翁さんをご出演させるのには、絶好の演目でした。これを選んだ方はアイデアマンですね。海老蔵さんは、目にも鮮やかだし、舞台配置もすこぶる良くて、視覚的に、お目出度さが強調されて、客席のご贔屓筋の皆さんが歓喜される空気が心地良くてなりませんでした。
カーテンコールで、歌舞伎ファンが予想だにしなかった、父子のツーショットを観ると、きっと誰もが涙ぐむだろうと思いました。
ルドルフ ザ・ラスト・キス

ルドルフ ザ・ラスト・キス

東宝

帝国劇場(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

亜門演出とは、まるで別物
いやあ、驚きました。

こんな素敵な作品だったとは!

亜門さんの演出舞台は、どうも、男女の3角関係に重きが置かれ、あまり共感しなかったのですが、今回の舞台は、さすが、デウ゛ィッド・ルウ゛ォー演出!

見事に、人間ドラマになっていました。

それにしても、予想通り、井上・和音の黄金コンビが、素晴らしい!

近来稀に見る、3拍子揃ったお二人の組み合わせに、あちこちから、賞賛の声が聞こえていました。
会場で耳にする感想が、こんなにも絶賛ばかりだった体験も久しぶりです。

井上さんの歌う「明日への階段」、もしCDで聴きたいなと思われた方は、彼のソロアルバムより、先月発売の、ミュージカルコンピアルバムを購入される方がお得ですよ。(と、ちょっと、企画、選曲した人間より、宣伝させて頂きます。)帝劇売店で、売っています。井上さんのソロCDと同じ音源ですので。

ネタバレBOX

亜門さんの演出舞台とは、同じ楽曲を使用しているとは思えない程、全く、テーマが異なった作品に感じられました。

亜門さんのでは、単なる皇室の三角関係に主軸を置いた、三文芝居のような印象でしたが、ルウ゛ォー演出では、皇太子ルドルフの苦悩が鮮明になり、マリーとの関係性も、単なる愛人同士の関係ではなく、信頼によって結びついた、崇高な人間同士の深い関係に描かれていたように思います。

二人の、ローラースケートシーンが、とても素敵でした。
マフラーを小道具にしての二人の所作は、まるで、「蝶の道行き」のようでした。日本の古典芸能に造詣が深いルブォーさんは、たぶん、歌舞伎舞踊などの心中モノの所作をモチーフにされたのではないかなと思いました。

隋所に、演出の冴えが感じられ、視覚的に美しい場面が多く、目にも、刺激的な舞台でした。

最後の心中は、亜門さんの舞台では、二人の逃げのように思えたのですが、今回の演出では、生きるために死ぬという解釈が出来ました。

くしゃみの度に、「お大事に!」と受ける台詞が頻繁にあり、それにも、何か深い意味がありそうでしたが、そこは、私には、あまり理解できず、ややしつこく感じられました。

冒頭シーンで、村井さんのマイクの不具合のせいで、雑音が酷かったのと、坂元さんが、野望に長けた首相役には、ややイメージ違いだった点を除けば、大変、満足度の高い舞台でした。
ミュージカル「ひめゆり」

ミュージカル「ひめゆり」

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/10 (火)公演終了

満足度★★

体が嘘をつく人が多すぎた
この公演は、過去に何度も拝見しています。

作品としては、非の打ち所のない、名作だと太鼓判を押せます。

これからも、ずっと上演を続けてほしい演目です。

ただ、ずっと拝見しているだけに、過去のカンパニーとの比較を余儀なくされ、どうしても、ベストメンバーの時の舞台との落差を感じずにはおれない心境でした。

主要メンバーもさることながら、アンサンブルの役者さんが、ただもんぺや軍服に身を包んでいるだけでは、戦時中の人間にはなれないのです。

過去の「ひめゆり」では、台詞のない役のキャストでも、全員が、あの時代の沖縄の人をきちんと体現されていました。

今回のキャストには、そう感じさせて下さるキャストがほとんど見受けられなったのが、残念でなりません。

歌は、皆さん、お上手だっただけに、演技面での、嘘と感じさせない、演技修行を怠らないでほしいと強く思いました。

ネタバレBOX

保坂さんの看護婦長が、一番残念でした。歌い方に癖があり、歴代の中で、一番イメージが合いませんでした。やはり、あの役は、少女達を常に包み込む役柄で演じてほしいと切に思いました。

総じて、演技面で、修行の足りないキャストばかりだったせいか、歌は朗々と歌えるのに、所作が、わざとらしく、演技の段取りが見えてしまう方が多かったように思います。

今後も、上演を続けてほしい作品ですが、常に、演出側も、初心に帰って、誠心誠意、魂を込めて、続けて頂きたい名作舞台です。
短編劇集 vol.2 夏カフェ『夏いろいろ』

短編劇集 vol.2 夏カフェ『夏いろいろ』

劇団桃唄309

RAFT(東京都)

2012/07/05 (木) ~ 2012/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

ちょっと昔の自分に戻れた
劇作家セミナーで、お世話になった長谷さんや、同期メンバーがたくさん関わっていた公演だったせいか、あの頃の、無邪気だった自分に戻れて、少し、幸せな気分になれました。

いつも、とある業務観劇人が、指摘されるように、今日も、定刻に到着している客が、数人の未到着の方のために、待ちぼうけの図がありましたが、カフェ形式だったせいか、待たされることに殺気立つ方はいないようでした。(苦笑)

ただ、ちょっとビックリしたのは、開演時刻を5分以上遅刻された若い女性が、カフェの飲み物を客席で普通に注文していらしたこと。たぶん、彼女が、最後のお客様だった筈なんだけど…。

たった2畳間のスペースで繰り広げられた演劇世界は、なかなか多様で、楽しめました。

Bパートの小林さん、野中さん、山西さん、Aパートの五十嵐さんの演技が、大変印象的でした。

ネタバレBOX

「ヒゲの訪問者」…大好きな飯田こうこさんの愛ある短編で、やはり好きな作風でした。ただ、こういう形態の劇作が初めてだったせいか、空間の使い方に、工夫が足りず、小道具や、人間が、舞台狭しと溢れている印象で、観客側が、演じられる世界に身を委ねられない、閉塞感が残念でした。
小林肇さんは、いつも、どんな芝居においても、誠心誠意演じられる姿に、好感を持ちます。彼の登場が、この作品を一定レベルに押し上げた気がします。

「海へ」…野中さんの表情が自然で、一緒にドライブをしているような気持ちになれました。途中から車に乗り込んでくる、山西さんの飄々とした演技が、一気にこの芝居を面白くしました。
ドライブ、ちょっとあちこち行き過ぎな気もしましたが、昔、人生の初キスをした場所が出て来たりして、個人的に、感傷的になったせいもあり、不覚にも泣きました。(笑い)話の筋は見えていましたが、長谷さんの演出が巧みで、きちんと劇世界の住人になれたひと時でした。

「鳥色の夜を行け」…よく存知上げているおさださんの作品で、きっと、嫌な気持ちで帰る系かなと勝手に想像していたので、意外な感動作でした。(笑い)
「10年ぶり」という台詞が何度も出て来て、そこはカットしても良さそうに思いましたが、二人の男女の関係性と、死んだ男が、上手く描かれて、3人の人物が息をしている作品でした。カラスに纏わる話になってからは、特に、短編小説を読むようで、素敵な終幕場面でした。ただ、このタイトルは、「烏」とだけした方が効果的だったようにも感じます。当パンに、「1匹の烏」とありましたが、烏は「1羽」じゃないのかなとも。

「ずっと待ってる」…後半意表をつく展開もあり、一番好きな作品でした。五十嵐さんが、とにかく魅力的。作者の思惑に乗せられないぞーと頑張ったけど、何度も泣かされてしまいました。
昔から、愛し合っている同士の別離のお話には弱いので。(苦笑)
この頃、亡くなった母の父へのラブレターなどを読む機会が多いため、余計、ウルウルしてしまいました。

全体的に、出演者の技量にバラツキがあるのが、残念でしたが、作品的には、佳作揃いでした。長谷さんは、女優さん選びが、大変お上手な気がします。
ミュージカル『サンセット大通り』

ミュージカル『サンセット大通り』

ホリプロ

赤坂ACTシアター(東京都)

2012/06/16 (土) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★

一縷の望みを掛けたけれど
やはり、期待しなかった以上の、良い意味での期待はずれはありませんでした。

まず、冒頭10分は、観に来るんじゃなかったと本気で後悔しました。

信頼している劇評家が、「正確な歌唱に豊かな表情が加わり、演技面でも成長。」と書かれた田代さんの演技ですが、初体験の私には、それでもまだ演技面に表現不足を感じ、慣れるまで時間を要したことと、字幕が必要だと思う程、歌詞の内容が全く聞き取れず、このままなら、1幕で帰ろうかと思った程でした。

でも、だんだんと、芝居が進行するに連れ、台詞劇部分が多くなると、聞き分けられるようになり、安堵しました。

長い間、待ち望まれた日本初演舞台だったのに、演奏も、お手軽で、音が薄く感じられ、ガッカリしました。

できることなら、ノーマは、麻実れいさん、ジョーは、井上芳雄さん、山本耕史さん、伊礼彼方さんあたりで観たかったと切に思います。

ネタバレBOX

映画は、何度もチャレンジしましたが、冒頭シーンが怖くて、敬遠していました。

でも、かつて、この作品の曲を自分の企画CDに入れたことがあるので、特に、訳詞部分に関しては、かなり興味を抱いて観に行きました。

客サイドからすると、不本意な訳詞でした。ジョーが、2幕冒頭で歌う、表題曲は、原詞は、かなり抽象的です。それをたぶん、説明台詞のように、わかりやすくと心がけての訳詞だったのかもしれませんが、字余りだったりして、音符以上の単語を早口で歌うために、逆に、それが裏目に出て、歌詞が耳に届かないのです。

50歳の往年の大女優ノーマは、たぶん、ミュージカル女優さんは皆さん演じたかった役でしょう。安蘭さんは、大健闘されてはいたと思うのですが、何にしろ、この役を演じるには、まだ若すぎると感じました。

べティ役の彩吹さんも、可愛い声で好演されていますが、22歳には見えません。ノーマとべティの、残酷なまでの年齢の差が出てこそ、この作品の本質が見えると思うので、そういう観点からも、このキャスティングには、難があったと思います。

一番の要は、鈴木綜馬さんの存在でした。ずっと、ノーマを愛し、陰で支えて来た執事の想いが、しっかりと体現されて、終盤の感動を少しだけ頂くことができました。

鈴木裕美さんの演出は、やはり見せ方がお上手で、螺旋階段のセットをうまく動かしながらの、人物の配置が巧みでした。

たとえば、ジョーとべティが、心を通わせるデュエットシーンは、ウエストサイド~のマリアとトニーのようだし、最後のノーマが警察に連行されて行く場面は、「欲望とういう名の電車」のラストシーンを想起させます。

だけど、その粋な演出が生きなかったのは、ラストの演奏の盛り上がりがなく、まるで、周辺住民に配慮した音量のような、音の薄い、拍子抜けな幕切れになって、何とも残念でした。

演技には、目を瞑るとしても、楽曲を聴くことを楽しみにしていたファンは、相当数いた筈ですから。
シレンとラギ

シレンとラギ

劇団☆新感線

青山劇場(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/07/02 (月)公演終了

満足度★★★

マンネリ気味?手抜き感が否めない
殊更、どこがどう悪いという印象はないけれど、昔の新感線には必ずあった、お客を楽しませようという気概が感じられないと言うか、劇団の意気込み不足と言うか、何だか停滞感がいっぱいな空気がありました。

少なくても、中島かずき作品の場合は、ワクワクする高揚感が楽しみでならなかったのに…。

キャスト陣に、輝く宝石の原石的な人材がいなかったのも、ワクワクしない原因かもしれません。

騙し、騙されたり、裏切りや、隠された秘密なども、今や、現実社会の仕組みの方がずっと手が込んでいて、もはや、ストーリー展開に、何の意外性も感じないし…。

味付けが好きで通うレストランの料理がイマイチと思ったら、いつものコックさんがお休みだった的に、何となく、満足感が得られず、とても残念に思いました。

しかし、じゅんさんは、いつでも素晴らしいエンターティナー。役者は常にこうでなきゃというお手本のような方だと感服します。

高橋克実さんの凄みは一見の価値あり。

北村有起哉さんは、配役表見るまで、気づかず、それだけ、役になりきって演じていらしたことに瞠目しました。

ミサギ役の石橋杏奈さんは、演技的にはまだ未知数ながら、清楚で可憐な立ち姿が印象的でした。

お名前はわからないのですが、高田さん演じるモンレイの娘役の女優さんの、度胸のいい艶技には、大いに好感が持てました。また拝見するのが楽しみな女優さんです。

ネタバレBOX

永作さんは、立ち姿とか、やや期待ハズレな部分がありました。

今までの客演女優さんが、かっこ良過ぎたのかしら?

藤原さんは、良くも悪くも、藤原さん。安定しているけれど、意外性がなく、ちょっと物足りない気がしました。

ヒトイヌオの河野まことさんが愛嬌があって好き!

最近、猫ばかり出て来るから、犬が登場すると、それだけで、癒されます。(笑い)

実際の社会の方が、悪巧みも入り組んでいて、怖いから、北と南の策略の攻防にも、大して心が動きませんが、ただ、ちょっとぞっとしたのは、「愛は殺し合い」と、教団のロクダイになったラギが煽動する場面。

実際、現実社会にも、こういう教義が蔓延していそうで、怖い!

いつもなら、疾走感を感じるラストも、何だか、薄味の印象でしたが、ラギがシレンに向かって問う台詞、「それは○○として?○○として?」に対し、シレンが、微笑みながら、「ヒトとして」と返す場面では、ベタなんだけど、ややグッと来ました。
Goodnight

Goodnight

劇団競泳水着

王子小劇場(東京都)

2012/06/22 (金) ~ 2012/07/02 (月)公演終了

満足度★★★

トレンディドラマ+8割世界風味
最近、続けて、拝見している競泳水着さん、今回の作品が、一番、一般大衆向けな味付けでした。

いつも思うのですが、上野さんは、素敵な女優さんに目をつける天才だと感じます。
女性心理の機微をよく体得していらっしゃるのか、自分の若い時代の想いを追体験することが多く、60近い私にも共感できる台詞がたくさんあります。

ただ、今回の作品は、可もなく不可もなくという出来栄えで、やや深みが足りなかったようにも感じました。

難題を話している最中に、ファミマ話が、クローズアップされ過ぎなのも、やや作りこみ過多な印象。

みのり役の黒木さん、堺役の阿久澤さん、演技が大変魅力的でした。岡田あがささんの魅惑には、同性でもクラクラ。
平市郎役の菅野さんのスタンスには、大ウケしました。

それと、これは芝居の内容とは無関係ですが、当パンのスペシャルサンクス欄に、きちんと、上野さんと川村さんのご家族と思われる方のお名前があったのは、大変好感を持ちました。

家族や劇団員の身内でも、お世話になった方には、礼儀を尽すのは、ヒトとしての常識だと思いますから。

あー、それともう一つ、好感を持ったこと!私のような一般観客に対しても、制作の方が、ご丁寧に、「ありがとうございました」とお辞儀をして下さったこと。あまり体験がないので、えらく感激しました。(笑い)

ネタバレBOX

レストランの内装もきっちりとしつらえてあって、見えないキッチンで、料理をする役者さんの演技も、しっかりとしていて、感嘆しました。

ただ、あの椅子席数から考えると、やや食器の数が多過ぎる気はしました。

万里子が、友人のけいに彼氏であった聡志の生活態度を聞いて、けいにそんな彼とは別れろと勧めたと聡志に告白するシーンは、自分にも同じ経験があるだけに、必要以上に共感してしまいました。

けいからの間違ったメールに、嬉々として、現れた、彼女の予備校時代の先生の役どころが、作品に、素敵な膨らみを持たせて、秀逸でした。

ただ、銀行員の語る、職場のストレス話は、やや表層的で、恋愛事情の細やかな筆に比べて、やや陳腐な印象はありました。

それに、一番共感できなかったのは、ファミマに愛を感じる聡志の心情。
私的には、一番愛情とは無縁な世界だもの、ファミマ!(笑い)

あ、でも、ひとつ、すごく共感した台詞がありました。「才能ある人は、続ける義務がある」とかいうような台詞。

これは、私もよくそう思っています。だけど、何故か、私が気に入っているアーティストに限って、引退したりしちゃうのね。昔、四季にいた大矢さんとか、ナイロン100℃にいた京さんとか…。
気に入ったお店やレストランも、すぐなくなってしまうし。

いろいろ、悲しい現実が、頭を過ぎりました。

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