千に砕け散る空の星 公演情報 ゴーチ・ブラザーズ「千に砕け散る空の星」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度

    絵に描いた家族(餅ならぬ)
    大好きな役者さん、中嶋しゅうさんと倉野章子さんの共演が楽しみで、出かけたのですが、名優だけでは、名舞台にはなり得ない見本のような舞台でした。

    3人の作家が共作したようですね。私は、共作とか、リレィ戯曲とか、ロボット演劇とかって、邪道な気がして、あまり好きな形態でない上、そういう形態ならば、演出家が、作品としての一貫性を押し出し、1本の筋道をしっかりと定める必要を強く感じるのに、今回の演出には、そういう技量が不足していると思いました。

    どうも、5人の兄弟と母親の人間関係の描かれ方が、表層的で、ストーリー重視な偏りを感じました。人物の肉付けが薄っぺらい印象で、まるで、ワークショップを有料で見せられているような舞台でした。

    所々、心に引っかかりそうな場面もあるのに、それがそこだけで、ぶちきれて、持続性がないのです。

    台詞で語られる登場人物の情報と、役者の見た目にも、落差がありすぎ、描かれている世界を斜めに観ることしかできませんでした。

    玄人の仕事ぶりが一番感じられたのは、音響スタッフさんでした。

    私の後ろに座っていらした、一般客に迷惑を掛ける演劇記者だか劇評家さんも含め、プロの仕事を見せ付けて下さるのが、中嶋さん、倉野さん、西尾さん、音響さんだけというのが、ちょっと残念でした。

    ネタバレBOX

    何かの理由で、地球が間もなく消滅するという日、余命幾許もない長男が、最期は家族一緒に過ごしたいと、手術を拒絶し、離れ離れだった兄弟が故郷の、長兄と末子と母親が暮らす家に集まって来ます。

    50歳の長兄は、中嶋さん。とても、私より、8歳下には思えません。車椅子で、歩くには杖が必要だったのに、次のシーンでは、支えなしに、母親に体を洗って貰っています。

    末っ子のフィリップは14歳。こちらも、演じる牧田さんは、その年齢には見えませんが、まあそれには目を瞑るとして、彼はどうやら、洋服が似合わないくらい太っているらしいのです。台詞で、何度もそう語られます。ですが、牧田さん、むしろガリガリ君です。

    表層的な戯曲に、演技力で補完して、人物に、心血を注いでいるのは、中嶋さん、倉野さん、西尾さん。後のキャストは、更に、人物をすっかり、虚構の世界の人に押し込めてしまう俳優さんもいて、絵に描いた餅ならぬ、絵に描いた家族感満載でした。

    兄弟間の確執や、母親への愛憎等も、ただストーリーとして作者が考えただけで、血肉の通った人間描写にまでは至らなかったように思います。

    翻訳も含め、もっとブラッシュアップが必要な作品だという気がしています。

    地球の最期の瞬間に、客電が、一度煌々と点くのも、現実に引き戻されて、白けました。だいたい、兄だけでなく、自分達ももうすぐ、一生を終えるという、覚悟も恐怖も、この作品には欠落してるのですが、まさにそれを露呈したような終幕の印象でした。

    中嶋さんの語尾が聞えにくい点、新人の頃から、並々ならぬオーラを感じた古河さんの演技に、やや変な慣れを感じた点も、ちょっと残念に思いました。

    倉野さんの素敵な母親ぶりを拝見できたことが、唯一の利点でした。

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    2012/07/21 21:13

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