土反の観てきた!クチコミ一覧

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ハンスはハイリ~どっちもどっち?!

ハンスはハイリ~どっちもどっち?!

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/11 (日)公演終了

満足度★★★★

枠と回転に捕われた人々
枠から逃れられず、その中を回り続ける人間の滑稽な姿を、アクロバット・ダンス・芝居・歌を用いて象徴的に描いた作品で、洒落たセンスが魅力的でした。

田の字型に4部屋に区切られた回転する装置をメインに展開し、他のセットや小道具も枠と回転がモチーフとなっていてバラエティー豊かな中にも統一感がありました。
高度な身体技能を用いつつもそれを誇示しないでユーモラスに見せるアクロバティックなシーンもあれば、「Hi」「Wao」「Aha」の3つだけで強引に会話したり、暴走するインストラクターによるヨガ教室等、ナンセンスなコントの様なシーンもあり、緩い雰囲気がチャーミングな群舞シーンもあり、引き出しの多さが印象的でした。出演者7人のキャラクターがそれぞれ際立っていて、しかも突如始まる歌が妙に上手いのが楽しかったです。
コミカルな雰囲気が支配的ですが、終盤は音楽と照明回り続ける部屋の中に静かに佇む人達の姿に何とも言えない寂寥感が漂っていて、切なく美しかったです。

舞台下手にDJブースが設えてあって、既成の音源や劇場内で発生している物音をエディットして演奏していたのが、作品のライブ感を高めていて効果的でした。
照明も派手さは無いものの、巧みに視線を誘導してイリュージョンを生み出していて素晴らしかったです。

12階の月/春の祭典

12階の月/春の祭典

Tan*Mon Dan

シアターX(東京都)

2014/05/10 (土) ~ 2014/05/10 (土)公演終了

満足度★★

女達の存在感
遠藤綾野さんの演出・振付による2作品で、どちらも大勢の女性ダンサーが印象に残ったものの、作品としては物足りなさを感じました。

『12階の月』
アマチュアのダンサーを含むアンサンブルをフィーチャーした作品で、アカペラソロの歌から始まり、女性ダンサー達を主体に日常性を感じさせる動きを多く含んだタンツテアター的な作品でした。
頻繁な衣装と曲調の変化とが取り留めの無い印象を与え、クライマックスも無いままあっけなく終わってしまい、中途半端に感じました。
履いていた靴の匂いを嗅いだり、物を食べながら登場したりと、受けを狙った様な小芝居に面白みが感じられず、くどさを感じました。濃いメイクや衣装にもセンスが感じられませんでした。

『春の祭典』
様々な振付家によって名作が生み出されている曲ですが、それらの先行例に勝る魅力が見い出せなくて残念でした。
冒頭は人間以外の生物をイメージさせる動きで、途中からは物語性のある展開となり、女性ソロで終わる構成でした。こちらはプロのダンサー達が踊ったので、振付が複雑で激しく見応えがありましたが、拍は合っていても、音楽のフレーズ感と振付のフレーズ感が合っていない箇所が多く、違和感を覚えました。
作曲家自身の指揮による録音を使用していましたが、演奏も録音も特に優れているとは思えず、あえてこの盤を用いた意図が分かりませんでした。
開演前に炊いたスモークが客席に流れてしまって舞台上にほとんど残っていないというトラブル(?)があったのですが、もしプレ公演でも同じことが起きていたのなら、対策を講じて欲しかったです。

おやすみカフカ

おやすみカフカ

ttu【2017年5月末解散】

STスポット(神奈川県)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/11 (日)公演終了

満足度★★

夢の中へ
カフカの短編や日記をコラージュした作品ですが、一般にイメージされる不条理や皮肉といった要素があまり強く打ち出されていなくて、健康的な雰囲気が漂っていたのが新鮮でした。

眠りに誘う様な暗闇の中での台詞のリレーで始まり、明るくなってからは『掟の門』や『ある学会報告』、『判決』等がある時は演じられ、ある時は語られて展開しました。

特定の単語にアクセントを付けたり、間を空けたりする独特の台詞回しと、パントマイムやダンスによる身体表現が特徴的でしたが、動きに関してはテクストに対してそのまま過ぎて、もっとイメージの飛躍があっても良いと思いました。
意図してのことだとは思いますが、演技のスタイルや衣装が子供っぽくて、作品の内容にあまり合っていない様に感じられました。

チラシに描かれた『掟の門』の漫画、飛行機のフライトを想起させる受付スタッフの格好やアナウンス、薬の説明書を思わせる当日パンフレット等、上演以外の要素にも趣向を凝らしていたのは良かったのですが、様々な手法を用いた演出も含めて、それらが有機的に関連せず、作品としての強度に繋がらないもどかしさを覚えました。

五月花形歌舞伎

五月花形歌舞伎

松竹

明治座(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/26 (月)公演終了

満足度★★★

昼の部鑑賞
若手中心の座組による公演で、3作品とも長過ぎず分かり易い内容でリラックスして楽しめました。

『義経千本桜 鳥居前』
源義経、静御前、佐藤忠信を巡る物語で、隈取や立廻りや狐六法といった歌舞伎ならではの表現が多く盛り込まれていて華やかでした。
平成生まれの若い役者達の演技は、台詞回しの重厚さには物足りなさを感じましたが、フレッシュで勢いがあって良かったです。

『釣女』
狂言を元にした、大名が釣り竿で美しい女性を釣り上げたのを見て太郎冠者も真似ると醜い姿の女性が釣れてしまうという他愛無い話で、ほのぼのとした雰囲気が楽しかったです。
中村亀鶴さんが演ずる醜女の姦しい感じと、それに困り果てる市川染五郎さんが演じる太郎冠者の遣り取りがユーモラスでした。

『邯鄲枕物語 艪清の夢』
金に困っている男が夢の中で金持ちになって逆に困ってしまうというアイロニカルな物語でした。夢の中の世界ではお金に対しての価値観が逆転していて、お金を人にあげたり捨てたりすることが悪であるという設定によって起こる、シュールな展開が可笑しかったです。
現実のシーンから夢のシーンへ移行する時と、また現実に戻る時のセットの変化が楽しかったです。
中村壱太郎さんがタイプの異なる2役を演じ分けていて、どちらの役も魅力的でした。

リメディア

リメディア

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2014/05/03 (土) ~ 2014/05/06 (火)公演終了

満足度★★★

目先の対処
高度な運動能力やバランス感覚を用いたスラップスティックなパフォーマンスでしたが、社会的なメッセージが感じられ、ただ楽しいだけではない奥深さがありました。

下手に音響と照明のオペレーション機材が組み込まれたガラクタのタワーがあり、中央には室内のセットが組まれているのですが、開始10分程度で壁が崩れ落ち、家具が潰れ、天井に吊った照明器具が落ち、セットが全て壊れてしまい、片付ける為に5分の休憩時間にするとのアナウンスがあり、大掛りな撤収パフォーマンスとなりました。
片付くと様々なサイズの黒幕が降りて来て、「ブレヒト幕」の手法を用いた人が消えたり現れたりする様に見えるシークエンスが続く、体が浮き上がってしまう人、水を取り合う人、重力の方向が傾いた世界等が人力だけでアクロバティックに描かれていました。
終盤は舞台上に上演中に散らかされたガラクタをどんどん積み上げ、その山の中から人が顔を出して静かに終わりました。

人が謎の人物に引っ張られていったり、物が崩壊して行く様子が戦争や天災の後をイメージさせたり、人も物も右に傾くシーンでは社会の右傾化を比喩的に表している様に見えたりと、社会の荒廃とそれに対して目先の(=タイトルの「L'immediat」)行動しか取れない人々をシニカルに描いている様に感じました。

BGMもほとんど使われず、照明が暗い場面が多く、静かな時間が多いのが意外でした。一つ一つのシーンが少し長くて、流れが滞り気味に感じられたのが残念でした。

おはなし

おはなし

tamagoPLIN

小劇場B1(東京都)

2014/05/01 (木) ~ 2014/05/04 (日)公演終了

満足度★★★★

言葉・ダンス・音楽
死を扱った内容ながらもシリアスな要素だけでなく狂騒的な陽気さがある作品で、言葉とダンスと生演奏の音楽が等価に扱われたパフォーマンスを通じてイメージの繋がりの豊かさを感じました。

事故で親を亡くし、人と話す気力を失い棺桶の中に引きこもる男が、花札に描かれている花達に出会って話すうちに死を受け入れて立ち直って行く物語で、花の名前や植物の部位名を用いた駄洒落や、「花/話す/離す」「死期/指揮/四季」といった重ね合わせや、花言葉といった言葉の豊かさを活用した台詞が楽しかったり、物悲しかったりと多彩な情感を生み出していました。伝言ゲームや役の入れ換えによる言葉の伝わらなさの表現がユニークでした。

冒頭のユニゾンの歌が繰り返される度にパートが分かれてハーモニーや対旋律となり、それぞれの個性が立ち上がって行くシークエンスが、ラストではユニゾンのダンスが次第にそれぞれの動きに分岐して行く演出で表現されていて(植物が育ち、枝が分かれて行くイメージが感じられました)、冒頭のシーンが最後に繰り返されるという良くあるパターンにひねりが加えられていて見事でした。
前半でスズキ拓朗さんのソロダンスがあり、ダイナミックな動きが気持ち良かったのですが、物語の構成上は取って付けた感がありました。

小劇場B1という会場は基本的に客席がL型に2面になる形状なのですが、それを活かした空間の軸を斜めに取った演出が効果的な遠近法を生み出していました。
唯一舞台上にセットされた物である棺桶や、そこに投影される簡易なプロジェクションマッピングの使い方も良かったです。

脚本・演出・パフォーマンスとも良くて引き込まれましたが、親の死や植物のキャラクター等、前作の『さいあい』と被る要素が多かったのが勿体なかったです。良く言えばカンパニーとしてのスタイルが確立されているということですが、もっと多様な可能性を秘めていると感じられる集団なので、さらなる展開を見せて欲しいと思いました。

ドン・ジョヴァンニ

ドン・ジョヴァンニ

朝日新聞社

東京オペラシティ・コンサートホール:タケミツメモリアル(東京都)

2014/05/01 (木) ~ 2014/05/01 (木)公演終了

満足度★★★★

歌のないオペラ
18世紀の当時、庶民がオペラを楽しむ為に管楽九重奏にアレンジされたハルモニームジークと呼ばれる形態での演奏と狂言のコラボレーションで、和やかで親しみ易い雰囲気でした。

場所を京の都に置き換え、原作から夫婦1組を無くして物語を単純化していて分かり易くなっていました。冒頭は舞台袖で序曲が演奏され、能で上演前に舞台袖で囃子方が演奏するのを彷彿とさせました。原作には無い、少し皮肉の効いたエピローグが加えられていたのも効果的でした。

文体や台詞回しは狂言的でありながらも「パーティー」や「ストーカー」といった外来語や現代口語が多用されていて滑稽な味わいが増していました。
幕を広げてそこに映像を映し出す場面が数回ありましたが、わざわざその様なことをせずに、狂言の形式に則って何も無い素舞台にわずかな小道具のみで全てを表現して欲しいと思いました。

舞台下手に位置する演奏家達はただ演奏するだけではなく、時々芝居にも参加していてお茶目でした。指揮者無しの分、自発性の高い演奏で、ドライブ感があって気持良かったです。カーテンコール後に演奏しながらロビーに現れたのも洒落ていました。

コンサートホールでは残響があり過ぎ、狂言師の声がぼやけた感じになっていたのが残念でした。音楽用のホールよりも劇場で上演した方が適していると思いました。
1回の休憩込みで2時間程度の上演時間だったので、仕事帰りでも行き易い様に開演時刻は18:30ではなく19:00にした方が良いと思いました。

バック・イン・ブラック

バック・イン・ブラック

東葛スポーツ

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2014/04/28 (月) ~ 2014/05/03 (土)公演終了

満足度★★★

オリンピック
様々な映像のコラージュと脱力的な芝居の組み合わせに妙な魅力がある、いつもの作風でしたが、あまり知らない元ネタが多かったせいか今回はあまり楽しめませんでした。

生まれてすぐにコインロッカーに捨てられた4人の女がサングラスにネクタイ・ブレザーのユニフォーム姿でオリンピック会場を舞台に北朝鮮のテロ組織と戦う物語で、AC/DCのライブ映像をメインに映画やテレビの引用が差し込まれる構成でした。
終盤、宮崎吐夢さんが登場してからはストーリーがどうでも良くなる様な怒濤の畳み掛けに圧倒されました。特に片腕を失うというモチーフ繋がりの沢山の映像が立て続けに映し出されるのが印象的でした。

今までの作品に比べて、映像とシンクロしてかなりアバウトなコピーの演技をする場面が少なく、またハードロックの密度の高い音が台詞をマスキングしていて何を言っているのか分かり辛く、更に元ネタを知らないことともあいまって、物語が良く分かりませんでした。

自虐的な要素も入った、社会や演劇業界をディスる台詞がこの劇団の魅力の一つですが、今回はあまり冴えが感じられませんでした。

ガラコンサート & オペラ「電話」

ガラコンサート & オペラ「電話」

MIYAKOUJIアートガーデン

大田区民ホール・アプリコ(東京都)

2014/04/29 (火) ~ 2014/04/29 (火)公演終了

満足度★★★

巧みな構成
ガラコンサートと小さな一幕オペラを組み合わせた公演で、前半と後半に繋がりを持たせた趣向が洒落ていました。

第一部はオペラのアリアや歌曲を並べた名曲プログラムでしたが、ただ歌うのではなく、第二部のオペラに備えてリハーサル室に集う歌手達という設定のコミカルな芝居仕立てとなっていて、第二部で小道具として用いられることになる携帯電話や服が巧みに用いられていました。
劇団四季の『オペラ座の怪人』でファントムを演じている大山大輔さんが、ファントムの歌を少し歌ったのも楽しかったです。

第二部はメノッティ作曲のオペラ『電話』で、携帯電話を床に環状に大量に並べた中で上演されました。本来出演者は2人だけなのですが、默役としてもう1人が舞台上手の壁で仕切られたスペースにいて、配達屋や電話の相手に姿を変えながら演じていて、良いアクセントになっていました。日本語訳での上演で、現代にそぐわない設定の部分は表現を変えていたので、分かり易かったです。

日本のオペラ演出家ににありがちな、不必要な小芝居や子供っぽい可愛らしさの表現が気になる場面もありましたが、ユーモアに富んだ演技・演出で楽しめました。オペラ歌手と違って演技をする機会はあまり無いと思われるピアニストの吉田貴至さんの演技がとても良かったです。

迷迷Q

迷迷Q

Q

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/04/24 (木) ~ 2014/05/01 (木)公演終了

満足度★★★

人間と動物
人間の動物的本能である食欲・排泄欲・性欲を女性ならではの視点で生々しく描いた、アクの強い作品でした。

人間と動物の肉体的な交わりが特別なものとせずに描かれた物語で、犬の役でも特に犬らしい格好をせず、人間と動物を同じ様に表現していたのが印象的でした。
会話はほとんどなく、長めのモノローグが入れ替わり続き、終盤は映像が多用される構成で、映像の中で繰り広げられるスピリチュアル系女子達のホームパーティーの場面だけが賑やかで空々しい会話が行われるのが際立っていました。

性と排泄にまつわる単語が連発される内容でしたが、漫画的にデフォルメされて可愛らしい雰囲気を感じさせる台詞回しと身体表現によって、表現が過度に生々しくなり過ぎず、露悪的な下品さが無かったのが良かったです。
3つのミラーボールやハンドマイクや何度も流れる同じ曲に必然性が感じられず、あまり効果的に使われていない様に感じました。

4人の役者がチャーミングで、際どい内容とは対比的なとぼけた雰囲気があり、独特の味わいを生み出していました。

ニューオーダー

ニューオーダー

かもめマシーン

北品川フリースペース楽間(東京都)

2014/04/25 (金) ~ 2014/04/29 (火)公演終了

満足度★★

土地を巡る儀式
土地について自身との関係を描いた作品で、テーマやそれを描く手法に現代性を感じ、考えさせられる所はあったものの、距離感を感じてしまって入り込めませんでした。

客は入場の際に会場内にある物で気になる物の名前を紙に書き、その物に貼る様に促され、主宰の萩原さんの話しから始まり、役者4人がスーツケースを引いて現れ、役柄ではなく本人として舞台として話して出身地までの距離を書いた紙を置いてた後、以前は浄水場であった現在の新宿西口エリアを舞台にした2人の幼馴染みの女性と猫の物語が展開しました。
途中で新宿西口エリアにまつわる単語を記した紙を貼って行った後、全ての貼り紙を剥がして中央に集めて上から土を掛け、萩原さんが舞台に現れて跪き、役者達によって頭に土を掛けられ、土地と改めて関係を結ぶことイメージさせました。

現実と物語世界の重ね合わせたり、登場人物を直接的に演じるのではなく伝聞型で語ったり、ほとんど会話が無くモノローグだったり、話す時の手の仕草をオーバーに行ったり、同時に異なるレイヤーの台詞が進行したりと現代的な手法が多く用いられ、独特の緊張感が出ていましたが、内容よりも形式が目立っている様に感じられました。
アンチドラマ・アンチクライマックスを意図した作りとなっていましたが、物語的な盛り上がりが無い分、他の要素でもっと引き込む趣向が欲しかったです。

『十二夜』

『十二夜』

日本の30代

駅前劇場(東京都)

2014/04/18 (金) ~ 2014/04/28 (月)公演終了

満足度★★★

役者の個性が活かされた演出
30代の役者達が結成した劇団で、それぞれが所属する劇団では上演することが無いシェイクスピア作品に挑戦し、戯曲に忠実でありながら個性を発揮していました。

出演者全員が楽器を持って登場し1曲演奏し終わったところから戯曲の冒頭シーンに接続し、最後の全員による歌と対称性を持たせた構成となっていました。序盤は少々堅い雰囲気でしたが、次第に物語自体の面白さと役者の個性的な演技の面白さが組み合わさり、喜劇らしさ楽しさが出ていました。

劇中で流れるBGMも全て役者達が生演奏していて、和やかな雰囲気がありました。もっと演奏する場面を増やして音楽劇的にしても良かったと思います。
鳥の名前にちなむ駄洒落や比喩表現が多く用いられているのに合わせて、鳥の鳴き声の効果音を沢山入れていたのが楽しかったです。
床と壁の全面に描かれた紅白のストライプが衣装にも反映されていて、カラフルでありながらも統一感のあるヴィジュアルになっていました。

ヴァイオラを演じた平岩紙さんが真っ直ぐな視線で悩みを独白する姿がチャーミングでした。道化を演じた竹口龍茶さんが役に嵌っていて、印象的でした。

カルミナ・ブラーナ/ファスター[日本初演]

カルミナ・ブラーナ/ファスター[日本初演]

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

ビントレー芸術監督の成果
今シーズンで新国立劇場バレエ団芸術監督のポストを去る、デヴィッド・ビントレーさんの代表作と近年の作品によるダブルビルで、両作品ともダイナミックで分かりやすい表現の中に芸術性が感じられて楽しめました。

『ファスター』(音楽:マシュー・ハンイドソン)
ロンドンオリンピックにインスピレーションを得て作られた作品で、バスケットボール、フェンシング、シンクロナイズドスイミング、マラソン等の種目の動きを用いていて親しみ易い内容でした。
様々な種目がストップモーションで表現されるインパクトがある冒頭から始まる第1楽章、格闘技の競技者の心情も描いた様なパ・ド・ドゥの第2楽章、ひたすら走り続けるだけという大胆な振付の第3楽章からなる構成で、音楽もリズミカルな中に程よく前衛音楽の手法が取り入れられていて面白かったです。
複雑で素早いフォーメーションの変化が印象的でした。第3楽章で全員が走る中、舞台手前側を競歩選手が横切るシーンがユーモラスでした。

『カルミナ・ブラーナ』(音楽:カール・オルフ)
中世ドイツ世俗詩歌集に基づくカンタータにイギリスのポップカルチャー的表現を組み合わせた作品で、3人の神学生が世俗の欲に堕落して行く様子がエロティックかつキッチュに描かれていました。
テレビや映画でも良く用いられる冒頭の「おお、運命の女神よ」では、タイトな黒のミニワンピースにハイヒールを着た運命の女神・フォルトゥナのソロで始まり、ダンスホール、ナイトクラブ、売春宿の3つのパートで堕ちて行く神学生の姿が描かれていました。冒頭の曲が再び流れてフォルトゥナがソロで踊る内に同じ格好をした人達が等闇から次々に現れてユニゾンで踊るラストが圧巻でした。
大きな白い布を用いて、堕落を象徴したり、大勢のダンサーが消えた様に見せる演出が印象的でした。この曲の特徴である繰り返しの多様に合わせて、同じシーンを繰り返す度に角度を変えて見せる演出が効果的に使われていました。
ショーガールな様なコケティッシュな女性ダンサー達がキュートでした。フォルトゥナを演じた湯川麻美子さんは、一人で空間を支配する様な圧倒的な存在感があり素晴らしかったです。
ピアノ2台を含む大編成のオーケストラ、合唱、ソリスト歌手による演奏も迫力があり良かったです。

パン屋文六の思案~続・岸田國士一幕劇コレクション~

パン屋文六の思案~続・岸田國士一幕劇コレクション~

ナイロン100℃

青山円形劇場(東京都)

2014/04/10 (木) ~ 2014/05/03 (土)公演終了

満足度★★★★

男と女
中心に「46」、両端に「XX」「XY」の文字が光る、人間の男女の染色体を表すモビールの下の円形ステージで男と女の様々なやりとりが展開する、味わい深い作品でした。

短編戯曲を単純に順番に上演するのではなく、途中で一旦他の話に移ったり、台詞や小道具に関連を持たせたりして展開し、全体として一つの世界を作っていました。ドラマティックな展開は無く、登場人物もどちらかというと平凡な人ばかりで、狡猾だったり抜けてたりしても逆にそこに人間味があって愛おしさが感じられました。何気無い会話の中に印象的なフレーズがありました。

どの役者も演技が魅力的で、古めかしい言い回しの台詞も自然に響き、耳に心地良かったです。作品毎に役が変わるので、それぞれの役者の多様な面が見られて楽しかったです。

各作品の終わりで映像で題名と配役が表示されるのも親切で、かつ長い上演時間の中で程良いブレイクとなっていました。
こすると匂いが出る「ニオイシート」が配布され、指示された場面で匂いを嗅いで物語の中で漂う匂いを実際に経験する趣向があって、視覚・聴覚だけでなく嗅覚でも楽しめましたが、嗅ぐ行為によって折角の良い雰囲気が途切れてしまうのが勿体ないと思いました。

和装と洋装がポップにミックスされた衣裳が美しく、物語の世界観にもマッチしていて良かったです。

PLEIADES(プレイアデス)

PLEIADES(プレイアデス)

kuniko kato arts project

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★

現代的で原始的
ダンスの中村恩恵さんと打楽器奏者の加藤訓子さんがルカ・ベジェッティさんの演出の下でクセナキスの曲でコラボレーションした公演で、踊りと太鼓という原始宗教を思わせる組み合わせから生まれる高揚感が印象的でした。

打楽器6重奏『プレイアデス』は加藤さんが全てのパートを多重録音した音と映像が流され、加藤さんは演奏しないパフォーマーとして出演していました。4つの部分からなり、『総合』では舞台上に散らばって置かれた打楽器を2人が上手にセッティングして行き、『メタル』では加藤さんが下手奥に佇む中、中村さんが幅4m×奥行1m程の照らされたエリアの中で踊り、『鍵盤』では前半は映像のみで後半からダンスが加わり、『皮物』では加藤さんが楽器やバチを持たずに音に合わせて踊る様にエア演奏するところに中村さんが介入するという展開でした。
『プレイアデス』から切れ目無く、同じくクセナキス作曲の打楽器独奏曲『ルボンa』が生演奏され、録音とは異なる臨場感に圧倒されました。『ルボンb』では中村さんも激しいダンスで加わり、ジャズのソロバトルの様でスリリングでした。
『プレイアデス』は音楽もダンスもそれぞれは良かったものの総合的なパフォーマンスとしては何故かあまり楽しめませんでしたが、『ルボンb』は強く引き込まれました。

出演者2人、上演時間1時間強でチケット代6000円は、世界的に活躍するアーティストとはいえ少々割高に感じました(そのせいか、大きな会場でもないのに空席が結構ありました)。

世界は不在の中のひとつの小さな星 ではないか?ーーNIGHTバージョン

世界は不在の中のひとつの小さな星 ではないか?ーーNIGHTバージョン

Dance Company BABY-Q

ピラミデビル(六本木6-6-9)(東京都)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★

19日20:00の回鑑賞
六本木アートナイト2014のイベントとして行われたパフォーマンスで、六本木ヒルズや東京ミッドタウンが出来る前の健康的ではない雰囲気の六本木を彷彿させました。

商業ビルの中庭にアブストラクトな映像が投影され、DJが流すテクノの上に中原昌也さんが演奏するノイズが被さる中で、東野祥子さんが壊れたロボットの様な断続的な動きで踊り、殺伐とした退廃的な雰囲気が濃厚でした。
ギクシャクとしたムーブメントが多用される中、中盤で立ち上がっては溶ける様に崩れ落ちる動きが繰り返されるのが印象に残りました。
オープンなアートイベントの屋外での無料公演でありながら、観客に媚びない、いつもと変わらない毒気のあるパフォーマンスが繰り広げられ、異彩を放っていて刺激的でした。

ライブハウスやクラブとは異なり、周りに営業中の店がある環境だったので難しいとは思いますが、ノイズはもっと強い音圧で聴きたかったです。

仮面舞踏会―イメージの力、うごく!

仮面舞踏会―イメージの力、うごく!

プロジェクト大山

国立新美術館(東京都)

2014/04/19 (土) ~ 2014/04/19 (土)公演終了

満足度★★

観客参加型
六本木アートナイト2014のイベントとして行われたパフォーマンスで、会場の国立新美術館で開催中の展覧会に関連させた構成は良かったものの、内容としては物足りなさを感じました。

2階の奥の方からハチャトゥリアンの『仮面舞踏会』が聞こえて来て、このカンパニーのトレードマークである頭まで包む青い衣装を着たダンサー達が赤い大きな布の中に一列に並んでエスカレーターを降りて来て始まり30分程パフォーマンスを行った後、観客全員で踊るパートが続きました。

パフォーマンスは静と動の対比が鮮やかな振付で、所々にコミカルな仕草を交えつつ展開し、楽しかったです。観客を睨み付ける様な視線の強さが印象的でした。後半のパートでは観客を立たせて仮面がプリントされたマスクが配られ、振付のレクチャーがあった後に『仮面舞踏会』に合わせて踊り、何百もの人達が一緒に踊る姿が圧巻でした。
全員で踊ってそのまま終演という展開は締まりが無い様に感じられ、ダンサーが何か違う形で絡んで来る演出が欲しかったです。

紙風船文様4

紙風船文様4

カトリ企画UR

新宿眼科画廊(東京都)

2014/04/11 (金) ~ 2014/04/14 (月)公演終了

満足度★★★

巧みなプロローグ
振付家として活躍する白神ももこさんが身体表現に重心を置き過ぎずに普通の芝居として演出していて、所々に独創的なアイディアがあり楽しめました。

開演前から役者2人が舞台上に居て、かつ客席は舞台を横切らないと行けない配置になっているというオープンな雰囲気の中、結婚についての雑談(に見える芝居)から始まり、次第に理想の家の間取りの話となって椅子や机を配置して行き、戯曲では全然言及されない室内の様子を具体的にイメージさせました。このプロローグは、中盤の鎌倉旅行ごっこで盛り上がるシーンを先取りして提示する効果もあり、巧みな導入でした。
本編に入ってから最初の台詞が発せられるまでの長い沈黙がその前の賑やかさとの対比をなしていて、結婚1年目の夫婦の倦怠感が醸し出されていました。家の設定をマンションの7階に設定していたのもあってか、ラストの隣の家から紙風船が入ってくるシーンは、一旦外に出た夫が紙風船を拾って来る描写となっていて、夫婦で紙風船を突き合いながら妻の不満が表面化していく様子が印象的でした。

取って付けた様なダンス的な動きを入れてなかったのが良かったです。しかし自然な形で体の動きを沢山用いているのは振付家ならではの演出だと感じました。

終演後に役を入れ替えたバージョンが上演されましたが、異性だったらと仮定して話す箇所で男女が混沌としたり、所々でやり過ぎな演技だったりで、楽しかったです。

きりきり舞い

きりきり舞い

明治座

明治座(東京都)

2014/04/06 (日) ~ 2014/04/26 (土)公演終了

満足度★★

平凡な人情喜劇
シリアスな海外作品が得意なイメージの上村聡史さんが、明治座という普段と客層が異なる劇場でどの様な演出をするのか期待していたのですが、突出したものが感じられない出来でした。

結婚を焦る十返舎一九の娘を主人公に葛飾北斎とその娘も絡み、奇人に見える父親の生い立ちや本当の思いが明らかになる物語で、泣きと笑いが盛り込まれた人情喜劇の王道的な作りの裏に芸術家の在り方というテーマも浮かび上がる内容でした。

美術や舞台機構の使い方に関しては歌舞伎の手法を用い(回り舞台が多用されていました)、そこに洋楽系の音楽やカラフルな照明を絡める演出で、人を舞台上に残したままセットや照明を変えることによって異なる場所や時間へ転換する手法が何度か使われていて新鮮な印象があったものの、全体的には平凡に感じられ、期待外れでした。
唐突に歌や踊りが始まるのはその様な舞台のパロディーとして演出したかと一瞬感じられたものの、その後の展開からするとその様な意図があった訳でも無さそうで、もう一捻り欲しかったです。

大袈裟な演技をする役者が多い中、篠井英介さんが抑制した演技ながら圧倒的な存在感を示していて素晴らしかったです。
山崎静代さんは台詞回しは単調でぎこちなかったものの、他には見ないタイプの質感があり目を引きました。

マニラ瑞穂記

マニラ瑞穂記

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/04/03 (木) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★

国家という概念
明治時代のフィリピンという馴染みの薄い時代・場所を扱った作品ですが、手堅い演出と演技によって物語の世界が実感を持って立ち上がっていました。

独立運動を巡ってスペイン、アメリカ、日本の軍隊が睨み合うフィリピンにある日本領事館を舞台にした物語で、国という概念の中でもがく男達と、そんなこととは関係無く自由に生きようとする女達の対比が印象的でした。序盤は少々取っ付き難さを感じましたが次第に引き込まれ、終盤のスリリングでかつコミカルさもある展開が魅力的でした。

2段上がったステージを4方から客席が囲む形で、床に敷かれた四角のカーペットの中央に丸テーブルが置かれ、上空に吊られた四角いフレームの中央に垂れ下がる日本国旗と照応した、舞台美術がシンプルながら雰囲気があって良かったです。
転換時に流れる力強いブルガリアン・ヴォイスの曲は、劇中で描かれる女性達の逞しさに重ね合わせる意図があったのだとは思いますが、唐突な印象が強くて違和感を覚えました。

新国立劇場演劇研修所出身の若手が大勢出演する中、千葉哲也さんと山西惇さんのベテラン2人がおおらかで男らしさを感じさせる味わいのある演技で要所を締めていて良かったです。

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