満足度★★★
目先の対処
高度な運動能力やバランス感覚を用いたスラップスティックなパフォーマンスでしたが、社会的なメッセージが感じられ、ただ楽しいだけではない奥深さがありました。
下手に音響と照明のオペレーション機材が組み込まれたガラクタのタワーがあり、中央には室内のセットが組まれているのですが、開始10分程度で壁が崩れ落ち、家具が潰れ、天井に吊った照明器具が落ち、セットが全て壊れてしまい、片付ける為に5分の休憩時間にするとのアナウンスがあり、大掛りな撤収パフォーマンスとなりました。
片付くと様々なサイズの黒幕が降りて来て、「ブレヒト幕」の手法を用いた人が消えたり現れたりする様に見えるシークエンスが続く、体が浮き上がってしまう人、水を取り合う人、重力の方向が傾いた世界等が人力だけでアクロバティックに描かれていました。
終盤は舞台上に上演中に散らかされたガラクタをどんどん積み上げ、その山の中から人が顔を出して静かに終わりました。
人が謎の人物に引っ張られていったり、物が崩壊して行く様子が戦争や天災の後をイメージさせたり、人も物も右に傾くシーンでは社会の右傾化を比喩的に表している様に見えたりと、社会の荒廃とそれに対して目先の(=タイトルの「L'immediat」)行動しか取れない人々をシニカルに描いている様に感じました。
BGMもほとんど使われず、照明が暗い場面が多く、静かな時間が多いのが意外でした。一つ一つのシーンが少し長くて、流れが滞り気味に感じられたのが残念でした。