土反の観てきた!クチコミ一覧

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『ひとびとひとり』

『ひとびとひとり』

Crackersboat

シアタートラム(東京都)

2014/01/23 (木) ~ 2014/01/26 (日)公演終了

満足度★★

ポップで切ないダンス
自作の音楽に乗せてヒップホップダンスのテクニックに基づいた、ポップであり、少しの切なさも感じられる親しみ易い叙情性が魅力的な作品でした。

無音状態の中、両手の人指し指を立てて交互に腕を上げ下げするシークエンスから始まり、大音量の音楽が響く中をヒップホップ系の独特のトリッキーなステップで激しく踊ったり、頭を軸に床を転がって移動したりと続きました。
無音の中で静かに踊るシーンが多く、単調に感じられて少々眠気を催しました。動きは魅力的でしたが、構成が好みではありませんでした。もう少し刈り込んで、短い時間の中にまとめた方が良いと思いました。
アンコールとして『リトルダンス』(曲:高鈴)の乗せて踊ったのが、短い中に様々な情感とテクニックが詰まっていて素晴らしかったです。

シアタートラムの凸型のステージ形状を照明を用いて手前と奥で別の空間の様に見せていたのが印象的でした。照明がシャープでありながら、幻想的な雰囲気もあり美しかったです。

12匹

12匹

theater 045 syndicate

相鉄本多劇場(神奈川県)

2014/01/23 (木) ~ 2014/01/28 (火)公演終了

満足度★★★★

ネットの中からリアル社会を見る
ヴァーチャルなネットの世界からリアルな社会の病理を描いた作品で、程良くエッジの効いた演出が重い内容を刺さる様に表現していました。

ネットゲーム上でチームを組んでいる9人とメンバーではない3人が、チームのリーダーがネットで炎上して行方をくらませたことをきっかけに過去にあった事件について『12人の怒れる男』の様に議論し真相を探る物語で、いじめについて、更には社会における人間関係について考えさせられる内容でした。
仮想空間での議論という設定なので、ほとんど椅子に座っていて動きもあまり無く、役者同士が直接触れたり向かい合ったりもしなかったでしたが、議論に引き込まれました。
議論を傍観していて時折コメントを入れる謎の2人(それぞれ12人の中の1人と似た格好をしている)が、過去に起きた事件の当事者の「念」であるという仕掛けが、直接顔を合わせないネット上での会話という設定に合っていて良かったです。

角度を振った格子状に整然と並べられた、座面だけが赤く塗られた黒い椅子が、中盤で椅子が両脇に雑然と積み上げられ、舞台中央の一段上がった部分がそのまま議論のテーブルになったり、椅子を擬人化して過去の出来事を表現したりと、美術の使い方が巧みでした。
音響が不穏な雰囲気を空気感を醸し出していて、開演前のアナウンスの放送から既に物語に繋がる演出がされていたのも掴みとして良かったです。

Noism1『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』(改訂版再演)

Noism1『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』(改訂版再演)

Noism

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/01/24 (金) ~ 2014/01/25 (土)公演終了

満足度★★★★★

強烈な身体と空間
ダンス公演では珍しい、大きな舞台美術をふんだんに活用して身体の美しさを増幅させて見せる、スタイリッシュで品のある色気が印象的なクオリティーの高い作品でした。

白い床の上で水の中を歩むような静かな動きの女性ソロから始まり、恋人を思わせる男性が摺り足で現れ、次第に女性と男性の分身の様にダンサーが増えて行き、はっきりしたストーリーはないものの、アイデンティティーの不確かさについてイメージが膨らむ、ドラマ性のある展開でした。

ハーフミラーで覆われた高さ3m程の9本の三角柱が照度のバランスによって鏡になったり向こう側が透けて見えたりして、非現実的で複雑な空間の拡がりが現れるのが素晴らしかったです。
最初は横一列に並べられていたのがダンサー達によって様々なフォーメーションに配置され、生身の肉体と鏡像が絡み合って幻想的な視覚効果を生み出していました。環状に配置し、その中で踊るシーンではダンサー達の姿が多重反射して何十人もが蠢く様に見えて圧巻でした。

しなるようなムーブメントを多く用いた振付が美しく、ポーズを取って静止する姿も格好良かったです。鏡が使われているもあってナルシスを想起させるものの、確かな技術があるので悪い意味でのナルシシズムには陥らず、表現として強度のあるものとなっていました。

最初から最後まで持続するオリジナルの音楽が作品の統一感を高めていて良かったです。コントラストがはっきりとした照明もダンサーと空間を鮮やかに照らし出していて印象的でした。

しろたへの春 契りきな

しろたへの春 契りきな

演劇集団 Ring-Bong

サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)

2014/01/18 (土) ~ 2014/01/26 (日)公演終了

満足度★★★

重なる状況
日本統治時代の京城(ソウル)と現代の日本の状況を重ね合わせた物語で、戦争と国と個人の関係について考えさせられる作品でした。

京城で写真屋を営む日本人の家に生まれ育った女性の少女時代と、戦後日本に移り住み痴呆が進んだ現在の姿が交互に描かれ、その女性を軸に日本と朝鮮の不幸な歴史が家族スケールの関係の中に表現されていました。統治時代の朝鮮人に対する日本人の態度が最近話題になっているヘイトスピーチを思わせたり、政府による思想弾圧が特定秘密保護法案を連想させたりと、とてもタイムリーな内容でした。
最初から最後まで舞台のやや下手寄りに設置され、歴史を客観的に眺めるかの様に存在するカメラが、客席にこの歴史を忘れてはならないと訴える様で印象的でした。

扱っているテーマは大事なことであり、そのテーマがはっきりと描かれているのは良かったのですが、台詞や演技に説明的な部分があり、演劇的な面白さに比べてポリティカルな主張が強く出過ぎている様に感じられ、個人的にはあまり物語に入り込めませんでした。

物語の流れに沿って役者達が歌ったりピアノを弾いたりするのは、重い内容の中で安らぎが感じられて良かったのですが、音楽・効果音の使い方がベタであまり好みではありませんでした。演奏されたショパンの曲のタイトル及びそれにまつわるエピソードと物語の関係がそのまま過ぎだと思いました。

ブルグミュラー25

ブルグミュラー25

セッションハウス

神楽坂セッションハウス(東京都)

2014/01/18 (土) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★

ダンスと音楽によるコント的小品集
ピアノ初心者の為の小品集の生演奏に合わせてショートコント的なダンスが踊られる、小さな子供でも楽しめる作品でした(実際、子供達の笑いが絶えず続いていました)。

各曲の冒頭に原題とダンス作品としてのタイトルが壁に表示され、そのギャップで笑わせ、パフォーマンス自体もマイム的な要素の強いコミカルな動きで様々なシチュエーションを描いていて分かり易かったです。
曲のリズムやアクセントに合った軽やかな振付が気持良かったです。身体の動きだけでなく、顔の表情も重要視されていて、多彩な感情の表現が印象的でした。

斉藤美音子さんと森下真樹さんが演じた、見栄っぱりな女性のキャラクターが嵌っていて良かったです。中村理さんの多彩な表情が少年の様でチャーミングでした。

小休止的にブルグミュラーについての字幕が流れる時に演奏されたバッハやクープランの曲の充実度に比べてブルグミュラーの曲が軽い(楽譜の解説にも精神性の深さが無いみたいなことが書いてあるとのことです)のが、良いコントラストを生み出していました。
女性ダンサー達が着ていたレトロフューチャー風のグラフィカルな衣装が可愛いかったです。

つむぎねパフォーマンス「さく」

つむぎねパフォーマンス「さく」

つむぎね

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2014/01/17 (金) ~ 2014/01/18 (土)公演終了

満足度★★★

儀式的な音楽パフォーマンス
劇場内で開催されている現代アートの展覧会の中での音楽パフォーマンスで、演劇的ドラマトゥルギーは無いものの、展示作品を演奏に取り込んだり、曲毎に照明や立ち位置を変化させたりと、単なるコンサートではない、舞台芸術としての側面を持った公演でした。

形式や音が確定されている楽譜ではなく、単純なルールに則って即興的な要素を含みながら声とピアニカを中心にして展開し、旋律は無く、音の響き自体を聴かせる内容でした。
特に宗教的な表現をしようとしているのではないのですが、音楽が元来持っている宗教儀式の様な雰囲気がありました。

グランドピアノの表面を削って木の地肌を露にして全ての角を丸く処理した、青田真也さんの作品を普通に弾くだけでなく紙ヤスリで擦って演奏し、その作品の制作過程とリンクさせていたのが興味深く、音響的にも面白かったです。
録音された磁気テープを球に巻き付け、読み取りヘッドの上を転がすことによって音を発する、八木良太さんの作品も違和感無く演奏に用いられていて、神秘的な雰囲気が出ていました。

終盤で演奏されたリズミカルな曲で奏者の1人がアフリカンなステップでリズムを刻むのが印象的でした。
チラシには「インスタレーションと音楽・ダンスの競演」と書いてありましたが、踊られるのは1曲だけだったのが物足りなかったです。

TRIBES トライブス

TRIBES トライブス

世田谷パブリックシアター

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/01/13 (月) ~ 2014/01/26 (日)公演終了

満足度★★★★

言葉とコミュニケーション
聴覚障害者が中心となる話ですが、健常者/障害者という軸だけではない視点から描かれた、言葉やコミュニーケションやコミュニティーについて考えさせられる内容で、ポップなデザインのチラシとはイメージの異なる、シリアスで重い作品でした。

生まれつき耳が不自由でありながら聾者達のコミュニティーに関わらない様に育てられた男が、聴覚を失いつつある女と恋に落ちることによって新たな世界を知り、今まで抑えていた思いを露にするものの、それがポジティブな面だけでなくネガティブな面も強めてしまう物語で、障害者を扱った作品にありがちな、困難を克服するという展開ではなかったのが新鮮でした。
序盤は翻訳劇ならではの入り込み難さを少々感じたものの、後半は迫真のやりとりが続き、引き込まれました。全体的にギスギスした雰囲気の中で、中嶋朋子さんの最初の登場シーンが幻想的でとても美しかったです。
ジャック・ラカンの学説やオペラといった高尚っぽい話題と度々口にする卑猥な単語のギャップがいかにもイギリスの作品らしく感じられました。

モノトーンでまとめたビジュアル表現がスタイリッシュで格好良かったです。ステージに対して少し角度を振った細い金属製のフレームで囲われた空間が関係の脆さを象徴しているようで印象に残りました。衣装の色に意味を持たせているのも良かったです。
音としての言葉が重要なモチーフとなっている為、物音や音楽の扱いも良く考えられていて効果的でした。

【公演終了】ステロタイプテスト/パス

【公演終了】ステロタイプテスト/パス

The end of company ジエン社

d-倉庫(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/14 (火)公演終了

満足度★★★

言葉と記憶
3つの状況がはっきりとした境界が無いままに同時進行し、台詞が複雑に絡み合う中で、言葉による記述と記憶の関係を巡る考察が展開する刺激的な作品でした。

アルコール中毒患者のリハビリ施設、断食によって超能力を獲得する教室、(原発事故をイメージさせる)ある災害または事故に関して仕事をする作業員の休憩所の3つのシチュエーションが同じ場所で同時に展開し、しかもその3つの話が完全にパラレルという訳ではなく、他のエピソードが曖昧に浸食して、全体像を把握するのが困難な構造でした。足元が土足、スリッパ、裸足の3つにグループ分けされているものの、各エピソードに一対一の対応をしている訳ではなく、惑わされました。
メインとなる役の男性(チェックのシャツ)と女性(白のシャツ)はそれぞれ2人の役者によって演じられ、更にその男女のどちらの役も演じる役者が1人いて(チェックのシャツの上に白のシャツを着用)、複雑さに輪をかけていました。
しかしその混迷が悪印象とはならず、むしろ何とか話に追い付こうとして引き込まれました。また自己の存在の不確かさを表しているようにも感じられ、印象的でした。

台詞がシンクロしたりループしたりと凝った構成ながらシュールな笑いや詩的な美しい台詞もあり、理屈でガチガチになっていないのが良かったです。携帯電話オフのお願いを劇中に上手く混ぜていたのがユーモラスでした。

既存のステージをかさ上げして設けた床が軋んだり、セットの椅子やベンチが中途半端にぼろかったりと、脚本・演出・演技のクオリティーに対して舞台美術の作りが甘かったのが残念でした。

「春の祭典」「結婚」

「春の祭典」「結婚」

Co.山田うん

スパイラルホール(東京都)

2014/01/11 (土) ~ 2014/01/13 (月)公演終了

満足度★★★★

強烈な音楽に拮抗する身体
ストラヴィンスキーが作曲したバレエ音楽に新たに振り付けした作品の2本立てで、両作品とも音楽のリズムや雰囲気に対応していて、ストラヴィンスキーの革新的で強烈な音楽に拮抗する圧倒的な身体の存在感が魅力的でした。

『結婚』
オリジナルのニジンスカ版は無表情に踊る群舞が中心ですが、山田うんさんと河合ロンさんのデュオで踊られました。25分間ノンストップで動き続ける中にニジンスカ版を彷彿とさせるムーヴメントやポーズが違和感なく織り込まれていました。
ある男女の結婚の様子を描くだけでなく、人が生まれてから死ぬまでに経験する様々な感情や人間関係が表現されている様に感じられて深みがありました。
使った音源が普通のクラシック系の演奏家ではなく、ロシアの民族音楽の歌い手と打ち込みによる器楽パートによる特殊なバージョンのもので、正確無比なリズムと原始的な歌声の組み合わせが異様な雰囲気を生み出していて、振り付けにマッチしていました。

『春の祭典』
オリジナルのニジンスキー版にある、神への生贄に差し出される乙女というモチーフは残しながら、群舞が人間ではなく獣や虫を思わせる動きでエネルギッシュに蠢くなダンスが印象的でした。
青系の照明が支配的な中、終盤になって黄色に切り替わり、三角形のフォーメーションで密集したダンサー達を不気味に照らし出すのがインパクトがありました。前方で激しく踊るグループと後方でゆっくり動くグループを対比させる場面が何度かあり、強く印象に残りました。
前半で着ていた、沢山の尻尾状の物が着いた衣装は非人間感やダイナミックさを演出していましたが、安っぽいコスプレ的なテイストが感じられ、もったいなく思いました。第2部冒頭の山田うんさんのソロは尻尾の数が他の倍以上ある衣装でしたが、この場面はずっと両手を床に着け続ける奇妙な振付と合っていて違和感を覚えませんでした。

カナガワ リ・古典 プロジェクト 2014紅葉ヶ丘【プログラムB】邦楽×弦楽オーケストラ

カナガワ リ・古典 プロジェクト 2014紅葉ヶ丘【プログラムB】邦楽×弦楽オーケストラ

かながわの伝統文化の継承と創造プロジェクト実行委員会

神奈川県立音楽堂(神奈川県)

2014/01/11 (土) ~ 2014/01/11 (土)公演終了

満足度★★★

能とクラシック音楽の併置
伝統音楽や能とオーケストラとのコラボレーションの公演で、ユーモアのある司会者がいたこともあって敷居の高さを感じさせない内容でした。

第1部は尺八、箏(13弦&25弦)、弦楽オーケストラによる演奏で、1960〜70年代によくあったような前衛音楽としての邦楽器と洋楽器のコラボレーションではなく、平明な聴き易い曲ばかりで気楽に楽しめました。

第2部は能の『鉢木』を、通常の上演形態にオーケストラの演奏を付加する形で、敢えてお互いが歩み寄らずに自らの領分を粛々と勤めることによって独特の雰囲気が醸し出されていて興味深かったです。
パーシケッティ、シェーンベルク、メンデルスゾーンの弦楽オーケストラ曲を抜粋で用いていて、前半では囃子方や地謡が演奏している時にはオーケストラは演奏しない構成になっていたのですが、終盤では異なるテンポで同時に演奏し、複雑に絡むビートが高揚感を生み出していました。
ミニマルな能とロマンティシズムが濃厚なシェーンベルクの『浄夜』が意外と合っていて、まるでオペラの一場面の様でした。

照明を用いて夜に降る雪や木を燃やして起こした炎が表現されていましたが、そこまでする必要はないと思いました。
所々で変な共鳴音がしていたのが気になりました。

壽初春大歌舞伎

壽初春大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2014/01/02 (木) ~ 2014/01/26 (日)公演終了

満足度★★★

たっぷり5時間弱の昼の部
短めの演目の4本立てで、休憩込みで5時間弱に渡るヴォリュームのある公演でした。

『天満宮菜種御供 時平の七笑』
菅原道真を追放する策略を立てながら道真を弁護する様に振る舞う藤原時平を描いた作品でした。片岡我當さんが演じる最後に時平の長い高笑いがあり、幕が閉じきった後に再度笑い声が響くのが印象的でした。
あまり動きが無く会話が続く内容でしたが、貴族のコミカルな場面や子役達の別れを悲しむ場面等が良い、アクセントとなっていました。

『梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場』
娘に金を工面したいが為に自らの命を投げ打とうとする父親の心意気に感銘を受け助けてやる梶原影時を描いた作品でした。父親が切られようとする所に遣いにやっていた娘が戻ってくる場面からの展開に引き込まれました。
様々な酒(日本酒や焼酎だけでなくビールまで)の銘柄を織り込んだ、囚人の台詞がユーモラスでした。朱色が鮮やかな美術が初春らしかったです。

『松浦の太鼓』
忠臣蔵の外伝物ですが、本編とは異なって全体的に朗らかな雰囲気が漂う楽しい作品でした。
中村吉右衛門さんが演じた松浦鎮信が拗ねたり、大喜びしたりと奔放なキャラクターで、可愛いらしく魅力的で、俳諧師との滑稽な台詞のやりとりが楽しかったです。

『鴛鴦襖恋睦 おしどり』
女を巡って相撲で勝負する男2人を描いた前半と、つがいのおしどりの精が現れる後半を3人の舞踊で描いた作品でした。視覚的には美しかったのですが、物語的にも踊り的にもあまり変化がなく単調で、少々長さを感じました。
3人がポーズを決めてセリで上がって来る最初の登場シーンやおしどりのつがいの早替わりがいかにも歌舞伎的で良かったです。

キエフ・バレエ『新春特別バレエ』

キエフ・バレエ『新春特別バレエ』

光藍社

ゆうぽうとホール(東京都)

2014/01/02 (木) ~ 2014/01/03 (金)公演終了

満足度★★★

チャイコフスキー3大バレエ
チャイコフスキーの3大バレエをパ・ド・ドゥだけでなく舞台美術付きで1幕毎に上演する公演で、作品毎に異なるダンサーがメインを踊るのを比較しながら観ることが出来て楽しめました。

『くるみ割り人形 第2幕』
『アラビアの踊り』の男性(何故かキャスト表から抜け落ちていて名前が分かりませんでした)の中性的な色気が魅力的でした。『ロシアの踊り』は本場のステップなのか、普段見る動きと雰囲気が異なっていて興味深かったです。
クララを踊ったオリガ・ゴリッツァさんが体の芯がぶれず、動きの止め方が美しかったです。デュオや群舞等、複数で同じ振付を踊ると意外とバラバラで精密さがなかったもののダイナミックさを感じました。

『白鳥の湖 第1幕2場』
アンサンブルによる白鳥達の群舞は綺麗に揃っていて美しかったです。4人で踊る2曲も動きや形は合っていたものの立ち位置の間隔がアンバランスになりがちだったのが残念でした。
オデットを踊ったナタリア・マツァークさんは細かい表現が印象的で、連続ターンの時は抑え目でしたがそのことによって気品が感じられました。オディールとの演じ分けをどう表現するかも観たかったです。

『眠りの森の美女 第3幕』
オーロラ姫を踊ったエレーナ・フィリピワさんが技術的にも表現的にも充実していて素晴らしかったです。白い猫を踊ったカテリーナ・タラソワさんがコケティッシュで魅力的でした。
人数が少なかったせいか、最後のマズルカにあまり盛り上がりが感じられず、中途半端だったのがもどかしかったです。
平面的な書き割りの舞台美術でしたが安っぽくなく見栄えのするもので美しかったです。

オーケストラ(ウクライナ国立歌劇場管弦楽団)は所々にミスがあったものの、ロシアのオーケストラならではの響きがしていて、チャイコフスキーの音楽に合っていました。

MOTHER II

MOTHER II

青年団若手自主企画 大池企画

アトリエ春風舎(東京都)

2013/12/19 (木) ~ 2013/12/29 (日)公演終了

満足度★★★

心地良いヴォリューム感
1時間強というコンパクトな時間の中で母と娘の関係を押し付けがましさのないユーモアを以て描く、温かな後味の残る作品でした。

小説家の女が同棲している恋人と一緒に実家に行くと母親が自分と同じ年齢の姿に若返っていたという非現実的な設定ながら、繰り広げられる会話(と微妙な間)はとても日常的で、そこに女の叔父がやって来ることによってコミカルな雰囲気が強まり、特にストーリーやテーマに目新しさがある訳でもなく、大半の時間で淡々とした会話が続く静かな作品ながら、澱みのない展開に引き込まれました。

音楽も照明の切り替えも使わずに役者の演技力だけで見せる演出で、食べたり飲んだりする音や、暗転時の照明が落ちるスピード等のディテールを大事にしていて、先鋭的ではないものの平凡でもない心地良い雰囲気がありました。
4場に分かれている物語の3場までは母親の外見の件以外はリアルに描かれていて、最終場だけ脚本的にも舞台表現的にも非現実的な要素が現れるのですが、それをさらっと入れ込むセンスが素敵でした。
個人的には、うさぎストライプでの作風よりも、この作品の様な作風の方が大池さんの演出家としての個性が出ていると感じました。

山内健司さんが演じた少々お調子者の叔父のキャラクターがチャーミングで印象的でした。

RASCAL 第1回公演 『カミノキズ』

RASCAL 第1回公演 『カミノキズ』

RASCAL

シアター711(東京都)

2013/12/25 (水) ~ 2013/12/29 (日)公演終了

満足度★★

整理出来ない男
奇を衒わないオーソドックスな脚本・演出で、心に傷を負った男の心境の変化をじっくりと描いた作品でした。

恋人が死んだ後に立ち直れなくて彼女が残した荷物と共に仲間達と共同生活をする男の所に、新たな人達そして死んだ女の友人だという女が現れ、人間関係が変化していく物語でした。
淡々と会話が進む静かな雰囲気の中で、次第に男と死んだ彼女の関係が明らかになり、サイコホラー的な話になるのかと思わせる展開に引き込まれましたが、その後の展開や終わり方に求心力が感じられず、物足りなさを感じました。
恋愛絡みの話題が多いのがあまり好みではありませんでした。

転換の時以外は音楽も流れず、日常会話と変わらない口調と声のボリュームでの演技が落ち着いた雰囲気を醸し出していて、感情が高まるシーンとの対比が際立っていたのが良かったです。
見立てや省略といった演劇的な虚構を用いないストレートな演出だったので、都合の良いタイミングで人が現れたり、特殊な環境での生活のリアリティーが感じられない描写があったりしたのが引っ掛かりました。

THE BELL

THE BELL

CHAiroiPLIN

神楽坂セッションハウス(東京都)

2013/12/21 (土) ~ 2013/12/23 (月)公演終了

満足度★★★

楽しく勢いのある群舞
ダンスを中心に、台詞、歌、映像、ジャグリング等の様々な要素を盛り込んで、手紙にまつわるエピソードを賑やかに描いた、楽しい作品でした。

客席まで含めた床一面に茶封筒が敷き詰められ、封筒の格好をしたダンサー達が「郵便屋さん」を歌いながら踊り、カノン的に展開する印象的な冒頭の群舞に始まり、途中で更に白い紙が大量投入される中を、歌いながら、あるいは台詞やオノマトペを言いながら細かいムーヴメントを矢継ぎ早に重ねて大勢で踊る様子がエネルギッシュで魅力的でした。
ドタバタな雰囲気のシーンが多い中で、中盤から登場する伝書鳩と宛先不明で処分されてしまう荷物のしんみりとしたエピソードが引き立っていました。

シェイクスピアや安部公房の戯曲を用いた過去の作品では楽しい表現の先に悲しさや怖さが現れていていたのですが、本作では物語性が稀薄でコアとなるものが弱いので、様々な面白いアイデアが有機的に絡まず、楽しさが他の感情に変容する事なくアイデアそのものとして目立ち、作品としてまとまりのない印象になってしまっていたのが勿体なかったです。
構成の面では、短いシークエンスを何度も繰り返す内にカオスになってい行くパターンが多用され過ぎているのが気になりました。
ステージ奥の半円形に飛び出た柱に郵便ポストの映像を投影したり、映像で型どられたエリア内を動く等、映像の使い方のセンスが良かったです。

地面と床

地面と床

チェルフィッチュ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2013/12/15 (日) ~ 2013/12/23 (月)公演終了

満足度★★★

地面の下の死者と床の上の生者
近未来の日本を舞台にした物語で、戦争や命、格差社会、日本語といった様々なトピックについて考えさせられる作品で、時間的にも空間的にも物理的にはスカスカでありながら、密度が感じられました。

赤ちゃんをお腹に宿した女、その夫、夫の弟、兄弟の母親(幽霊)、引きこもりの女の5人がそれぞれの立場からの主張を淡々と語って進行する中に、現代の日本人が抱える悩みや不安が浮かび上がって来て、次第に引き込まれて行きました。
引きこもりの女が早口で喋り続け、英語と中国語の字幕が追い付かない状態になると、その字幕について言及し出すユーモラスなメタ的展開があったものの、基本的には役の入れ替わりや時系列の行き来が無いストレートな構成でした。
しかし、音楽や字幕が役者と同等の存在に扱われていて、台詞と台詞の間に字幕や音楽だけが流れる時間が多くあり、独特のリズム感が生まれていました。仕草にしては大きく、ダンスにしては小さい漠然とした体の動きが常に続いていて、不思議な雰囲気を作り出していました。

舞台上に一段高くなった横長の床が設けられ、上手には光る円形のオブジェと垂直に立った大きな鏡、中央には字幕が映し出される十字型のオブジェがあり、シンプルで格好良かったです。シャープで幾何学的な照明デザインも美しくて印象的でした。
サンガツによる、ギターとドラムによるミニマルな音楽も抑制した雰囲気の中に時折ドラマティックな広がりが感じられて印象的でした。

鴎座クレンズドプロジェクト『Viva Death』

鴎座クレンズドプロジェクト『Viva Death』

鴎座

SPACE EDGE(東京都)

2013/12/22 (日) ~ 2013/12/25 (水)公演終了

満足度★★

リミックス サラ・ケイン
このユニットが3年間に渡って取り組んで来た、サラ・ケインの『クレンズド』を、同じ作家の他の戯曲も引用しつつリミックスし、普通の台詞を用いずに歌とダンスで展開する70分程度の作品でした。

床一面に薄く水が張られ、時間を置いて滴が落ちて来る舞台の中で、静かでゆっくりな動きながら緊張感のあるパフォーマンスが繰り広げられ、所々にちょっと変わった雰囲気の歌が入る構成でした。

日本語は数曲の歌詞で用いられるだけで、他の歌詞や舞台上で書かれる文章(殴り書きで読めませんでした)は英語、フランス語、イタリア語だったので、言葉としての情報はほとんど分かりませんでしたが、身体表現から切羽詰まった雰囲気が伝わって来て、独特の美しさがありました。
下手にテレビが置かれ、隣の部屋に置かれたベンチに座るパフォーマー達の下半身が映し出されていましたが、その意図が分かりませんでした。

出演者や過去のクレンズドプロジェクトの作品を観た人にとっては通じても、今回初めて観る人には抽象的・断片的過ぎて不親切な内容だと思いました。しかし、安易に笑いや派手な表現を用いていなかったのは良かったと思います。

交響劇「船に乗れ!」

交響劇「船に乗れ!」

アトリエ・ダンカン

東急シアターオーブ(東京都)

2013/12/13 (金) ~ 2013/12/21 (土)公演終了

満足度★★★

オーケストラと共に描く苦い青春
オーケストラをステージ上に乗せて、役者と二重写しで描く独特な演出が新鮮なミュージカルで、普通の学園モノに比べてシリアスな内容で3時間近くある作品でしたが楽しめました。

ニーチェを愛読しチェロを弾く、恵まれた環境に育った少年が音楽高校に入ってから次第に挫折を味わい、人生や音楽について悩む物語で、チェロを弾く事を止めてしまい平凡な40代になってしまった主人公が高校時代を回想する形で進行しました。

真っ黒な空間に白いスロープが交差し、奥には軽く湾曲した白い壁、床面の大半はオーケストラが占め、役者は手前のスペースとスロープ上を使う形で、視覚的に少々狭苦しさを感じました。

歌う場面は、主旋律に歌詞を乗せたものと、原曲にはない旋律を新たに加えたものがあり、曲によっては同時に何声もが同時進行し歌詞が分からなくなるものの、モーツァルトのオペラの重唱シーンの様な高揚感がありました。
登場人物を演じる役者と、その役が演奏する楽器を実際に演奏する奏者が対応付け(性別や服装も合わせていました)、出捌けも同じタイミングで行う演出となっていて、様々な感情を立体的に描いていて良かったです。

後方の壁に大きく映し出される場所を示す為の画像(写真を版画の様な感じな白黒に処理したもの)が美しくなく、しかも説明過多に感じられ、時期と場所を字幕で出すだけでも十分な気がしました。

主人公の現在と高校生時代をそれぞれ演じた福井晶一さん、山崎育三郎さんは演技も歌も充実していて素晴らしかったです。ベテラン勢が要所を締めていてメリハリのある流れになっていました。

プッチーニのラ・ボエーム

プッチーニのラ・ボエーム

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2013/12/19 (木) ~ 2013/12/22 (日)公演終了

満足度★★★★

力強い歌声
19世紀のパリを舞台にした『ラ・ボエーム』を現代の南アフリカに置き換えた作品で、設定や物語だけでなく音楽もアフリカンなアレンジが施されていましたが、過度に軽薄な感じにはならずに芸術性と娯楽性のバランスが良くて楽しめました。

アパルトヘイトについて触れる演出もありましたが、政治的な面に重点を置き過ぎず、また小手先の演出にも頼らずに歌手達の歌と演技で求心力を生み出していたのが良かったです。音楽の終わり方が原典とは異なっていて、少し明るさが感じられる響きだったのが、このプロダクションの雰囲気に適していたとは思うものの、中途半端に感じました。

当日パンフレットに記載された文章によると、南アフリカでは結核で亡くなる人が未だに多いとのことで、ヒロインが結核で死んでしまう物語がただの悲しいお話ではなく、リアリティーのあるものとして感じられるものとして演じられているということが印象的でした。

音楽的にはオーケストラ部分を舞台の両サイドに位置するマリンバ+スティールパン+合唱に置き換え、リズミカルな伴奏音形となっていましたが、歌のパートは原典通りで本格的なクラシックの歌唱法に則っていて聴き応えがあり、合唱もパワフルで魅力的でした。
冒頭を含め、所々でプッチーニとは関係がないアフリカ音楽が演奏される箇所があり、ノリの良さが楽しかったです。

途中に印象的なダンスシーンが何度かありましたが、それ以外の場面でも歌手も器楽奏者も演技ではなく自然に音楽に合わせて動いている感じが見ていて気持良かったです。

アクアリウム

アクアリウム

DULL-COLORED POP

シアター風姿花伝(東京都)

2013/12/05 (木) ~ 2013/12/31 (火)公演終了

満足度★★★

1982年生まれ
凶悪な犯罪を起こす人が多いとイメージされている、1982年生まれの人達の閉塞感が描かれた作品で、基本的にリアリズムな表現でありながら、そこからはみ出していく仕掛けが施されていたのが印象的でした。

6人(+ペット2匹)が共に暮らすシェアハウスに通り魔事件の犯人を追う刑事達が訪れたことをきっかけに住人の人間関係のバランスが崩れ、それぞれ不安や不満等の本性が露になって行く物語で、個人的に好きではないスタイルの演技で始まるので序盤は乗り難かったのですが、中盤からのお互いの不信感が高まる展開に引き込まれました。

物語としての面白さとは別に、刑事2人組のオールドファッションで大仰な演技とシェアハウス住人の淡々とした演技の対比させたり、2匹のペットが人間と普通に会話したりと、演劇のスタイルや虚構性に批評的な眼差しが感じられる趣向が盛り込まれていて興味深かったです。
笑わせようとしていても不発気味だったのが勿体なかったです。

舞台中央の一番手前に客席に背を向ける形でアクアリウムが置かれ、舞台と客席の境界が壁である設定になっていて、登場人物達と観客の間に距離を取り、舞台と客席の間のスペースを世代論でまとめたがる刑事達だけが使うことが出来るという空間構成によって、世代でくくってしまう危うさが表現されている様に感じました。

ゲスト出演者によって演じられる役の登場シーンが壁の素材を上手く活かして不気味な雰囲気を高めていたのが印象に残りました。この役を他のゲスト出演者がどのように演じるのかも興味深く思いました。

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