満足度★★★
心地良いヴォリューム感
1時間強というコンパクトな時間の中で母と娘の関係を押し付けがましさのないユーモアを以て描く、温かな後味の残る作品でした。
小説家の女が同棲している恋人と一緒に実家に行くと母親が自分と同じ年齢の姿に若返っていたという非現実的な設定ながら、繰り広げられる会話(と微妙な間)はとても日常的で、そこに女の叔父がやって来ることによってコミカルな雰囲気が強まり、特にストーリーやテーマに目新しさがある訳でもなく、大半の時間で淡々とした会話が続く静かな作品ながら、澱みのない展開に引き込まれました。
音楽も照明の切り替えも使わずに役者の演技力だけで見せる演出で、食べたり飲んだりする音や、暗転時の照明が落ちるスピード等のディテールを大事にしていて、先鋭的ではないものの平凡でもない心地良い雰囲気がありました。
4場に分かれている物語の3場までは母親の外見の件以外はリアルに描かれていて、最終場だけ脚本的にも舞台表現的にも非現実的な要素が現れるのですが、それをさらっと入れ込むセンスが素敵でした。
個人的には、うさぎストライプでの作風よりも、この作品の様な作風の方が大池さんの演出家としての個性が出ていると感じました。
山内健司さんが演じた少々お調子者の叔父のキャラクターがチャーミングで印象的でした。