篦棒 べらぼう
劇団民藝
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2016/09/28 (水) ~ 2016/10/09 (日)公演終了
満足度★★★★
民藝の底力を見た
「社会派」として人気急上昇の中津留章仁が民藝に書き下ろした新作を、樫山文枝を軸とした役者陣が実に丁寧に演じる。パンフレットにあるのだが、長い時間を書きたかった、ということで70年代から2011年までの、序章・1場・2場で休憩込み2時間55分の長丁場で上演するが、飽きない。社会派と言われながら、最後には個人の感情に戻ってくるのが中津留作品の特徴だが、それがしっかりと出ている。尤も、自身の劇団トラッシュマスターズでは絶対に書かないような作品に思えて、民藝の底力を信じて書いた作品なのではないかと思う。
狂犬百景(2016)
MU
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2016/10/01 (土) ~ 2016/10/10 (月)公演終了
満足度★★★★
MUのダーク編
再演だが初演は観てない。狂犬がゾンビ化した東京の3ヶ所で起こる出来事を、最後にまとめる4話構成の短篇オムニバス。3話の味わいはそれぞれに違って面白く、しかし、それらをまとめる最後の4話が見事である。面白いのではあるが、好きか、と訊かれるとちょっと困る作品だと言える。
際の人
文月堂
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2016/10/04 (火) ~ 2016/10/09 (日)公演終了
満足度★★★
際なのは誰か?
中途半端で有言不実行を絵に書いたような男を添野豪が丁寧に演じているが、ドラマの中に点在する回想シーンが2010年の『夜も昼も』を想起させる。笑いもあるし、毒もあるという文月堂独特の感触の作品であるとは言える。平凡に生きているようで、実は瀬戸際にいるということがタイトルなのだろうが、そのことが分かりにくいのは難点。新大久保という設定も充分には活きていない気がするのも惜しい。
夢と希望の先
月刊「根本宗子」
本多劇場(東京都)
2016/09/28 (水) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★
リメイクだけど
2014年に駅前劇場で上演した『夢も希望もなく。』のリメイクだが、途中までは同じ展開の物語が、最終的には他の作品と同じ仕掛けで収束して、『…もなく。』ではなくて『…の先』に変わったところが見事。ただし、大きい本多でやるには、役者陣の力量が少し足りない気がする。いつも出演してる、長井・墨井・大竹あたりはともかく、メインの橋本のインパクトが序盤やや鈍い。もっとも、途中から話が乗ってくるので、最終的に悪くはないのだが…。それと『…もなく。』のエンディングが好きだったので、その分ハッピーエンドになったのは一寸ばかり不満もないことはない。でも面白いことだけは確か。
飛び火
劇団天動虫
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2016/09/28 (水) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★
面白いが冗長
飛び杼を発明したジョン・ケイの息子が、蒸気機関を発明したワットの弟子となり、さまざまな発明を続ける内に、蒸気機関を発展させた機械を発明しようとするが…、というフィクションを、新奇な発明で仕事を奪われるのではないかという不安をもつ労働者たちと対比しつつ、最後には思わぬ仕掛けも待っている。言いたい事は分かるし、興味深くのあるのだが、いかんせん、2時間20分は冗長過ぎる。同じシーンの繰り返しを排除し、説明的なセリフを思いきって切り、90分程度にまとめていたら素晴らしかったのに、と思う。
アキラ君は老け顔
くによし組
小劇場 楽園(東京都)
2016/09/27 (火) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★
セリフのキレがもっとあれば…
生まれた時から老け顔の22歳のアキラと、彼を取り巻く、母・同級生・バイト先の店長や同僚など、少し不思議な人々も登場する展開は面白い。実際に67歳の大谷朗が演じるが違和感がない。ただ、國吉=セリフのキレ、と思い込んでいる私には少し不満が残らないこともなかったが、芝居は面白かった。
『OKINAWA1972』
流山児★事務所
Space早稲田(東京都)
2016/09/15 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★
繋がりは今一つ
沖縄返還時の佐藤-ニクソンの密約を軸に、時間的にはその前後の時期の沖縄裏社会を描く。裏社会がなぜ存在し続けたのか、本渡と何が違うのか、などを描きつつ、背景にある密約=沖縄差別を見せようとしているように思える。エンターテインメントとしても面白いが、やはり、この関係をしっかり見せてもらう方が興味深い。
チャンバラ音楽劇幕末スープレックス
劇団子供鉅人
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2016/09/17 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★
エンターテインメントとして楽しい
熊川ふみ出演というので観に行ったのだが、休憩込み2時間半でも飽きない楽しさだった。明治期の見世物小屋から始まり、回想で幕末を駆け抜けた3姉妹とその周辺の人々の物語だが、ストーリー展開が重要というより、大人数の登場人物群の関係やキャラクターで楽しませてくれる。熊川は、3姉妹の長女という役で凛々しい姿を見せてくれた。
「しだれ桜」「わらい桜」
パンチドランカー
シアター711(東京都)
2016/09/15 (木) ~ 2016/09/22 (木)公演終了
満足度★★★
丁寧な群像劇
渡辺美弥子出演ということで観に行ったが、丁寧に作られた群像劇という印象だった。幕末から、それの10年後、さらに、その後、と、京都の山の中にあるしだれ桜の脇にあるうどん屋が舞台。そこに来る様々な人々の関わりを描いて、笑わせ、泣かせ、良い話で終わる。渡辺は、存在感が強烈で、濃い舞台だった。
毒と音楽
あひるなんちゃら
ザ・スズナリ(東京都)
2016/09/17 (土) ~ 2016/09/20 (火)公演終了
満足度★★★★
いつもながらの
駄弁芝居と自ら名乗っているけど、その通りの面白い時間と空間が現れる。根津,篠本の貫禄もさることながら、野村が大分「慣れて」きたという印象がある。松木がこういう役割というのも珍しい、ってゆーか、面白い。
遊侠 沓掛時次郎
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2016/08/27 (土) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★
股旅物の面白さは復活するか
8/30にも1回観ているのだが、時間が経って別物の芝居になっていた。この日から、病気の浅野の代役に松沢一之が立ったことも少し関係していると思う。胡散臭い役をやらせたら天下一品の松沢に代わったことで、ドサ回りの田舎芝居の雰囲気がしっかりと出て、劇中劇は笑える部分が倍増した。最後は劇中劇なのか、現実なのか、そこに謎を残したところが北村想の作戦なんだろうが、少し難しい気もした。ただし、映像系で活躍しているとは言え、初舞台の萩原みのりはなかなか立派な仕事をしていると思う。
魔法処女☆えるざ(30)
劇団だるめしあん
王子小劇場(東京都)
2016/09/15 (木) ~ 2016/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★
明るいエロが可愛く光る
「処女」と「セックス」とかエロいキーワードが満載なのに、イヤらしくなくなるほど馬鹿馬鹿しい設定が見事である。役者陣の人物造形が少し不十分な印象はあるものの、とにかく男女とも可愛く描かれているのは、坂本鈴の脚本の勝利と言える。
DISGRACED ディスグレイスト 恥辱
パソナグループ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2016/09/10 (土) ~ 2016/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★
タイトな会話劇
人は自分の出自(民族・宗教・肌の色・文化)にどれほど囚われているのか、をしっかり見せる105分。アメリカという国の状況を肌で感じることができない自分にとって、どれだけリアリティがあるのかと言えば、アメリカ人が観るのと違う立場にはならざるをえないけれど、それを乗り越えてタイトな舞台になっていた。と同時に、イスラムだけが特別な差別の対象になっている、という主張もあるように見えて、これは作者がイスラム系の出自だからだろうか、とも思う。
明るい家族、楽しいプロレス!
小松台東
駅前劇場(東京都)
2016/09/06 (火) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★
淡々とエキサイティング?
80年代頃の宮崎の、ある家族の物語を、ある意味で淡々と表現する。それをプロレス好きの小6の弟の視点で語る。いろいろと事件は起こるけれども、何かの物語があるというより、日常を素直に語っているような感じ。異儀田の母親や瓜生の父親など、それぞれの年齢になったのだなぁ、と感慨が深いが、祖父役の永山の存在は大きい。
日々ルルル
泥棒対策ライト
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2016/09/02 (金) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★
芝居テイストのダンス
大西智子出演というので観に行ったが、予想を越えて面白かった。何で今まで知らなかったんだろう。基本は日常的な動きをベースとしたダンスなのだけれど、一部で芝居的要素も取り入れる。全体に面白かったが、主宰の下司尚実に負う所が少し多い気がした。
緋色の刻印
激嬢ユニットバス
ワーサルシアター(東京都)
2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★
一寸ばかり焦点が絞り切れない
激バス・メンバーの南かおりが初の脚本・演出に挑戦、ということで、一応の及第点は得られただろう。本文の説明とは少し違った展開ではあったが、剱伎衆かむゐの力を借りて、時代劇エンターテインメントとしての殺陣シーンにも見応えがあるし、実は、的な最後の展開も面白い。ただし、3つのグループの混在が、ちょっと分かりにくい面もあったとは思う。その分、焦点は絞りきれていない気がした。
泡雪屋浪漫譚
あんっ♡HappyGirlsCollection
ザムザ阿佐谷(東京都)
2016/09/11 (日) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★
この世界観は
大島朋恵出演ということで観に行った。伝説の縄師・有末剛の緊縛夜話シリーズだが観るのは初めて。今回は芝居仕立てで観やすい作りになっていたのではないか。ただし、芝居としては、それほどクオリティが高いとは言えないようにも思うし、縄を見せるのには物足りない感じが否めない。
嘘より、甘い
タカハ劇団
小劇場B1(東京都)
2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
面白く怖い
古い喫茶店に、何かを信じさせようとする人々が集まる、という設定は興味深く、展開も非常に面白い。次々に起こる出来事と、その中で平静を保つ女主人(齋藤とも子)がキーとなるストーリーは見事で、高羽の面目躍如となる作品と言えそう。追加公演も当然と思える面白さ。
あなただけ元気
箱庭円舞曲
ザ・スズナリ(東京都)
2016/09/08 (木) ~ 2016/09/15 (木)公演終了
満足度★★★★★
箱庭らしい
派遣会社が除染や傭兵に派遣する人間を探す、という表面的に観れば社会派っぽいテーマながら、そこは古川らしく、しっかり人間関係の機微を描き、相変わらずの感触を持ち込んできている。社員同士の好き嫌いの変化や、細かいセリフの端々にも気を遣った脚本はていねいで、しかも、新たな劇団員の2人をしっかり使い、エンディングを任せているのは興味深い。本当に面白い作品だった。
ひなあられ
演劇ユニット「みそじん」
シアター風姿花伝(東京都)
2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★
勿体ない
登場人物の造型は分かりやすく、3姉妹の関係や物語の展開は悪くはないが、結局何をテーマにしているのか、正直言ってハッキリしていない。3姉妹の関係というか、次女の抱える少しの寂しさをテーマにしているように思えるのだが、それにしては登場人物が多過ぎて、エピソードの回収も巧くいっていない。役者陣はしっかりしたもので、与えられた役割を確実に自分のモノにしていると思えるのだから、脚本の不足ということだろうか。中島らしくない作品だった。