マクベス
第七劇場
atelier SENTIO(東京都)
2009/03/18 (水) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
日本と西洋の教養の差がでるのか?
センティオは狭いけど白塗りの壁と床、外の音が漏れ聞こえてくる生活臭漂う所が好き。
超満員のセンティオで、初第七劇場観劇。
ネタバレBOX
「マクベス」をはじめとして、シェークスピア戯曲をきちんと読んで学んだ事がないです。
これはおそらく多くの日本人がそうだと思うし、日本の演劇人ですら基礎教養として学んでいる、と言う人は多くはないと思います。
そんな中、今回の第七劇場はマクベスのストーリーはあえて追わず、マクベスとマクベス婦人との間をクローズアップして再構成した内容。
大元の戯曲が基礎教養として土台にある西洋でマクベスを演じる事と、それがない日本で演じる事には大きな違いがあると思う。
元を知っているものをどのように取上げ、演出するか、というところまで踏み込んでいるのが第七劇場版のマクベス。
最初に出てくる、編み物をしている狂言回してきな女性の存在等、原作を知らない上に更に判らなくなってしまう構成だったように思いました。
でも、舞台表現の美しさ、言葉の美しさなどを楽しむだけでも十分なんだけど。
特に表現、演出といった面は突出していて、美しくてうっとり見とれてしまうほど。
それでも、せっかくこれだけのものを作っているのだからちゃんと受け止めて理解してから楽しみたいな、と思いました。
そのためにはもっと勉強が必要な舞台・・・かな?
リア王
東京デスロック
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)
2009/03/26 (木) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
REBIRTHラスト
これでREBRITHシリーズはラストとの事です。
次はどこに向かうのか、デスロック・・・。
と思って当日パンフを見ると、日韓合同事業として秋に「ロミオとジュリエット」日本バージョンと韓国バージョンの上演!
これREBIRTHシリーズですよねえ?
今日はテレフォンショッキング形式アフタートークの内田慈さんが。あれれ・・・?
ネタバレBOX
内田さんは今日はソワレと思っていて15:00からの公演、見てもないそうです。というか、勿論開場にも来れず。
代わりに出てきたのが岩井秀人さんだったのが逆に嬉しかったですけど。
でも、18:00からの「転校生」を見に行くために巻きで進めて、途中で帰ってしまった・・・。
こういうハプニングも含めて、楽しかったです。
終わって外に出てみるとモモンガ・コンプレックス指導?のパフォーマンを思いがけずやってました。
キラリ☆ふじみ、良いすね。
交通の便が良ければ言う事ないのに。
肝心のリア王は、とにかく演歌でした。
演歌の似合う演目ですね。
「天城超え」から始まるリア王。
ただ、「大恋愛」で多田演出に惚れ込んで見てきたデスロックだけど、今回は今まで「話は良く判らないけど感動させられる圧倒的な演出」というのが弱かったように思いました。
アフタートークで岩井さんも「再生、大恋愛と感動して大泣きしたんだけど、今回はそれがなかった」と語っていて、多田さんは「今まではロミオトジュリエットならだるまさんが転んだ、マクベスならイス取りゲームとかひとつの大きな仕掛けでやってきたけど、今回は戯曲の部分部分を細かく取上げてひとつひとつを演出に変えてみた」と言っていて「たまたま全体的なものが好きだっただけなのかな?」と岩井さんも腑に落ちない様子でしたが、自分も同じ感じでした。
細かく戯曲を取上げて遊び心のある演出に変えてゆくというのも良いのだけど、その分作品トータルとしてのエネルギーが落ちた様な気がします。
戯曲のセリフは大音量の音楽にかき消されて聞こえない部分も多いのだから、演出のパワーというか勢いというか、それが落ちるとちょっと見ていて消化不良になってしまうな、と思いました。
もちろん擬似老人体験グッズを導入したり、落語をやったり、ふんどしで登場したり、追いかけっこしたり。
個々に見ると面白いんだけど、でも、どうも小手先の遊びに見えてしまうのが勿体なかったです。
単なるおふざけに見えてしまって。。。
去年見た大日本プロレスの「リア王」の方が「リア王」の筋がわかりやすい上にエネルギーを感じて、面白かったなあ。。。
演劇がシェークスピアでプロレスに負けてはいけないと思うのだけど。
ユートピア?◆フェスティバル/トーキョー09春
フェスティバル/トーキョー実行委員会
あうるすぽっと(東京都)
2009/03/23 (月) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
このフェスティバルで上演される意義のある演目!
せっかくこうして都がバックアップして国際色豊かに、大々的に行われる演劇フェスティバルで、おそらく今年の日本の演劇界最大のイベントだと思うので、そうした中で上演されるには最も意義のある企画なのではないでしょうか。
平田オリザ氏以外の2名の演出家は寡聞にして予備知識が全くなかったので、どのようなものが提示されるのか楽しみに見てきました。
ネタバレBOX
オープニングとエピローグがブザンソン国立演劇センター芸術監督のシルヴァン・モーリス氏。
それに挟まれるように、平田オリザ氏『クリスマス・イン・テヘラン』と、アミール・レザ・コへスタニ氏『サン・ミゲルの魚』。
平田オリザ氏の『クリスマス・イン・テヘラン』がまず最初に出来たと書いてあった。
そして『サン・ミゲルの魚』はそのバックステージもの。
この構成があまりに素晴らしくて!
「クリスマス・イン・テヘラン」で観客の気持ちをグッと掴んでおいて、「サン・ミゲルの魚」で観客にコミュニケーションというもののあり方や、このバックステージもの特有の、表舞台で見られない役者たちの姿を表現して。
まあ、実際のところは自分の出番の間にあんな風に野球ゲームに興じたり、なんて余裕は無いと思いますが・・・。
それに、実際の舞台が行われている間にあんな深刻な話をしている余裕はないでしょう。
役者は自分が舞台に出ていなくても、もっと集中してるはず・・・。
と思いつつもファンタジーとして十分受け入れてしまうだけの内容。
最後は既に滅んだ演劇が発掘されて、それを再生させるという試みを見せて終わるのだけど、ガスマスクを付けた役者たちがゆるーいダンスを見せるのが良く判らないです。
でも、その判らなさが、文化として滅んだ演劇を再生するということなのかな?
転校生◆フェスティバル/トーキョー09春
フェスティバル/トーキョー実行委員会
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2009/03/26 (木) ~ 2009/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
演目と劇場が合ってないのでは?
大絶賛のコメントの多い舞台なので、自分も楽しみにして観劇してきました。
でも、ちょっと何か違う。。。
皆さんが書き込んでられるような感動が自分の中に沸き起こってきません。
自分の感性が悪いのか、これを感動できない自分が悪いのか?
うーん。
ネタバレBOX
まず、東京藝術劇場の中ホールというデカイ空間が、自然な演技、同時多発な戯曲を客席に届けるのを阻害していたように思います。
役者さんの声も、本当に聞き耳を立てて聞いていないと聞き逃してしまうし、同時多発になったときは、もう雰囲気を眺めるだけで追って行けなかったです。
メッセージ的なものしっかり感じ取れたし、平田オリザさんがこれだけの女子高生の普通の会話を書いているってだけで考えてみるとおかしくてたまらないのだけど、箱が大きすぎて熱量が分散してしまって、凄く勿体なかったと思いました。
途中飛び降りた子がいたり、たまに演出がガラリと変わって、そこだけ演劇的な演劇になって、その方が逆に判りやすかったというのは皮肉だなあ。
「トトロはパンダじゃないって。トトロは化けもんだよ!」には爆笑してしまったけど。
新国立劇場の小ホールで見たかった芝居です。。。
インテレクチュアル・マスターベーション
パラドックス定数
シアター711(東京都)
2009/03/27 (金) ~ 2009/04/01 (水)公演終了
満足度★★★★
711に初めて足を踏み入れる
パラドックス定数の公演、しかもシアター711という新しい劇場ということで、かなりワクワク。
劇場に足を踏み入れて思ったのが・・・。
「前の映画館の作りをそのまま演劇に使ってるのね」って事。
映画館だった時のシネマアートンにも何度か足を運んでいたので、見覚えのある空間でした。
この劇場は空間の作りがちょっと縦長だけど、雰囲気があるし、なにより元々映画館なので、小劇場とは違うリラックスして座れるイスの作りが嬉しいです。
縦長の劇場は、舞台をやや中央に持ってきて客席を対面にする事で解決していました。
もっとも、個人的にはこの対面の客席って苦手なんだけど。。。
しかも今回は元々スクリーンだった方に座ったので、客なのに見られてる感ありありで、ちょっと馴染めない感じ。。。
肝心の内容は、、、今までは大人しめの心理戦的な舞台が多かったパラドックス定数ですが、最初からテンション高めで、箱が小さいわりに声を張った芝居にちょっと違和感・・・。
衣装も対象時代に見えないのが難点かな。
ネタバレBOX
でも、やはりパラドックス定数。
言葉のひとつひとつの重さが心地よいです。
いや、思いだけではなくて、今回は軽めのやりとりなんかもあって、意外と笑える部分もあったりして楽しめたのでした。
素舞台だし、展開的にもちょっと眠くなる所もあったけど、パラドックス定数好きを裏切らない舞台だと思いました。
同行二人
菅間馬鈴薯堂
王子小劇場(東京都)
2009/03/18 (水) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★
初見
劇団初見です。
開場が開演の15分前って事でロビーに人がたまってしまっていたけど、15分前に開場を設定する意味が良くわからないです。
開場は時間通りだったけど、開演は10分押しくらいでようやく開始。それなら早めに客入れを始めておけばいいのでは?
座席も良い席が半分くらい「予約席」となっていて、せっかく早く行っても小さいイス席になってしいました。桟敷も出ていたけど、王子ではあまり桟敷席って見た事ないです。
この劇場は客席をきちんと作れば見るのがつらい桟敷や中途半端な小さいイスを出さなくて良いはずなんだけど。。。
客入れ時の説明も、ひとりは「空調の関係で暑くなるかもしれないから上着で調節してください」等ハキハキと説明していたけど、もうひとり年配の方はボソボソ喋るし「上演時間は1時間26分くらいなので、お手洗いに行かれる方は、・・・どうぞ」と結局何を言いたいのか良くわからない始末。「途中休憩がないから今のうちにお済ませください」とか、はっきり言ってもらわないと、「どうぞ」って言われてもねえ。。。
という感じで運営が気になる公演でした。
ネタバレBOX
開場後は場内に音楽は無く無音。
演出ならそれはそれで良いのだけど、何となくこれからお芝居が始まるという高揚感が感じられなくて、中途半端な感じ。
舞台は静かに始まったかと思ったらいきなり大声を張って大きな演技の芝居になったり、統一感がなくて非常に見づらかったです。
連続したシリーズものっぽいですが、初めてみた自分でも特に気にならなかったのは良いところでしょう。
でも、話自体興味が無くて、どうでも良かったというのが正直なところ。
熟年の女性演歌歌手が四国に来た時のドサ周り公演でのエピソードだけど、流れる曲がどれも古臭く、演技も演出も一昔前という感じでいまいちノれず。
明確なストーリーも特に無く、感情移入できる人物もなく、ぼんやりと眺めているうちに終わってしまった。。。
王子小劇場でなかったら見ることはなかっただろうし、次はもう見ないだろうなあ。。。
コウカシタ◆フェスティバル/トーキョー09春
フェスティバル/トーキョー実行委員会
あうるすぽっと(東京都)
2009/03/14 (土) ~ 2009/03/20 (金)公演終了
満足度★★
よくわからないのは自分が悪いの・・・?
あうるすぽっとのデカい会場で最後列での鑑賞になってしまったせいか、ステージとの一体感を感じられなくて、遠くから眺めている感じで終わってしまったのが残念でした。
ダンス公演自体それほど見ている訳ではないけど、見に行くと良く理解できなくてもそれなりに圧倒されて魅了される何かがダンスにはあると思っているのですが、今回はそれが感じられなかったな。
これで4,500円ねえ。。。
ネタバレBOX
3人のワンピースの女性とか同じ背格好の男性ふたりとか、踊りをしっかりそろえなければならないのだと思うけど、キレイに揃ってるとは言いがたくて、ダンストしての洗練さに欠けているのが気になって仕方がなかった。
あと、ダンスではやはり一般人にはできない圧倒させる技量を見せ付けて欲しいのだけど、脱力さが売りなのか、あまりそういったものは見受けられなくて。
それならそれを補うだけの物語や演出があるのかというとそうでもなくて。
なんだか中途半端な印象でした。。。
残念。
春琴
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2009/03/05 (木) ~ 2009/03/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
嬉しい再演
昨年も観劇した「春琴」の嬉しい再演。
サイモン・マクバーニーという演出家の存在が大きい舞台。
でも実際はWSを繰り返す事で作り上げた作品ということだから、役者さんたちの演劇に対する真摯な姿勢と、それを引き出して方向付けた演出家の技量にやはり舌を巻いてしまいます。
谷崎潤一郎の作品を日本人以上に読み解いて立体化した事に、日本人としては嫉妬してしまうのでした。。。
演劇関係者はぜひ見てほしい作品です。
ネタバレBOX
キャストは一部入れ替わっているけど、見た印象としては昨年の初演時と大きな差はありませんでした。
でも、何度見ても見入ってしまう不思議な世界。
ほぼラジオの収録という形式でひとり語りでストーリーが語られてゆき、でも役者たちは舞台上から姿を消すことはなく、常に忙しなく動き回って舞台のワンシーン、ワンシーンを作り出してゆく。
あるときは小道具を運んでセットして、あるときはエキストラとして、ある時は背景のセットの一部として。
個が消されてひとつのイメージを作ることに全員が集中力を発揮してシーンを作ってゆく。
慌しく周りでセッティングのために他の役者たちが動き回っているのだけど、そのシーンが出来上がるとまるで魔法のように、元々そこにあったかのように別の世界が立ち上がる。
その切り返しの技術が素晴らしいです。
白い棒を使ってスピーディーに部屋を再現してゆくのは、本当に生きて立ち上がってくるようでした。
若い佐助のチョウソンハさんと幼い春琴(人形)のやり取りが凄く印象的でした。
そしてあの光の中に出演者たちが進んでいくと最後に三味線が破壊されるラスト。
演劇を見ていて良かった、と思わせてくれる作品です。
何回でも再演してください。
何回でも見にいきます!
15 MINUTES MADE VOLUME 5
Mrs.fictions
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2009/03/12 (木) ~ 2009/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
内容充実!とそうでもないのと・・・
ショーケース的なイベント公演なのでどうしても充実した作品とそうでないのが分かれてしまうのだけど、でも「15分の演劇作品」というものを意識した素敵な作品に出会えました。
個人的には劇団掘出者で気になっていた大澤夏美さんがMrs.fictions作品に出ているのを知らなかったので、開演して嬉しい喜びでした!
しかもほぼひとり芝居に近い形態。
これから化ける女優さんのひとりだなあ、と感じました。
あとは、ここに出てくるか!という「青☆組」。
15分という時間で最大限に魅力を出し切った「DULL-COLORED POP」。
このまま続けてほしい企画です。
次はどんな劇団に出会えるのだろう・・・?
ネタバレBOX
でも、やはり差は団体によって出てしまって、「ジエン社」とダンスの「MOKK」というのはちょっと合わなかったです。
東京ネジは本公演をまだ見た事がないのですが、とりあえず本公演を見たいと思わせるだけの内容でした。
内容は整理されてなくて凄く判りづらかったですけどね。
やはりMrs.fictionsが大澤夏美さんを抜擢してメインに持ってきたのが良かったです。
あれだけめまぐるしく表情を変え、静から動へそしてまた静へと繰り返す芝居を、決して暗くならず時にコミカルに演じる姿に見とれてしまいました。。。
「松任谷由美物語」という話自体はどうでも良かったですが、役者の魅力を引き出していたので良い戯曲だったのだと思います。
「青☆組」はもう反則!
これだけの実績とキャリアのある人が出てきて、しかもこの間の傑作「雨と猫といくつかの嘘」を思い起こさせる舞台。
面白くない訳がない!
今まで「青☆組」を見たことがない人も多いと思うからちょうど良い機会だったのかな。
そして「DULL-COLORED POP」。
谷賢一さんの戯曲は口調が堅いという印象があったけど、凄く自然な会話が展開されていた。
15mmにかけて「15分しかないの」という、一日の中に15分しか息を抜く暇がない女性のその15分のお話。
その女性を3名の女性で演じるのだけど、最近ひとりの人物を複数人で演じるという手法が色々なところで目立つようになってきたので、それ自体は目新しさは感じませんでした。
柿の中屋敷さんも柴幸男さんも得意にされている手法だし。
その貴重な15分に電話をかけてくるのが未練たらたらの元恋人の男性。
大きな事件が起こるわけではない話だけど、日常のほんのひとコマをこうやって巧みな演出で描くと味わい深いものになるんですね。
次回ダルカラの「ショート×7」が楽しみになる、そんな作品でした。
今まで見たダルカラの作品だと一番好きかも。。。
グランド・フィナーレ
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)
2009/02/10 (火) ~ 2009/02/15 (日)公演終了
満足度★★★★
わざわざ地方へ足を運ぶ価値のある演劇
演劇の東京への集中度合いは凄まじくて、それ以外の地域では大都市を除いては、なかなか上手くいかないというのが事実だと思います。
今回のキラリ☆ふじみ演劇祭は、池袋から電車で30分かからずに行ける(駅からのバスが大変なのだけど・・・)立地とはいえ、地方を拠点とした演劇の熟成を行おうとしている企画意図が素敵です。
ただ、当然地元民だけでなく、東京からの観劇も見込んでの興行であり、集まっているカンパニーや集団もほとんどが東京からわざわざ持ってきた、来てもらったという団体で、そうなるとキラリ☆ふじみが単に東京の演劇を切り取って持って来たいだけなのか、良くわからなくなってしまう。
そんな中で、今回の「グランド・フィナーレ」は、作・演出・出演者は東京の方がほとんどだと思うけど、キラリ☆ふじみで企画されて生まれた舞台で、「ここでしか見れないキラリ☆ふじみの演劇」と言えると思います。
という事で、個人的に昨年最も印象的だった舞台「大恋愛」の終着点である「グランド・フィナーレ」はどんな事があっても見逃す事ができなかったのでした。
ネタバレBOX
原作は読んでいないので、純粋に演劇として楽しみました。
話は松田洋二さん演じる「佐藤」の幼女愛好癖の結果としての自業自得的な罪と罰の中で葛藤する様を描いています。
その葛藤を描く手法が面白くて、10人弱の役者さんがファンシーな衣装を身にまとって、佐藤の心の中の言葉や、逆に彼に対する批判的な言葉等を発して、狂言回し的な位置付けとして最初から最後まで舞台上にいます。
自業自得の罪で娘から引き離された佐藤は、心の傷を決して癒そうとはしないで、自分の中に受け入れて無気力に生活しています。
後半は、会うことが許されない娘に誕生日の贈り物を準備したり、何とかしてプレゼントを渡そうとしたりする姿が描かれます。
正直なところ、あまり引き込まれる物語ではなかったです。
興味がある訳ではなかったです。
なので、個人的にはこの舞台の演劇的な表現の数々に惹かれました。
ファンシーな格好をした皆が同じく「佐藤」と名乗るコロスの集団が、歌って踊って陽気に作品世界を説明する。
これが下手すると学芸会的に見えてしまうのだけど、そこをしっかり演劇にしているのが作と演出の手腕だと思います。
松田洋二さんは、そういった陽気な連中とは異質な存在で、見ていて岩井秀人さんの作品らしい卑屈な人物像が形成されていました。
見ていて思ったのは、この作品は原作・上演台本・演出とあるうちのどの色が一番濃く出ている作品なのだろう、と言うことでした。
なので、帰りには台本と原作本を購入してしまったのでした。
ぱっと見た感じ、原作は個人の内面を徹底して描いて、個人的な話。
上演台本は、それを演劇として構成するにはどうしたら良いか、というのがあれこれとアイデアを巡らせて書かれています。
そしてそれを立体化する演出の手腕。
その中で、自分は上演台本を作成する段階での、原作からの変換というのが、この作品で一番大きかった様に思いました。
ファンシーなコロスたちを登場させる事で、暗くてジメジメして個人的だった話が演劇として活き活きと動きだしたように感じました。
今回の作品には原作・脚本・演出と、それぞれ一流の方々を集めて、キラリ☆ふじみという地域主導で製作された、わざわざ遠方から見に行く価値のある作品になっていたと思います。
地方演劇としては完全に土着作品ではないから、もっとこの地域で生み出されたものを見たいけど、これはこれで上質な企画公演でした。
この後のキラリ☆ふじみの企画の展開に期待します。
誰
掘出者
サンモールスタジオ(東京都)
2009/02/14 (土) ~ 2009/02/22 (日)公演終了
満足度★★★
前回・前々回とはちょっと違う・・・?
前作「ハート」が傑作だったので期待して見に行ってきました。
まず、今回は舞台が寂しかったな。。。
今回のチラシも凄くセンス良いし、前回・前々回の舞台の美しさにすっかりやられた人間としては、今回の普通のフローリングの床に学校で使うようなの机とイスがあるだけの現実的で味気ない舞台がちょっと残念。
内容はやはり掘出者さんらしい、丁寧な言葉のやり取りと繊細な感情の表現で大好き。
でも、何故か普通の舞台に見えてしまい残念でした。
前作は演出も素晴らしくてほれ込んでしまったのに。。。
今回は演出としてはストレートで普通ですよね。
飾り気のない舞台と普通のお芝居からだと、やはりせっかく持っている良いものが生きてこない気がしてしまいました。
俺の宇宙船、
五反田団
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2009/02/06 (金) ~ 2009/02/15 (日)公演終了
満足度★★★
うーん・・・?
三鷹での五反田団。
役者さんも普段の五反田団であまり見ない方たちが多いいのか、あまり五反田団を見たという印象ではなくて、違うものを見たような感じがしてしまった。
会場は星のホールをこんな風に使うか!という、大掛かりに会場を作り変えたL字型の客席。
舞台も星のホールの高くなった舞台ではなくて、特設ステージのようです。
これだけ会場に手を入れて、アゴラやヘリコプターのような会場を作っている努力は素晴らしいです。
NHKの時のような、ホールと劇団が合ってない、というような感覚はなかったです。
ただ、この抽象舞台が生活臭を奪ってしまっていたのが残念。
一ヶ所だけ衣類が散乱していて、そこが前田司郎さんが舞台に登場する時の定位置になります。
「あらわれる、とんでみる、いなくなる」を見て、前田戯曲・演出が揃って初めて前田作品が形成されると思ったけど、今回の舞台を見ると必ずしもそうでもないのか?と思いなおしてしまうのでした。
話は前田司郎さんもあれこれ考えているうちに、最初お題目的に考えていた話とは違うものになったそうです。
ネタバレBOX
女探偵と「少年探偵団」を名乗る30前男性と浮浪者グループが、最近街で子供の姿を見かけなくなった原因を探りに「IZAKAYAかーさん」という所へ乗り込んでゆく話。
でも、女探偵にとっては街で子供を見かけなくなったから、という依頼は二の次で、旦那の足の指紋の渦が逆巻きになったから宇宙人に入れ替わっている、と言う電波的な事が理由。
「善良な宇宙人」とか色々とキーワードは出てくるのだけど消化不良というか、最初から消化する事を考えていないのか、最終的には夫婦間の問題に行き着きます。
役者さんは皆さんうまいのだけど、五反田団の場合は上手ければ良いわけでもないと思うので、このあたりの違和感がかなりありました。
話は良く良く考えてみれば五反田団的なのかもしれないけど、現代建築のような舞台美術と役者さんの演技力で、逆に全くの別物を見せられた感じでした。
新国立劇場で見た「混じりあうこと、消えること」の時のような違和感かな?
唯一、前田司郎さんが出てきて、散乱する衣類の上でゴロゴロしたり、ボヤいたりするのが五反田団だなあ、という感じでした。
混血ロシア人がおかしかったです!
言ってる事が滅茶苦茶なんだけど常にマイペースで、ワイングラスにバスローブという分かりやすい金持ち。
「ロシアでは蟹を犬のように飼っているんだ」とか、ロシア人が聞いたら怒るような事ばかり言ってて楽しいです。
ラストは、夫婦の信頼というところに話を落としていくのもさすがです。
汝、隣人に声をかけよ
コマツ企画
王子小劇場(東京都)
2009/02/06 (金) ~ 2009/02/15 (日)公演終了
満足度★★★★
構成に唸ります
対面型の客席の真ん中が舞台。
真ん中に円が描かれている以外は素舞台。
上の方にはスクリーンが2つあります。
開演前はライトアップされた場内に静かに音楽が流れてます。
ストレートプレイの演劇が見たい人には馴染まないスタイルの演劇かもしれません。
でも、今回でコマツ企画さんの舞台を見るのは3作目だけど、伝えたい事がより伝わりやすい手の込んだ演出スタイルで、演出家としてのこまつみちるさんの力量が更にアップしてる事が如実に感じられました。
素舞台は演出家に力量がなければ成立しないですからね。
そして役者の皆さんはどの方も魅力的で、これだけ構成をしっかり組んだ舞台でもアドリブで和ませてくれて、皆さん素晴らしかったです。
ネタバレBOX
テーマは「普段話をしない人とも話をしよう」というところから結局人間に行き着いたということで、様々な立場の人たちが色々な形のコミュニケーションを見せてくれます。
そんな中、舞台上で微妙な立場になっている人をビデオカメラでとらえていて(操作してるのは川島さんでした!)、その表情がスクリーンに写し出されます。
あと、幕ごとにキーワードとなる言葉が映し出されたりして、スクリーンを見ると芝居が更に深く理解できる作りになってました。
でも、スクリーンがかなり上の方にあるので、舞台上に見入ってしまうとスクリーンを終えないのがちょっと勿体なかったです。。。
大ちゃんの「あなたはボランティアかもしれないけど、ボランティアで手をつなぐのはやめてください」というセリフは凄く心に突き刺さりました。
良いセリフが満載で、大きなストーリーがあるわけではないコラージュ的な作りだけど、凄く人間を感じさせる舞台でした。
いきなりのボーイズバーの本井さんから爆笑!
板倉さんとこまつみちるさんの修羅場のシーンのアドリブも面白かった!
川島さんの出番が少ないのがだけが残念でした。。。
写楽コンプレックス
劇団銀石
タイニイアリス(東京都)
2009/01/29 (木) ~ 2009/02/01 (日)公演終了
満足度★★★
面白かったですよ。
面白かったです。
でも、どうしても柿喰う客の姿がチラついてしまって・・・。
いわゆる柿フォローワーといった位置づけになってしまうと、劇団としてもあまりメリットにはならないと思うけど。
でも、その元気、勢い、迫力は伝わりました。
役者さんは人数が多いから人によって結構レベルに差が出てしまうけど、でもこの演出方法って意外と個人の差を縮める効果もあるので、それは良い効果かもしれませんね。
でも、目標の中屋敷さんはもっと先へ先へと行ってしまっているので、スタイルだけ持ってきただけじゃ物足りないです。
「銀石メソッド」って、柿がやってることを定義しただけに思えてしまうのが勿体ないです。。。
バナナ学園純情乙女組の方が、オリジナルティがあるように感じました。
ネタバレBOX
約90分の舞台。
でも、何だか長く感じられてしまった。。。
タイニイアリスのあの桟敷席のつらさのせいってのもあったけど。
地球という題材まで拡大していって、大航海時代とリンクさせるあたりは面白かったです。
時代はズレてるけど。
そこはフィクションということで力づくでねじ伏せている感じ。
役者さんは、沢山出てるけどキャラがしっかりしているので、どの人も印象的でした。
特に良かったのが、大統領候補、ヨーコ、写楽の母・妻・娘、歌舞伎役者、マルコポーロ。
特にヨーコの本当に楽しそうな笑顔と不思議なキレのある動きが場を和ませてくれてました。
存在感は写楽の母・妻・娘が圧倒的でした。
違う題材で、もう一度見てみたい劇団です。
四色の色鉛筆があれば
toi
シアタートラム(東京都)
2009/01/27 (火) ~ 2009/01/28 (水)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしい・・・
シアタートラムでどのような舞台を見せてくれるのだろう。
4つの短編でどのような構成で見せてくれるのだろう。
素舞台の開演前の舞台を見ていても、ワクワクさせられてしまいます。
会場に集まった人たちの期待値の高さがうかがえる開演前。
ロビーは演劇関係者が多かったです。
平日なのに立ち見がわんさか出る盛況な舞台でした。
圧倒的に密度が濃くて、気を抜く事なく集中した90分。
ネタバレBOX
とにかく気が抜けないし、気を抜く事さえ忘れてしまう。
我を忘れて舞台に見入る。
そんな4つの物語。
どれもギミックに富んで演劇的な企みに満ちた作品ですが、話の内容自体はありふれたふつうの出来事で、それがとても丁寧に描かれています。
その描き方に注目が集まるわけで。
旧作2本だけど「あゆみ」の短編バージョンは見たことなくて、「反復かつ連続」は初見。
「あゆみ」
去年アゴラで見たロングバージョンとは違う、3人で演じる短編バージョン。
一生を描ききるというよりは人生の選択と大人への成長を描いているという印象。
最初、役者さんが床にマットを敷くけどそこは黒子の通り道で、芝居が始まったら四角の照明が照らされて、そこがアゴラの時の白いスクリーンの意味合いになります。
その舞台を上手から下手へ移動しつつ、役柄を固定せずに、ひとりが照明から抜けるとその役を別の人が演じつつ照明の中に入ってくる。
このループで構成されているのは変わりません。
人だけでなくて、話も何度も何度も反復されて、それが時間軸に必ずしも従ったものではないけど、確実に登場人物の成長を描き出していました。
「ハイパーリンくん」
今回の新作。
授業で生徒が「緑色の空を見た」と発言した事を受けての、生徒と先生の間で交わされる数学的、科学的な広がりをみせる話。
10人以上が舞台に並ぶけど、実際の登場人物の数は不明で、それは特に問題ではなくて。
言葉がラップになってゆくという舞台だけど、単に言葉を交わすだけじゃなくて、円周率を延々リズム良くつないで言ったり、西暦の年号をあげて歴史を語ったり。
最後は役者さんが作る円が客席まで包んで、照明が落ちて暗闇の中続くセリフが宇宙的な空間の広がりを見事に演出していました。
「反復かつ連続」
一度見てみたかった作品。
一人の役者さんが朝のありふれた風景をひとり芝居する事から始まって、出かけて終わり。
次のループではさっきのシーンで役者さんが発していた言葉がスピーカーから流れて、それに被せて別の役を演じる。
それを多重的に重ね合わせる事でひとりで一家の朝の風景を描く作品。
最後、それまで重ねられた会話だけがスピーカーから流れて人が舞台上から姿を消すけど、しばらくしてそれまで登場していないと思っていた「おばあちゃん」が姿を現します。
このおばあちゃんのパートが凄く効果的で、これによってこの短編はギュっとひきしめます。
最後のおばあちゃんの「行ってきます・・・」のつぶやきが切ないです。
「純粋記憶再生装置」
今回用の新作2。
床に紙が敷き詰められて、その上で4人の役者さんがひと組の恋人たちの思い出を描きます。
4人で2人の役なのだけど、会話を交わしている役のひとは口パクで、役ではない人がセリフを言います。それを次々場所と人を入れ替えていくのが全体の構成。
時間軸が前後してゆくのが効果的で、交わされる言葉は他愛もないけど凄く繊細で、心の移り変わりを的確に描き出していました。
これだけ素晴らしい舞台を見せられると、演劇を見ていて良かったと思います。
演劇でなければ出来ない表現かと言われるとそうではない部分もあるのだけど、演劇だからこそ感動が大きいのは確かです。
目の前で役者さんがこれを表現しているからこそ価値があると思わせてくれます。
演劇の魅力を最大限に感じさせてくれて、作品世界に浸らせてくれる大切な90分でした。
星10個でも20個でも付けたい。。。
伝記
サンプル
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/01/15 (木) ~ 2009/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
あえて整理しない混然とした面白さ
サンプルは昨年の「家族の肖像」に続いて2回目。
前作で、舞台をあえて区切らないで、同じ空間で別の場所をクロスして演じたりしていて、それでかなり混然とした印象を受けました。
今回は舞台上はかなりすっきりと整理されていて、でも話の内容をあえて切り分けないで進行させる事で、やはりキレイに整理されていない複雑な混然とした雰囲気でした。
シリアスな話をしている一方ではふざけてたりして。
そんなところがサンプルなのかなあ、と思いました。
ネタバレBOX
シェルター製造で一財産をこさえた先代の伝記を製作するために、関係者に様々な話を聞いていくうちに生前は見えなかった真実の姿が浮き彫りになってきて、それが残された人たちの人生に影響を与えてゆく。
話としてはわかりやすいし、難しい事は何もないと思うのだけど、とにかく雑然とした演出が芝居の複雑さを生み出しています。
あえてスムーズな進行をさせない、ノイズが入るように小ネタや関係のない話題を挟んでくるあたり、面白い作りですね。
前作はそれが見づらくさせていたけど、今回の「伝記」はその小ネタが面白くて、ゆるーい雰囲気の中「アハハ・・・」という笑いが絶えません。
ああ、何でこんなに笑ってしまうのだろう?と自分でも不思議なくらい、笑いながら見ていました。
話自体は決して明るい訳ではなかったのだけど。。。
松井周さんの作品作りは毎回が実験なのかな?
とりあえず、目が離せない演出家であることは間違いないです。
でも、役者としても見たいのだけどねえ。。。
シアンのアダナミ full volume
ウラダイコク
王子小劇場(東京都)
2009/01/22 (木) ~ 2009/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
王子でまたまた掘出物
1月の王子小劇場は、無名の劇団や若手の劇団をバックアップする時期なのかな?
先週のカムヰヤッセンは板倉チヒロさんという芸達者な、既に認知度のある役者さんの力と魅力を最大限に引出す事で強烈な印象の舞台を作り上げたけど、今週のウラダイコクは個人プレーというよりチームプレーが光っていました。
最初、開演まではお客さんからお題を募っての即興芝居で、全身白タイツの4人が「オバマのオナラ」という寸劇をやっていて、まずこれで開場を暖めてました。
会場のお客さんの誘導もとても丁寧かつスムーズで、超満員の劇場でも混乱する事なく席につけました。
今回の舞台で感心したのは、作・演出の如月セイチローさんの前説から物語が始まっていくまでの流れ。
お客さんに語りかけ、「目をつぶってイメージしてください」と語りかけ、客のひとりひとりの頭の中に砂漠とそこで大切な誰かといるイメージを作らせます。
そして、目を開けると舞台が始まっているのでした。
ネタバレBOX
舞台は黒で統一されて、奥のほうに段になった台があって、その上でも芝居が進められるつくり。
とにかく役者さんが多いのだけど、キャラ作りがしっかりしていて、それぞれが強く印象に残ります。
そして、何といっても速いテンポの物語。
それに織り交ぜられてゆくショートコントや様々なネタ。
会話のテンポもよく、とにかく見ていてグイグイと惹きつけられてゆきます。
時代はいつごろなのでしょう?
とにかく昔の日本。刀を差した盗賊たちがお宝を狙う。
その盗賊団をまとめているのは女性で、その妖艶な魅力に男たちは皆魅了されているが、盗賊たちひとりひとりはお互いの腹を探りつつ、決して心から信頼する事なく、それでも同じ目的に向かって疾走してゆく。
しかし、その女性の存在が最後には盗賊団を破滅へと導いてゆくのだった。。。
とにかく軽快で、殺陣もあれば笑いもある。
劇団コーヒー牛乳と似た感触があって、とにかくエンターテイメントに徹した姿がいさぎよいです。
誰かひとりだけを立てたりするわけではなく、あくまでチームプレーで作られた話も、盗賊団やそれに狙われる金持ちの組織というものをうまく現していたと思います。
ひねりが効いたストーリーも良いし、映像の使い方やオープニング映像のセンス等もとても良い。
たまにふざけすぎなところもあったりするけど、それもご愛嬌、とすませられるだけの暖かい雰囲気を作ることに成功していたと思います。
終演後にアンケートに関して主催の如月セイチローさんが「お客様たちのとの交換日記のようなものだと思っています」と語っていたのが印象的でした。
本当に、客とのコミュニケーションを大切にして、客を楽しませるためにメンバーが一丸になって挑んでいる。
今後に期待を抱かせるに十分な舞台でした。
バカンスは冬休み
桃色バカンス
遊空間がざびぃ(東京都)
2009/01/22 (木) ~ 2009/01/25 (日)公演終了
満足度★★★
丁寧な芝居作りが好感
ある引きこもりの女性の家に出入りする友人、女性1名、男性1名、そしてなぜか居候がひとり。
一見暗くなりそうだし退屈しそうな題材を、主人公コウコの憎めない役柄の好演で明るく屈託のない舞台にしていました。
4人の登場人物それぞれのキャラ設定が凄くしっかりしていて、リアルに生活しているような自然体が良かったです。
話は、ありえない話ではあるけど、奇をてらっただけのものでは終わってなくて、丁寧な会話作りに好感が持てました。
ネタバレBOX
絵を書けなくなってしまって2年間引きこもりを続けるコウコ。
書きたいものがなくなって、「書くために書く」事を許せなくて。
でも、普段の生活からはそんな様子を全く感じさせる事もない、あっけらかんとして憎めない人。
そんな彼女の部屋に突然居候がやってくる。
高校時代から付き合いのある友人が、高校時代の友人が行くあてがなくてこまっているから、と言って連れてきたのだ。
1ヶ月住まわせてやってくれないか、と。
でも、その居候は実は既に死んでいて、身体だけ別の人の身体を借りて、残り少ないロスタイムにやり残した事をするために現世に残っているのだった。
そして、その彼女を連れてきた高校時代からの友人も、コウコにいつまでも引きこもっていないで、変わってほしい、変わるきっかけになるのでは、との思いがあって彼女を連れて来たのだった。
その家に出入りするもうひとり。
同じく高校時代からの友人の男性。
コウコを女性としてではなく、完全に友人として心配している。
そんな彼らが繰り広げる、一見ふつうの日常。
でも、会話の展開や作り方、キャラクターの作りのうまさがあって、意外と退屈しないのです。
最初から分かっていたのだけど、やはり居候の彼女はあの世へ旅立っていきます。
その彼女がいってしまった事が、コウコを変えるのだった。。。
何気ない、起伏の少ない舞台ではあるけど、だからこそたまにはこんな舞台の世界にふんわりと包まれるように時間を過ごしてみるのも良いのではないかな。
レドモン
カムヰヤッセン
王子小劇場(東京都)
2009/01/16 (金) ~ 2009/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★
じんわりくるラスト
かなり荒削りな台本の作品、と感じてしまったけど、それでも惹きつける魅力がタップリ詰まった作品でした。
シーンを切り取って見るとちょっと統一感がないけど、それはそれ。
クロムモリブデンから客演の板倉チヒロさんが大熱演で、感じは全然違うけど、存在感がコマツ企画「動転」の川島潤哉さんを思い出すほどでした。でも、この作品では板倉さんひとりがそういったキレた演技を負っていたせいで、バランス的にはどうだったのか疑問です。
板倉さんが出ないでこの魅力は出せなかったと思うし、この劇団自体の魅力はまだまだ計りかねるものがあったりします。
ネタバレBOX
レドモンという、日常に根付いた宇宙人の存在を扱ったSF。
作品世界を作り込んでいるため、その世界を説明するために最初に人形劇を見せたのは、わかりやすいけど説明的すぎかな。
賑やかなシーンが楽しくて好き。
授業のシーンなんて、逆切れする板倉さんに爆笑でした!
でも、おかしい、面白いだけでなくしっかり作り込んだドラマがあって、最後はじんわりと来ました。
ひょっとこ乱舞の松下仁さんをもっと見たかったな。
龍を撫でた男
一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド
d-倉庫(東京都)
2009/01/16 (金) ~ 2009/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
熱演ゆえに伝わりずらいもの
一徳会/K・A・Gはセンティバルで見逃したので、初めて見ることができました。
会場のd-倉庫も初。
さすが新しい小屋だけあって、綺麗。
天井も高いし、良い会場です。
舞台美術もよくできていて、舞台中央に更に一段高くなった段があって、その段の中央に椅子があり、段になっているところはいたるところから身を乗り出せるような穴が開いていて、役者は良くその中を這いずり回ってます。
そして、思いもかけないタイミングでひょっこりと姿を現します。
これが精神病を題材とした不思議な世界観と相まって、なんとも怪しげで幻想的な雰囲気を作り出しています。
このあたりの演出が面白く、秀逸。
ネタバレBOX
で、芝居の方はというと、極端にデフォルメされた役者の動きと表情。
セリフもひとつひとつが全力で力強い。
でも、それが逆に繊細で幻想的な世界観に合っていなくて、作品世界に入り込めなかったです。
小さな小屋なのに、まるでパルコで演じているように大きな声を張り上げ大げさに演じるのがどうにも馴染めなくて。。。
話もよくよく考えてみると、まるで昼ドラのような話。
とにかくドロドロ。
役者さんは大熱演だったし、舞台美術も素晴らしかったのに、話に引き込まれなかったのと、引き込むのを難しくするかのような演出が残念でした。
でも、別の話でまたみてみたい集団ではあります。