笑う門には福来たる〜女興行師 吉本せい〜
松竹
新橋演舞場(東京都)
2019/07/03 (水) ~ 2019/07/27 (土)公演終了
満足度★★★
面白かった。主演の藤原直美の間と存在感は別格だった。前進座の津上忠さんは「小道具は三回使え」というのが口癖だったと聞いたが、この舞台の「冷やし飴」の扱いは、まさにそのセオリー道理で感心した。
「興行主には間が大事屋」というセリフや、駆け落ちした芸人も、吉本せいの人生の節目節目に現れて、まさに3度繰り返される中で、主題を深めていた。
藤原直美演じる一代記なので、年齢に応じて、衣装やかつらをどんどん変えなければならない。そのための時間をとるための、場面作山熊のコントも巧みだった。そうした芝居作りの上でも、いろいろ教えられるところが多かった。ただ、思ったよりも笑いが少なかった。
骨と十字架
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/07/06 (土) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★
ヒトの進化論の研究者で、かつイエズス会司祭であったテイヤール(神農直隆)を中心に、信仰と科学をめぐる議論と葛藤を描いていた。テイヤールを審問するドミニコ会道士(近藤芳正)との対立が、一番の対立軸だが、作劇上はそこが少し弱い。
テイヤールの真面目な人格を信じているイエズス会の総長、弟子、同僚神父がテイヤールを支えている。力関係は1対4なので、どうしてもドミニコ会士の分が悪い。神による人間創造説の非科学性とあいまって、対等な対立にならないので、あまり議論に引き込まれなかった。これは少々マイナス。
しかし、一緒に見た同僚は大変感心していた。大学がキリスト教系で「キリスト教概論」の天地創造やアダムとイブの荒唐無稽についていけなかったそうだ。「聖書の話はすべて比喩ではないですか」というセリフに、「そうだったのか。そう考えれば悩まずに済んだのに」と膝をうっていた。信仰と科学の一体化を目指すテイヤールの話に、かつて疑問を覚えたキリスト教の神とは違って、親近感を覚えていた。
三人姉妹
地点
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2019/07/04 (木) ~ 2019/07/11 (木)公演終了
満足度★★★★
全く斬新であっけにとられたまま終わる75分。九人の登場人物は、四つん這いで現れ、くんずほぐれつ、相手を変えながら、二人組で絡み合い転げ回りながら、コラージュされたセリフをしゃべる。
舞台の上には舞台はばほぼいっぱいの透明の2メートルほどの高さのアクリル板の壁がある。それを登場人物たちが力一杯押したり引いたりするのも、舞台の運動量をあげる。セリフは叫ぶような大声で、チェーホフと聞いて思い浮かべるような陰影はない。衣装も体操着のような動き回りやすい気能的なもの。韻を踏むような、単語を解体するような独特のセリフ回しは、音楽性の回復なのか、意味の解体なのか。
チェーホフの人物たちの抱えた鬱屈は、表面のベールを剥ぎ取れば、身悶えするような、熱いマグマがたまっているということなのだろうか。心理の熱量を肉体の運動量に変換してみせた。
まだるっこしい駆け引きでできた、19世紀ロシアの社交芝居を3時間見せるより、オブラートを全て取り去って、75分の悶絶パフォーマンスを見せるという潔さがすごい。観客に小手先の演技でなく、文字通り体を張って挑戦してくる。それが、意外にケレンに終わらず、じかに響いてくるものがあった。大音量の効果音やアクリル板を叩く大きな音もその点で効果があった。
六月大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2019/06/01 (土) ~ 2019/06/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
よかった。期待に違わぬ出来。冒頭、学芸会のようなところから、しっかり笑わせる第二幕、そして、盛り上げて感動を与える第三幕と、素晴らしい作劇だった。
ドライビング ミス デイジー
ホリプロ
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/06/22 (土) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★★
熟練の老名優によるしみじみと人生を感じさせる舞台。映画の名前を知っていたが、元は舞台とは知らなかった。85歳の草笛光子さんの凜とした上流老婦人のたたずまいが魅力的で、彼女が舞台に出ただけで見とれてしまう。最後の97歳の老け込み方にも生への執念というか、ただならぬ迫力があった。
市村さんの朴訥な黒人運転手役もはまっていた。シンプルな戯曲が余計なものをそぎ落としているので、名優の醸し出す雰囲気を楽しむ舞台。場面転換が大変多いのが意外だったが、それも回り舞台でスピーディーに処理していた。演出もよかった。
渡りきらぬ橋
温泉ドラゴン
座・高円寺1(東京都)
2019/06/21 (金) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
面白かった。小劇場で女性役をみな男が演じると聞いて、どうなるかと思っていたが、思いの外はまっていた。笑いとシリアスのメリハリの付け方が絶妙で、飽きずに見られた。出てくる男は浮気者ばかりで、女はさみしさをまぎらわす(あるいは男を見返すように)文筆や雑誌作りに打ち込んでいく。男女の関係が明らかに非対称な話で、男としては見ていて尻がムズムズした。
長谷川時雨夫婦、生田俊月夫婦、岡田八千代夫婦、それぞれの冷えた仲でもくすぶる愛、という関係がよく演じられていた。ただ互いに「理解」しあった仲なので、大きな修羅場はない。そこが物足りないといえば物足りない。男のわがままをそんなに簡単に許していいのかと。ぎゃふんといわせてくれた方がすっきりするんだけど。
「女と男が対等になった社会では、私たちもこんなに傷つくことはないのでしょうか」というセリフがある。もちろん、現代もまだ「対等」ではない。「対等」になる日など来るのだろうか? もしきたとして、それで男女のもつれがなくなるかと言えば、違うだろう。「対等」になるとしたら、男ばかりでなく、女も浮気するようになって、それで男も傷つくようになる。それで対等になるという構図しか思いつかない。今でも外で働く女性、共働きだとそういうことはかなりある。男も傷つけば、女の傷はいえるのだろうか。とてもそうだとは思えない。
ピロートーキングブルース
FUKAIPRODUCE羽衣
本多劇場(東京都)
2019/06/20 (木) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★
木下歌舞伎の「摂州合邦辻」に感動したので、糸井さんのホーム公演を見てみました。3から4組の男女の寝物語は、正直あまりピンとこなかった。でもすが、歌と踊りが良かった。「摂州合邦辻」と似た動きと曲想もあって、「ああ、コレコレ」という感じで楽しめました。
東京喜劇 翔べないスペースマンと危険なシナリオ~ギャグマゲドンmission~
熱海五郎一座
新橋演舞場(東京都)
2019/05/31 (金) ~ 2019/06/26 (水)公演終了
満足度★★★★★
非常によくねられた脚本とコンビネーションで、大いに笑わせてもらいました。歌と踊り、ゲームまで織り込んで、大サービス。大変よくできた喜劇ショーで、来年もまた観たい。
【八田元夫を読む】 『まだ今日のほうが!』
劇団東演
東演パラータ(東京都)
2019/06/15 (土) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★
めったに見られない戯曲。リーディングということで、台本を持ちながらであったが、きちんと芝居をしていた。
戦前の党の地下活動を支える「ハウスキーパー」だった若い娘が中心。彼女が、かつて党活動で一緒に暮らした男と再会して、どう決着をつけるかがカギ。昔の男が、結局何の信念もない、かつてものにした女、金でも恵まれたことに今も未練をもっているだけという話をどうみるかで、作品評価は分かれるだろう。「戦前の党のみにくい内幕を描いた」か「破廉恥な男の哀れを描いた」ととるか。
アミとナミ
劇団桃唄309
座・高円寺1(東京都)
2019/06/12 (水) ~ 2019/06/16 (日)公演終了
満足度★★
老いたハンセン病元患者が青年に「木はゆっくりとしゃべる」と言う。そこが良かった。全体は焦点のはっきりしない、ふわっとした話で、期待したほどではなかった。
帰りに前作の「風が吹いた、帰ろう」の台本を買って読んだが、この方が、ハンセン病と現代の青年を巧みに、かつのっぴきならない形で結んでいて、よかった。
今回は前回のような正面からの描き方ではなく、ハンセン病と日常を結びつける形を模索しているが、まだまとまっていないままの、道半ばという感じであった。
キネマと恋人
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2019/06/08 (土) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★
才人ケラのセンスと、結集した映像、振り付け、音楽、美術のスタッフと、俳優のアンサンブルが見事に結晶した名舞台。単に演劇という枠をはみ出して、総合芸術というべきもの。歌劇を改革して、楽劇をつくったワーグナーを思い浮かべた。ウディ・アレンの映画を下敷きに、大きくはみ出さず、オリジナルで達成したのでない点で、1点減点した
ゴドーを待ちながら
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2019/06/12 (水) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★
コミカルで騒々しい舞台。ただ古い作品なので現代の客の前ではギャグが滑ってしまう。二幕目では楽屋ネタのアドリブが増えて、笑いも増えた。
この二人、何かを待っているというが、何も待ってなどいないのではないか。ただ暇つぶしをしているだけ。「人生は死ぬまでの暇つぶし」という言葉があるが、それを舞台にしたところが、ベケットの歴史的功績ではないか。
それまでの演劇は起承転結の、なんらかの筋を持っていた。フランス古典劇の三一致の法則はもち論、事件が起きて死や大団円に終わるシェイクスピア劇にしろ、最初に誰かが到着し、最後に出発するチェーホフ劇にしろ。ベケットは何も起きない劇を創始した。
人生はすべからく、今日も明日も、10年後も20年後も、基本は何も変わらない繰り返しに過ぎないと。人間の行いはその平板な時間を埋めることで、無為の不安と恐怖を覆い隠しているのだと。それがベケットの示した人生の真実ではなかったか。
その点で、「ゴドーさんは今日は来ません」という伝言を持ってくる少年は不要とも言える。しかし、これは未来とか、希望と呼ばれるものをの可視化するための仕掛けなのだろう。二人は暇つぶしに疲れて自殺というアイデアとも戯れるが、少年の伝言で、それもやめる。(勿論、首吊り用のロープが切れて、自殺もできない、馬鹿馬鹿しいという形になっていて、単純に少年の登場で自殺をやめるのではないが、そこには表面的な展開以上の意味がある)希望は虚妄かもしれないが、それがあるから人間はまた明日も生きていけるのだと。
アベルとカインの名で「全人類を代表している」というセリフがある。一人では何もできないが、二人いれば、関係が生まれ(多くは上下関係。主人のポゾーと奴隷のラッキーが示している。ウラとエスの二人も、ウラ上位は歴然としている)、暇つぶしができ、全人類に匹敵できるという暗喩である。
「ゴドー」は名前だけは有名で、梗概を聞けばそれでわかった気になる芝居である。最近、河合祥一郎の翻訳で戯曲も読んだ。それでも、つまらない芝居と思ったのが正直なところだった。今回、初めて舞台を見たが、事前には思いもしないほど、刺激を受けた。舞台を見ている時より、終わった後の心の中の波紋が長く続く舞台だった。
2.8次元
ラッパ屋
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/06/09 (日) ~ 2019/06/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
売れない新劇劇団がアニメ原作の「ミュージカル」に挑む物語。おすすめです。ピアノ、歌がうまくて、笑えて泣ける。演劇論にもなっていて、大衆演劇を道具たてにした井上ひさしに似ているところもある。1時間50分。
過激にして愛嬌あり 宮武外骨伝
オフィスワンダーランド・(一社)演劇集団ワンダーランド
座・高円寺1(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
現代の若者、気概を失ったかのようなマスコミ関係者に、宮武外骨の存在を知らしめようと工夫を凝らした舞台である。まずエピローグで、宮武外骨は明治の気骨のジャーナリストだった、という話を講談師の語り手で紹介する。本題に入ると、一転、舞台は現代のエログロ・ニュースサイトの編集部。思いがけなく政治家の汚職のネタを握ったが、それを発表すると政権やスポンサーから会社を潰される、と逡巡する編集長。そこに、外骨がタイムスリップ(!)で現れ、そんなことで恐れるな、俺の生涯を見ろ、と一代記を演じる。編集部には政治家の意を呈したヤクザが脅迫にあらわれるが、外骨は、彼らにも自分の話を聞かせるる。その結末は?
外骨は「迫害は勝利なり」と何度も発禁・投獄・罰金などの言論統制・弾圧をうけても、決してへこたれなかった。とくに刑務所の中で雑誌を作って売り出そうとしたのは、「退屈な毎日を少しでも面白く使用」という茶目っ気混じりのバイタリティーからだというのが面白かった。
刑務所の話は20代前半だから、恐れを知らない青年だったのだろう。ただ、「滑稽新聞」を廃刊したのは42歳で、今から見ると、早すぎる引退。さすがの外骨も頑張りすぎて、不惑でモチベーションが下がったのだろうか。「太く短く」生きるは明治の青春だが、現代は「太く長く」が求められる時代。そこが難しい。
お節介なナレーターあり、下ネタ連発のギャグ満載、ふざけたキャラクターが次々と、お行儀の悪い舞台である。しかし、それを通して語られる、「(ジャーナリストの)我々は絶望してはいけない。我々の絶望は、国民全体の悲劇だ」という訴えに、身を引き締めるものがあった。
オレステイア
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/06/06 (木) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
元は3部作のギリシア悲劇を、現代英国の若手激作家がひとつにまとめた。重厚にして深淵で見応え充分。俳優の演技・存在感を堪能できる舞台だった。平知盛のせりふ「見るべきほどのことは見つ」という気分になった。そういえば、古典の現代化、武将をめぐる生死のドラマなど、「子午線の祀り」と共通点がある。
ビューティフルワールド
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/06/07 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
妻が胸に秘めていた夫への恨みつらみ、夫の孤独、娘の秘密…平穏そうに見えた家族の地中のマグマが、引きこもりの甥を居候させることから噴き出してくる。家業のカフェの店員たちの個性的な存在感も含めて、素晴らしい舞台だった。
後半、娘のひみつが明らかになるところは、互いの本音がぶつかり合う修羅場なのに、そこが客席の爆笑に次ぐ爆笑をまきおこす。井上ひさしの「日野浦姫物語」の悲惨で爆笑のクライマックスを思い出した。俳優はもちろん、作・演出の蓬莱竜太の底知れない力に脱帽である。
北齋漫畫
東京グローブ座
東京グローブ座(東京都)
2019/06/09 (日) ~ 2019/07/07 (日)公演終了
満足度★★★★
ご存知、画狂葛飾北斎の若き日から90歳の死までを描く評伝劇。華のある芸達者たちがそろって、安心して見られる芝居だった。北斎の代表作がプロジェクション・マッピングで舞台に大きく映し出され、目でも楽しめた。音楽もモダンで和風な曲が、場面場面を盛り上げた。
二匹のタコが海女と乳繰る絵を、昔の恋人によく似た若い女性(=佐藤江梨子)のモデルで描こうと、狂気に近い世界に入っていく場面が最大の見せ場。一番北斎の、常識も生活も顧みずに。自分の絵にのめり込んでいく生き方を示していた。ただ関ジャ二♾の横山ではまだ迫力不足。初演は北斎を緒形拳が演じたそうだが、緒形拳で見てみたかった。
北斎を献身的に支え続け、自身も才能ある画家だった娘のお栄(応為)=堺小春、生活破滅型の北斎とは対照的な、堅実で生真面目な馬琴(=木村了)の二人がよかった。こうした周囲の人々に支えられて、北斎の仕事があったことがわかる。しかし、矢代静一は最後、北斎を捕まえきれずに終わったのではないか。それだけ、北斎が謎の多い大きくて奥深い存在だということだが。
上演時間は前半80分、休憩20分、後半70分の計2時間50分。しかし長くは感じない。特に前半はテンポが良く、あっという間の80分だった。休憩を挟んで、年月が大きく飛んで、後半は89歳の北斎と同じく老人の馬琴。老け顔や白内障を表現した特殊メイクが見事だった。
らぶゆ
KAKUTA
本多劇場(東京都)
2019/06/02 (日) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
刑務所で一緒だった4人が、出所して、ひょんなことから田舎の一軒家で共同生活を始める。元ヤクの売人、泥棒、離婚して娘とやってきた詐欺師など、それぞれが軽くはない過去を背負っている。優しくも保身的な村の住人との交流の中、思いがけない波風が次々起きる…
作・演出の上、出演もする桑原裕子の「フィリピン花嫁」の怪演が圧巻。大いに笑わせられた。松金よね子の真面目なユーモアもいい。中村中のことは知らずに見て、普通の女優がトランスジェンダー役をやっているのだと思った。彼女もジェンダーの狭間の存在を好演していた。
化粧二題
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2019/06/03 (月) ~ 2019/06/16 (日)公演終了
満足度★★★★
19年前の初演以来の観劇。内野聖陽の男座長が素晴らしかった。声色、間合い、ユーモア、動き。裸一貫から座長になった誇りと意地、母に捨てられた悲しみと思慕の、相反する思いを見事に表現していた。
女座長の有森也実は線が細い印象だったが、別れた我が子への思いがこみ上げるところはさすがで。、引き込まれた。
ジャガーの眼
劇団唐組
花園神社(東京都)
2019/05/04 (土) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
唐十郎作品を見るのは4作目だが、今回は今ひとつであった。「吸血姫」など話がもっとぶっ飛んでいたし、濃いキャラが次々出ていた。しかし今回は全部伏線を回収してみると、理屈っぽかった。扉を担いだ探偵たちなどその他大勢で、面白い人物が少なかった。その人物もぶっ飛び度が足りないので、唐にしては小粒で大人しい印象だった。
臓器移植がネタだったが、芥川受賞作「佐川君への手紙」は人肉食がテーマだった。そういう他人の肉体の一部を我が物にするという行為に、唐十郎はフェティシズム的な関心をもっていたのだろうか?