らぶゆ 公演情報 KAKUTA「らぶゆ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    刑務所で一緒だった4人が、出所して、ひょんなことから田舎の一軒家で共同生活を始める。元ヤクの売人、泥棒、離婚して娘とやってきた詐欺師など、それぞれが軽くはない過去を背負っている。優しくも保身的な村の住人との交流の中、思いがけない波風が次々起きる…
    作・演出の上、出演もする桑原裕子の「フィリピン花嫁」の怪演が圧巻。大いに笑わせられた。松金よね子の真面目なユーモアもいい。中村中のことは知らずに見て、普通の女優がトランスジェンダー役をやっているのだと思った。彼女もジェンダーの狭間の存在を好演していた。

    ネタバレBOX

    見てきた友人は口々に「よかった!」というので、私の見方が悪いのかもしれないが、いくつか物足りないところが残った。なんといっても4人の元受刑者それぞれの事情を描くので、ひとりひとりの掘り下げが不足したと思う。

    それぞれは重いドラマなのだが、大きな衝突によるピークはない。そういうヤマとしては、東日本大震災のなかでの、みのすけが松金よね子に自分の過去を告白する場面が一番だろう。それでも、その場は言いっぱなしで終わって、最後はなぜか仲直り気味で幕になる。この舞台が好評なのは、観客が想像力で、舞台で描かれている以上の人物の内面のドラマ、葛藤を味わうからなのだろう。そういう作り方もあるのはわかるので、これは好みの問題でもある。

    そのほかにも「5人の元受刑者」と書いている人もいるように、実は刑務所仲間は5人。しかし共同生活はひとり来ないので4人。この回想シーンでしか現れない一番若いコッペ(置田浩紳)はどうなったのか。それが放置されているのも気になった。
    もっと言えば、刑務所にいたことを隠したい人間が、ムショ仲間と一緒に暮らすというのは根本的矛盾。その飛躍がなぜ起きたのかも私にはすんなりこなかった。大きな不幸を背負った人間が、ユートピアを目指すというお話なので、あまり杓子定規に考えるべきではないのだろう。

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    2019/06/08 10:27

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