
蛍の光、窓のイージス
劇団文化座
あうるすぽっと(東京都)
2025/10/17 (金) ~ 2025/10/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
流石の畑澤聖悟氏、高校教師だっただけに職員室モノは圧倒的リアリティー。(定年になったと聞いたが今も?)。
2019年3月1日、秋田県の私立高校卒業式の朝。卒業生代表の答辞を読む季山采加(あやか)さんの原稿が問題になっている。担任の髙橋美沙さん、学年主任の津田二朗氏の困惑。6年後に高校から300mの距離に位置する陸上自衛隊新屋演習場にイージス・アショアの配備が決定。これはレーダーによる探知で弾道ミサイルを迎撃する防衛システム。北朝鮮からの弾道ミサイル発射が大いなる懸念となっており、政府はアメリカからの購入を決めた。季山采加さんの答辞はそれに不安を抱く内容。髙橋美沙さんはこういう発言が左翼系メディアの格好の餌となり、無用なトラブルに巻き込まれることを危惧。無駄に大人の政治的対立に巻き込まれても碌な事はない。何とか書き直させて無難な内容で終わらせたい。学校の経営を握る理事長がタカ派の与党政権の支持陣営であることも。
秋田の英雄、栗田定之丞(くりださだのじょう)の存在が作品の背景を支える。古来より飛砂(ひさ)害に苦しんできた海沿いの住民。栗田定之丞は独自の植林法・塞向法(さいこうほう)を考案し全長120kmに及ぶ黒松の海岸砂防林を築き上げた。
髙橋美沙さんは東ちづるの宝塚風で華がある。
田中義剛風秋田弁丸出しの教師、白幡大介氏がムードメーカー。峰竜太っぽくもある。
軍事オタクの演劇部顧問、桑原泰氏。
隠れてデモ活動を個人で行なっている早苗翔太郎氏。
長年の勤務で教師の中にも教え子が沢山いる教頭の米山実氏がキーマンに。
政治と教育と国家の進む道、いろんなテーマを巧く組み込んだ脚本。答辞の内容一つで大騒ぎする大人達を戯画化する視点。感心した。後期岡本喜八っぽくもある。

キュクロプス ─貧民街の怪物(東京公演)
清流劇場
駅前劇場(東京都)
2025/10/23 (木) ~ 2025/10/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「タマコさ〜ん、私生きてます〜」
川が決壊して氾濫、河川敷のバラックだけが孤島のように浮かび上がる暴風の中、橋の上に逃がした荷物の見張り番をし続ける80代の老婆。
「タマコさ〜ん、私生きてます〜」と30分毎に橋の上から大声で伝達しなくてはならない。報酬として300円。多分貨幣価値は今の十倍だろうから3000円か。身寄りがなく誰の目にも映らない浮浪者オシズを演じた曽木亜古弥さんがMVP。
ステージ中央に廻り舞台、回転する盆を人力で動かす。ぐるぐるぐるぐる台風で飛ばされかかる危機的なバラックを表現。ぐるぐる回りながらどうにか家を守らねば。SEのせいで台詞がよく聴き取れないのが残念。マイクの音が混ざる。全編この調子か···、と危惧したがオープニングだけだった。
1961年(昭和36年)7月、兵庫県尼崎市武庫川(むこがわ)河川敷、国道武庫大橋の袂にバラックが建つ。屋根に火の玉のようにも見える一つ目のマーク。(現実には集落に1200人程が暮らしていた)。
1895年(明治28年)から川の氾濫を防ぐ為の大規模な工事が始まり、集められた労働者達は河川敷に作られた飯場に寝泊まりした。危険で過酷な作業の為、朝鮮人の割合が多かった。仕方なくそこで暮らし続けた者達が邪魔になれば不法占拠の名のもとに追い払う。
町の住民から「一つ目」と呼ばれて差別されている集落に対し7月28日、国は強制代執行を行なう。半日で解体除去、全ては何もなかったかのように。それは1964年の東京オリンピックに向けた美観整備でもあった。
BC5世紀に古代ギリシアのエウリピデスが書いた戯曲『キュクロプス』。BC8世紀にホメーロスが成立させたとされる叙事詩『オデュッセイア』の第9歌を元に作られている。英雄オデュッセウス一行が乗った船がキュクロプス島に流れ着く。そこは一つ目巨人族の島で洞窟に囚われた一行は次々と食べられてしまう。オデュッセウスはキュクロプスを酒で酔わせ、一つ目を潰して脱出する。名前を聞かれたオデュッセウスは「ウーティス(誰でもない)だ」と嘘を教える。仲間達に「誰にやられたのか?」と聞かれ「誰でもないんだ、誰でもないんだ」と答えて皆が呆れる笑い話に。
今作はこの話の舞台を昭和36年の武庫川バラック強制代執行に翻案。正義の英雄オデュッセウスが愚かな未開の蛮族を成敗する逸話は果たして真実だったのか?そもそも正義とは本当に正しいのか?
開演前に主宰の田中孝弥氏のビフォアトーク。これが秀逸。田中孝弥氏はガタイのいい古坂大魔王。話が面白い。
クズ鉄屋の親方(アンディ岸本氏)とその妻タマコ(日永貴子さん)。キツイ仕事ばかり押し付けられるタマコの弟(大対源氏)と妻の山本香織さん。親方の妹(八田麻住さん)と旦那の辻登志夫氏。皆家族だと信頼し合っては不安に苛まれ、いつか離れることを考えては日々の生活に追われていた。
一つ目の一家は漁師町の着物を古代ローマの軍装風アレンジで着こなす。
代執行の役人達は制服的な青を混じえた服を着る。
アンディ岸本氏はスキンヘッドの川津祐介。愛用タンバリンでの怒りながらの陽気なムーヴが最高。「俺は河川敷の王子様」と歌う。美声。
八田麻住さんは岸本加世子っぽい。左目の充血と常用する杖が気になる。
辻登志夫氏は芸達者で酒飲みの見事な屑キャラ。アコギで歌う「ならず者」が良かった。香港功夫映画でお馴染みの火星(マース)っぽい。
代執行責任者の髙口真吾氏はフット後藤っぽい。
下手でピアノの生演奏、仙波宏文氏。曲が良い。
凄く面白かった。桟敷童子でこのネタをやったらどうなるのか、気になる。差別される側とする側を早着替えで同じ役者がこなす妙味。

明日を落としても
兵庫県立芸術文化センター
EX THEATER ROPPONGI(東京都)
2025/10/22 (水) ~ 2025/10/27 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
捩れた時間軸。この作家の武器は語り口にある。話が時空を超えてすっ飛んでいく刹那の快感。遣り口が小説っぽい。あれ?これ、いつの話なのか?と頭の中でガチャガチャ構成を手繰り寄せる。ばら撒かれたフラグメントを脳内で整える。BUCK-TICKに『VICTIMS OF LOVE』という曲があって再録BEST版では歌詞の順番がバラバラにされている。当時、櫻井敦司は「歌詞を書いたカードをばら撒いて拾い集めたような構成」と語っていた。それでも伝わるものは伝わる不思議。話の関係性を読み取る脳の認識機能。関連する物事を推理し少しずつ組み立てていく。
阪神・淡路大震災、1995年1月17日5時46分52秒にマグニチュード7.3の地震が発生。死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名。2011年3月11日に起きた東日本大震災は死因の9割以上が津波による溺死であったが、こちらは建造物の倒壊による窒息、圧死が殆どであった。
震災から10年、復興のシンボルとして建てられた兵庫県立芸術文化センター。開館20周年記念作はピンク地底人3号氏の書き下ろし。
作家は演出の栗山民也氏との相性がいいのでは。互いに足りない部分を補うような関係性。
舞台は新神戸駅近くの桐野旅館、2025年現在の様子と1994年から1995年に掛けての日々が交互に描かれる。旅館を継いだ社長に尾上寛之氏。妻の田畑智子さんは女将として取り仕切る。産まれたばかりの赤ん坊、遥。先代からの番頭格、春海四方氏。
主人公である佐藤隆太氏はやる気のない従業員、社長の弟である。かつて定時制高校に通っていた時代、ボクシングに情熱を燃やしたがそれも靭帯を切って呆気なく終わった。追憶の残り火のように吊るされたままのサンドバッグ。
物語は田畑智子さんの学生時代の級友(富田靖子さん)が息子(牧島輝氏)のバイト採用のお願いに来たことから動き出す。息子は喧嘩っ早いヤンキーで礼儀知らず、定時制高校にも禄に行ってない。職に就いてもすぐに喧嘩でクビになる。社長はこのどうしようもなさが弟そっくりだと思った。3ヶ月の見習い期間中、教育係として佐藤隆太氏が面倒を見ることに。
MVPは牧島輝(ひかる)氏。リアルなイキったヤンキーキャラを自然に演じている。富田靖子さんを背後から軽々と持ち上げたり人形のように横抱きにするシーンは場内バカ受け。
佐藤隆太氏がヤンキーをスポーツで更生させる流れは『ROOKIES』っぽいのでは。(観ていないが)。ボクシングに嵌まっていく流れが興奮する。
佐藤隆太氏は昨年の『GOOD -善き人-』の自然に段々とナチスに取り込まれていく大学教授役が素晴らしかった。普通の人間の尺度を持っているので観客も心を寄せ易い。
酒向芳(さこうよし)氏は映画『検察側の罪人』に大抜擢され、怪演で狂い咲き注目を浴びた。蜷川幸雄似。今作でも妙に意味有りげな存在感。
30年前の震災の傷が全く癒えないままの主人公。同じ所をぐるぐるぐるぐるループしている感覚。歳だけ取るが見える景色は何も変わりゃしない。そのリアルさといつまでも繰り返す悔恨。もしあの時ああだったら。もしあの時こうだったら。全てが自分の選択でどうにかなったものだとの誤解。そんな力は個人にはないよ。受け止め切れない現実と時間を掛けて折り合いを付けるしかない。とにかく時間は掛かるだろう。けれどきっとその時は訪れる。きっと訪れる。
是非観に行って頂きたい。

焼肉ドラゴン
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2025/10/07 (火) ~ 2025/10/27 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第一幕90分休憩15分第二幕75分。
チェーホフの『三人姉妹』をだぶらせる人が多いと思う。立ち昇る諦念は『ワーニャ伯父さん』や『桜の園』にも。人生を蹂躙される不合理を運命だ宿命だと無理矢理受け入れ生きていかざるを得ない。無力なんだ、人間は。でもそれだって気持ち次第だろう。気持ちの持ちようで何とか生きていける。それはどんな気持ちなのか?一体どんな?
飛行機が近くを飛ぶ度に轟音と振動、桜の花が音を立てて散ってゆく。ピンクの雨がスラムのトタン屋根を染め上げる。少年はそれが好きで好きで堪らなかった。明るかった少年は日本人ばかりの私立中学校に入れられ差別と虐めで失語症を患う。登校拒否で日がな屋根の上に登り自分の世界に浸った。こんな町は大嫌いだ!こんな連中は大嫌いだ!自分の出自を呪うように汚らしいゴミの町を睨みつける。そんな町を一瞬にして桜吹雪が塗り替えてくれる。
1969年春、大阪国際空港に近い伊丹市中村地区、国有地を不法占拠して暮らす在日韓国人の集落。太平洋戦争で左腕を失くした隻腕の男、金龍吉〈キム・ヨンギル〉(イ・ヨンソク氏)の営む「焼肉ドラゴン」。妻(コ・スヒさん)、右足の悪い長女(智順〈ちすん〉さん)、次女(村川絵梨さん)、クラブで働く三女(チョン・スヨンさん)、中学生の長男(北野秀気氏)。
常連客の太った陽気な櫻井章喜(あきよし)氏、アコーディオン奏者の朴勝哲(パク・シュンチョル)氏、韓国太鼓(チャング)奏者の崔在哲(チェ・ジェチョル)氏。櫻井章喜氏の親戚であるキム・ムンシク氏が時折顔を出す。彼はリヤカーにドラム缶二つ載せて5km離れた豊中まで豚の餌としてうどんの茹で汁を貰い受ける仕事をしている。
次女の婚約者、千葉哲也氏、大学出だが仕事が続かず遊んでばかりいる。
三女の働くクラブ支配人、石原由宇氏。かっぽれが持ちネタで多才な男。歌手を夢見る三女は彼に夢中。
砂利をトラックで運搬して羽振りのいい韓国人、パク・スヨン氏は舞の海似。
1970年に大阪万博が開催される為、都市開発の名のもとに朝鮮部落の解体が強制執行、1971年までの物語。
お父さん=アボジ、パパ=アッパ。
お母さん=オモニ、ママ=オンマ。
「これが私の宿命なのか···。」といつも嘆いているコ・スヒさん。
「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる。」と自分に言い聞かせるように呟くイ・ヨンソク氏。
「帰るところはない。日本で生きていくしかないんや。」
キャスティングが神懸かっている。当て書きとしか思えない。この中で暴れ回る千葉哲也氏は日本代表の貫禄。
必見。

ロンリー・アイランド
ティーファクトリー
ザ・スズナリ(東京都)
2025/10/10 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
冒頭、前説かと思いきや月船さららさんの挨拶からスタート。劇中劇の前説シーン。トライアウト(試験興行)として上演後に観客を交えたディスカッションを行なうと。
ところは新宿歌舞伎町のバー、マスターで劇作・演出家の田中壮太郎氏がいる。トライアウトが終わり、打ち上げを兼ねた意見交流会。加藤虎ノ介氏は役者を辞めたいと相談。月船さららさんは日系アメリカ人の鈴木裕樹氏の演技が大仰なので本公演では代えてくれと言う。それを聞いた鈴木裕樹氏はエキサイト、差別ではないか?と。近くのガールズバーで働く水野花梨さんが顔を出す。「東日本大震災の年に生まれたから絆と名付けられました。この名前は嫌いなのでキズって呼んで下さい。」田中壮太郎氏の古くからの友人、沢田冬樹氏が訪れる。反社らしい。舞台のテーマである「今現在の日本人と戦争」についてのディスカッション。突然そこに轟音と振動、爆発。北朝鮮からのミサイルが着弾したらしい。パニック。
白地に墨筆の斜線が幾筋も入った背景。セットの椅子やカウンター、テーブルにもそれに合わせた斜線が。戦場のシーンになると背面の幕がステージ全体に掛けられ裏地になる。赤地に黒の斜線。カウンターやテーブル、椅子の凹凸で戦地の地形を表現。
加藤虎ノ介氏は桑マン似。
月船さららさんは漫画顔。『この世界の片隅に』の義姉、黒村径子や時代劇漫画に出て来る女キャラのよう。独特な目。特に今作は表情が多彩。
新宿周辺に今夜も棲息する業界ゴロ、沢田冬樹氏。宇崎竜童や成田裕介監督とかミッキー・カーチスみたいな風貌。じゃあ飲み屋はburaか。
水野花梨さんは巨乳で可愛い。『abc♢赤坂ビーンズクラブ』からの振り幅。
鈴木裕樹氏は目が薬物中毒者。

セイムタイム, ネクストイヤー
劇団しゃれこうべ
スタジオしゃれこうべ(東京都)
2025/10/11 (土) ~ 2025/10/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
戯曲の出来が素晴らしい。これは傑作。一夜限りの情事が余りにも良過ぎた為、毎年一夜だけ不倫する事を決めた家庭持ち男女の25年間の物語。思いっ切り下ネタとリアルな男性の思考回路からスタートする為、登場人物に信頼が置ける。SEXの相性がいいというのは理由として通る。笑いのセンスはウディ・アレン。時代をリンクさせる手法は後の作品、『フォレスト・ガンプ』へと続いていく。(この戯曲は1975年、『フォレスト・ガンプ』の原作は1985年)。
時代は1951年、アメリカ東海岸ニュージャージー州の会計士ジョージ(木田博喜氏)27歳。丁度合衆国中央に位置するオクラホマ州の主婦ドリス(和泉美春さん)24歳。この二人がたまたまアメリカ西海岸カリフォルニア州のレストランで出逢う。家から遠く離れジョージの泊まる海辺のコテージで一夜限りの情事に耽ける。毎年同じ時期に顧客の監査業務の為この地を訪れるジョージ。そのコテージの老管理人チャーマーズとして安田美忍さんが登場。前説、暗転時の場面転換などかなりの作業量を一人で見事にこなす。二人芝居でネタは続くのか?と思いきや、ありとあらゆるアイディア満載。血を見ただけで失神してしまうジョージのキャラが効いている。年と共に二人の生き方が変わっていく様をファッションやメイクで表現。年毎にちゃんと演じ分けてみせるのが面白い。
朝食の出来が良く、食品サンプルかと思う程綺麗。和泉美春さんが本当に食べていた。回る天井扇。木田博喜氏は本当にピアノを弾いていたとしたらかなり巧い。
二人の会話の中にしか出て来ない妻や夫や子供のエピソード。会ったこともないのに段々と親しい友人のように思えてくる二人。

ハハキのアミュレット
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2025/10/09 (木) ~ 2025/10/15 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
和歌山県の過疎化した町、大正時代創業の由緒ある棕櫚箒(しゅろほうき)工房、倉西商店。働くのは四代目の南果歩さんと弟子入りして一年目の橋爪未萠里さん。町興しの一環として神社の奉納返礼品、荒神箒(こうじんぼうき)を卸している。神主(福本伸一氏)は観光客を呼び込もうと子宝祈願の御利益を大々的にアピール中。地元のホテル経営者で町会長(?)の緒方晋氏。その娘の東宮(とうみや)綾音さん。南果歩さんの息子(田中亨氏)はIT企業の在宅勤務。そこに突然帰って来る南果歩さんの兄、平田満氏。高校を出て東京の大学に行ってから47年間で僅か三回しか帰郷しなかった男だ。
傑作2022年版『あつい胸さわぎ』の田中亨氏&橋爪未萠里さんコンビだけで嬉しくなる。
奏(かなで)=南果歩さん、穂香(ほのか)=橋爪未萠里さん、凛=東宮綾音さん。名前の響きが心地良い。
東宮綾音さんは松たか子と小川麻琴を足したような美人。長身スラリ。
福本伸一氏が会場の笑いをかっさらっていく。
横山拓也版『男はつらいよ』かと思わせて作家の狙いは別にあるようだ。人の心こそが故郷。
是非観に行って頂きたい。

マクベスに告げよー森の女たちの名前を
MyrtleArts
劇場MOMO(東京都)
2025/10/09 (木) ~ 2025/10/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
五月に趣向の『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』を観劇。アフタートークのゲストがくるみざわしん氏で非常に興味深い内容。今作の予告があったので絶対観ようと決めた。その時の直感は間違っていない。凄まじい作品。観逃したら後悔じゃ済まない。大手忍さんが凄すぎて途中からもう怖くなった。人は余りに怖ろしいものを目撃すると興奮が頂点を突き抜けて無感覚になり背中の方から冷えてくる。想像力の範疇を超えてきた演技。自分のキャパシティではとても受け止め切れない。昨年末の桟敷童子、『荒野に咲け』と地続きのキャラ。『荒野に咲け』に戦慄を受けた人は必見。
百年続く由緒ある精神病院、神滝病院。七年前、とある事件で病院を辞めた看護師(岩戸秀年氏)、復職する前夜、夢の中で探し物をしている。三枚の扉の向こう側から格子窓越しにそれを見ている三人の魔女(小林美江さん、三浦伸子〈しんこ〉さん、滝沢花野さん)。岩戸秀年氏が探していたのは学生時代に心に刻まれた一冊の本、「患者を尊敬しなさい。」と書かれている。次に迷い込んで来たのは院長(原口健太郎氏)。子供の頃に遊んでくれた三人の「分裂のお姉さん」を探している。拍子木がカンと音を立て緊迫感を煽る。「きれいはきたない、きたないはきれい。」
神滝病院六号病棟は他の病院が収容に困る患者を引き受ける社会の暗部。「死亡退院」として死なないと外には出られない。精神病院での患者虐待は知的障害者施設での虐待と同一で患者を人間とみなしていないことが根本にある。
そこに十代から百以上の精神病院を転々として来た三十代の患者、坂上(大手忍さん)が現れる。
『マクベス』の三人の魔女の台詞を上手く使って、この世の地獄を邁進する現代のマクベスを描写する。登場人物の誰のどの立場も人として充分理解出来る。いつだって現実と理想は相容れないものだろう。「逆さま逆さま」。
これ、映画化した方がいい。
必見。(全日程、前売りで完売だそうだ)。

埋められた子供
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
Pit昴公演の見ものと言えばやり過ぎ舞台美術と小道具、狂気すら感じる。今作では本物の土塊や砂がステージを覆っている。設定は普通の民家の居間なのに。登場する奴等は安いB級ホラー、スプラッター映画の馴染の連中。映画なら皆惨殺されるだろうが今作はそういうものではない。ヘロインでダウナー状態のデイヴィッド・リンチが朦朧として書き殴った覚書みたい。例えるならトビー・フーパーの撮ったエクスプロイテーション(低俗搾取)映画をタランティーノがプロデュースしてリメイク、監督にデイヴィッド・リンチを起用。『悪魔のいけにえ』のようなメジャーなものではなく、あえて『悪魔の沼』のような作品を選択するセンス。70年代ホラーの空気感とマジックリアリズムのハイブリッド。
深夜、土砂降りの大雨、長いドライブ。知り合ったばかりのヴィンスが6年振りに故郷に帰るのに付き合うあばずれのシェリー。寂れた田舎町、荒れ果てた農場、崩れ掛かった古い家。主演のシェリーには映画なら若い頃のジュリー・デルピーかロザンナ・アークエットでどうだろう。家に入るとそこに居る連中は誰一人孫であるヴィンスのことを覚えていない。どうにも噛み合わない会話。シェリーはその異様な雰囲気に帰りたくてたまらなくなる。老人に頼まれて酒を買いに行くヴィンス。シェリーは独り残される。悪い予感。
MVPはシェリーを演った髙橋慧さん。マルシア似。人参の皮を削ぐシーンが良い。
家の老主人ドッジ役金尾哲夫氏は津川雅彦みたいでカッコイイ。病気持ちで酒を止められている、
その妻、ハリー役、一柳(ひとつやなぎ)みるさんの声が冒頭二階からキンキン頭に響く。
ニューメキシコ州から実家に戻って来た長男ティルデンに佐藤洋杜氏。トウモロコシが本物なのかフェイクなのか判別つかず。
左脚が義足の次男、ブラッドリーに中西陽介氏。
ハリーと親密な関係の神父、ファーザー・デュイスに宮島岳史氏。
ドッジの孫でありティルデンの息子、ヴィンスに赤江隼平氏。藤井尚之似。
去年、名取事務所がやった『メイジー・ダガンの遺骸』に近い感触。現代のある意味ステレオタイプの家族像を過剰なまでに描き込み無意識の底をひたすらに掘り下げると集合的無意識に行き着く。誰もが何故か共有する感覚。辻褄の合わない正解の出ない物語にこそ普遍的な強度が宿るのだろう。妙な面白さに充ちていた。隠し持ったスキットルで一杯飲りたい気分。
是非観に行って頂きたい。『ツイン・ピークス』や『ロスト・ハイウェイ』好きにも。

小さな王子さま/夏の夜の夢
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2025/08/30 (土) ~ 2025/10/11 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「夏の夜の夢」
これは傑作だと思う。この手の芝居でこんなに子供達に受けているのは余り観ない。岩崎う大氏の上演台本にも感心した。65分で「夏の夜の夢」で子供達にも楽しめる娯楽作として成立。演出のシライケイタ氏にも感服。テンポがいい。何役もこなす役者の着替えは上手下手でやっていて全て観客の見てる前。舞台美術・青山健一氏がまた凄い。巨大な発泡スチロールを不均等な多角形の球体として黄色基調の様々な色で塗りたくる。その月が空に昇っていく。月を多面体にしたセンスが図抜けている。色とりどりな段ボールの箱がカラフル。更に衣装・摩耶さん。電球を帽子や服に仕込んで光らせるアイディア。花や蝶や果物をイメージした妖精の衣装。鈴木光介氏作曲の歌もいい。ララランランランランララン。
跳ねないように工夫されたプラスチック?の小さなゴムボール。赤青黄緑紫が1000個程ステージに撒き散らされる。このアイディアが抜群で役者が歩き回るたんびにザザザザザとそこら中に転がりステージ外へ落ちたりする。時には怒りの表現として拾ってコミカルにぶつけ合う。
手話表現者・西脇将伍氏は生まれつき耳が全く聴こえないろう者。彼は妖精パックとして台詞を手話で伝える。その際、同時音声通訳として上手端や下手端でマイクを持った役者(武田知久氏、峰一作氏)が代わりに声を出す。無音の世界で生き生きと見事に踊る姿に驚く。何処でタイミングを合わせているのか。
西脇将伍氏はさかなクンっぽい。
峰一作氏は深沢邦之っぽい。
滝本圭氏は佐野史郎っぽい。
坂本夏帆さん、木ノ下藤吉氏、武田知久氏、何役も見事にこなす。
山﨑薫さんはヘレナを眼鏡で猫背で劣等感丸出しの喪女として表出。その自嘲気味な話し方など子供達に大受け。分かり易さで笑いを取る。その後、別の役は別のアプローチで演じ分け、その意図が子供達にも伝わっているのは流石。空気で笑いを掴む勘の良さ。
かなりの完成度。来年もやるだろうから観た方がいい。

風のやむとき
演劇集団円
吉祥寺シアター(東京都)
2025/09/27 (土) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
昭和50年(1975年)、演劇集団円を設立するも持病の肺結核の悪化で入院中の芥川比呂志55歳。病室には見舞い客と劇団関係者、夢の中では亡くなった者達が訪れる。病床で『夜叉ヶ池』の演出方法をひたすらに追い求める執念。それを甲斐甲斐しく支える妻。
主演・芥川比呂志役、石井英明氏がカッコイイ。久米宏と三田村邦彦を足したような。
その妻に高橋理恵子さん。MVP。この作品の文鎮。
弟で作曲家の芥川也寸志に瑞木健太郎氏。寺山修司っぽい。
語り手である孫娘に大谷優衣さん。綺麗。
亡くなった弟に和田慶史朗氏。
劇団制作担当に近松孝丞氏。
仲谷昇役に中田翔真氏。
35歳で自殺した芥川龍之介、まだ7歳だった芥川比呂志。子供達に宛てた遺書には「若しこの人生の戦ひに破れし時には汝等の父の如く自殺せよ。」と。若くしてとんでもない十字架を背負わされてしまった。

ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス
公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
予算をふんだんに使い、やりたいことをのびのびとやった開放感すら感じる気持ちのいい作品。劇団の総決算のような笑いの渦。厳選された小劇場オールスターズのコンマ単位のボケ、客席は笑いと拍手で最後まで揺れ続ける。偏執狂的な笑いの組み込み方、アドリブも多いのだろう。役者が笑いをこらえる場面が幾度もあった。
西出結さん主演は大きい。アンパサンドの絶対的エースである彼女の持つバランス感覚。いつも困った顔をしている彼女は笑いとシリアスを同時に成立させる稀有なキャラ。やらされている感がなく本当そのまんまの人なんだろうと思わせる。物語に観客が気持ちを乗せやすい。存在自体がそのまま天性のツッコミのよう。
土本燈子さんの使い方で演出家のセンスに差が出る。今作は素晴らしい。
是非観に行って頂きたい。

脈〜MYAKU〜
劇団フィータル
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/03 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
奇妙な葬式から開幕。アングラ仏教の式典。母親が事故死して独り取り残された中学生の息子(浦嶋建太氏)。親族は誰も手を差し伸べない。独り施設送り。
時は経ち、新人新聞記者になった主人公。小さな町、海まち市の地方新聞社・海洋新聞。同棲している恋人(小峰千采〈ちうね〉さん)は大学院生でネットで書いた詩が評判を呼んで出版された。彼女を見付けた出版社の渡邉理衣さん。中学の廃部寸前の演劇部では空木彩(うつぎさい)さんがその詩を演劇化して演出、部員は栗原菜瑠さん、片瀬尋さん、香取八重子さん。臨時顧問代理として滝本美成(みな)さん。
主人公の取材先の菊農家と花屋の夫婦(梅﨑信一氏、小川友子さん)。
時折、挿し込まれる奇妙なコンテンポラリーダンスや擬音の行進が印象的。呼吸。奇妙なセンス。テイストがホラーなんだよな。無機質な集団の群舞が作家の武器だと思う。
前説の(ジェシカ)さんが秀逸。忘れないようにボールペンで両腕にメモを書き込んでおり、更には脚にまで。

砂漠のノーマ・ジーン
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2025/09/26 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
小劇場B1だと思っていて、「劇」小劇場だったことに驚いた。ステージ上は2枚の大きな鏡が斜めに置かれ、中央奥で合わさる。その前にはレースカーテンが引かれている。
プレトークとして名取事務所代表・名取敏行氏がトーク。この脚本は甲斐義隆氏の持ち込み、初対面。一日で読み終え翌日には上演を決めた。だが上演予定が詰まっていたので3年掛かった。役者も演出家もその時すぐに口約束で決めた。代表をここまで駆り立てた脚本とは如何に?
2000年9月、オーストラリア北部ダーウィン。人口の約4分の1がアボリジナル。シドニーオリンピック開幕を控え厳戒態勢の国際空港滑走路に不審な女性(森尾舞さん)が侵入。大声で喚き散らし逮捕拘束。その後黙秘を続ける。彼女の叫んだ言語が25年前に最後の話者が亡くなった幻のユーリア語だと気付いた言語学者(西尾友樹氏)は興奮する。アボリジナルの滅んだ部族の言葉を話せる人間が今もまだ生きている!早速無理を言ってコンタクトを取る。何とか彼女からユーリア語について聞き出さねばならない。マジックミラーの部屋にいる彼女に隣室からスピーカー越しで話し掛ける言語学者。
言語学者の台詞は全て英語。舞台上部に日本語字幕が入る。小劇場B1のようなニ面の客席だと観客全員に見える位置に字幕を投影し辛い。だから「劇」小劇場だったのだろう。そして謎の女性は片言の英語しか話せない。彼女の母語、ユーリア語として日本語を使う。言語学者は知っている数少ない単語以外、何を話しているかさっぱり理解出来ない。
言語学者スピロ・イリアディス役西尾友樹氏は今回の役柄を「想像を絶する挑戦だった」と語る。発音までオーズィー英語だそうだ、これ全部覚えたのか?かつて三船敏郎がメキシコ映画『価値ある男』の主演に招かれ、スペイン語の全台詞を丸暗記して到着し現地のスタッフを驚嘆させたエピソードを思い出した。(発音に問題があった為、公開は吹替に)。
謎の女、ミラ・ナパチャリ役森尾舞さんの演技が神懸かっている。
叔母、祖母、母親、娘となり語らい続ける。当初それは幻聴の聴こえる統合失調症患者、多重人格者のようにも見える。だが彼女の唯一無二の凄い所は物語と共にどんどん若返って美しくなる様。精神を解放して自由に魂を広げる内に苦悩は癒やされ心が澄んでいく。彼女の語る、とあるアボリジナル一族の歴史に観客は夢中だ。グレートビクトリア砂漠にあるエミューフィールドに彼等の聖地がある。聖地を目指し何度でも旅に出る。これがアボリジナルの「ドリーミング」なのか?ずっと感覚的に掴めなかった「ドリーミング」に触れたような感触。今月末、燐光群が上演する『高知パルプ生コン事件』も森尾舞さん出演とのことで俄然観たくなった。
今作の森尾舞さんを見逃すな!鬼気迫ってる。
是非観に行って頂きたい。

草創記「金鶏 一番花」
あやめ十八番
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2025/09/20 (土) ~ 2025/09/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【満月】:金原賢三役:藤原祐規/ 坂東天鼓役:宮原奨伍
2回目。
沢山の角材に混じって沢山のブラウン管TVが潜んでいる。
作品的に大好物というわけではないのだが、もう一回観たいと思わせる中毒性。今観終わったばかりなのに。作家は頭の中で思い付いたアイディアの実現の難易度が高ければ高い程興奮するタイプなのだろう。作家と観客との想像力の知恵比べ。これは戦いだ。作家がここまで頭の中身全部ぶっ込んで勝負してるのに観てる方も負けてはいられない。覚悟して観る。後に伝説になると思う。金払えばこれが観れることに感謝すべき。
金子侑加さんには何かしら賞を捧げないとまずい。『二番花』でふっくらしていたのも、今回の役の為の振り幅だろう。本当に何か憑いているんじゃないか?

成り果て
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2025/09/24 (水) ~ 2025/09/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
これも傑作。再演を繰り返し4回目の公演。紀伊国屋ホール挑戦の演目にこれを選んだ事もあり、劇団にとって一番手応えのある作品なのだろう。クライマックスは気持ちが入っていて皆涙ぐんで演じていた。確かに人の心を動かす力がある。ストーリーとかシチュエーションとかではなく、ただの将棋好きの純情に感じ入る。いつも人生の脇には将棋盤がついて回った。泣いて笑って悔しくて悲しくて淋しくてやり切れなくて、ふと将棋の駒を弄る。そんな連中の織り成す精一杯の純情模様。生きても死んでも成れの果て。
選曲のセンスがずば抜けている。Superflyはハマる。このシーンにはこれだな、と曲を吟味し気持ちを託す光景さえ見える。
大阪の将棋道場、プロ棋士としては負けまくっていて評価は低いが、その人間性から弟子やファンからの人気は絶大な森棋士(井保三兎氏)。その弟子である天野兄妹、兄(三浦勝之氏)は奨励会二段でプロ(四段)入りを目指し、女子高生の妹(漆間虹美〈うるまこうみ〉さん)は女流棋士を。だが世の中そんなに甘くない。幾ら将棋が好きでもどんなに頑張っても報われないことの方が多いもの。彼等の流転と激動の日々。
ジャージ姿の女流棋士、成塚衣和美さんが妙に気になった。
女流名人、江崎香澄さんも引き締まった役柄、女流棋士の悔しさを滲ませる。(女流棋士としてプロになれる研修会B1クラスは、奨励会では6級程の棋力だと言われている。「所詮、女だから」と舐められる男社会)。
会長(=米長邦雄)に松沢英明氏。
是非観に行って頂きたい。

an-mon
team UZU.UZU
シアター711(東京都)
2025/09/24 (水) ~ 2025/09/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
これはある地底アイドル(=地下アイドルの下)のLIVE。この妙な面白さは昨年観たPeachboys最終公演、『ピーチボーイズ〜新性器エヴァンと下痢男〜』に近い。人に熱心に薦めるような作品ではないが、「じゃあつまらないか?」と問われたらそんなことはない、かなり面白かった。要するに伝え辛い楽しさ。本多劇場グループの創設者、レジェンド本多一夫氏91歳!率いる小劇場アングラ・オールスターズ。本多一夫氏は俳優としても舞台に降臨する。
箱馬の上に置かれた一本の水の入ったペットボトル。それを見つめる日南莉緒菜さん。一人また一人と舞台袖から現れる役者達。皆ゼッケンに自分の誕生日を付けている。
測量船ビーグル号に乗った若きチャールズ・ダーウィン(小林桂太氏)、世界中を航海し生物の分布を観察、自然選択説に行き着く。
4人組の地底アイドルグループ、アンモナイツ。「私達、古生代アイドル、an-mon-nights!」
どこかのイベントスペースでサイン会を開いているが無論誰も来ない。
日南莉緒菜さんはもろアイドル顔でどっかの元メンバーだろうと思って観てたが全く違ったらしい。
大図愛さんは流石。多分一番人気が出るタイプ。
凜果さんは衣装振付も担当、多才。この衣装はイケる。
飛田大輔氏も色物かと思わせてキッチリハマる。
普通に活動していても成立するクオリティー、4人のバランスが良い。
全く売れないアイドルグループが自分達が生き残る術をダーウィンから学ぼうとする物語。“もしも地底アイドルグループがダーウィンの『種の起源』を読んだら。”根底にあるテーマはmétroの『REAL』と同じ。世界の激動と先行きの不安に揺れる日本人の集合的無意識は同じ音色で響き合う。月船さららさんと森ようこそさんの共振。
謎の婆さん、佐藤梟さんが現れて「羊の絵を描いて」と頼む。『星の王子さま』じゃないんだからとあしらうもしつこい。仕方なく描いてやると御礼に望みを叶えてくれると言う。半信半疑でペットボトルの水を飲む4人。異世界に吹っ飛ばされる。アングラ地獄巡りの始まりだ!

変身
オペラシアターこんにゃく座
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2025/09/20 (土) ~ 2025/09/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
傾斜がきつく見える八百屋舞台。まるでマイケル・ジャクソンの「スムース・クリミナル」。転びやしないかと不安になる程。北野雄一郎氏演ずるK(カフカ)が皆に『変身』を読み聞かせている。チェコの首都プラハ、モルダウ川に掛かるカレル橋。ベドルジフ・スメタナの『モルダウ(ヴルタヴァ)』が知られている。林光氏の作曲は全編名曲。無理に作ったような引っ掛かる部分がない。そして出演者全員が美声。歌を聴いているだけで満足。
朝起きると突然、巨大な甲虫に“変身”していたグレゴール・ザムザ(北野雄一郎氏)。父(高野うるお氏)、母(鈴木裕加さん)、妹(入江茉奈さん)、女中(豊島理恵さん、熊谷みさとさん)にこの姿を見られる訳にはいかない。会社からやって来た支配人(沢井栄次氏)がドアを開けろと喚く。何とか開けるとその姿を見た者達はパニックに。沢井栄次氏はゴロゴロ転がって階段落ち!衝撃の演出。後半登場の3人目の老婆女中(西田玲子さん)が強キャラ。気取った不愉快な下宿人(沖まどかさん、泉篤史氏、金村慎太郎氏)の咀嚼音ASMRオペラ。
入江茉奈さんが綺麗だった。
前田正志氏のファゴットが強力。
実は今回初めて『変身』という作品を理解した気持ちになった。母親(鈴木裕加さん)の愛情という名の付いた強圧的な支配欲。優しい笑顔と物言いで子供をずっと隷属させようとする。幾らそれに否を唱えても決して理解してはくれない。愛なのだから、と。これは家族という世界で抑圧され廃人になった男の物語だった。廃人になり社会的に不要な邪魔者だと疎外され孤立する不具者。そんな男の目から見た家族の光景。
傑作。

ここが海
アミューズ
シアタートラム(東京都)
2025/09/20 (土) ~ 2025/10/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
下手、ベッドの上に掛かっている絵画がやたら気になる。円柱形の建造物が二つ並んでいるだけなのだが何故か目が行く。それは謎。
黒木華さんのショートカットは美しい。元モー娘。の福田明日香の若い頃みたい。黒木華さんは『星の子』での新興宗教教団員が強烈だった。炸裂するアルカイックスマイル。
橋本淳氏は作家の分身。中田青渚(せいな)さんは細過ぎて驚いた。吉川ひなのの若い頃みたいだったが25歳とは···。
今作は物凄く作家にとって重要な作品だろう。名声と地位を手に入れた今、社会的に意義のある作品を世に送り出したいという決意。誰も触れなければそんな問題すら存在しなかったことにされてしまうこの世の中。面倒臭い問題は下手に関わるよりも無視、見て見ぬ振りの方が楽だ。性同一性障害(性別不合)の人が身内だった場合の心境を真剣に考えている。役者の心理描写も繊細。何処までもリアル。当事者が観ても納得できるように。
是非観に行って頂きたい。

草創記「金鶏 一番花」
あやめ十八番
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2025/09/20 (土) ~ 2025/09/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【満月】:金原賢三役:藤原祐規/ 坂東天鼓役:宮原奨伍
荒れ果てた廃屋のような舞台美術。そこらかしこに梯子が雑然と。やたら殺風景な風情に不穏な意図を感じ取る。テーマは『裏面』。多重な意味で『裏をかく』。
前作、『音楽劇「金鶏 二番花」』を観てからたまらなく観たかった『一番花』。きっとこういう話だろう、と観客それぞれ思いを巡らせた筈。自分の脳内でもほぼ完成形は見えていた。だが全く違った!何もかもが違う。
作劇は手塚治虫調。この手塚テイストが大衆に支持される所以。まさにピノコのような中野亜美さんが出突っ張り。中野亜美さんはある意味、現代小劇場演劇の象徴。彼女をどう使うかで作品は分かれる。
助演的なアシストに徹するかのような金子侑加さん。ハレー彗星騒動に現れた怪異譚が広まり、栄国稲荷神社の稲荷神に押し寄せる参拝客。その中の一人、芸に腕がない歌舞伎役者・坂東天五郎(北沢洋氏)のエピソードが今作の肝。『どろろ』調。
四代目中村雀右衛門(じゃくえもん)をモチーフにしたその息子である坂東天鼓役宮原奨伍氏の所作が美しい。
小口ふみかさんの目をひん剥いての威嚇。
母親(藤吉久美子さん)に家にいながら歌舞伎を観せてやると誓う金原賢三少年役今村美歩さん。驚く程美少女。青年期は藤原祐規氏、現在は桂憲一氏。「無線遠視法」を研究し、ブラウン管を使っての送受像を世界で初めて成功させた天才工学者。現在の金原賢三が坂東天鼓の墓参りに行くシーンから物語は始まる。中野亜美さんと新幹線に乗って。
今作の方が好きかもなと思いつつ、前作の歌の高揚も捨て難い。前作が木下恵介なら今作の監督は増村保造。こっちが作家の本流のような気もする。どうせ皆観るだろうから今は余計なことは書かない。ただこの作家が自ら抱える芸術への真摯な姿勢に信仰心すら感じた。大衆の評価を犠牲にしても自分の信仰に殉じたい、と。それは正しいよ。そういうのが失くなったらAIが計算した最大公約数、広告代理店の導き出した商売としての正解に世界は統治される。人間は理性で生きている訳じゃないんだ。言語化出来ない無意識が殆どだろう。そこを刺激するから『芸術』なんて御大層なガラクタが生き残ってる。(それは酒の存在にも似ている。こんな健康的にも社会的にも害のある無意味な嗜好品が死滅しない理由に)。
是非観に行って頂きたい。