鴉よ、おれたちは弾丸をこめる 公演情報 劇団うつり座「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    チャリティーショーが行われている。歌手(yokoさん)が「鴉よ!」と聴衆に呼び掛けると皆が「鴉よ!」と呼応する。今現在の自分達を「恥で身を黒く染めた惨めな鴉」だと自認しているようだ。そこに乱入して来る二人の青年(加藤亮佑氏と徳田雄一郎氏)、手製の爆弾を投げ付ける。
    逮捕され裁判に掛けられる二人。加藤亮佑氏の祖母の鴉婆(宇沙木はこさん)、徳田雄一郎氏の祖母の虎婆(青木恵さん)
    率いる武装した婆集団が裁判所を占拠。婆による裁判官、検事、弁護士等を裁く民衆法廷が開廷する。

    当時の批評では「三里塚闘争」を重ねて観たようだ。若き活動家共の不甲斐のなさに千年以上もの恨みを抱えた老婆姿の怨霊達が大地から這い出て猛り狂う。

    プロのサックス奏者でもある徳田雄一郎氏がサックスを吹き鳴らす。
    加藤亮佑氏はつまみ枝豆と勝村政信を足したよう。
    宇沙木はこさんは岸田今日子みたいな貫禄。
    一升瓶片手の青木恵さんはドスが効く。

    ネタバレBOX

    アジプロ〈agitation (扇動)とpropaganda(宣伝)〉演劇に見せかけて、徹底して意味を持たない。きっと何かのメタファーだろうと思惟させつつも、そんなものは全く何も有りはしない。あるのは純粋な狂気だけ。何一つ教訓もなく、ただ老婆軍団の暴力の発散を眺めるのみ。

    面白いとは思わなかった。根本的にこの戯曲が好きじゃない。初演の1971年はちょうどアメリカン・ニューシネマの全盛期。『真夜中のカーボーイ』、『ワイルドバンチ』、『明日に向って撃て!』、『イージー・ライダー』と連発されるバッド・エンドの美学。何か逆にこの頃の影響を受けた日本の作品は気恥ずかしい。妙に空っぽ。頭でっかちで知ったふうな口を利き何一つ信じるものなど見つからないくせに、気分だけは他人よりも高みに立っている。今作も「時代の気分」なんだろうが、スカしている感覚。そうじゃないんだ、人の心を打つのは頭良さそうな言説ではない。もっとみっともない純情なんだ(···なんて言うとそれもどうにも嘘臭いが)。

    超満員の客席、客層が読めなかった。演劇が武器に成り得ていた時代への憧れなのか?今じゃもう体制への憎しみすら持てやしない。全ての価値が薄っぺらくなった。自分も世界も同様に大事に思えなくなった。今作を流山児★事務所なんかが手掛けたらどうなるのか?興味はある。

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    2024/08/08 15:09

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