デカローグ7~10 公演情報 新国立劇場「デカローグ7~10」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    D ⑦⑧ 演出:上村聡史

    ⑦「ある告白に関する物語」
    夜中にうなされている小さな娘(三井絢月ちゃん)。それを見ながら何もしてやれずまごまごする姉(吉田美月喜さん)。やって来た母親(津田真澄さん)が娘を抱きしめて、姉を叱り付ける。「ほら、あんたは何も出来ないんだから!」娘に「また狼の夢を見たのね。ほら狼なんていやしないのよ。」とあやす。
    その後、姉はふと母親に訊く。「何で狼だと思ったの?」母親は何も答えない。
    数日後、姉は妹を連れ去ってしまう。

    娘役の三井絢月(あづき)ちゃん7歳がMVP。一流。彼女一人の誕生で関係者全員の人生が良くも悪くも振り回されていく。本人は我関せず真っ直ぐな瞳でこの世界を見つめ続ける。純粋なものこそがこの世界の中心であるべき、という思想。

    ⑧「ある過去に関する物語」
    倫理学の大学教授(高田聖子さん)、彼女の全著作を英訳しているアメリカの大学教員(岡本玲さん)が来訪。彼女の授業を聴講することに。一人の学生が②のエピソードを提議する。不倫で妊娠した妻、闘病中の夫が死ぬのなら産むし、快癒するのなら堕ろすと。医師は生まれてくる子供の生命こそ大切だと考えて「夫は死ぬ」と嘘をつく。大学教授がこの話に対して「子供の生命こそが一番に優先されるべきだ。」と講評したことで、岡本玲さんに火が点く。手を挙げて彼女が語り出した課題は、1943年ナチス占領下のポーランド、6歳のユダヤ人少女のエピソードだった。

    オープニングがカッコイイ。壁越しに罪を刻印された男の影。
    岡本玲さんとは判らなかった。ちょっと配役的に若すぎる気も。
    MVPは高田聖子さんだろう。何かリアリティーがある。良くも悪くも人間は生活し続けなくてはならない。頭の中で生きている訳ではない。何を考えていようと動物として生き続けなければならない。思想を抱えた動物のリアリティー。

    素晴らしい作品だと思う。キェシロフスキ抜きで立派に成立する舞台だった。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    ⑦演出が凄く好き。夢の中、イメージの中を彷徨い歩く夢遊病者の群れのよう。同じシーンを二度繰返す仕掛けなんか効いている。(原作では今作だけ亀田佳明氏演ずる男の登場はない。その為、オリジナルに作ったのだろうがズバリ嵌っている)。
    吉田美月喜さんのゆらゆら揺れる不安気な存在感。章平氏は山本KIDみたいな格闘家のオーラ。

    ⑧前半は最高。後半が引き延ばし過ぎてつまらない。見せるべきは若夫婦に拒絶されて何処にも行き場のなくなった少女と青年の絶望感だろう。その時の気持ちを核に生きてきた少女。そこの描写が薄っぺらいとその後の話にも興味が持てない。仕立て屋の男との再会もそこがない為胸に迫らない。神父になって家を出て行った息子や祈りを捧げる岡本玲さん。カトリックにおける神への祈りの意味を日本人に伝える必要がある。余りにも理不尽な現実世界で運を頼りに生きていく。確かなものが何もないのならば自身で作っていくしかない。その代替行為が神への祈り。

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    2024/06/30 20:00

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