latticeの観てきた!クチコミ一覧

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サンサーラ式葬送入門-自在篇-

サンサーラ式葬送入門-自在篇-

feather stage

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2021/03/11 (木) ~ 2021/03/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

サンサーラとはサンスクリット語で輪廻のことであり、この舞台では死後どのように転生するかがテーマである。ただし哲学的な考察があるわけではなくチラシ(注)から受けるようなインド的な匂いもない。輪廻にこんな法則があったら面白いでしょうと言っているだけである。どんな法則を採用するかは作者の自由なわけで面白いと感じるかどうかは観客次第である。

色々と複雑な構成になっていてカーテンコールでこんなに沢山の俳優さんが登場していたのかと驚いた。謎めいた演出も多いがそれらが解決されるという作りにはなっていないし、結果的に無駄な場面もあって楽しめるかどうかは観客次第である。

劇団6番シードの魅力的な役者さん達が出演されていてそこは楽しめたが上記の2点については私好みではなかった。もしかして綿密な伏線回収があったのを私が理解できなかったということがあるかもしれないがそれを含めての満足度なのでご容赦願いたい。

注)CoRichで表示されている画像は公演パンフレットのものであり、チラシは2月のものを左右反転して赤青の色を入れ替えたようなものである。

画狂人 北斎

画狂人 北斎

エヌオーフォー No.4

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/03/04 (木) ~ 2021/03/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

晩年の北斎の困難な生活と現代の挫折した画家の日常が交互に描かれる。どちらも何か突出したものがあるわけではなく二つの話の関連性も薄い。まるで未完成の塗り絵でも渡されたような気分だ。絵心のない私の満足度は当然低い。

ミュージカル GHOST

ミュージカル GHOST

東宝

シアタークリエ(東京都)

2021/03/05 (金) ~ 2021/03/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

モリー:桜井玲香の回を観劇

1990年の映画『Ghost(邦題 ゴースト/ニューヨークの幻)』のミュージカル版である。当時さかんにTVCMが流れていたのを思い出す。てっきり純愛ものだと思っていたが今回観てみて霊媒師がさまよう魂との会話を可能にしたり、死の真相を巡るミステリー(?)の要素もあったりして、コメディを基本にした何でもありのエンターテインメントであることが分かった。そんなわけで最近涙もろくて会場を出るときに困ることが多い私だが、予想に反して顔を上げて悠々と外に出ることができた。

皆さんの演技も良く演劇としてはかなり満足したが、肝心の歌は期待外れであった。ソロはまだ許せるがデュエットになるとバラバラでまるで合わせようという意思が感じられない。コロナのせいで一緒になっての練習が足りないのだろうか。さらに3人になるとただの混乱である。その代わりに霊媒師役の森公美子さんの歌が最高に盛り上げてくれた。音楽については森公美子ワンマンショーである。映画でも同役のウーピー・ゴールドバーグがアカデミー助演女優賞を受賞しているのでそういう作りのものなのかもしれない。

最後はスタンディングオベーションに付き合ってしまったが私的には星3つというところ。しかし森さんの歌に痺れたので一つ増しにしておく。

ネタバレBOX

ネタバレではなく無駄話
・冒頭に出て来る重要な取引相手が映画では日本人なのだがこの舞台では中国人であった。30年の時の流れを感じる。
・日本語版Wikipediaによると「霊媒師の名のオダは織田無道からとったもの」だという。資料の提示はなく英語版にはそんな記述は見当たらずで検索しても本人の弁だけなので、さすがにこれは嘘だろう。しかし懐かしい名前だ。調べてみると彼は昨年の暮れに亡くなっていた。
ジレンマジレンマ

ジレンマジレンマ

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2021/03/04 (木) ~ 2021/03/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

全く状況の異なる3組の追及する人とされる人が登場する。一組はそのものずばりの刑事と泥棒であり、共犯も別室で取り調べを受けている。余罪の追及にいわゆる「囚人のジレンマ」状態になっている。他の組も同じで、それがタイトルの元ではあるが「囚人のジレンマ」そのものがこの劇のテーマではない。他の二組は初老の技術者と調査官、米屋と農協の職員という一見無関係な3組6人のお話である。…とこの後も続けようとしたが主催者の「説明」に要領よく書かれているので省略する。

泥棒の件も米屋の件もよく分かったが技術者の件はかなり事情が異なっていてもやもやが残った。このレビューを書いて行くうちに作者の狙いはむしろ技術者の件の異常で異質な状況を描くことなのかとも思えてきた。

オープニングのランダムなタイミングのストップモーションは見事なものだ。一人でも少しでもずれているとぶち壊したが、しっかり揃っていて気持ちが良い。音楽の何かでタイミングをとっているはずだが一回見ただけでは分からなかった。ビデオを買って研究したくなってくるのは営業の狙い通りか。

罠

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2021/03/04 (木) ~ 2021/03/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

何度も上演されている舞台ミステリの傑作である。私もいつどこで観たのか、はたまた読んだのか定かではないが話が進むにつれ段々と思い出してきた。しかし先がある程度分かっていても面白さにはいささかも欠けるところはなかった。どなたも最後の最後まで楽しむことができるだろう。
昨年の公演が中止になった悔しさを吹き飛ばすような力のこもった快演であった。一度は観ておくべき古典…と煽っておいて言いにくいがチケットは完売している。

すべての朝帰りがいつか報われますように

すべての朝帰りがいつか報われますように

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/02/27 (土) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

実演鑑賞

あれえ?題名と中身が全然合っていないなあ。予告ビデオとも全く関係ないよ。まあ、劇団チョコレートケーキならいざ知らず、この劇団のものを内容を想定して行くはずもないのでそこは良いけど、裏事情がどうなっているのかは気になる。

実際には、恋人の借金のかたに売られて行く女と見張りのヤクザ、男問題で刃傷沙汰を繰り返す二人の女、この二組のぺアの会話の入れ替わりで舞台は進行する。日付も行ったり来たりして何か面倒くさいなあと思っていたらいつの間にかヤクザがいなくなって女が一人増えて4人で缶蹴りをやって終了。薄暗い照明と単調な動きに瞼が段々重くなってきて肝心なところを見逃したらしい(汗)

売られて行く女とヤクザの会話は絶妙だけど全体はよく分からなかったので無評価。
こんなアホなレビューでも「ないとあるでは大違い」なので載せておこう。

*ずっと何かが足りないなあと思っていたのだが宍泥美さんが出ていないことに今気がついた。

キスより素敵な⼿を繋ごう

キスより素敵な⼿を繋ごう

ナイスコンプレックス

あうるすぽっと(東京都)

2021/02/20 (土) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

いやあ、焦らす焦らす。あまりに謎の提示が長く、そしてその解決を渋るので飽きてしまった。また登場人物の多くが怒鳴ってばかりいるので疲れてしまう。途中休憩があれば帰っていたかも。

前半まではSFなのかコメディなのか判断に困っていたがやがて表題通りの純愛ものに収束して行った。しかし2時間20分は長い。サイドストーリーを削って90分くらいにまとめてくれるとファンタジーとして感動できたかも。

朗読劇「私立探偵 濱マイク」-我が人生最悪の時-

朗読劇「私立探偵 濱マイク」-我が人生最悪の時-

朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会

ヒューリックホール東京(東京都)

2021/02/17 (水) ~ 2021/02/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

もうコロナでもないだろうと久しぶりの観劇。
ざっと演目を検索しているとハードボイルドが目についたので深く考えずにポチってみた。

会場に着くと観客は若い女性ばかり。1席飛ばしでおよそ400人のうち男性は4-5人しかいない。ああそういう属性の俳優さん方だったのかとちょっと先行きが不安になった。

しかし舞台が始まってみると中身は正真正銘の私立探偵もので緊張感もあって飽かずに楽しむことができた。朗読劇なのでアクションシーンはないし、出演者は皆さん若いので陰影とか重みとかとは無縁である。そういうことはあるものの久しぶりの生身の演劇に私は概ね満足であった。しかしこれでは観客のほとんどを占める若い女性の方々は満足なのだろうか、歌とか踊りとかそういうサービスもあって良かったのではないかと余計な心配をしてしまった。

入場料が高いのでお得な券を探しましょう。

オリエント急行殺人事件

オリエント急行殺人事件

エイベックス・エンタテインメント

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2020/12/08 (火) ~ 2020/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

アガサ・クリスティーの1934年の作品。新興の大国アメリカで起こったリンドバーグの長男の誘拐殺人事件(1932)はイギリスでも大きく話題になったのだろう。その事件をバックグラウンドに取り入れ、舞台を中東を走る豪華列車の中に設定するというタイムリーで欲張りなものであった。当時の読者は謎解きと共に二つの異世界への興味を大いに刺激されたことだろう。反面、現在の読者にはその誘拐殺人事件についてはピンと来ないのも確かである。

オープニングの舞台にはオリエント急行の車体横部分があって並んだ窓から車内が見えている。この車体が上がると1階に食堂車、2階に客室並びが現れ、上方には車輪のオブジェがあって回転し雰囲気を醸し出している。

原作ではポワロが謎解きを語ったところで終わるのだが2017年の映画もこの舞台も一頻り正義について語る。まあ確かにミステリーはトリックの部分を除けば読むところはないので何か意義を付け加えたくなるのは分かるのだが取って付けたような白々しさは否めない。そこを軽くスルーすれば中々楽しい良い舞台であった。

観客の平均年齢は50歳以上ではないだろうか。そして開演前にパンフレットを買って読んでいる姿がかなり目立つ。この2,000円のパンフレットは読みどころが多くておすすめである。席は飛ばしなしのベタ詰めだがこの劇場特有の左右の横向き席を除けば9割くらいは入っていただろう。こういう演目はやはり強い。

途中でダンスが始まるかと思わせるシーンがあったがすぐに通常モードに戻ってしまった。まあこの配役では無理がある。しかしミュージカル「オリエント急行殺人事件」はありだなあと思わせるに十分な盛り上がりを感じた。このことを含めて全体におしゃれで軽いのは主催がエイベックスだからなのだろう。

*なお、この作品では誘拐殺人事件の犯人は逃げおおせているという前提になっているのだが実際の事件では犯人は捕まり無実を主張したが死刑が執行されている。

ネタバレBOX

原作で容疑者の人数は12人、お馴染みの陪審員の数である(*)。さすがにそのままでは水増し感がかなりあるのでこの舞台では数合わせを諦めて適切に減らしている。元々必要性の薄い医師は登場しない。そして本来登場機会のほとんどないアンドレニ伯爵夫人が最初から目立っているのが特徴であり、結末に少しの違いを生じさせる。

(*) ウィキペディアの「陪審制」によると
陪審の起源は、少なくとも、カール大帝の息子、ルートヴィヒ1世が、829年に、国王の権利について判断する際、その地方で最も優れた、最も信頼できる人物12人に宣誓の上陳述させるという制度を設けたことにさかのぼるという。別の説もあり。

登場人物
エルキュール・ポアロ:名探偵:椎名桔平
ブーク:鉄道会社の重役でポアロの友人:松尾諭
アンドレニ伯爵夫人:松井玲奈
サミュエル・エドワード・ラチェット:悪党:粟根まこと
ヘクター・マックイーン:ラチェットの秘書:室龍太
アーバスノット大佐:軍人:粟根まこと(二役)
メアリー・デブナム:家庭教師:本仮屋ユイカ
ドラゴミロフ公爵夫人:ロシアの貴族:高橋惠子
ヘレン・ハバード:超陽気なアメリカ人:マルシア
グレタ・オルソン:宣教師:宍戸美和公
ピエール・ポール・ミシェル:車掌:中村まこと

原作にあってこの舞台には登場しない人物
コンスタンチン博士:医師
アンドレニ伯爵:外交官
エドワード・ヘンリー・マスターマン:ラチェットの執事
サイラス・ハードマン:ラチェットに雇われた探偵
アントニオ・フォスカレリ:自動車のセールスマン
ヒルデガード・シュミット:ドラゴミロフ公爵夫人の女中
アクリルジャンクション

アクリルジャンクション

backseatplayer

俳優座劇場(東京都)

2020/12/02 (水) ~ 2020/12/06 (日)公演終了

ミュージカルだからと割り引いてもあんまりなストーリー、決して上手ではない歌。
なんだか気持ちが悪くなって途中休憩で駅に向かった。後半を見ていないので無評価。
もっとも、おかまバーのママの演技と葉っぱの守り人の歌には安定したベテランの味わいがあって救われた。
他の方には好評なので私が年をとったのだろうなあ。

尺には尺を

尺には尺を

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2020/10/27 (火) ~ 2020/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★

研修生の試演会ということでストレートで熱のこもった芝居が楽しめた。

大枠は単純な喜劇の作りなのだがしばしば起こる不調和な出来事によって問題作にも分類される。
最後のシーンでは原作に加筆して(?)あいまいで論の分かれるところをよりダークな方向に振っている。さらに長い余韻で締めくくることによってそれを強調していた。もっともここは私の記憶違いで加筆なんてなかったかもしれないが。

ヴィンセンシオ役の星初音さん、この中でこの役をやるのはこの人しかいないという圧倒的な個性の持ち主。期待に違わぬ熱演で観客を支配していた。今回、私が心を奪われそうになったのはマリアナ役の渡邊清楓(さやか)さん。ピタッと決まった時の美しさは西洋名画の輝きがある。しかし残念なことにその輝きは長続きせずすぐに影が差してしまうのだ。もっともセリフもしっかりしていて十分訓練された方なのでこのマリアナという微妙な役に合わせてわざとオーラを消していたのかもしれない。

メモ:「尺(measure)」とは判断基準のこと。題名「Measure for Measure」は「他人に使った基準を自分にも適用せよ」ということ。「目には目を」は「An eye for an eye」

真夏の夜の夢

真夏の夜の夢

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2020/10/15 (木) ~ 2020/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

シルヴィウ・プルカレーテ演出というとちょうど3年前同じ東京芸術劇場プレイハウスで行われた「リチャード三世」を思い出す。奇抜な演出でそうすることの意味がさっぱり分からなかった。今回もああいうものなら嫌だなあと思っていたが全くそんなことはなかった。左右に移動する板に乗っての移動とか半透明のスクリーンに映し出されたリアルな映像とかの飛び道具は使われているがそれも含めて極めて分かりやすい。

野田秀樹潤色とあって「潤色って何?」となるが原作の大まかな枠組みは保持しながらも場所を日本に移し、悪魔メフィストを登場させ、しかも主役級の大活躍をさせる。ここまで崩すとあとはやりたい放題で言葉遊びの洪水である。「妖精に要請する」とかのダジャレ連発も良いが「口に出さずに飲み込んだ言葉はどうなるのか」なんていう話も嬉しい。

原作が何倍にも膨らんでいて理屈抜きに楽しい。どなたにもお勧め。

ミュージカル『ローマの休日』

ミュージカル『ローマの休日』

東宝

帝国劇場(東京都)

2020/10/04 (日) ~ 2020/10/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

アン王女=朝夏まなと、ジョー・ブラドレー=加藤和樹、アーヴィング=太田基裕の回を観劇。

無名のオードリー・ヘップバーンが一躍トップスターに上り詰めた1953年の映画のミュージカル版。
さすが帝国劇場、席数半分にもかかわらず、たっぷりとお金をかけて次々と豪華なセットを登場させる。大赤字なんじゃないでしょうか。もちろん衣装も作りこんでいるし、スクーターを舞台上で走らせたりもする。ミュージカルとしては音楽が控え目であり、ストーリー重視と言える。そのストーリーは淡い恋愛と成長の物語であってなかなか感動的であった。すべてが高レベルで揃っていて、余裕の星5つ。B席4,500円で観させていただいて申し訳ないくらいだ。

常に外気を取り込んでいるので会場内は男の私でもかなり寒い。コロナには罹らなくても風邪をひいてしまいそうだ。毛布の貸し出しも今はしていないので女性は厚着で行くことをお勧めしたい。

ロートレック

ロートレック

Yoshiki Yamamoto Solo Musical

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2020/10/14 (水) ~ 2020/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

電子ピアノ、ウッドベース、ドラムの生バンドをバックにした山本芳樹さんの一人ミュージカルである。ロートレックの36年余の一生をナレーション、芝居、歌と八面六臂の大活躍で描いていく。燕尾服にシルクハットをかぶれば貴族であるお父さん、ショールを羽織えばお母さんとなり、テーブルを出して酒場を作り、足を上げればムーランルージュの踊り子となる。それにしても山本さん、一人芝居の悲壮感が全く感じられない。これはおそらくバンドが常に空間と時間を埋めているのでいつでも息抜きができるからではないかと思った。

ロートレックというとユニークなポスターの作者という程度の認識しかなかったが、人生も非常に面白いものだった。

この舞台、小さくまとまっていたと見るか適切なスケールと見るか迷うところだが悪くても星4つ半は固い。私の今年のベスト1だ!

「プヒのかあさん」の観てきたに何かピンと来て雨の中を新井薬師まで出かけて大正解。「プヒのかあさん」に感謝。

獣道一直線!!!

獣道一直線!!!

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2020/10/06 (火) ~ 2020/11/01 (日)公演終了

満足度★★

ドタバタギャグ満載というかそれだけ。前半で帰ろうと思ったが満席のため席を離れるのが面倒で断念した。

生瀬勝久さん、池田成志さん、古田新太さんの3人を目当てに行ったのだが池谷のぶえさん主演、宮藤官九郎さん助演という感じだった。

退出時も「エレベーター、エスカレーターは混みあいますので外階段をご利用ください」とアナウンスがあって本当に外階段に誘導された。ここは8階なんですけど(泣)

リチャード二世

リチャード二世

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2020/10/02 (金) ~ 2020/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

シェイクスピア作品の中ではマイナーな存在ということで期待していなかったためか結構楽しめた。ストーリーは「驕れるリチャード2世は久しからず」で分かりやすい。しかし展開が雑というか説明がまるで省略されている。その分、各場面が丁寧に描かれていてセリフがなかなか味わい深い。また暗転がなくスムーズにつながって行くのが非常に心地良い。他の舞台でも見習ってほしいものだ。もっとも膝から荷物を下ろすタイミングが前半90分間とうとう取れなかったのにはちょっと参った。

横田栄司さん演じる重厚なヨーク公が主役お二人をまるで子供に見せてしまう一方で、那須佐代子さん演じる奥さんにはまったく敵わないというのはお約束とはいえ落差の大きさに感心した。

トリプルコールのスタンディングオベーション、最近では珍しいなあと驚いて周りを見ると95%が若い女性だということに初めて気が付いた。最後のコールに答えるのはお二人だけ。

世界も三角、土俵も三角/特殊になれなかった者たちへ

世界も三角、土俵も三角/特殊になれなかった者たちへ

マチルダアパルトマン

王子小劇場(東京都)

2020/10/07 (水) ~ 2020/10/11 (日)公演終了

満足度★★★★

マチルダ・アパルトマンの描く若者の日常は非日常である。登場人物もネジが緩んでいてパッとせず、若い人が好むような職業にはついていない。部屋も汚い(笑)。その辺りが若者の日常を淡々と描いた他の演劇(おそらく主人公の部屋は奇麗)とは違っている。基本的にはその場その場の不思議な状況を楽しむべき作品なのだと思う。ただし「世界も三角、土俵も三角」からは極小偽テロリストの論理みたいなものを読み取ることはできた。

二つ目のお話は一つ目の後日譚ということなのだろう。しかし大きすぎるギャップを私は埋めることができなかった。一つ目の終わりが先行きを不安に思わせるようなものだったのならすんなり腑に落ちたのだが。そして彼の相方があの彼女だったのだろうかという疑問が浮かんでそのまま残ってしまった。

例のイラストを止めてしまったのがちょっと残念。

私はだれでしょう

私はだれでしょう

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2020/10/09 (金) ~ 2020/10/22 (木)公演終了

満足度★★★★

こまつ座のこの種の舞台はそれほど好きではないのだけれど、父が戦争に行っていたせいかついつい観てしまう。今回は記憶喪失した復員兵が話の一方の主役で父と同じような任務に就いていたことから昔聞いた話を懐かしく思い出した。幸い父は記憶喪失にもならず実家も空襲に遭わなかったので日本に着いてからはすんなりと帰郷できたのだった。

当時の基本的な用語や社会情勢がふんだんに盛り込まれている。軍の幹部が戦後のどさくさに軍需物資をわがものにする話が出てくるが、戦時中でも物資を不正に蓄え妾をかこっていた奴がいたというのは母がいつも憤っていたことだ。こういう話は井上ひさしの世代のリアルだったのだが私の世代ですでに伝聞であり若い世代には別の宇宙の話で理解は困難だろう。

ストーリーは二つの主題が交錯し、大小さまざまな伏線が張られ、歌あり、踊りあり、タップダンスまであり、とサービス精神旺盛である。私も面白かったで終わらせておけば良いものを、GHQに逆らうなんてそんな勇気のある人々がいたんだと調べ始めるととたんに困ったことになった。フランク馬場は実在するものの川北京子は見つからない。そしてフランク馬場が軍法会議にかけられた形跡はなく、それどころかそれ以降も日米で大活躍するのである。まあこの舞台は事実と空想を作者の頭の中で混ぜ合わせて熟成させたものなのだろう。

イベントの開催制限緩和が漸く実行されてこの舞台も1席飛ばしではなくなった。贅沢な時代の終わりは、関係者には怒られそうだけど、ちょっと残念。

ネタバレBOX

ジャガイモでサインを写し取って書類を通すなんてあるわけないだろうと言われるとその通りではある。
ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~【9月11日(金)開幕決定  / 公演中止 2020年7月12日(日)~8月30日(日)】

ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~【9月11日(金)開幕決定 / 公演中止 2020年7月12日(日)~8月30日(日)】

ホリプロ

赤坂ACTシアター(東京都)

2020/09/11 (金) ~ 2020/10/17 (土)公演終了

満足度★★★★

少年ビリーがダンスに目覚め、困難を乗り越え王立バレエ団のオーディションに合格するお話。

困難とはいってもダンスについては易々と上達して行く。私が作者ならビリーは育ちが悪いので優雅なニュアンスが表現できないとか余計な話を入れたくなるのだが、このお話のもう一方にはマーガレット・サッチャー首相と労働組合の戦いがあってそんな時間の余裕はないのだ。そして困難は主にその方面からやって来る。「こんな戦いのときに男がバレエなんかやってる場合か」などと父親を含む周りの人々から非難されてしまう。どうやら作者はビリーの物語と同等かそれ以上にサッチャー批判がしたかったようだ。日本の若い観客にとってはサッチャーって誰?だし、年寄りには何を今更となってしまう。少し無理のあるテーマの貼り合わせに思えるが意外に相性が良くストーリーに躍動感と緊張感を生み出し、3時間(含25分休憩)の長丁場を飽きずに楽しませてくれた。

ビリーのダンスは子供にしてはよくやっているなあという以上のものがあったが、親でも親戚でもない私を感動させるまでには至らない。そんな最初から分かっていることに文句をたれていてはいかんよと思うものの、成熟したダンサーの隙のない身のこなしがもっと観たかったという残念感がやはり大きい。ただしフィナーレの群舞は文句なし。これに匹敵するものをもう一つやってくれたら星5つだったのだが。

『浦島さん』『カチカチ山』 

『浦島さん』『カチカチ山』 

ヴィレッヂ

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2020/10/04 (日) ~ 2020/10/17 (土)公演終了

満足度★★★

「浦島さん」を観劇
太宰 治「お伽草紙」の「浦島さん」を舞台化したもの。とくに中盤は会話の連続なのでほぼそのままである。原作は浦島太郎の物語を太郎と亀のくだくだとした会話で延々と伸ばしたもので、あらすじを書けばただの浦島太郎のお話になってしまう。したがって皮肉や揚げ足取り満載の会話を楽しむべきものなのだろう。ただし竜宮での生活はタイやヒラメの舞い踊りがない地味なもので作者の思いが感じられる。80分休憩なし。

いのうえひでのり演出ということで劇団☆新感線的な何かを期待してしまうが登場人物が3人という時点でそれは無理だと諦めなければいけない。とはいえ亀役の粟根まことさんの(いつもの)怪演がたっぷり楽しめるのは劇団☆新感線ファンには嬉しいところだ。その怪人粟根と渡り合う福士蒼汰さんは大変だったろうが一歩も引けを取ってはいない。しかし私の一押しは乙姫役の羽野晶紀さんである。出番は多くはないが実に個性的でチャーミングであった。今まで私の脳内ではあのお姑さんのイメージが邪魔をして正しい姿をとらえることができなかったが今回で払しょくできたと思う。

以上に述べた「ストーリーは浦島そのもの」「何事も起こらない」に気づくのが遅すぎた、と言うより終わるまで気が付かなかった(笑)ためあまり楽しめなかった。満足度は星3つ。

・会場の東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)について
池袋駅の東側、ヤマダ電機とビックパソコン館の間を抜けていくと小さな公園がある。以前は公園の向こう側に豊島区役所と豊島公会堂の古い建物があって急に寂れてしまっていた。そこにいきなりおしゃれな建物群が出現した。「東京建物 Brillia HALL」はその一つにある。それを見るのが第一の楽しみであった。ホールは3階構造で合計1,300席のほど良い大きさである。できたばかり(とは言っても2019/11開業)で小奇麗だがとくに目立ったものは残念ながらない。

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