latticeの観てきた!クチコミ一覧

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トリツカレ男

トリツカレ男

ナッポス・ユナイテッド

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2021/10/16 (土) ~ 2021/10/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

王道の恋愛ファンタジー。一家で観に行ける安心の内容である。
ストーリー展開も役者さんの演技も「慣れている」感じだ。
しょうもない小ネタで笑いをとるのもうまい!

FESTƎ〜十二夜〜

FESTƎ〜十二夜〜

合同会社モダンタイムス

あうるすぽっと(東京都)

2021/10/14 (木) ~ 2021/10/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

音楽とダンスによる「12夜」。原作を大胆不敵に再構築したということだがいくつかのエピソードをつまみ食いしただけで全体像は見えない。初めての人にはちんぷんかんぷんだろう。そして主役4人が結局どうなったのかはカットして強引にフィナーレである。

まあシェイクスピアの看板だけ借りて自分たちのしたいことをしているのだろう。そう割りきって観ていればダンスもバラエティに富んでいて楽しめるのは確かである。

オルシーノ(公爵)は洋服店の店主という設定、何で洋服店かというとヴァイオラが男性と偽って名乗った名がシザーリオ、そこからシザー(ズ)⇒はさみ⇒服屋という連想らしい。もっともシザーリオという名前はローマのシーザーから来ているのではさみとは関係ないのだが調べてみると帝王切開という言葉の由来の説にはさみと帝王シーザーを混同したというのがあるのでそれなりに筋道の通った(?)連想ではある。

The morning rolls around~何者でもないワタシの道~

The morning rolls around~何者でもないワタシの道~

Story Dance Performance Blue

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2021/09/09 (木) ~ 2021/09/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

佐藤千夏さん演じる迷走中の兼業女優と宮田祐奈さん演じる後輩同女優との確執を柱として始まり、大内厚雄さん演じる中年男性の悲哀がもう一つの柱となって話は進んで行く。

佐藤さんと宮田さんは北島マヤと姫川亜弓のようなイメージがある(そういう選び方をした?)。あるいは白石麻衣さんと西野七瀬さんとか。あくまでイメージなので苦情は受け付けない(笑)。もっとも宮田さんは乃木坂46の映画「あさひなぐ」にも出演されているのでそういうイメージを私が持ったのも当然なのだった。佐藤さんはいつもの硬派な演技で全編揺るぎがなく、宮田さんの演技からは前半から後半にかけてのキャラの変遷が的確に感じられた。

衣装が良いなあと思ったらプロの仕事とのこと。ここも乃木坂46風と感じるのは私がおかしいのか?ついでにダンスパフォーマンスで佐藤・宮田がぶつかるところは白石・西野の「心のモノローグ」のMVを連想してしまうのもやっぱり変か。

題名の「The morning rolls around」はあの映画「ラ・ラ・ランド」から採ったという。
確かにオープニングの「Another Day of Sun」の歌詞にそういうところがある:
…歌詞省略
失敗しても朝が来るたびに頑張るぞという感じだ。
「ラ・ラ・ランド」と本作はオーディションに落ちまくり、生活のためバイトの毎日というところは共通だ。しかし、あちらはそんな中でも恋愛が大きな割合を占め、こちらは恋人はいないしすべてを演劇にかけているところが何とも切ない。まだ昭和なのか?
「Another Day of Sun」の歌詞の後半ではそのフレーズがこうなる:
…歌詞省略
自分が夢破れようがそんなことには関係なく太陽はまた昇るとかなりクールである。
そして、本舞台のメッセージはこの先を続ける。夢破れたなら転調してテンポも変えてまた最初から歌おうよと。

ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~

ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~

キョードー東京

赤坂ACTシアター(東京都)

2021/07/09 (金) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ミュージカルとは言っても最初に聞こえてくるのが
〇ソ〇ソピッチャン、〇ソピッチャン♪
というフレーズなので推して知るべしである。不要不急を練って固めたような舞台だ。
クッダラネー、時間の無駄と思いつつも途中休憩で帰らず3時間もいたというのはそれなりに楽しんだのかもしれない。女性陣の歌声がなかなか良かった。
注:上の〇にはクが入ります。

29万の雫-ウイルスと闘う-

29万の雫-ウイルスと闘う-

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2021/07/15 (木) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

素晴らしいドキュメンタリーであるだけに観ているのが辛かった。何をどう書いたら良いのかと悩んでいたら、かずさんの見事な記述がすでにあったのでほっとした。

いつものストップアンドゴーのパフォーマンスは防護服を着て行われるものもあって、束の間の安らぎや楽しみを得ることができる。

君子無朋(くんしにともなし)【8月29日公演中止】

君子無朋(くんしにともなし)【8月29日公演中止】

Team申

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2021/07/17 (土) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

清の雍正帝(1678-1735、在位1723-1735)のユニークな統治手法をユニークな舞台手法で描いている(脚本 阿部修英、演出 東憲司)。先代の康熙帝と次代の乾隆帝は私でも知っているがその間のこの方の名前は記憶にない。かなりマニアックな対象で話に入っていけるのかと心配になるが、会話の中でそれから展開される内容の概略が語られるので初めて聞く逸話であっても自然になじんでいける。まあそれでもCorichの「説明」とWikipediaの雍正帝のところを読んで行けば「ああこの場面はあのことね」とより深く楽しめるだろう。

佐々木蔵之介さんは私の中では頼りない上司役の人というイメージで「リチャード三世」で悪を演じても何か似合わないなあと感じていたのだが、この舞台では強いイメージを発散し続けていて、なかなか素晴らしい俳優さんだったんだなあと見直してしまった。

かげきはたちのいるところ

かげきはたちのいるところ

Aga-risk Entertainment

サンモールスタジオ(東京都)

2021/07/16 (金) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久しぶりのアガリスク観劇。150分、換気のための中断が数分あり。

売り物の屁理屈は少な目で昭和のコントのよう。大いに笑えるが不満が残る。俳優を劇団員だけで固めていて味のあるベテランがいないせいか全体に単調だった。若い人ばかりでもナイゲンのように強烈なキャラ付けができていれば良いのだかそれも弱い。

お話はグローバル資本主義を打倒するために爆弾闘争を企図する過激派集団の2年間のシェアハウス生活。半世紀ぶりにこういうアジテーションを聞いた気がする。

珍しくキャッシュレス会計ができる。SUICAもpaypayもOK。
「現金のいらない小劇場演劇はアガリスクだけ!」

*初回のせいか俳優も観客も気まずくなる長い沈黙が2回ほどあった。

反応工程

反応工程

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/07/12 (月) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

演劇としてはメリハリが効いていて長い時間を感じさせない素晴らしい舞台だった。
ただし2021年の現代に公演する意義はよく分からない。演劇界では古典という扱いなのだろうか。

講演後に演出の千葉さんと俳優6人によるアフタートークがあった。司会はこういうときにはお馴染みの中井美穂さん。とくに素晴らしいコメントをしたりすることはないが、なんとなく辻褄を合わせて進行させていくのはプロの技だと感心した。

夜会行

夜会行

鵺的(ぬえてき)

サンモールスタジオ(東京都)

2021/07/01 (木) ~ 2021/07/07 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

面倒くさい人々の面倒くさい会話劇。
すぐに傷付くし怒り出す。あまり関わりたくない方々だ。まあ、お互い様(笑)
私にそういう嫌悪感を抱かせたというのは女優さん達の演技が的確であったことの証だろう

アナと雪の女王

アナと雪の女王

劇団四季

JR東日本四季劇場[春](東京都)

2021/06/26 (土) ~ 2024/10/31 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

先週から始まった劇団四季の新作である。
アニメ版で「レリゴー、レリゴー」と散々聞かされたのはもう7年も前のことだ。その後2018年にブロ-ドウェイでミュージカル化され、昨年日本版が公開されるはずだったがコロナのため延期になっていた。そういう事情もあってか準備は万端ですべてにおいて完成度が高い、高すぎる!

舞台装置の数々が照明、音響、衣装そして演技と混然一体となってまるでアトラクション会場のような景色がこれでもかと押し寄せて来る。ほとんどイリュージョンであってそこに実在しているのが信じられないくらいである。ホームグラウンドでのロングランがなせる業なのだろう。

歌はもちろん完璧だ。大手の舞台の有名俳優さんであっても私の耳が悪くなったのではと心配になることがしばしばあるが、劇団四季の公演に来ると悪いのは私じゃないよと安心するのである。特筆すべきはハーモニーの美しさだ。二人でも大人数でもコーラスってこうだったよねと普段でたらめなデュエットに狂わされていた音感を正常に戻してもらった気分だ。

当然リピートするかというと、やはりアラセブンの爺さんにはストーリーがしっくりこない。そういうことはあるものの納得のスタンディング・オベーション。

お話に合わせたのか冷房がキンキンに効いて寒い寒い。男性であっても羽織るものを持って行こう。
劇団四季のHPでは年内チケットは売り切れだが「ぴあ」では絶賛抽選受付中。

〇の方が出演の回を観劇
アレンデール王国の王女エルサ:〇岡本瑞恵、三井莉穂
アレンデール王国の王女で、エルサの妹アナ:町島智子、〇三平果歩
氷を売って生活している山男クリストフ:〇神永東吾、北村 優
アナとクリストフが山で出会ったしゃべる雪だるまオラフ:〇小林英恵、山田充人
サザンアイルズの王子で、12人の兄がいるハンス王子:塚田拓也、〇杉浦 洸

ネタバレBOX

観客に勘の良い子供がいて的確に笑っていた。「家庭崩壊」という言葉にとくに嬉しそうに反応していたのには苦笑。
滅多滅多

滅多滅多

柿喰う客

本多劇場(東京都)

2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

初めての「柿喰う客」だったが、速くて切れ目のないセリフに、始まって30秒で理解することを諦めた。
綿密に書かれた脚本の下、良く訓練された動きに周到に用意された照明と音響があって何か優れたパフォーマンスが行われていることは分かるのだが、そこから欠片もつかむことはできなかった。

フェイクスピア

フェイクスピア

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

NODA・MAPは申し込んでは外れ、申し込んでは外れの繰り返しだったが、コロナのせいで応募者が減ったのか初めて観ることができた。求刑、いや休憩なしの2時間5分。

題名の通りに Shakespear の fake から始まり、いくつも支点を移動して全く別の方面へと進んで行く。あれがこうしてこれがああしてと書きたくなるがそれは販促、いや反則。それに1回観ただけではよく分かっていないところがたくさんあって誤解したまま書き込むのも恥ずかしい(いつものことだけどww)。

高橋一生さんは硬軟自在の変化が美しい。最近TVドラマをあまり見ていない私にも人気の理由がよく分かった。そして前田敦子さんは立派な女優さんだった。嘗めててごめんなさい。そして私の一番の推しは村岡希美さん。若々しく小気味良いセリフ回しが壺だった。

いやあ、もっと応募して何回も、できれば前方で観たかった。久しぶりに悔しい。

*追記
上手または下手あるいは両方から幕が出て来て、反対側に去っていくと舞台がすっかり変わっているのは野田秀樹さんのオリジナルかと思ったらブレヒト幕というのだとパンフレットを読んで初めて知った。昨年の「真夏の夜の夢」の場合はブレヒト板というべきか。

終わりよければすべてよし【6月12日~6月13日公演中止】

終わりよければすべてよし【6月12日~6月13日公演中止】

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2021/05/12 (水) ~ 2021/05/29 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

つまらないストーリー、見え透いた笑いどころ、若いころなら「あほくさ」となっただろう。今でも決して面白いとは思わないが許容範囲である。どんなに美しくとも身分の低い嫁は嫌だというバートラム伯爵の価値観も大いにありだ。今の世の中では身分や美醜でなく内面の美しさが一番と言うのが定番だが、心の持ちようを評価する方がよほど傲慢じゃないか、などとつらつら考えながら観ていると結構楽しめた。

横田栄司さんのはしゃぎっぷりが楽しい。舞台がずっと花畑のセットだけだったのが残念。

フラガール

フラガール

舞台「フラガール」製作委員会

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2021/04/03 (土) ~ 2021/04/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

炭鉱の町の成功した新規事業と言えば夕張のメロンとこの常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)が双璧だろう。こんなぶっ飛んだ事業を考案し実現させた人のことを知りたい気もするが相当に地味なものになるので作者はフラガールに焦点を当てたのだろう。

蒼井優さんの出世作である2006年の映画「フラガール」を改めて観てみたが微妙に配役が合っていないところが独特なおかしみを生じさせていたと思う。そういう点ではこの舞台は少し、いや、かなり硬い。ダンス講師も借金取り立て業者も労働組合員も真剣すぎる。まあそれは演出の方針の違いということなのだろうが、セリフに大声が多くなって聞き取りにくいのは困る。

ストーリーはこれ以上ないくらいベタな展開だがうまく構成されているので感動的である。

12人の怒れる男・12人の怒れる女

12人の怒れる男・12人の怒れる女

江古田のガールズ

「劇」小劇場(東京都)

2021/03/30 (火) ~ 2021/04/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「12人の怒れる女」を観劇

元々男性ばかりなものを女性だけで演じるということでどういう方向に持って行くのだろうか、演出家の力量拝見となるのだが、小ネタで笑いをとりつつ高い緊迫感を保っていて見事なエンターテインメントに仕上げられていた。オリジナルにはない結構長めの場面があったりして色々と工夫が楽しめる。

正義の味方陪審員8号(丹下真寿美)と敵役の3号(釜野真希)は正統的にぐいぐい押して来て100%期待に応えている。理屈重視の冷静沈着な4号(堤千穂)は少しおっちょこちょいの味が付けられていて見た目と合わせてあの女優さんをモデルにしているのは明らかだ。彼女から苦情が来ないか心配になってくる(なわけはない)。この演出のグッジョブその1だ。陪審員2号(山田瑞紀)はこの舞台ではお笑い担当になっていて客の受けはすこぶる良かった。しかも重要な伏線を早い時期から妙に強調していてグッジョブその2だ。舞台上手の壁のドアを開けるとその向こうはすぐ外だった。コロナの換気も兼ねているのだが車の音も入ってきたりして臨場感があった。ニューヨークではなく下北沢だがグッジョブその3である。

*「評決」と言うべきところを「判決」としているところがいくつかあった。

雪の中の三人

雪の中の三人

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2021/03/16 (火) ~ 2021/03/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

エーリッヒ・ケストナーの1934年の作品。有能な若者ハーゲドルンが失業中で全く仕事に就けないことが1929年からの世界恐慌の真っただ中であることを示している。しかしそれ以外に何か世相を表す事柄は見つけられなかった。1933年にはヒトラーが首相になっているのだがそれにもまったく触れられていない。強いて言えば、こんな時代でも金持ち連中は優雅に暮らしているのだと告発していると読めないこともないがちょっと無理筋だ。素直に多くの失業者を励ますものだと捕えよう。

こちらの予想と寸分も違わない単純なストーリー進行はどうかと思うが役者さん達は濃い目のキャラを見事に演じていてそちらは十分に楽しめた。

ハンス役の加藤頼さん、横内正さんの「リア王」での忠臣ケント伯の演技が印象に残っている。この舞台でも枢密顧問官の執事という同じような役柄で実に良い味を出していた。

ほんとうのハウンド警部

ほんとうのハウンド警部

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2021/03/05 (金) ~ 2021/03/31 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ややこしい芝居ということで予習をして出かけた。YouTubeには英語版の"The real inspector Hound"がいくつもフルサイズでアップロードされている。英語字幕は出せるが日本語訳はなく雰囲気を感じながら早送りするだけであるがそれでも相当に変な劇であることは分かった。この時点では劇中劇に犯人をおびき出して罠にかけるというミステリーかなあと思っていた。

日本語の舞台を観るとさすがに凡そのことは理解することができた(と思いたい)。ややこしいとは言っても哲学的に難しいとか抽象的で意味不明とかいうことではない。エンディングは
 「実は…でした」
 「そんなアホな」
 チャンチャン
というノリである……のじゃないかと思う(滝汗)

無名の作家が無名の役者を集めて作った舞台なら「わけわからん」で済ますところだが、トム・ストッパードの作品をこれだけの陣容で演じるのだから凄いんだろうなあと思って観ていると、面白いような気がしてくるので、そう思うことにしようというところか。
…そして「あらすじ」を書くつもりで振り返ってみるとどんどん仕掛けが見えて来るのだが、分析して「面白い」ことが分かってもそれが「面白い」のかどうかは(いつものことではあるけれど)また別の話である。

ネタバレBOX

登場人物および不登場人物

ムーン = 演劇評論家 = 生田斗真
バードブート = 演劇評論家 = 吉原光夫
ヒッグズ = ムーンより上位の評論家 = ?
パッカーリッジ = ムーンより下位の評論家 = ?

アルバート・マルドゥーン卿 = 荘園の主、10年前から行方不明 = ?
シンシア = マルドゥーン夫人 = 峯村リエ
マグナス・マルドゥーン少佐 = アルバートの異母弟、車椅子生活 = 山崎一(二役)
フェリシティ・カニングハム = シンシアの友人 = 趣里
ドラッジ夫人 = 家政婦 = 池谷のぶえ

サイモン・ギャスコイン = 女たらしの訪問者 = 鈴木浩介
ハウンド警部 = 山崎一(二役)
ウィリアム・マッコイ = サイモンと昔トラブルがあったカナダ人 = ?
死体 = ? = 手塚祐介

設定はアガサ・クリスティの戯曲「ねずみとり」に倣っているという。「ねずみとり」は「ハムレット」の劇中劇の題名である。王と王妃が劇中劇の王と王妃にシンクロするということがこの舞台「ほんとうのハウンド警部」と共通する。

開演
劇中劇開演前の客席にムーンがいる。やがてバードブートもやって来る。ムーンはいつもヒッグズの代理であり、ヒッグズがいなければ良いのにと嘆いている。バードブートは出演する女優の一人と関係を持っており更に別の女優にも関心を持っている。

劇中劇第一幕
人里離れたところにある広大なマルドゥーン卿の荘園内の屋敷。
ラジオの放送があって狂人がこのあたりに出没していてハウンド警部が策略をもって捜索しているという。
そこに放送があった容貌にピッタリのサイモンがやってくる。サイモンはフェリシティとシンシアの知人である、というかどちらとも関係を持っている。
マグナスも合流して4人で微妙な会話のポーカーをする。
シンシアに思いを寄せるマグナスはサイモンとの関係に気付きサイモンを脅して去る。
シンシアもフェリシティとの関係を疑いサイモンを殺すと言って去る。
劇中劇第一幕終了

劇中劇第二幕
お茶の時間があってからハウンド警部が登場する。ここでようやく舞台上に最初から横たわっていた死体が発見される。誰も知らない人物である。
皆が退場したところにサイモンが登場するも何者かに撃たれて死んでしまう。犯人は誰だろうかが強調されて休憩になる。
劇中劇第二幕終了

ムーンは自分の更に下にはパッカーリッジがいてパッカーリッジは上の2人がいなければ良いのにと思っているだろうなあと複雑な気持ちを語る。

劇中劇第三幕(=第二幕アゲイン)
バードブートが舞台をウロウロしていると小道具の電話が鳴る。ためらいながら出てみると妻からの浮気を疑う電話である。
ここから現実と舞台の境界が怪しくなる。
バードブートがまだ舞台にいるうちに劇中劇はなぜかまたサイモンの登場シーンから再開する。バードブートはそれに気づかないのかフェリシティ役の女優とシンシア役の女優にちょっかいを出す。一方で女優たちはバードブートをサイモンだとして台本通りの芝居をするのだがなぜかこれがピッタリと合ってしまう。サイモンと同様にバードブートも殺してやると言われる。
劇中劇第三幕終了

休憩になって、バードブートは舞台上の死体はヒッグズであることに気が付く。そしてバードブートは「すべてが分かった」と叫ぶと同時にサイモンと同様に誰かに撃ち殺される。

劇中劇第四幕(解決編)
ムーンが駆けつけるといつの間にか劇中劇の解決編が始まっている。
ムーンは客席に戻ろうとするがサイモンとハウンド(役の俳優というべきか?)に席はふさがれていて舞台に留まらざるを得ない。常々脚光を浴びることを願っていたムーンはついつい舞台上の配役からして期待されているハウンド警部の役をやってしまう。やる気満々のムーンはそこまでの伏線を挙げて推理し犯人を名指しするのだが死者(=ヒッグズとバードブート)は全く見知らぬ人であり殺すはずはないとすべて否定される。そしてマグナスに「唯一関係があるのはお前だ」と言われ、犯人にされてしまう。そしてマグナスは車椅子から降り変装を取り去って自分こそが本当のハウンド警部なのであり、罠を張ってこの日を待っていたのだと告げる。ここでムーンはマグナスがパッカーリッジであることを知り危険を察知して逃げようとするが撃たれてしまう。更にマグナスは実は自分は失踪していたマルドゥーン卿であって10年前に記憶喪失になってからはハウンドという名前で警察に勤め昇進して警部になっていたと語る。今回の作戦でここに戻って来て記憶を取り戻したのだと誇らしげに言いシンシアと抱き合う。マグナス=ハウンド警部=マルドゥーン卿=パッカーリッジを罵りながらムーンは息を引き取る。
劇中劇第四幕終了
終幕

このあらすじを読んでもメタとの融合の面白さは伝わらないだろう。それにストーリーと直接関係しないようなセリフは全部スルーしている。少しでも興味を持たれた方は配信があるのでそちらをご覧いただきたい。

原作では最初に現れるハウンド警部は偽物という設定だ。ハウンドの最初の登場シーンではハウンドとマグナスの会話があるし、初演の記録でもYouTubeにある[1]でもハウンドとマグナスは別の役者が演じている。この舞台では演出の小川絵梨子さんが最初から本物のハウンド警部が登場する設定に変えている。そのため山崎さんは非常に出入りが忙しくなって、より喜劇性が高まることになった。ただし改変の度合いが大きいので原作にも二つのパターンがあるのかもしれない。

*和訳本が見つからなかったので、まったくの翻訳ミスによる勘違いがあるかもしれない。また参考文献に挙げた石田氏の博士論文は非常にためになった。私の文の中に少しでも気の利いた考察があればそれはこの論文によるものである。

参考文献
[1] The Real Inspector Hound - Portland Community College - Spring 2014 Play, https://www.youtube.com/watch?v=2FONFHaYSVY
[2] 石田由希「エリザベス朝演劇と現代イギリス演劇にみるメタドラマ」第二部第6章「認識の解剖 ―『本物のハウンド警部』における劇場と劇評家―」、福岡女子大学博士論文2014
http://www.fwu.ac.jp/lib/uploads/ck/admin/files/hakuron_4.pdf
http://www.fwu.ac.jp/lib/uploads/ck/admin/files/hakuron_1.pdf も見よ。
桜の森の満開の下

桜の森の満開の下

CHAiroiPLIN

あうるすぽっと(東京都)

2021/03/18 (木) ~ 2021/03/20 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

坂口安吾の同名の小説からインスパイアされたダンスパフォーマンス。
音楽もダンスも心地良く楽しむことができた。
しかし原作の幻想性とか猟奇性とかは非常に希薄というか皆無だった。
まあ元々メタファーなのでまた別の何かで表現しているのだろう。
そこを読み解くあるいは感じ取ることは私の能力を超えている。

ウェイトレス

ウェイトレス

東宝/フジテレビジョン/キョードー東京

日生劇場(東京都)

2021/03/09 (火) ~ 2021/03/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

高畑充希さんのTVドラマは見たことがなかったので人気女優がたまたま歌うのだと舐めていたら、演技も歌も堂々とした実力派で腰を抜かしてしまった。知らなかったとはいえ失礼をお許しくださいと頭のなかで謝った。

宮野真守さんの歌も良い、宮澤エマさんは主役でないせいか伸び伸びと快調な歌いっぷり(*)、LiLiCoさんの歌声も重く響いて心地良い。そして特筆すべきはコーラスが奇麗に重なることである。ビブラートの位置が違っても声が溶け合うのは練習量の多さなのだろう。そして私の一押しはおばたのお兄さんだ。演技、歌、道化のどれも秀逸である。あの女子アナは見る目があったなあと感心した。

ストーリーはDVの夫に悩むジェナ(高畑)が妊娠する。望んではいなかったので悩み、浮気をしたりするが、生まれた赤ちゃんの顔を見てすべてを吹っ切って新しい生活に舵を切るというもの。ラブコメではないが問題作でもない、まあ甘くも辛くもないミュージカル用の土台である。そこに様々な演出が施され、俳優陣の素晴らしいパフォーマンスがそれに答えて飽きさせない。強いて言えば高畑さんがあまりに自信に満ちていてジェナの境遇にまったく心配を感じさせなかったのが不満と言えば不満である。少しはハラハラしたかったなあ。泣き所もなかったし。

(*)宮澤エマさんは主役になると委縮してしまうというのが過去の出演作を観た私の勝手な感想。

山崎バニラの活弁大絵巻2021 ~デンジャラス家族~

山崎バニラの活弁大絵巻2021 ~デンジャラス家族~

全労済ホール/スペース・ゼロ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2021/03/14 (日) ~ 2021/03/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

山崎バニラの弁士デビュー20周年記念公演。上映するのは10分余りの短編2本と60分の長編1本である。

1.「海の水はなぜからい」1935年(日本)
切り紙アニメの名手・村田安司による漫画映画。実になめらかな動きで驚いた。これはYoutubeにあるので最初だけでもご覧あれ。この話の最後の石臼から塩が出て止まらなくなるところは子供のころ何かで読んだ記憶がある。
https://www.youtube.com/watch?v=drq0rhFdvtY

2.「虚栄は地獄」1925年ごろ(日本)
内田吐夢監督の初単独監督作品ともいわれるコメディ。主演男優の名前とかいろいろ不明なところがあるが、東京の街の様子から関東大震災(1923)以後の作品であることが分かるという解説に興味を惹かれた。

大正琴を弾きながら語ってちょっと早いが15分の休憩に入る。後半は衣装も映画に合わせてパリの風景の入ったものにし、いつもの銀髪から黒髪に変えてピアノの弾き語りになる。

3.「陽気な巴里っ子(So This Is Paris)」1926年(米)エルンスト・ルビッチ監督のコメディ。
ドタバタではなく、すれ違いのストーリーや映像表現で見せる点は非常に現代的である。俳優の表情の決め方が自然で美しい。山崎バニラはピアノでも大活躍だったが見せ場のチャールストン・ダンス大会のところの選曲は私好みではなかった。ラグタイムとかブギウギとかの陽気でダンサブルな曲の方が合っているように感じた。

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