君に会いたい
しゅうくりー夢
ザ・ポケット(東京都)
2022/03/02 (水) ~ 2022/03/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「なんとかサスペンス」といったTVドラマを見ているようだ。ベテランから若手まで、俳優さんの面構えも決まっていて安定の演技である。登場人物は10人だが関係性もしっかりしていて、それぞれに見せ場があり、脚本が良く練られていることが分かる。
お話は元公安のはみだし刑事「居在家(いざいや)」とその同僚の御影池のコンビが警視庁捜査一課の高御堂の(一応の)指揮の下で連続殺人犯を追い詰めて行くというもの。ハードボイルドをうたっているが私立探偵ではないので孤独感は薄く、(主人公に関しては)暴力的でも無いので古典的なハードボイルドとはちょっと違う気がする。まあスピンオフということなのでそれは他の作品で観てほしいということなのだろう。
何度も流れる曲は1967年のザ・ジャガーズのヒット曲「君に会いたい」である。表題はここから採ったのだ。あまり本筋と合っていないと思っていたが、あの人とあの人のことかとこれを書いている内に気がついた。作者が(自分自身と)この曲が大好きだというのはよく分かった(微笑)
母孵ル、
fukui劇
劇場MOMO(東京都)
2022/02/23 (水) ~ 2022/02/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
Bキャストを観劇
75分中55分くらいまでは今年のベスト1を争うのではと思わせる面白さだった。そこから急に尺稼ぎなのかクドクドモタモタの進行になって、最後はアレレレレの結末。素晴らしいオチがあれば本当にベスト1だっただろう。
ところでこの劇団(に限らないが)はダブルキャストにするだけの人的資源を持っているのだろうか。金をとるレベルに達していない人も混ぜて中途半端な二つの組を作っているのではないだろうか。プロ野球には1軍と2軍がある。アイドルにも選抜組とそれ以外がある。実力者揃いの1軍と今一息の2軍で同時公演、2軍の入場料は1軍の半分、ギャラも半分なんてのをどこかでやらないだろうか。プロデューサーは「血も涙もない、鬼、悪魔」と散々罵られるだろうけれど。まあ私の腹立ちまぎれのガス抜きの提案なので無視してくだされ。
純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて
アマヤドリ
シアター風姿花伝(東京都)
2022/02/18 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
評価が分かれているので行ってみた。
パフォーマンスとしては小劇場的な仕掛けも豊富でよくできている。しかし主題のポリアモリー(polyamory)という概念が小物で、展開も「生煮え」、そして煮込んでも美味しくなりそうもない。というのが私の結論。
パダラマ・ジュグラマ
おぼんろ
Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)
2022/02/13 (日) ~ 2022/02/20 (日)公演終了
実演鑑賞
末原拓馬/登坂淳一/塩崎こうせい/岩田華怜/八神蓮 の回を観劇
初めてのおぼんろ観劇。最初に各登場人物が舞台のあちこちから長めのセリフを発するのだが、どうもそれらの言葉を有機的につないで理解する能力が今の私に欠けているようで、ここですでに脱落の予感がした。早すぎる(笑)。その後も独特の世界観になじめず取っ掛かりをつかめないままに終幕を迎えてしまった。そういうわけで無評価。
役者さんはみなさん素晴らしい演技でおまけに歌までうまい。そういう真のプロの中で、登坂淳一さんはセリフはもちろん、身のこなし、表情までも張りがあって艶があって切れがあり、人生のどこでそんな修行をしてきたのかとWikipediaで調べてみたが何の痕跡もないので驚いた。座長だと言われても信じてしまっただろう。まあ認知症気味の老人が言うことなので話半分で。どうしておぼんろに出演することになったのかは2,500円のパンフレットに書いてあるのだろうと思いつつ、どなたかのリークを期待してサイフを出し惜しんだ。
おつかれ山さん
ことのはbox
シアター風姿花伝(東京都)
2022/01/26 (水) ~ 2022/02/01 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
〈Team箱〉を観劇
場所は「風姿花伝」でCoRichの皆さんの評判も良い、というのは今まで鉄板だったのだがこれは初めての外れ(泣)
良かったのは舞台美術だけ。落ちのないストーリー、ありえない会話、間の悪い演技、…書いていると悪口ばかり言っている嫌なジジイになってしまったなあと自己嫌悪に陥るのでここまで。それなら書くなよというのは正論だが何か腹が立って書かずにいられない。アホだなあとまた自己嫌悪。
あいついつまでもやってる
トローチ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2022/01/22 (土) ~ 2022/01/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台は大学受験から生涯学習への転換中の予備校の会議室である。最近入ってきた老齢の派遣社員の強いテンションが昔いた名物生徒を想起させるということで二人の変遷が(照明の色で区別されて)交互に展開される。とくに変わったエピソードがあるわけでもなく強いメッセージがあるわけでもなく、沢山の小ネタで笑いを取りながら進むほっこり系のお話である。
役者さんもベテラン揃いで安心して見ていられるのだが、何か一つ尖ったところがほしいと感じた。それから主役の辻親八さん、常にいらだっているようで楽屋で何かあったのかと気になった。まあこういう芸風の方なのだろう(笑)
疚しい理由2021
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/12/15 (水) ~ 2021/12/22 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
Team"K" を観劇。
始めの30分は「ああ、なんだかダルいのに来てしまったなあ」と後悔したが、それからの15分で「いいぞ、いいぞ」と引き込まれるも「どうやって終わらせるの?」と心配していたら、案の定ぐだぐだのエンディングとなった。まあ、こういうのに誰もが納得する結末をつけられたらノーベル賞ものだわね。話の展開はうまいものだと進むにつれ感心した。
ガラスの動物園
東宝
シアタークリエ(東京都)
2021/12/12 (日) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
テネシー・ウィリアムズの自伝的名作。しみじみと人生の切なさに浸ってみたい人におすすめ。
配役が私の感覚とはちょっとずれていたかな。星4つ半
泥人魚
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2021/12/06 (月) ~ 2021/12/29 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
冒頭のオペラの歌唱が象徴しているのは唐十郎作品は演劇のオペラだということである。つまり芝居、音楽、衣装、美術の総合芸術ということ。違いは西洋的に洗練された方向ではなく日本的な猥雑な方向に向いていることである。そういうことが漸く私の腑に落ちた。問題はそれが自分に合うかどうかだ。
舞台はブリキのゆたんぽ屋の店頭から始まる。初演の2003年当時だってそんな店はすでになかったはずだ。何だろうと思っていると材料のブリキの畳一枚ほどの大きさの板を持った男がやってくる。それでひとしきり遊んでいるうちに5枚6枚と板が増えて行くと、そうこれは…。
お話は故郷の騒動から逃げるようにして都会で暮らす青年の日常である。彼のところに故郷の知人が次々と訪れてくる。彼らが起こすトラブルを大振りの演出で描いている。連発されるギャグは赤塚不二夫か松竹新喜劇かドリフターズか、そんなところを連想してしまう。
さて表題の「泥人魚」とは何か?宮沢りえさん演じるヒロイン「やすみ」は「ヒトか魚か分からぬコ」といわれる若い女性。ちなみに「やすみ」とは「安(い魚の切)身」ということらしい。そして、やすみを助けた船長の義眼が重要なアイテムなのだがその意味は?とか分からないことだらけである。しばらく考えたが結局分からずじまい。
今日の宮沢りえさんは化粧のせいだろうか、いつもの至高の美から至福の美とでもいうようなやさしい表情であった。ちょっと菅野美穂さんを連想した。
最初に書いた自分に合うかどうかだが、ちょっと合わないなあである(笑)まあそれは仕方がない。
ダウト 〜疑いについての寓話
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2021/11/29 (月) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしい役者さんによる素晴らしい会話劇。絶対のおすすめ。
「CoRich舞台芸術アワード!2021」の一位はこれで決まり!
ヴォンフルーさんのあおりに乗せられて良かった。ヴォンフルーさんに感謝。
海王星
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2021/12/06 (月) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
寺山修司の大人のメルヘン。
再婚間近に事故に遭って死んだはずの男(ユースケ・サンタマリア)が生還してみると婚約者(松雪泰子)と息子(山田裕貴)が恋仲になっていた…というお話。もう少し書くと全部になってしまうのでここまで。それくらい話は単純。
オープニングは銀座のクラブの歌手といった風情の中尾ミエさんがブルース風の歌をしっとりと歌い上げる。おお良い調子と思っているといきなりロックバンドの爆音が響き渡る。こうなると歌詞がまったく聞き取れない。言葉を楽しむはずなのに誰だよこんな選択をしたのはとブチ切れてしまった。そういう気分のせいでもないだろうが皆さんの歌があまりうまく感じられないので困った。音楽以外も特に何かがあるわけではなく印象の薄い舞台であった。
松雪さんは何があってもいつも推しだが、今日の推しは伊原六花さん。やさしくしかも凛とした声に優雅な身のこなし、安定した演技で文句なしである。おっと歌はロックのビートに乗れていない感じがした(私の席がかなり後ろだったせいかもしれないが)。得意のダンスは特別にソロの場が用意されていた。とはいえ主役でもないのであっという間に終わってしまった。これからに期待。
彼女を笑う人がいても
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/12/04 (土) ~ 2021/12/18 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
表題の「彼女」というのは60年安保闘争で亡くなった樺美智子さんのことだが劇中では名前は出されず姿も声もない。そういう手法なのだろうが、他の人が語る彼女のことから彼女の存在が強く浮かび上がるということは私にはなかった。
舞台は安保闘争で学生たちに取材する新聞記者の話とその孫がまた新聞記者になり原発事故被災者の取材をする話との二つからなり交互に展開される。私には無関係な二つの話にしか見えないのだが、政府とその監視の役目を放棄したマスコミが悪いということを言いたいらしい。私が二人の記者について共通点を探せばどちらも取材対象にのめり込んで社会全体が見えていない(あるいはわざと見ないでいる)ということだ。
内容はともかく俳優さんたちの演技は緊迫感があってすばらしかった。
蜘蛛女のキス
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/11/26 (金) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
メインストーリーに並行して女優オーロラの映画が回顧され、定期的に蜘蛛女(=死神)が表れる。それらがセリフと歌とダンスで綴られて行く。反政府組織の弾圧というシビアなストーリーに対して、ラテン系の元気の良い音楽(+安蘭けいさんの多彩な衣装の早変わり)という相反するものが絶妙なバランスで展開される。それはどれも尖っていないということでもあるし、さらに欲を言えばダンスシーンの人数がもっと多ければより楽しめたとは思う。しかし幸いなことにこの回はアフタートークがあったのでそれも含めて満点としたい。
THE BEE
NODA・MAP
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/11/01 (月) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ああ、この感じ、昔読んだ筒井康隆の世界だよなあ…と何の引っ掛かりもなくすんなりと入り込むことができた。普通に面白い筒井作品。
今回も抽選に外れ、一般発売はもたもたしている内に売りきれ、追加公演のチケットを訓練を重ねてようやくゲット。
TOKYO LIVING MONOLOGUES
DULL-COLORED POP
STUDIO MATATU(東京都)
2021/11/10 (水) ~ 2021/11/28 (日)公演終了
実演鑑賞
谷賢一さんの実験イベントである。
会場はビルの地下にあって降り口の扉に小さな張り紙がある。20分前になると出演者の一人が不動産の営業という設定でプラカードを持って案内に来るのでおとなしく地上で待っていよう。
地下の会場は小さな展覧会が開けるくらいの大きさで四つの角に2畳ほどの部屋があって住人がすでになにやら活動している。中央には20数席の客席がある。4つの部屋は以下のようにラベル付けされていて、最初の二つは一つのアパートの隣接した部屋だが他は離れた別のところのようだ。
「本だらけの部屋」伝統的な日本観の中年男性。陰謀論にもはまっている。
「女装部屋」若い男性、ブラック企業の重労働に疲れ、少女ヒーローのコスプレに癒しを求めている
「配信部屋」若い女性、セクシーボイスを立体音響で配信している(観客も途中で指示に従ってこれをイヤホンで聴くのだが会場の音と混じって効果はよく分からなかった→ASMR対応イアホンがおすすめだが普通のイアホンでも会場の音だけよりはまし)。
「ゴミ屋敷」別室で親の介護をしているが疲れて精神崩壊し、部屋もゴミだらけのアラフォーの女性。
これらの部屋で交互にあるいは同時に住人が行動を起こす。「ゴミ屋敷」ではビデオチャット系の配信を行うが乳首すら見せないので数人いた客も全員退室してしまう。「女装部屋」ではミシンで新しいコスチュームを作っている…。とかなんとか色々のちょっと変わったしかし大したことのない日常が展開される。
そんな部屋を観客がぞろぞろと動き回って覗きの快感を感じてもらおうというのがこのイベントの趣旨なのだろう。リアル「屋根裏の散歩者」か。さすがに初見の観客が動き回るはずもないので各部屋には複数のカメラを設置してZOOMで配信し、持ち込んだスマホやタブレットで自由に見て(覗いて)もらうという仕掛けになっている。
そんなわけで実験であって全体にストーリーがあるわけではない。現実に苦しんだ4人が最後にうっすらと連帯するような動きもあるが90分のパフォーマンスのエンディングを無理に作ったものだろう。強いて意義を考えると(単なる中継でない)配信による演劇の可能性を探ったとでもなるのだろうか。まあでも基本というか全部がエンタメだ!
入り口では目の周りだけの仮面が渡される。黒い服装が推奨されていたのと合わせて自分の好みで覗き回るときの匿名性を担保するためのものだろう。しかしもちろん普通の日本人は誰も自席から動かない。私も時々立ち上がって反対側を見るくらいだった。この仮面、覗きの気分を出す意味もあるのだろうが視野が狭められて不快である。しかし他の方が着けているのを見ると非日常的で中々良い感じなので結局最後までお付き合いした。
持ち込んだスマホやタブレットでZOOMの会議に参加するのだが、URLとパスワードは前日のメールで指定され開演と同時に開始される。皆さんちゃんとZOOMをインストールしてきていて画面にずらっと並ぶので驚いた(*)。観客は画面の場所が割り当てられるだけで顔が映ることはないのでご安心を。しかし画面が小さいと各部屋を見るのが難しいので10インチ以上のタブレットやノートパソコンを持って行こう。会場ではWiFiが提供されるのでモバイル通信までは必要ない。
以上評価は不可能、報告のみ。
*皆さんそんなに準備が良いというのは変ですね。自宅で配信を観ている人も一緒に並んでいたのでしょう。
パ・ラパパンパン
Bunkamura / 大人計画
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2021/11/03 (水) ~ 2021/11/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
冒頭、松たかこさん演じる作家が新作のプロットだとしてアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」そっくりの話を始める。神木隆之介さん演じる編集者に叱られ軌道修正させられて妄想するのがチャールズ・ディケンズの名作「クリスマス・キャロル」の主人公、守銭奴スクルージが殺される「クリスマス・キャロル殺人事件」である。いやしかし、そういう設定の話なら誰かがすでに書いているだろうと調べてみると他ならぬクリスティが「ポワロのクリスマス」でクリスマス・イブに強欲な富豪が殺される話を書いているのだった(それで最初にクリスティーが出てきたのかと合点)。それは「もっと血にまみれた、思いきり兇暴な殺人を」という要望に応えて書かれた作品であるという(ウィキペディアによる)。本舞台はそれとは真逆で元ネタに近く、ほのぼのとした趣のものである。作者の藤本有紀さんはクリスティーとは違った「クリスマス・キャロル」のテイストを生かしたものをという思いでこの劇を書いたはずだ。
まあ松さんと神木さんが主演であるのだから見る前から楽しい舞台であることは分かっている。その期待は十分にかなえられ、さらに本格ミステリーとしても「ううむ」と唸らされてしまった。謎解きものなので詳しくは書けないがどなたでも楽しんでいただけることは請け合いである。
松尾スズキさん脚本・演出の「フリムンシスターズ」は全く私の好みに合わず前半で帰って来てしまった。二度と松尾ものは観ないと誓っていたのだが俳優さんの顔ぶれが良いのでそれを破ってしまった。本作は脚本が藤本有紀さんということが大きいのだろう、満足して観ることができた。藤本さんが脚本の作品を調べてみると黒木華さん主演のNHK土曜ドラマ「みをつくし料理帖」があるではないか(原作は髙田 郁(かおる)さん)。あれは繰り返し見たものだ。おっとここにも小日向文世さんがいる。
最初の歌と踊りで会場の音響が酷かったのが唯一の残念ポイントである。まあ音楽全般も期待していたほどではなかったのだが。
にんげん日記
トム・プロジェクト
紀伊國屋ホール(東京都)
2021/10/27 (水) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
昭和24年の休業中の銭湯が舞台。未だ戦地から帰ってこない孫を待つ主人(小野武彦)と幼馴染の2人(高橋長英、村井國夫)、そこに飛び込んできた母と娘(賀来千香子、大手忍)の5人が織り成す泣き笑いの1か月ほどの物語。定番の展開で驚くようなことは何もないが皆さんの珠玉の芸にすっかり引き込まれてしまった。小野さんの実直な姿、高橋さんのボケ老人ぶり、村井さんのちょい悪のダンディーさはさすがだ。賀来さんのわざとらしい演技(失礼!)もこの状況にはぴったりだ。大手さんの浮き気味の張り切りぶり、賀来さんとのぎこちないやりとりも最後にはああそういうことかと納得してしまった。
昭和24年と言うと私はまだ生まれていないが会場はすでに元気に活動していたと思しき方々で満席であった。
ジュリアス・シーザー
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2021/10/10 (日) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
all male ならぬ all female のシェークスピア劇。それって宝塚では?と調べてみると2006年にロック・オペラ 『暁(あかつき)のローマ』- 「ジュリアス・シーザー」より -が上演されていた。しかし“シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」を原作にして、ポップな音楽をちりばめたロック・ミュージカルをお届けします。”とあるようにあちらはやはり音楽劇になるのであった。
開幕するとシーザーを真ん中に全員の行進である。シルビア・グラブさん、こういう重厚な役がぴったりだ。観ているこちらもテンションが上がり、この先の展開を期待させる。
いやあしかし、セリフが多い。しかも前半では早口のキャシアス(松本紀保)に対してゆっくり目のブルータス(吉田羊)という対比を付けて、決断を迫るキャシアスと悩むブルータスを表している。そして意思を固めるにつれてブルータスも早口になって当然の演出とは思うものの老人の耳には辛さが増して行く。セリフを追うのに疲れて2時間20分休憩なしが3時間以上に感じた。
何か物足りないのは女優さんが正統派の方ばかりだからだろう。引っ搔き回す人がいない。唯一、異質だったのは外出をやめると言うシーザーを翻意させるディーシアス(智順)である。おっさんがおっさんを説得するのだがここでは若い娘がおっさんをたぶらかすようなウキウキ感を出していた。こういう気分転換をもっと入れないと単調な舞台装置もあって飽きてしまう。1953年の映画ではデボラ・カー演じるポーシャの登場シーンが息をのむくらい美しい。むさ苦しい男ばかりのところに突然美女が現れるから効果的だが、女優さんばかりの本舞台ではそうも行かない。ここはall femaleの弱点かも知れない。また戦闘シーンがカットされていることもあって後半は盛り上がらない。本当はアントニー・オクティヴィアス軍もブルータス・キャシアス軍も互角の大軍なのだがこの舞台では最初からブルータスは落ち武者のようだ。
アントニー役の松井玲奈さん、見事なせりふ回しで光っていた。やや喉を傷めているような声であったが、それが却って説得力となっていた。
オリバー!
ホリプロ / 東宝 / TBS / 博報堂DYメディアパートナーズ WOWOW
東急シアターオーブ(東京都)
2021/10/07 (木) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
歌と踊りは素晴らしいがストーリーは単純でつまらない。まあ、ミュージカルではよくある作りである。キャストの人数が多く、皆さん楽しそう。どうも観る側より演る側の方が幸せになれる舞台のようだ。
いのち知らず
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2021/10/22 (金) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
初めての岩松ワールド、どう楽しんだら良いのか全く分からず。
思わせぶりで粘着的な会話が嚙み合わずに延々と続く。罰ゲームを通り越して拷問の2時間。どなたかうまく解説してくだされ。