彼女を笑う人がいても 公演情報 世田谷パブリックシアター「彼女を笑う人がいても」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    表題の「彼女」というのは60年安保闘争で亡くなった樺美智子さんのことだが劇中では名前は出されず姿も声もない。そういう手法なのだろうが、他の人が語る彼女のことから彼女の存在が強く浮かび上がるということは私にはなかった。

    舞台は安保闘争で学生たちに取材する新聞記者の話とその孫がまた新聞記者になり原発事故被災者の取材をする話との二つからなり交互に展開される。私には無関係な二つの話にしか見えないのだが、政府とその監視の役目を放棄したマスコミが悪いということを言いたいらしい。私が二人の記者について共通点を探せばどちらも取材対象にのめり込んで社会全体が見えていない(あるいはわざと見ないでいる)ということだ。

    内容はともかく俳優さんたちの演技は緊迫感があってすばらしかった。

    ネタバレBOX

    後日追記
    この作品では7新聞社の共同声明が言論を封殺したように描いているがそれは間違いだ。戦時中でもあるまいし、主義主張の異なる新聞社が揃って政府に忖度する必要なんてなかったのだ。右でも左でも新聞社も政党も選挙による多数派の獲得によって政治を変えるという議会制民主主義を守る点では一致していた。それくらい当時は民主主義が希望の星だったのだ。それに対して、過激な行動で社会に混乱をもたらし革命の起爆剤になろうという一部の勢力は共通の敵なのだった。

    更に後日追記
    安保反対を叫ぶ人に代案があるはずもなく、反対するだけで目的は政権の交代であった。朝鮮戦争(1950/6/25-1953/7/27)があったりしてアメリカとソ連の冷戦の真っただ中ではどちらかに付くしかなかったのである。(旧)条約を廃棄して非武装中立にするなどということは大多数の人はありえないと分かっていたので、新条約が成立し、岸首相の退陣というガス抜きが行われると運動も雲散霧消してしまった。マスコミが政府批判をしなくなったからではなく多くの人が落としどころを探っていたのだ。
     国会を取り巻いた人もほとんどは社会党や共産党の影響下の穏健派であった(共産党はすでに暴力革命派とは決別していた)。国会に突入したのは対立する一部の過激派であり、樺美智子さんもそちらの活動家であった。

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    2021/12/06 16:11

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