latticeの観てきた!クチコミ一覧

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入管収容所

入管収容所

TRASHMASTERS

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千秋楽に滑り込んだが皆さんの感想を読んでいたせいか衝撃はなかった。
一番気になったのは入管がこういう運用になっている理由である。その点では局長と新聞記者との論戦に期待したのだが、あまり賢そうでない局長が大した理由も挙げられず早々に激高してしまった。まあこの演劇の性格上しかたがないことではある。

ブルーストッキングの女たち

ブルーストッキングの女たち

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/02/24 (金) ~ 2023/03/02 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お話はほとんど伊藤野枝物語である。野枝が九州の婚家を飛び出して東京に来るところから甘粕大尉らによって殺害されるまでを概観する。登場人物が皆さん濃すぎるので表面をなぞっただけでもこの長さ(75分+休憩15分+90分)になってしまう。

新国立劇場演劇研修所第16期生の修了公演。10月の試演会「燃ゆる暗闇にて」は盲学校の話ということで表情も動作もかなり抑えられていて正に研修というものであった。研修生には個性を発揮しないことが求められたのではないかと想像する。しかるに今回の修了公演では打って変わってキャラの濃い人々ばかりが登場する。研修生の皆さんは生き生きとして個性を存分に振りまいていた。

・らいてう(越後静月)美しい物腰が印象的。そのまま舞台でも映画でもTVでも通用しそう。それに髪型も着物もピッタリ似合っている。後半の出番がほとんどないのが残念。
・市子(米山千陽)華やかな空気をまとった女優さん。日蔭茶屋事件で実際は大杉は瀕死の重傷を負ったので、あの場面をもっと膨らませればぴったりの見せ場になった気がするがこれは演出の問題。違う芝居になっちゃうし。
・紅吉(藤原弥生)場の空気を舞い上がらせるムードメイカー役がぴったり。もっと出番が欲しそうだった。
・保子(岸朱紗)体が弱く病気がちで進んだ考えについて行けない人そのままであった。本当にそういう人かと思ってしまうのだがそんな人が演劇研修所に来るはずもなくこれは完璧な演技なのだ。
・野枝(伊海実紗)終始元気で明るく大役を見事に演じ切った。最後に憲兵に抗議するときの真剣な表情もすこぶる良い。
・島村抱月(松尾諒)メイクが完璧そして演技も完璧だった。
・辻潤(都築亮介)優しすぎる情けない男の雰囲気が良く出ていた。ただし普段の会話調でなくもっと演技らしさを感じたかった。
・荒畑寒村(笹原翔太)堅実な演技ですでにベテラン脇役の味があった。
・奥村博、甘粕大尉(宮津侑生)らいてうの夫で画家の優男と鬼の憲兵って、後で配役表を見て驚く。ミスプリじゃないのかと半信半疑だ。
・大杉栄(安森尚)男女関係においてのクズ人間ぶりが清々しく感じられるほど的確に演じていた。
以上16期生のみ配役表順

ネタバレBOX

冒頭、市子のセリフに「青鞜社なんかに出入りしていてはいけない、と梅子さんに叱られた」とあって、私の頭にまったく無関係に存在した津田梅子と平塚らいてうの対比に俄然興味が湧いてきた。

らいてうも野枝も結婚は二人の問題であって国家に承認してもらうものではないとして(当初は)届を出さないのだが100年後の今では同性の結婚をも国家が認めよという意見が優勢になっている。

大杉・野枝夫妻の長女の名前は野枝が「魔性の女」と呼ばれたのを逆手にとって魔子と名づけられ、その後に眞子と改名された。夫妻の子供は5人もいる。野枝は28歳で亡くなるまでに計7人の子供を産んだ。

以下、その後が印象的な二人をフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用する。

甘粕 正彦(あまかす まさひこ、1891年〈明治24年〉1月26日 - 1945年〈昭和20年〉8月20日)は、日本の陸軍軍人。陸軍憲兵大尉時代にアナキストの大杉栄らを殺害した甘粕事件で知られる。事件後、短期の服役を経て日本を離れて満洲に渡って関東軍の特務工作を行い、満洲国建設に一役買う。満洲映画協会理事長を務め、終戦の最中に現地で服毒自殺した。

神近 市子(かみちか いちこ、本名:神近 イチ、1888年6月6日 - 1981年8月1日)は、長崎県出身の日本のジャーナリスト、婦人運動家、作家、翻訳家、評論家。ペンネームは榊 纓(さかき おう/えい)。1916年の日蔭茶屋事件で一躍著名になり、大杉栄に対する殺人未遂罪で2年間服役した。戦後に政治家になり、左派社会党および再統一後の日本社会党から出馬して衆議院議員を5期務めた。
モルグ街の殺人 ~最初の探偵デュパンの物語~

モルグ街の殺人 ~最初の探偵デュパンの物語~

ノサカラボ

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ポーのオーギュスト・デュパンものである。こんな古典探偵小説なんて年寄りしか観ないだろうと思っていたら会場は若い人ばかり。大半を占める女性のお目当てはイケメンの俳優さんや声優さんなのだろうけれど、コナン君や金田一少年でこういうものに慣れていることもあるのだろう。

デュパン三部作「モルグ街の殺人」、「マリー・ロジェの謎」、「盗まれた手紙」を朗読劇として連続上演する。各30分で「マリー・ロジェ…」の途中に15分の休憩がある。幾度か私だけタイムスリップ(?)したためあっという間に終わってしまった。

主要登場人物の3人「デュパン、語り手の私、警視総監G」はそれぞれ3人の俳優さんが3回ずつ日替わりで担当する(デュパンは4人!)。朗読劇の効率的運用というべきか悪用というべきか。そんな策を弄しても満席には遠い状況であった。あまり有名な方々ではないのだろう、私が知らないのも当然だ。

私の観た回は「デュパン=渡辺和貴、語り手の私=金城大和、警視総監G=ちゅうえい」であったがデュパンと語り手の私の声が似ていて区別するのに困った。そんなことを言うとファンの方々に「渡辺君と金城君の声が同じなんて〇〇じゃないの!」と叱られてしまいそうだがもう少しキャラ付けをしてほしいものだ。それ以外は脇役の皆さんも含めて器用にこなしておられた。

対話

対話

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/24 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

加害者側の発言はあまり聞くことがないのでフィクションではあるけれど膨大な取材に基づいているのだろうと期待してでかけてみた。冒頭の加害者の母の願いに被害者の父母が最後にどう応えるかを予想し、どのように2時間後にそこに着地させるか作者のお手並み拝見である(最近はどうもこういう嫌味なスタンスになりがちだ。そういう年頃なのだろう)。各人の建前、本音、自分も気づいていなかった内心が的確に披露され、大いに引き込まれた。役者さん、皆さん上手すぎだ。
ただ沢山の事柄を全部盛りにしたところに作り物的なにおいをじわじわと感じてしまった。

ネタバレBOX

最後の「全部政治が悪いのだ」的な発言はそれまで一部出しては引っ込めを繰り返していたことをとうとう出し切ったという流れなので、それが作者が強く言いたいことなのだろう。ちょっと肩透かしを食らった気持ちだ。
アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―

アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2023/02/16 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「Appropriate」はBranden Jacobs-Jenkins(1984-)の2014年の作品で「An Octoroon」と合わせてObie賞のBest New American Play部門賞に輝いた(参考:Wikipedia英語版)。ワンツーワークスは以前に彼の代表作のひとつ「グロリア」を上演したことがあるが、私には良さがさっぱり分からなかった。しかし本作は非常に分かりやすく60分+10分休憩+90分の長丁場を退屈することなく楽しむことができた。最後は疲れたけど。

物語は田舎に暮らしていた父が亡くなって、後始末に集まった姉・兄・弟の3人と彼らの家族の怒涛の罵り合いである。相手の技をしっかり受けてからこちらの技を繰り出すという言わば口喧嘩のプロレスである。関谷美香子さん演じる姉トニーが小山萌子さん演じる兄嫁レイチェルのマシンガントークを受け止めてからの余裕の反撃には痺れた。多勢に無勢で負けが込んで行くのもご愛敬。

亡くなった父の恥ずべき過去が人種差別主義者だった(らしい)ことが全編を通しての柱となっているのは2023年の今にはあまりピンと来ない。ニュースでKKKの話を聞くことは無くなったのであの装束が出てきたときは懐かしさを覚えたほどだ。

いつもは暗転の代わりに行われるmove(stop&go のダンスパフォーマンス)が無いのかと思っていたら一番ピッタリなときに爆発した。やっぱりこれがなくっちゃ。

ネタバレBOX

弟嫁のリバー(高畑こと美)が要所要所に印象的に登場し、思わせぶりな会話もあるので何か大きな秘密があるのかと思ったが結局何もなかった。ここはがっかりポイントだ。

最後、家が朽ち果てて行く様を短時間での大道具の移動で表すのは苦労の割に効果は薄い。家そして家族が崩壊して行くというのは観客の脳内で十分補完可能だ。それに最後は早く帰りたいし。ああでも結局家が売れなかったということを確認するという意味はあるなあ。
生活と革命

生活と革命

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

短編が5つ、どれも若い男女の関係がベースである点は共通するが、それぞれの話に特に関連はない。池亀三太さんの頭に浮かんだあれこれを何となく並べた作品群だ。どれも厳しさも深みも熱量もないがそのホンワカ感がこの劇団の特徴なのだ。
私はもっと振れ幅の大きなものが観たい。最後の作品だってもっとアクロバティックにあるいはピタゴラスイッチ的につながってほしかった。まあこれは好みの問題なので「嫌なら観るな」ってことで終了。

舞台『十五少女漂流記』

舞台『十五少女漂流記』

舞台『十五少女漂流記』製作委員会

THEATRE1010(東京都)

2023/02/03 (金) ~ 2023/02/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ジュール・ベルヌ『十五少年漂流記』(1888)の少女版である。原作は子供のころから気にかかっていたが今更読む気もしないのでちょうど良い機会と出かけてみた。さすが冒険活劇の名作だけあって血沸き肉躍るストーリーに引き込まれた。出演者はアイドルとはいってもさほど有名ではない方ばかり。私も特に推しがいるわけではなく純粋に演劇を楽しむことができた。

退場はキャスト全員が舞台に並び「お見送り」をするのだが前8列のSS席は1列ごとに立って手を振り、3秒間のカウントダウンが行われる。さすがに私はSS席ではないので早々に退散した。色々やるのねえ。

おやすみ、お母さん

おやすみ、お母さん

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2023/01/18 (水) ~ 2023/02/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

娘が突然2時間後に自殺すると言い出す、という現実ではありえない話である。冷めて観ているとアホらしくもなってくる。しかしこの舞台が進むにつれ、そういうわざとらしさ、白々しさこそが演劇におけるリアリティなのではないかと心持が変化して行った。そういう意味では非常に勉強になった舞台である。

ある程度の年齢の大人が冷静に判断して自死を選ぶのは個人の権利だと言ってしまうとこの劇は始まった瞬間に終わってしまう。そこを一旦踏みとどまって、作者のお手並み拝見と切り替えると、2時間近くの会話を芝居として成立させる技を楽しむことができる。もちろん那須さん母娘の緊張感を一瞬たりとも切らさない演技にもぞくぞくしてしまう。

最後のシーンを反芻している内にこれって「かもめ」のラストなのでは?もしコースチャが多弁で母親思いだったら?というお話を作者は書いたのでは?という妄想が湧いてきた。

後日追記:当日パンフレットがグレー地に白抜き文字のため薄暗い客席では読めなかった、ということを棚を整理していて出てきたパンフを見て思い出した。

ネタバレBOX

自死は個人の権利と書いたがその行使には義務も生じる。人生における最大の悲しみは別れの喪失感である。その衝撃を和らげるために人間にはいくつもの仕掛けが組み込まれている。年をとるとボケて来るのはその最たるものだ。このお話で娘は一度家を出てから戻って来ている。その時点で共同生活をする契約を結んだのであり、これを破棄するにはそれなりの義務を果たさねばならない。母が亡くなるまで待つか、家を出て疎遠になるかである。母にはそう求める権利がある、というのが現在の私の考えであり、本舞台はそういう目で観ても大きな矛盾はなく非常にしっくり来る。
わが町

わが町

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/01/25 (水) ~ 2023/02/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ソーントン・ワイルダーの1938年作のピューリッツァー賞を受賞した戯曲。
前半2幕では20世紀初頭の何の変哲もない田舎町「グローバーズ・コーナーズ」で起こる何の変哲もない日常が描かれる。休憩後はこの退屈さを昇華させ、何でもない日常の素晴らしさをしみじみと感じさせる。85分+10分休憩+40分。整理番号順入場の自由席、良い席をとるには会場後10分以内に行こう。

前半を普通に演じていたなら私は絶対に熟睡していた自信がある。それくらい何も起こらない。そこを本舞台では様々な演出の試みで観客の興味をひきつけ続ける。わざとらしいところもあって、チッと舌打ちをしたくなるがそれも計算の内だろう。まあそれでも辛いことは辛い。しかし前半を耐え切った人だけが説得力のある後半を楽しむことができるのだ、頑張って行こう。ああでも一番楽しんでいるのは演出家と俳優さん達だと思う。

ところで現代の東京に置き換えた部分もあるというのだが東京タワーなんかで外見的には分かるのだが人々の営みは全く東京を感じさせなかった。ここは正直全然分かりません…。それに失われた価値観満載なので現代とは相性が悪いんじゃないかなあ。

兼光ほのかさんが広瀬すず並みにきりりとした美少女で目を奪われた。最後の方の少し力を込めたセリフの響きも美しい。

チラシの図柄は完全にミスリードだ。これじゃあまるでハードボイルド。その狙いも読んだのだが考えすぎだと思う。

GOOD BOYS

GOOD BOYS

TAAC

新宿シアタートップス(東京都)

2023/01/18 (水) ~ 2023/01/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

暗闇の中の会話から始まる。二人の子供とお婆さんの声。しかしこのお婆さんの声がおとぎ話の魔法使いのようなわざとらしいダミ声で最初から違和感がある。その後も泣くべきか、怒るべきか、はたまた笑うべきか喜ぶべきか困ってしまう場面が続く。30分以上してようやくこれはファンタジーなのだと気が付いた。そう思って観ればいろいろ合点が行くのだか今度は何が面白いのかが見えなくなる。ううむ何なんだろう。この疑問は観劇後、以下のように氷解する。

作者は「ステージナタリー」「MOTION GALLERY」などでアゴタ・クリストフ『悪童日記』を下敷きにしたと語っている。Wikipediaで『悪童日記』の項目を読むと大きなプロットはほぼそのままに戦時下のハンガリーから現代の日本に設定を変えていることが分かる。したがって不自然に感じる部分が沢山出て来るのは当然である。原作を読んでみると中身はまるで違っているし、この舞台の主題として価値や本質を見抜く力ということがあるので特に原作表記はしていないのだろう。

家の外壁を回すという大技の意味が分からなかったのだが uzさんの「観てきた!」で合点した。日記がめくられて行く(=時間が経って行く)イメージなのだ。しかしゆっくり回すときは良いのだが早く回すとホコリが舞ってスモークをたいたようになる。マスクはむしろこの対策に有効だ。

ネタバレBOX

最後、二人が一人になるのはドラゴンボールみたいにfusionしたってことで良いのかな。原作では一人は父親を騙し犠牲にして地雷原を突破して隣国に逃げ、一人はこちらにとどまるのだが。

小太りのおじさんはお婆さんの本当の心を表しているということで良いのかな。原作では全く出てこないのだが。

お婆さんは二人に生きる力を付けさせる。原作では作物を作ったり魚をとったりして市場で売るなど実践的だが本舞台では空き缶拾い。まあ空き缶拾いを通して「価値とは何か」に目覚めるのだが。

原作もまた現実感が希薄で方向は違うもののやはりファンタジーである。戦時下を背景にしたエンタメという色合いが濃い。
恥ずかしくない人生

恥ずかしくない人生

艶∞ポリス

新宿シアタートップス(東京都)

2023/01/07 (土) ~ 2023/01/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

いきなり、千円割引を受けるためにラブホテルを早くチェックアウトしようというケチで嫌味な男に思いっきり笑わされる。板垣雄亮さん最高だ、大好きだ。
その後もしばらく口が開きっぱなしだったが最後は少し教訓というかお説教というかお笑いだけじゃないぞ的な流れになって尻切れ気味に終了。最後まで最初の調子で笑わせてくれたら星10個なのだが演劇にはならないかもしれないなあ。
急遽主役を務めた関絵里子さん、おそるべき完成度だ。役者さんって本当に凄すぎる。

屏風

屏風

MASHIRA.ENT

烏山区民会館(東京都)

2023/01/08 (日) ~ 2023/01/09 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

インドの王様と日本の殿様が時空を超えてシンクロする悲劇ファンタジー。

成人した一休が屏風に描かれた虎の問題で再び殿様に呼び出される。一頻り例の「屏風から出していただければ捕まえてみせましょう」のやり取りがあるが今回は本当に虎が屏風から出て来るのであった。虎を追って屏風に入り込んだ一休は数日の後に戻ってくるが屏風の向こうはインドで自分はサルになっていたという。あちらの王様もこちらの殿様も弟の謀反で追放されお妃を奪われていた。日本の奥方は自害しインドのお妃は怨念のあまり虎になったという(ガートルードとはまるで違うなあ)。屏風を介して二つの世界の話が同時進行して行く…。

ストーリーは良質でダンスや殺陣もあって高い志を持っていることは分かった。しかし完成度は今一つ、所によって二つ三つ。

*公演二日目は1月9日で一休なのだ。公演日を決めて会場を探したのかなあ。逆に公演日が決まってから無理やり一休を話に組み込んだという疑惑も若干湧いてくる??

ブロードウェイミュージカル『シカゴ』

ブロードウェイミュージカル『シカゴ』

TBS/キョードー東京

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2022/12/14 (水) ~ 2022/12/31 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ステージ中央に大きくバンドのひな壇があって、その前のエリアが芝居とダンスのためにある。キャバレーのステージなのだろう。トロンボーンなんかの直接音もガンガン耳に入ってきて嬉しい。
米倉涼子さんの降板は残念だが、逆に俳優もバンドもオール外人さんになってブロードウェイの雰囲気になる(行ったことないけど)。曲も癖になるリズムで気分が高まり、ついつい体が動いてしまう(近くの方、貧乏ゆすりごめんなさい)。ダンスは素晴らしい体型に良く鍛えた筋肉でキレキレの動きだ。

ここまでは満点なのだけれど、歌は今一つの方が多かった印象だ。うまい方でも興奮して体温が上がるところまでは行かなかった。そしてストーリーが「殺人を犯した二人の悪女ロキシーとヴェルマが悪徳弁護士フリンと共謀して嘘で塗り固めて無罪を勝ち取るコメディー。無罪を獲得するよりも世間の注目を浴びるために騒ぎを繰り返す」ということで日本語字幕を読むこともあってピンと来ない。また100年前の禁酒法時代のシカゴを舞台に暴力とか退廃とかを描くと前口上で煽るのだがツラーっと上辺を撫でて行くだけで深刻度はゼロ。あの煽りは雰囲気作りであってまともに受け取ってはいけなかったのだと今になって悟った。

俳優さんではフリン役のキャヴィン・コーンウォールさんの張りのある声と確かな身のこなしは日本人にはないものだ。役としては「金なんかいらない、愛こそすべて」と歌った後で弁護料5千ドル(当時の平均年収の2年分*)を要求するひどい奴なのだが。
*Bar UK によると
(禁酒法の)この時代、米国の全世帯の平均年収は約2600ドルでしたが、国民の3分の2を占める労働者階級の半数は、年収1000ドル以下でした。
https://plaza.rakuten.co.jp/pianobarez/diary/201111050000/

abc赤坂ビーンズクラブ -side2-

abc赤坂ビーンズクラブ -side2-

エヌオーフォー No.4

赤坂RED/THEATER(東京都)

2022/12/21 (水) ~ 2022/12/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

8人の若い女優さんがコントと芝居、歌と踊りにチャレンジする企画の第2弾。
AKB48の最初の公演は一般の観客は7人だったという。ABC8はそれよりはるかに恵まれている。手作り感は共通だがこちらは皆さん何某かのプロであるところが違っている。それにグループでもないので比べるものではないのだけれど、継続は力なりでよろしく。台本と演出が練れていないところも多く、そちら担当のおっさん達も頑張ってほしい。

『La Passion de L‘Amour』「カリオストロ伯爵夫人」より

『La Passion de L‘Amour』「カリオストロ伯爵夫人」より

Studio Life(スタジオライフ)

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2022/12/10 (土) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

キャストは以下の回を観劇。100分休憩なし。
カリオストロ伯爵夫人=関戸博一、アルセーヌ・ルパン(当時20歳)=松本慎也、クラリス(ルパンの恋人)=神澤直也、ムッシュM(地獄の門番?)=石飛幸治

お話は詐欺師カリオストロ伯爵夫人が老いて亡くなり地獄へ向かう途上で番人のムッシュMに問われて過去を振り返るというもの。もちろん原作はルパンが中心の活劇でムッシュMなんて出て来る余地はないが、この舞台では夫人側に立ってファンタジー的雰囲気の下で描写している。彼らの戦いはほとんど語られるだけなので朗読劇と言っても良いくらいだが、台本が良いのでルパンの活躍が明瞭に理解される。音楽劇ということで基本的にストレートプレイでときおり歌が入る。曲はグループサウンズのころヒット曲を連発した村井邦彦さんによるこの舞台用のオリジナル。すんなりと耳に入ってくる佳曲が揃っている。石飛さんの歌は朗々と響き、さすがと感じさせる。

客席は女性ばかり、若い人も年配の人もいろいろで、約90人中男性は5人もいない。登場人物は男性2人女性2人だが俳優は皆男性の逆宝塚状態である(ついでにピアノ奏者も男性)。それにしても女性は宝塚も逆宝塚も楽しめるとは何て貪欲なんだとうらやましい。

なお「ルパン三世 カリオストロの城」とは微妙にかする点もあるが基本的に無関係である。

サブマリン

サブマリン

マチルダアパルトマン

北千住BUoY(東京都)

2022/12/08 (木) ~ 2022/12/14 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「青いサブマリン」を観劇。いつもは共鳴するところが多いマチルダアパルトマンだが今作はあまり響くところがなかった。90分休憩なし。

自分一人のことでさえ何事も決められないのに同棲する二人が将来のことを話し合うとなると気が遠くなるばかりだ。まあそういうところの展開は想像の範囲内で特筆することはない。そこに喜怒哀楽の激しい妹をスパイスとして入れるのは雑味が強かったが当然の構成だ。しかしお父さんらしきホームレスの登場はどういう意味があるのか全く理解できなかったし突然現れる大家の息子も謎だ。この息子とホームレスとの対比で世の中の格差が許せないなどという主張をこの作者がするはずもないし。

冷静になってストーリーを分析するとそういう不満があるのだが、その程度は面白おかしく演劇として実現して頂ければ、ああ満足満足となるはずだが今回はその方面でも好みが合わなかった。具体的には晋平君の驚いたり言葉に詰まったりするときの間の取り方にイライラした。当然、役者と演出家が練りに練ってこうなっているはずなので味噌味が嫌いで醤油味が好きだと言っているだけにすぎない。要するに私はリズム良く会話がポンポン進んで行くのが好きなのだ。我ながら単純だなあ。

会場の「BUoY(ブイ)」はグーグルストリートビューでは何の目印も見えないが「格式会社レインボー・デリバリーサービス」とある建物の向かって左側にある小さな入り口の地下にある。もちろん開場時は係員がいるのですぐに分かる。

いかけしごむ トイレはこちら 2本立て

いかけしごむ トイレはこちら 2本立て

Pカンパニー

西池袋・スタジオP(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

2作品ともパッとしない男と口数の多い女のお話。立ち居振る舞いも言語も明瞭だが会話がずれている系の不条理劇である。9月に観た別役作品『病気』は男が医者と看護婦(あえて「婦」にしておく)によってやられっぱなしなところがツボだったが、今回はどちらも男が結構反撃するのでマゾ的な期待は満たされない。そこが不満なのではあるけれど、演者次第でどうにでもなる作品なので今回の配役が私向きではなかったということなのかもしれない。45分+10分休憩+45分

夜明けの寄り鯨

夜明けの寄り鯨

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/12/01 (木) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

小島聖さんが浮いている。他の俳優さんとは身の回りの空気がまったくの別物なのだ。そして演出はそれを利用して芝居全体を通しての違和感を作り出している。山本君の存在の不確かさもあって、リアルな物語なのかファンタジーなのか何とも捉え難さを感じてしまう。山本君って実はクジラの化身なんじゃないかと夢想してみたがさすがにそれは無理だった(笑)

服が腐る-2022AW-

服が腐る-2022AW-

人間嫌い

サンモールスタジオ(東京都)

2022/11/23 (水) ~ 2022/11/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

店員ものということで大好きな「コンビニ人間」を想像したが、変わった人も迷惑な人もまったく出てこない平和なドラマであった。それじゃあ単なるお花畑かというと、ハナから興味を持たない人も受け入れ、冷めてしまった人も排除せず、最も大事なカワイイ服の希望のない未来も諸行無常と悟っている深くて広い世界なのである。

守銭奴 ザ・マネー・クレイジー

守銭奴 ザ・マネー・クレイジー

東京芸術祭

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2022/11/23 (水) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

覚悟はしていたものの、今の目で観ればテンポは遅く、笑いは単純、話は浅い。こんな素人にぼろくそに言われて今年生誕400年のモリエールは怒り心頭だろう。こういうものを観るには古典を愛でる気持ちと素直な子供の心が必要なのだ、と反省はするもののシェイクスピア以外の古典はもう観るのを止めようと決めた。

プルカレーテの演出は良く言えば斬新、悪く言えば奇をてらっただけ。音楽はダメダメ。
後日追記:退屈な戯曲を何とかここまで現代の演劇に仕立て上げたということでプルカレーテはもしかすると凄いんじゃないかと思えてきた。それでもつまらないのは原作がやっぱり古すぎるのだ。

ネタバレBOX

船が難破して別れ別れになった兄妹というとシェイクスピアの「十二夜」を思い出す。オマージュなのか元ネタがあるのか。祝祭ものの馬鹿話という点も共通する。

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