Princess Princess! the MUSICAL
ヒラオカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/04 (金)
シアターグリーンにてヒラオカンパニー『Princess Princess! the MUSICAL』を観劇。
名曲クラシック音楽×童話「シンデレラ」による創作ミュージカル。これは斬新で面白い!灰かぶりのシンデレラ、意地悪な継母と姉妹、舞踏会、王子様、ガラスの靴…など、あの有名なシンデレラの物語が確かに登場するものの、少しずつ何かが違う。そのユーモア溢れる発想と、原作から大きく逸脱せず絶妙な変化を加えた脚本に、思わず上手い!と拍手を送りたくなりました。さらにモーツァルト「キラキラ星変奏曲」などの有名なクラシック曲をアレンジした劇中歌もどこか品があり面白い。ベートーヴェン「運命」のアレンジは特にユニークで笑いました。
「もしも意地悪な継母と姉妹が優しかったら・・」「もしも舞踏会に着ていくドレスがド派手でダサかったら・・」など、もしものストーリーが絶妙に展開され、どんなエンディングが待っているのだろうとワクワクしながら楽しむことが出来ました。こんなシンデレラの創作ストーリーがあったのかと新たな発見もあったような気がします。また、聞き慣れたクラシック音楽もまるで今回のために書き下ろされたオリジナル曲ではないかと感じるほどよく馴染んでいましたし、何と言っても有名童話を独特の発想から新たな物語を作り上げていたことにあっぱれを送りたいと感じました。
照明の当て方の問題なのか、スモークの問題なのか分かりませんが、若干演者さんの表情が見えにくいようにも感じましたが、コメディー要素を含んだミュージカルとして十分満足のいく作品だったように思います。このシリーズは他にもあるのでしょうか。もしあるのならば他の演目も観てみたいなと感じました。一人一人のキャラが濃くインパクトありましたが、中でもシンデレラ役の青木友香さん、継母役の村山胡桃さんは特にハマり役だったように思います。物語の終わり方もよく考えられており、ほっこりとした気持ちになりました。これ、仮装大賞だったらアイデア賞やユーモア賞でも獲りそうなくらいの個性的な作品。逆班も観てみたいし、生演奏バージョンとしても観てみたいなー。フライヤーだけを頼りに初めて拝見した団体さんでしたが、観に行って良かったです。
ビターズ
Flying Trip
ザ・ポケット(東京都)
2019/10/02 (水) ~ 2019/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/03 (木)
中野 ザ・ポケットにてFlying Trip『ビターズ』を観劇。
プロジェクションマッピングを彷彿とさせるような綺麗な映像と花吹雪、舞台上で演じられる役者さんの生きたお芝居が上手く融合し、とても美しく熱い作品になっていたように感じました。ただ、内容はなかなかシリアスで奥深い。登場人物はドキュメンタリー映像ディレクターとその仲間たち、取材先のボランティア団体のメンバーとその経営陣たち。内容の詳細は割愛しますが、一人一人に様々なエピソードが盛り込まれており、相関図を整理しながら見ているだけで面白く、どんどんと物語の世界に引き込まれました。何ともまぁよく出来た人物設定、ストーリーだなぁと思ったのはもちろん、一人一人のエピソードや人格が明らかになればなるほど、それぞれのキャラクターに感情移入し(中にはイマイチ共感し難いキャラもいましたが)、誰が味方で誰が対立相手なのか分からなくような不思議な感覚に陥りました。特にボランティア団体の社長さんは謎めいた風貌で、この人の言っている「ボランティアを始めたきっかけ」などの話は真実・本音なのか裏があるのか、両方の可能性を想像しながら観ていました。ドキュメンタリー制作チーム、ボランティア会社のスタッフとの会話も実に生々しく、フィクションではあるものの、間違いなく自分の頭の中には生きた一人一人のキャラクターが存在していました。
時代やその時の環境などによって人間の考え方や生きざまが変化してしまうのは致し方ないことなのかもしれませんが、作品を最後まで見ていて感じたのは、やはりどんなことがあってもブレない信念を持って生きることが大事だという点かなと。もちろん全てが正しいとは限らないものの、他人のアドバイスに耳を傾けながらも自分自身の考えに自信があるならば、それを貫き通す生き方は輝いて見えるような気がしました。相馬圭祐さん演じる矢島ディレクター。最後やたらとカッコ良かったなぁ。他の演者さんも皆良い味出されていたなぁ。。想定外の衝撃的なシーンもあり最初から最後まで見逃せない作品でした。
みんなのお葬式
イマノカゲキ(BlackRomanceFilms)
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2019/09/25 (水) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/09/29 (日)
シアターグリーンにてBlack Romance Films『みんなのお葬式』を観劇。
本来は笑えないはずのお葬式をテーマとしたミュージカル仕立てのコメディー作品。2年ぶりに拝見した団体さんでしたが、前回同様に感じたのは、バンドチームを入れた生演奏で創られたお芝居の迫力とカッコ良さ、本番前の映像を使った前説の面白さ、身近で興味深い題材を扱った着眼点の秀逸さなどでした。ただ、題材はリアルではあるものの、コメディー要素の強い作品ということもあり、ハチャメチャ過ぎる展開と、大袈裟で強引な笑いを盛り込み過ぎている内容には観ていて少し疲れた部分もありました。当日パンフレットのメッセージに「お気に召したら、ドンドン笑ってください」と書かれていましたが、会場全体がどっと笑いに包まれるようなシーンは少なく、小規模な笑いが所々で微妙に起きていたような印象です。個人的にも随所に小ネタの面白さは感じたものの、全体を通しての感想としては、過剰にやり過ぎで空回りしている部分もあるかなといった印象を受けました。この作品にリアルさは求めていけないと思いますが、あまりにもマンガの世界観のような気がして途中からストレスすら感じたレベルです。。もっとスマートに、強引な笑いではなく自然と笑えるような作品だと観ていて優しいなと感じました。
物語の進行自体は伏線張りとその回収もしっかり入れられていましたし、最後には故人の家族愛というか人柄の良さにフォーカスされて温かみのあるほっこりとした内容に仕上がっており、「あれー、良い話じゃん」と良い意味で少し騙されたような感覚になりました。笑って泣ける、とまではいかずとも、終わり方は良かったと思いました。何人かの演者さんの少し無理のあるいかにも演じてます的なオーバーな芝居、客席をチラチラと見る目線は若干気になりました。
波音に青く微笑みを
オフィス櫻華
コフレリオ 新宿シアター(東京都)
2019/09/25 (水) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2019/09/26 (木)
コフレリオ新宿シアターにてオフィス櫻華『波音に青く微笑みを』を観劇。
北のはずれの港町で起こる時空を越えた海洋ラブファンタジー。予備知識ゼロで初めて拝見した団体さんでしたが、団体名から何となくSFやファンタジー要素の強いテイストの作品かなとイメージしていた通り、ファンタジーの世界観が濃い作品でした。
舞台セットは簡素ではあるものの、階段にもテーブルにも壁?にもなる便利な小道具を上手く使い、それなりの雰囲気が出ていたのは良かったのですが、全体的に安っぽさを感じてしまい、学祭などで演劇サークルの学生達がお芝居やっているような感じに映ってしまいました。ストーリーも何となく先が読めるような展開で、120分という公演時間の割にはいまいち盛り上がりがないというか、内容が薄いというか、展開が少ないというか…。「神、御心、そなた、母なる」などスケールの大きい単語が多く登場する割には、決して壮大なストーリーというような印象は受けず、少し物足りなさを感じてしまいました。全体を通してスピード感がなく、まったりとした進行や台詞が続くためなのか、最前列にも関わらず両隣のお客さんはウトウトしていたのも残念。カタカナのキーワードの乱用も分かりにくさを出してしまっていた感じがします。また、リリーとアムニカという物語の核となる人物は多くのシーンに登場するものの、いかにも台詞を読んでいるようなやり取りに聞こえ、あまり生きた会話には見えなかったのが正直な感想です。120分がだいぶ長く感じました。この内容ならもっと短縮化しても良いのではと思いました。
一方でステージの使い方、照明、小道具の使い方は良かったですし、何人かの役者さん(上田茉衣子さん?、仙石智彬さん?)の演技は印象に残りました。好き嫌いが分かれる内容の公演かもしれません。受付や前説などは丁寧な対応をされていて好感を持ちましたが、全体的な満足度としては★2つが精々かなといったところです。今後に期待します。
ほしい
劇団時間制作
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/09/19 (木) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/09/23 (月)
赤坂RED/THEATERにて劇団時間制作『ほしい』を観劇。
精神障がい者・身体障がい者が暮らすグループホームを舞台とした、人々の様々な「ほしい」という欲求と錯覚がテーマの現代会話劇。2013年旗揚げ、今回が20回目の公演という劇団さんのようでしたが、個人的には今回が初見でした。
障がい者、健常者それぞれの本音を垣間見ることが出来るようなシーンがあり、なかなか生々しい現場の様子が伝わって来ました。ただ、作品全体を通しての印象としてはとても一言では表現することが難しいくらい深く重い。そもそも障がい者とは何なのだろう、健常者とは何なのだろう、さらに人間とは何なのだろう、欲求とは何なのだろう…など、どれを取っても漠然というか紙一重の世界に生きているのかもしれないという感覚に陥りました。広い括りで見れば同じ“人間”であったとしても、強者、弱者、障がい者、健常者…など立場によって分類が生じてしまう実態がある中で、それぞれにドラマがあり、人間らしさがあり、今回のテーマである「ほしい」という欲求があります。何か上手く表現することが出来ませんが、つくづく人間って深い生き物だなぁと感じさせられましたし、自分にとっての「ほしい」は何なんだろうなぁと考えさせられました。同時にそこには錯覚も潜んでいるということも。。また、障がいがあるが故に隔離され、非難されるような実態もあると聞きますが、今は健常者であっても何かがきっかけで同じ境遇になる可能性もありますし、互いに理解し合い相手を尊重する気持ちを持つことが大切だと感じました。
終始重苦しい雰囲気の作品で、劇中に流れるBGMもフェードアウトではなくいきなり切るようなシーンが多く、個人的にはあまり好みの内容・作風ではなかった(もちろん効果的に働いていれば問題ない)ですが、舞台セットは細部までよく作られていて良かったです。障がい者の役を演じられた役者さんも動き一つ一つに妙なリアルさが感じられてインパクトがありました。小劇場公演であること、満足度など考えるとチケット代、パンフレットなどのグッズの価格設定はやや高い印象を受けました。
太陽が落ちてきた~すずなりの逸声~
劇団生命座
萬劇場(東京都)
2019/09/20 (金) ~ 2019/09/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/09/23 (月)
大塚・萬劇場にて劇団生命座『太陽が落ちてきた~すずなりの逸声~』を観劇。
VR(バーチャルリアリティ)の技術を使って広島に原爆が投下された1945年8月6日を体験する現代人5名の実験の様子を描いた作品。
いやー、凄すぎました。戦争を題材にした作品はこれまでに何本も観てきましたが、ここまで惨状がリアルに描かれた作品は初めてかもしれません。全身に火傷を負い黒焦げになりながら街をさ迷う人びと、少しでも生き延びるため死体から履き物を奪う人、原型を留めていないのか他人の死体を実際の親だと間違えている幼児、子供を失い生き残った同級生のことを責める親、次第に正しい判断が出来なくなってきている人びと…など。とにかく一つ一つの情景がとてもリアルで、客席の観衆も完全に当時の世界に引き込まれていた印象です。あまりにも残酷過ぎる描写に圧倒され、改めて同じ過ちは繰り返してはならないと強く強く感じました。
クライマックスで明かされるVR実験の人選の理由もなるほどと納得。実によく練られ作り込まれた秀逸な作品で、深い悲しみと強いメッセージを感じました。被爆体験者・桂木辰郎の少年時代役を演じた新広裕紀さんをはじめ、演者さん全員の迫真の演技も素晴らしかったです。随所に入るナレーションも聴きやすく、物語をより分かりやすくしていたと思います。メイクやBGM、照明などの演出もGood。日本人だけに限らず、世界中の人々に観て欲しい作品、観るべき作品。ぜひ何度も再演を重ねて頂きたいです。今回が初見の劇団さんでしたが、他の作品にも興味を持ちました。
トリスケリオンの靴音
エヌオーフォー No.4
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/09/04 (水) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/15 (日)
赤坂RED/THEATERにてエヌオーフォーNo.4『トリスケリオンの靴音』を観劇。
先月拝見したジグジグ・ストロング・シープス・グランドロマン『ひのくすり』と同じ堤泰之氏の脚本・演出作ということで観劇を決めた作品。堤氏の作品はフィクションでありながらもリアリティーがあり、細かな伏線や仕掛けも多く、なかなか高度で奥深い印象。今回も期待を裏切らない見応えのある作品が楽しめました。
ただ「トリスケリオン」という聞き慣れない言葉。。キーワード検索して「三脚巴」という日本語訳を見てもイマイチ「?」の状態で、タイトルからして小難しそうな印象を持ちましたが、実際に作品を拝見して、なるほどなぁ~と納得させられたばかりか、3人の演者さんによって繰り広げられる何となく謎目いた、想像を掻き立てられる展開に、あっという間の110分であったように感じました。
年期の入った古めかしい雰囲気がよく再現された佇まいの舞台セット、(見た目だけの印象になりますが)演者さんの雰囲気によくマッチしたキャラクター設定、そのキャラクターを好演されていた3人の演者さん、そしてやはり脚本の面白さ。時代を回顧するようなシーンも入り、謎解きというか、登場人物それぞれの歴史を紐解いていくような感覚も楽しかったです。人間誰にでも良い過去もあれば、思わず黒歴史と言いたくなるような苦い過去もある。様々な経験を重ねながら人は成長していくものだと改めて思いました。初見でしたが、弟子役を演じられていた曽世海司さんが特に良い味出されていたと感じました。他の役も拝見してみたいところです。
ミュージカル「未完の贈り物」
J-journey
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/09/11 (水) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/12 (木)
シアターグリーンにてJ-journey『ミュージカル 未完の贈り物』を観劇。
「地球に生まれた《命》には必ず役割がある」というメッセージが強いインパクトを与える作品。原作は読んだことがありませんでしたが、障害を持って生まれてきた子とその母親・家族の物語は、とても温かく、反面、難しくもある深いお話だと感じました。世の中には様々な人々が存在し、皆それぞれに様々な問題や困難に直面するシーンは多々ありますが、障害者であっても健常者であっても共通するのは無駄な命は一つもないという点かと思います。今回の作品は命の尊さだったり、子に対する親の愛情だったり、相手を思いやり尊重することの大切さだったり、、とにかく生きていることは素晴らしいことなのだなぁと改めて感じられるような良作でした。
初見の劇団さん、初見の役者さんでしたが、非常に丁寧に作られている印象で、作品としての完成度の高さを感じました。演者さんの気持ちのこもった演技、クオリティの高い歌唱はお見事。演劇作品としては珍しいバリアフリー対応の技術も素晴らしく、手話や字幕付きのガイドを用いた作品は新発見でした。趣向凝らした前説、映画のエンドロールを彷彿とさせる終わり方なども好感を持ちました。皆さん素敵でしたが、今泉りえさん、伊倉愛美さん、早馬充さん、五十畑佳澄さん、大矢剛康さん、岩橋大さんらが特に印象に残りました。子役出演によりファミリーミュージカルのような場面も。様々な要素が盛り込まれた110分。良いミュージカル作品でした。
EVKK9月公演『売り言葉』
エレベーター企画/EVKK
北池袋 新生館シアター(東京都)
2019/09/05 (木) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/08 (日)
北池袋・新生館シアターにてEVKK『売り言葉』を観劇。
高村光太郎の妻・智恵子の物語。野田秀樹さん×大竹しのぶさんの強力タッグにより上演された作品を、EVKK流にアレンジしたという作品。個人的にはオリジナル版は観たことが無く、今回が初めて観る『売り言葉』でした。ちなみにEVKKという団体さんも今回が初見。失礼ながら団体名すら拝見したことがなく、全てが初めて尽くしの観劇となりました。
オリジナル版と同じ一人芝居のバージョンを拝見させて頂きましたが、演者の澤井里依さんがまぁお見事。自転車に乗って登場するオープニングから圧倒的な声量や全身をフルに使ったパワフルな動き、台詞に合った豊かな表情、独特な福島訛りでの言い回し…など。お名前も初めて拝見した役者さんでしたが、澤井さんの巧みなお芝居にかなり圧倒されました。更にストーリーもなかなか興味深い。才気煥発な智恵子が、時の流れとともに次第に変化していく様が絶妙なタッチで描かれており、智恵子の生き様に対して色々な感情を抱きました。切なさもあるけどカッコ良さもある。やはり名作だなと感じました。
一人芝居ということで演者の技量がダイレクトに作品の良し悪しに関係する難しさもある中で、今回のEVKKさんの演出、澤井さんの熱演は好印象に映りました。照明やBGMなども品がある感じで良かったです。関西を中心に活動されている団体さんということですが、関東公演も増やして欲しいなと思います。
ひのくすり
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
上野ストアハウス(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/06 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/02 (金)
上野ストアハウスにて ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン『ひのくすり』を観劇。
ちょうど1年前に存在を知った団体さん。前回の番外公演?は拝見出来ませんでしたが、本公演はこれで3回連続の観劇でした。毎回フライヤーに刻まれている “2016年の旗揚げ公演から1000人規模の観客動員を継続中!”という謳い文句が目を引くジグジクさん。確かに一度観たらその謳い文句が納得出来るというか、また観たいなーと思わせるストーリーの深みや面白みがあるので、次はどんな作品なのだろうと自然とリピーターになっているお客さんも多いのではないかと勝手に推測しています。
前回は世界観が全く異なる短編作品3本のオムニバス形式でしたが、今回は基本的には同じセットを使い回し、ともに東南アジアにある小さな島が舞台という一応関連性のある2作品の上演でした。まずこの発想が面白い。そして決して日本でもアメリカでもなく、“東南アジアの小さな島”が舞台という何とも絶妙な設定も面白い。実際に東南アジアへ行ったことはないものの、何となく知っているような知らないような妙なリアルさ?が感じられ、本当に現地での日常風景を覗き見しているかのような感覚になりました。この覗き見しているような感覚は同団体の『デイドリーム・ビリーバー』でも感じた気がします。基本的にはフィクションではあるものの、100%フィクションとも言えないような妙なリアルさがそのような感覚にさせているのかもしれません。
前置きが長くなりましたが、今回の「ひのくすり」「あぶらのかほり」とても良かったです。登場するキャラクターの人間としての弱い部分、駄目な部分を最初に印象付けておきながらも、どんな人間であっても誰もが常識的な考え方や正義感、他人を思いやる温かい心などを持っていることに気付かされるようなちょっとほっこりする作品でした。2作品が絶妙にリンクし合う部分もあり、作品としての奥深さや秀逸さを感じました。さらに見た目の印象?に実にしっくり来るキャラ設定が多く、演技も皆さんとても自然体。早くも次の作品が楽しみになる今回も大満足のジグジクさんの公演でした。
ハツカネズミと人間
オールアクトカンパニー
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/31 (水)
池袋シアターグリーンにてALL ACT COMPANY『ハツカネズミと人間』を観劇。
世界恐慌時代の米カルフォルニア州を舞台に繰り広げられる2人の出稼ぎ労働者・ジョージ ミルトンとレニー スモールの悲劇の物語。1937年に出版されたジョン・スタインベック氏の小説が原作で、映画や他の劇団などでも上演されている作品のようですが、個人的には今回が初見でした。
小柄ながらも頭の回転が早いジョージと大柄で怪力の持ち主ながらも知能が低いレニー。この2人が旅をしながら行動を共にし、「いずれ自分たちの大農場を持つんだ」と夢を確認し合う会話シーンから物語がスタート。対照的な2人の人物像ではあるものの、共に必要とし合う関係性や、夢に向かって頑張っている姿が印象付けられます。ここから先のストーリーについては割愛しますが、一見するととても仲が良く、密な関係性を持った2人であるように映る反面、レニーが問題行動を起こしたときなどに随所に垣間見えるジョージの本心のようなものがとても興味深く、まさにこの物語の核となる部分なのかなと感じました。確かにジョージに共感も出来る部分もあれば、レニーの無邪気な様子を見ると、何とも複雑な心境になる部分も。。そしてやがて訪れる悲劇。。。場面が進行するにつれて、完全に物語の中の世界に引き込まれ、思いの外感情移入してしまいました。衝撃的なクライマックスシーンは幾つかの感情が同時に動いたような不思議な感覚にもなりました。
2時間15分というやや長めの上演時間でしたが、ストーリーの面白味や奥深さ、演者さんの演技力の高さなど色々な要素が絡まり、あっという間に過ぎ去った印象です。中でもジョージ役の新本一真さん、レニー役の鈴江幸市さん、キャンディ役の石山雄大さんの好演ぶりが印象に残りました。見応えのある良い作品でした。
明日ー1945年8月8日・長崎
劇団青年座
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/07/10 (水) ~ 2019/07/17 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/14 (日)
東京芸術劇場シアターイーストにて劇団青年座『明日―1945年8月8日・長崎』を観劇。
今年で戦後74年。毎年この時期は何本か戦争に纏わる演劇作品を観劇するようにしていますが、今年のその一本目が、たまたま折り込みに入っていて目に留まった今回の劇団青年座さんの作品でした。ちなみに今回が第237回目の公演。年間に何本の作品を上演されているかは不明ですが、この日昼間に観劇した劇団東少さんと同様、かなりの老舗劇団であるような印象を受けました(個人的には今回が初見)。
今回の『明日』は1945年8月の長崎を舞台とした群像劇。公演チラシに書かれた「1945年8月8日の長崎。戦時中でも人々はそれぞれの事情を抱えながら「明日」を信じ懸命に生きていた。8月9日早朝、晴れた朝の空気に赤子の産声が明るく響く。しかし柱時計は11時2分に向かい時を刻むのだった」というフレーズが様々な憶測や感情を抱かせます。ピアノ、バイオリン、チェロの生演奏に乗せて始まるオープニングは何とも優しく落ち着いた雰囲気。そこから長崎弁全開で繰り広げられる会話劇、くるくると回転する中央のセット、そして様々な登場人物の生きざまなど、グイグイと物語の世界に引き込まれました。
原爆投下の凄惨なシーンは直接的には表現せず、その瞬間を迎えるまでの人々の生活に焦点を当てた作品。クライマックスのお産のシーンは特に緊迫感があり見応えがありましたが、その後数時間後にあの瞬間が、、と考えると何とも言えない気持ちになりました。昭和から平成、さらに令和になった現代において、このような作品を上演することは非常に価値があることだと感じます。当時の人々にも今と同じような日常生活があり、今と同じ、いや、それ以外に懸命に生きていたという事実を忘れてはいけないと思いますし、そうした人々に訪れた悲しい出来事は絶対に風化させてはいけないと感じました。戦後74年。これから何年経っても二度と同じ過ちを繰り返してはいけない。
ミュージカル「シンデレラ」
三越劇場
三越劇場(東京都)
2019/07/13 (土) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/14 (日)
銀座三越劇場にて劇団東少ミュージカル『シンデレラ』を観劇。
創立70周年の老舗劇団ながら、個人的には今回が初見でした。パンフレットに載っていた「70年前、10歳でコックと王様のお芝居を観た子どもは80歳、芝居づくりに情熱を燃やした二十の青年は、生き残っておれば90歳」という記事を読んで、70年という劇団の歴史にとても重みを感じました。これだけ長く続いていること自体が素晴らしいですし、価値があると感じます。
今回は世界的に有名なおとぎ話『シンデレラ』の物語に、劇団オリジナルのミュージカルナンバーを交えた約110分の作品。久しぶりに『シンデレラ』の物語に触れ、懐かしくもあり、意外と知らなかった新発見ありと、なかなか楽しめた時間となりました。“シンデレラストーリー”なんていう言葉がありますが、どんなに辛く厳しい立場であっても、腐らずコツコツ努力していれば報われるときが来るというのは、シンデレラに限らず誰にでも当てはまることだと思いますので、やはり命尽きるまで持ち続けたい人生観だと改めて感じました。また、物語のクライマックスで、王子様と結ばれたシンデレラが、今まで散々いじわるされてきた継母や姉ともハグをしながら感謝を伝えるシーンは、シンデレラの人柄の良さが表れている名場面の一つだなぁと今更ながらに感じました。たまにはこういう王道のミュージカル鑑賞も良い。心にゆとりが生まれる癒しの時間になった気がします。
シンデレラ役の鈴木まりやさん、王子役の菅原聡史さんは当然印象に残るものの、継母役の神野美奈実さんもインパクト大でハマり役だと感じました。ガラスの靴を合わせるシーンで客席の観客と交流を図る演出も良かったです。
バンブー・サマー
アナログスイッチ
駅前劇場(東京都)
2019/05/15 (水) ~ 2019/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/05/16 (木)
下北沢・駅前劇場にてアナログスイッチ『バンブー・サマー』を観劇。
折り込みチラシに書かれたストーリーを読んで興味が湧いた作品。初見の劇団さんで、劇団員はもちろん、客演の役者さんも初めて拝見しましたが、期待をはるかに上回る面白い作品で衝撃を受けました。
舞台は男子5人のみの田舎の高校。そこに突如、一人の女子が転校してくることから始まる、「竹取物語」をベースとしたコメディー作品。まず、このありそうでなかなか無いであろうシチュエーションが面白い。転校生が来る前までの教室の様子はまさに男子校のノリでしたが、転校生を迎えてからの教室の雰囲気、男子生徒達の心境の変化は、何とも言えないリアリティーさが感じられ、まるで本当に学校生活の一部を覗き見しているような感覚になりました。そのような感覚になったのも、やはり男子生徒役の5人の演者さんの演技が素晴らしかったからだと思います。一人一人のお芝居はもちろんですが、5人のコンビネーションの良さは実際のクラスメート以上ではないかと感じました。ストーリーも「竹取物語」というきちんとした作品コンセプトがあり、「竹取物語」の持つ古典的な面白味、切なさなどがよく描かれているのに加え、ただ古典的な面だけでなく、そもそもの舞台設定を現代の高校の教室にしているところが秀逸。最初から最後まで、老若男女誰が見ても楽しめる作品になっていたと感じましたし、懐かしくもあり現代風でもあり楽しくもあり切なくもある、様々な感情を揺すぶった見応え十分の作品でした。あの5人の男子生徒のやり取りはずっと見ていても飽きないかもしれない、というかずっと見ていたくなりました。転校生役を演じた外岡えりかさん、木村圭介さんも、月から来たという設定らしく、表情や声のトーンが絶妙で、不思議キャラぶりを見事に醸し出していたと感じました。生徒役が素晴らしかっただけに、教師役は若干物足りなさも感じましたが、久しぶりに大笑い出来た作品です。アナログスイッチさん。しっかりと劇団名を記憶し、次の公演も拝見させて頂きたいと思っています。こうした新発見があるから折り込みチラシのチェックは欠かせない。改めて演劇の面白さを実感しました。
尾を咥えたり愚者の口
電動夏子安置システム
駅前劇場(東京都)
2019/05/07 (火) ~ 2019/05/12 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/05/10 (金)
下北沢・駅前劇場にて電動夏子安置システム『尾を咥えたり愚者の口』を観劇。
一度見聞きしたら記憶に残るインパクトの強い劇団名を冠する電夏さんの作品観劇は昨年11月の『サンザル、月をとる。』以来、半年ぶり2回目。前回は予備知識ゼロで伺い、前座からの異様な盛り上がり、開演直後の大拍手などその独特なシステムに戸惑いましたが、2回目の今回もやはり戸惑い…。それだけ個性的な幕開けをする電動さん。2回目ではまだまだ慣れず戸惑いは隠せませんでしたが、個性的で悪くないと感じました。開演時間が数分遅れても、終演時間は定刻を目指すというシステムもユニークで面白い。観客を楽しませることに長けている団体であると改めて感じました。
本編は1948年、都内の銀行で不可解な毒殺事件があった年が舞台。一見すると真面目な社会派作品であるかのような印象も受けましたが、それ以上に劇団のスタンスであるコメディ要素が強く反映され、基本的には笑いシーンが目立った120分でした。「表現の自由」は今も昔も変わらない。様々な圧力や規制があるのも確かですが、表現の自由は守られても良いことなのではないかと感じました。前作同様、今回もお笑い芸人・アンジャッシュさんのスレ違いネタを彷彿とさせるようなシーンもあって面白かったですし、駅前劇場の横に長い舞台空間を生かしたようなよく創り込まれた舞台セットも良かったです。
強引過ぎる笑いシーンや、小劇場でのお芝居にしてはやたらと声を張り上げての演技など聞き取りにくく若干疲れるシーンもあったのは確かですが、個性豊かな顔ぶれのキャストさんの熱演は見応えがありました。中でも前座からテンションMAXだった道井良樹さん、なかなか威圧感のあったドロンズ石本さんなど印象的でした。
シュウマツの予定。
インプロカンパニーPlatform
上野ストアハウス(東京都)
2019/04/30 (火) ~ 2019/05/07 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/05/04 (土)
上野ストアハウスにてインプロカンパニーPlatform『シュウマツの予定。』を観劇。
ほとんど台本のない即興劇を売りとするインプロPlatformさんの作品を拝見するのは2年ぶり4回目。毎度のことながらストーリー展開や結末が公演毎に異なるということに驚かされると同時に、一体どのような稽古をされているのかという興味も掻き立てられます。2年ぶりの観劇になってしまいましたが、久しぶりに味わう即興劇の世界を存分に楽しませて頂きました。
今回は世界的なマジシャンがキーとなる作品ということもあり、オープニングから本格的なマジックショーが展開され、序盤から会場の空気感がヒートアップ。その後は観客が引いたトランプによって即興で物語を創っていくお馴染みの展開。回によって若干当たり外れがあるのかもしれませんが、二度と同じ展開はないと考えると一回一回がとても貴重であり、出来るものなら期間中の公演全てをコンプリートしてみたいものだなと感じます。今回拝見させて頂いた回は終盤のシーンが少し間延びしたようなテンポの悪さを感じましたが、やはり即興劇は凄いと再認識させられた公演でした。登場人物も面白かったですが、特に戸草内淳基さん、柴田和人さん、出店菜生さん、江森一樹さんが印象に残りました。日向大祐さんによるマジックショーはカッコ良すぎました。面白かったです。
演劇♡顧問
神保町花月
神保町花月(東京都)
2019/04/26 (金) ~ 2019/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/05/01 (水)
しずる×□字ックによるコラボ公演『演劇♡顧問』を観に神保町花月へ。
高校の演劇部顧問にスポットを当てたコメディー作品。高校演劇の地区予選が終わり、顧問達が居酒屋で打ち上げをしているシーンから物語がスタート。オープニングのカラオケで「蒲田行進曲」を熱唱しているシーンからいきなり面白く、期待値がグンと上がりました。その後もキャラの濃い登場人物達が繰り広げるドタバタ劇は様々な想像を掻き立てられ、終始ワクワクが止まりませんでした。演劇部だけに限らないと思いますが、部活の顧問を務めるということは一筋縄ではいかない問題があり、大変だなぁと思う反面、やりがいもあるのだろうなぁと少し羨ましくもなったりならなかったり。。とにかく様々な人間ドラマが盛り込まれ、なかなか見応えのある作品でした。
お笑いコンビ・しずるのお二人の演技力の高さはお見事。テレビでコントを拝見していたときから面白く好きなコンビでしたが、今回の作品を通して更に好きな芸人さんになったような気がします。他のキャストさんも個性豊かで面白かったです。
アニー
日本テレビ
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/04/27 (土) ~ 2019/05/13 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/04/30 (火)
新国立劇場にて2019年版のミュージカル『アニー』を観劇。
今年で34年目を迎えた伝統あるミュージカル。個人的には2年連続4回目の観劇でしたが、オーケストラによるオープニング演奏「Overture」が始まった瞬間から高揚感があり、幕が上がり孤児達の姿を見ただけで早くも涙腺が緩む…“今年も始まったなぁ”と体感出来るこの瞬間は何とも言えない贅沢な時間のように感じます。何度観てもこれだけ新たな感動が味わえる作品はあまり多くはないので、それだけでも『アニー』の存在は特別であると思いますし、34年間も繰り返し上演されていることに強く納得出来るのです。本当はチームバケツ、チームモップの両方とも観劇出来たら最高なのですが、なかなか時間の調整が上手くいかず今回はチームモップを観劇。
最初から最後まで全てが好きな作品ではあるものの、その中でも特に、孤児院暮らしから一転し、不自由のない華やかな暮らしを迎えたものの本当の幸せは両親を見つけ出し一緒に暮らすことだと訴えるシーン、両親が残したネックレスを離さす大事に持ち続けようとするシーン、両親の死を知らされるシーンなどはアニー心情がストレートに表れていて素晴らしいと感じます。今年のアニー役・山﨑玲奈さんはアニーが持つ天真爛漫さに加え、お顔立ちからなのかどこか品があるような雰囲気を感じられて素敵。サンディが思いの外小型過ぎて若干拍子抜けもしましたが、サンディのイメージを変える新鮮さも感じられてこれはこれで有りだなと感じました。とにかく良質で、もはやファミリーミュージカルの域を越え、全国民が観るべき作品、愛すべき作品だという印象です。それくらい心が豊かになる&明日への活力を貰える素晴らしい作品だと思います。今年も大満足のアニー公演でした。
ひびのばら
キ上の空論
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2019/03/27 (水) ~ 2019/03/31 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/03/28 (木)
キ上の空論『ひびのばら』を観に東京芸術劇場シアターウエストへ。
キ上の空論の作品観劇は前回公演『おかえりのないまち。色のない』以来1年ぶり2回目。前作は交わりそう交わらない点と点がクライマックスで結び付いたような感覚を受ける少し複雑な組み立ての作品であった印象がありますが、今回も前作ほどではないものの、やはりなかなか奥の深い決して簡単ではない構成であると感じました。とは言え、頭を悩ませるような難しい内容の作品でもなく、登場人物の相関についてもある程度理解しやすい形になっていたと思います。ただ、上演時間2時間30分と長い割にはやや単調で展開少なめのシーンもあり、前作ほど作品にのめり込んで観ることが出来なかったのも事実としてあります。もう少し凝縮して上演時間を短縮しても良いように感じました。
役者さんは皆経験豊富な方々ばかりでクオリティーの高さを感じましたが、中でも清水みさとさんの前作とは大きく異なる役回りの好演が印象に残りました。長野耕士さんの一癖も二癖もありそうなキャラクター、演じ方もインパクトが強く、他の役も観てみたいと感じました。
スロウハイツの神様
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2019/03/22 (金) ~ 2019/03/31 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/03/26 (火)
サンシャイン劇場にて演劇集団キャラメルボックス『スロウハイツの神様』を観劇。
今回は再演ということでしたが、2017年の初演時には観劇出来なかったので個人的には今回が初見でした。シェアハウス「スロウハイツ」に住む若いクリエイター達の群像劇。本編が始まる前に5分間のショートストーリーが上演され、いきなり会場の雰囲気が温まっていた印象。開演ギリギリに入場しなければならなくなったときは若干入りにくさも生じるものの、ショートストーリーだけでも面白いですし、本編への期待も更に高まるので良い仕組みだなと感じました。
上演時間は2時間越えの140分。前半は、何故?と疑問を抱くシーンもやや多くあり(自分自身の理解力の低さが原因と思います)、展開のスローさ?もあって多少退屈さもありましたが、中盤から終盤にかけての展開は素晴らしい。前半に抱いていた疑問、謎が次々に解決し、見事に物語の世界に引き込まれました。小説家・千代田広輝と脚本家・赤羽環が再会を果たす場面、スロウハイツで同じ時を過ごした仲間たちとの再会シーンは感動的でした。様々な考えを持った人間がいて当然ですが、どんな人にとっても仲間がいるのは幸せなことであり、その絆は大切にすべきだなと感じました。温かい気持ちになれたお芝居でした。