満足度★★★★
鑑賞日2019/07/14 (日)
東京芸術劇場シアターイーストにて劇団青年座『明日―1945年8月8日・長崎』を観劇。
今年で戦後74年。毎年この時期は何本か戦争に纏わる演劇作品を観劇するようにしていますが、今年のその一本目が、たまたま折り込みに入っていて目に留まった今回の劇団青年座さんの作品でした。ちなみに今回が第237回目の公演。年間に何本の作品を上演されているかは不明ですが、この日昼間に観劇した劇団東少さんと同様、かなりの老舗劇団であるような印象を受けました(個人的には今回が初見)。
今回の『明日』は1945年8月の長崎を舞台とした群像劇。公演チラシに書かれた「1945年8月8日の長崎。戦時中でも人々はそれぞれの事情を抱えながら「明日」を信じ懸命に生きていた。8月9日早朝、晴れた朝の空気に赤子の産声が明るく響く。しかし柱時計は11時2分に向かい時を刻むのだった」というフレーズが様々な憶測や感情を抱かせます。ピアノ、バイオリン、チェロの生演奏に乗せて始まるオープニングは何とも優しく落ち着いた雰囲気。そこから長崎弁全開で繰り広げられる会話劇、くるくると回転する中央のセット、そして様々な登場人物の生きざまなど、グイグイと物語の世界に引き込まれました。
原爆投下の凄惨なシーンは直接的には表現せず、その瞬間を迎えるまでの人々の生活に焦点を当てた作品。クライマックスのお産のシーンは特に緊迫感があり見応えがありましたが、その後数時間後にあの瞬間が、、と考えると何とも言えない気持ちになりました。昭和から平成、さらに令和になった現代において、このような作品を上演することは非常に価値があることだと感じます。当時の人々にも今と同じような日常生活があり、今と同じ、いや、それ以外に懸命に生きていたという事実を忘れてはいけないと思いますし、そうした人々に訪れた悲しい出来事は絶対に風化させてはいけないと感じました。戦後74年。これから何年経っても二度と同じ過ちを繰り返してはいけない。