
ミュージカル「ラ・マンチャの男」
東宝
帝国劇場(東京都)
2015/10/04 (日) ~ 2015/10/27 (火)公演終了
満足度★★★★
松本幸四郎、渾身の舞台
この名作、初めて拝見。何よりも感動するのは、主役の松本幸四郎の極上の舞台である。
御年73歳。身のこなしがすごいのは、やはりさすがに歌舞伎俳優。それよりも、彼が登場したときにオーラがすごい。宮川浩、上條恒彦というベテランと合わせ、「一度は観ておきたい」舞台だ。
ほかにも見どころは満載。
個人的には、宝塚元トップスターの霧矢大夢のアルドンザも見事だった。色気が漂う舞台での立ち回り。さすがに宝塚の女優さんは違う、と再認識させられる。

父よ!
穂の国とよはし芸術劇場PLAT【指定管理者:(公財)豊橋文化振興財団】
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/10/02 (金) ~ 2015/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
心から染み出る笑い
平田満、井上加奈子夫妻の「アル☆カンパニー」による舞台。平田さんが豊橋出身とのことで、2013年に「穂の国とよはし芸術劇場」のこけら落とし公演として上演された。その時も評判だったという舞台の再演だ。
実家で一人暮らしをする父親を誰が面倒見るのか。四人の男兄弟が実家に集まる。それぞれ、家庭や仕事でさまざまな問題を抱えている。長男は「老老介護になるから嫌だ」といい、二男は会社経営が忙しい、三男は離婚してそんな余裕なし、四男はしがない役者さん。だが、お父さんを引き取れない理由はそんなことではなかった。
この戯曲の秀逸なところは、結構深刻な話なんだけどわりと気軽にのぞき見ができて、しかも心にしみいるような笑いができること。このような戯曲を書いた、田村孝裕さんという作家に拍手を送りたい。

少女仮面2015
新宿梁山泊
ザ・スズナリ(東京都)
2015/09/30 (水) ~ 2015/10/07 (水)公演終了
満足度★★★★
李麗仙の迫力にびっくり
唐十郎の前妻・李麗仙が何と初演から45年の時を経て主演の春日野八千代を演じた。観劇したのは平日のお昼公演だが、半数以上は若い人たちで超満員。「満州」「甘粕大尉」などの言葉はほとんど知らないと思われる人たちを、魅了した。
30代、50代と春日野を演じた李麗仙は今、70代。だが、その迫力はまったく衰えていないと思う。宝塚にあこがれる少女・貝は文学座の松山愛佳で、松山の熱演も特筆だ。演出のキムスジンは李麗仙による「再演」を口にしたが、私はひょっとしてこの舞台は二度と見られないアングラ劇だ、と思いながら食い入るように見た。見ておくべき、と思う。
お約束の宇野亜喜良の美術は、地下の怪しげなカフェ、そして、吹雪の満州平野まで再現してみせた。
南河内万歳一座の鴨鈴女ら3人がセーラー服姿で客席に案内してくれる。

ダブリンの鐘つきカビ人間
パルコ・プロデュース
福岡市民会館(福岡県)
2015/11/04 (水) ~ 2015/11/04 (水)公演終了
満足度★★★
シェークスピア悲劇のような
東京・パルコ劇場で観劇。
後藤ひろひと氏が座長をしていた劇団遊気舎を退団したときに書いた作品という。今風にアレンジしてあると思うが、要所要所でちりばめられた笑いを取る部分がとても寒い結果に終わるところがあり、どうなることかとハラハラした。でも、最後はまるでシェークスピア悲劇を観ているかのような感じで結ばれる。
物語としてはとてもいい話だけに、若い観客向け?に笑いを意識して取らなくてもよかったのではないか。
せっかく実力派俳優をそろえたのに、何となく中途半端に終わってしまったのが残念。

黒いハンカチーフ
る・ひまわり
新国立劇場 中劇場(東京都)
2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★
人気者がそろったが
わずか4日間の公演。千秋楽では、主演の矢崎広らが舞台挨拶をし、会場はスタンディングオベーションだった。
マキノノゾミが14年前に書いた、終戦からしばらくしての東京・新宿が舞台。だまし、だまされという展開がテンポ良く演じられ、飽きずに舞台に見入ることができる。
ただ、昭和30年前後の猥雑さと言うか、時代の空気が見せきれていないのが惜しい。今風の若い俳優さんたちを使っているからだとも言えるが、若いからといって時代の空気感を出せないはずがない。どこか、さわやかで、清潔感すら漂う舞台であるのは、若い女性客が中心の観客席にそういう形で見せようとしたのかもしれないが、違和感を感じる。矢崎演じる詐欺師たちや、売春防止法施行で職を失う女たちを、もっとリアルに見せてほしかった。

嫌われる勇気
ウォーキング・スタッフ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2015/09/26 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
舞台で見せた「哲学」
「人は変わることができる」などというアドラーの心理学。自分で何とかできるところとできないところを区別し、自分のできるところをやり、ほかのところは他の人の仕事として目を向けない。
上記の部分は正確でないかもしれないが、アドラー心理学を教える大学の先生が、それを説明するくだりだ。このように、とっつきにくいとも思われる哲学の本を、舞台の上で戯曲化してしまったのがこの作品だ。果敢に挑戦した脚本・演出の和田憲明さんにまずは拍手を送りたい。
アドラーの教えを説明するところはあるが、この舞台の核心はそこではない。
何よりも、特に難しいことを考えなくても、ずっしりと心に残る物語を見せてくれたことだ。相当な力量を持って演じきった利重剛、愛加あゆ、黒沢はるから俳優さんたちに、大きな拍手を送りたい。
戯曲の力というものを見せてもらった気がする。

生涯
9PROJECT
劇場MOMO(東京都)
2015/09/29 (火) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★
秋の夜長に汗だくの熱演
つかこうへいの初期の作品を40年ぶり再演。北区つかこうへい劇団に所属していたメンバーが結成したユニットといい、演技の実力は折り紙付き。汗ほとばしる舞台に引き込まれる。
強烈な会話劇。狭い舞台を駆け回るようなアクションもある。40年前の上演もこんな感じだったのかどうかは分からないが、小劇場の舞台では、相当な迫力をもって迫ってくる。
長~いせりふも多く、役者さんは大変だ。つか作品の有名どころと比べると、時代がかったところもあるせいか、ついていけない人もいるかも。上の説明文には「あえて老醜をさらす」とあるが、俳優さんが若いせいか、老醜という感じはない。むしろ、健康な成人男子のはつらつとした勢いに圧倒されてしまう。やり過ぎ感がある、とでもいうのだろうか。このあたりが違和感のあるところ。
つか作品独特の笑いを期待してみたが、初期作品のせいだろうか。ちょっと物足りないように感じた。もっとも、主に笑いを取る作品ではないのだろうから、このあたりは筋違いの期待かも。

ラインの黄金
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2015/10/01 (木) ~ 2015/10/17 (土)公演終了
満足度★★★★
とても演劇的なステージ
オペラのイメージを変えると言ったら大げさだが、ネオンサインを使ったり(ドイツ語なのに英語表記はご愛敬か)光線を駆使するなど、個人的感想だが蜷川幸雄さんの舞台を連想してしまった。
新国立劇場のシーズン開幕オペラで、ご存じワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の序夜で一幕もの。天上界の神々、地上界の巨人族、そして地底界のニーベルング族。三層構造の格差社会で、主人公アルベリヒは愛を捨てることで財力、すなわち権力を持とうとする。
字幕を読むのも結構大変な、とても演劇的なオペラだ。アリアや重唱、合唱などのオペラ音楽の型をとらず、オーケストラピットにはハープがずらりと並ぶなど、音楽としてもちょっと違うな、というステージだった。

RENT
東宝
シアタークリエ(東京都)
2015/09/08 (火) ~ 2015/10/09 (金)公演終了
満足度★★★★
客席との一体感、熱いミュージカル
ブロードウエイでも名高いこの作品。日本では再演で、今回は若手有望株の俳優村井良大が主演・マークを演じる。ルームメイトのロジャーには堂珍嘉邦とユナクのダブルキャスト。私が観た日は、堂珍君でした。
ほかにもジェニファーとかIVANとかソニンとか、個性的なメンバーが勢揃いの舞台。これを座長の村井君がよく引っ張って進めている。連日満員の人気は、古くからの「rent」ファンも納得してみているからだとも思われる。
ただ、マークは役柄が仲間たちのところを立ち回る形なので、村井は控えめな感じがしてならない。強烈なシーンがある堂珍や、エンジェル役の平間荘一とIVAN(ダブルキャスト)に食われてしまっているようにも感じる。でも、逆に言えばそれだけ、この群像劇はそれぞれの個性が遺憾なく発揮されて成功しているとも言える。
ラストシーンが終わった後のスタオベはお約束のようだ。でも、キャストたちの底抜けの明るさ、前向きさには、ためらいなく立って拍手ができるできばえだ。

グッドバイ
キューブ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2015/09/12 (土) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
太宰もきっと笑っている
ご存じ太宰治の未完の遺作をケラが引き継いで戯曲に仕上げた。物語の展開、そして光線を駆使した舞台演出とダンス。「超スピードで展開する(予定)ゴキゲン(予定)な恋愛狂騒劇」とケラによるサイトの説明にあるとおり、その(予定)通りの舞台で、3時間たっぷり楽しめる。
ケラの信頼も厚い仲村トオルが、さすがにポイントを押さえたいい感じのスピード感で、軽快に舞台を引っ張る。さらに小池栄子が秀逸だ。「大食いで怪力の美女」(これは原作の設定)を存分に発揮。本妻、愛人たちを演じる水野美紀、門脇麦、夏帆など「美女群」もしっかりと役割を果たし、さらに脇役として二役、三役をこなしている。
太宰がラブコメにしようと書き始めたかどうかはともかく、このような楽しく意外なストーリー展開に、太宰もきっと大笑いしていることだろう。

カタルシツ『語る室』
イキウメ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2015/09/19 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
用意周到のミステリー
個人的には、イキウメの舞台は「関数ドミノ」「聖地X」に続いて3作目。今回も周到に用意されたシュールな舞台が待っていた。
一幕の中で、現在と過去がうまく回転する演出もいい。安井順平、中嶋朋子が期待通り舞台を彩った。そして何よりも、このシュールな原作がいい。映像でなく、リアルな舞台だからこそよりシュールに感じられる仕掛けがあちこちにあった。
時空を自由に飛び越えて想像を楽しみたい人には、お勧めの舞台です。

海辺のカフカ
ホリプロ
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2015/09/17 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
アクリルケースが醸し出す村上春樹
村上春樹の名作を蜷川幸雄演出で舞台化した「海辺のカフカ」。ワールドツアーの凱旋で、蜷川さんの地元で公演中だ。
村上春樹の世界観をどう目の前に現出させるのか。ハルキストでなくても、ここが最大の注目点。蜷川さんはほかの舞台でも時々使う、アクリル板の透明な箱を使って、少年カフカの旅、高松の私立図書館、猫殺し、ホシノ君などを同時多発的に描いて見せた。
この物語のポイントとなる図書館の佐伯さんを演じたのは宮沢りえ。カフカに抜擢された古畑新之が若干頼りないところをカバーして、女神のような存在で舞台に君臨した。図書館の司書・大島を演じた藤木直人もなかなかのできばえだ。力強くあり、繊細でもあり、色気すら醸し出す難しい役を堂々とこなしているのは見事だった。
原作を読んでいて観る人と読まずにいきなり観る人では、物語の理解度に相当差が出たのではないかと危惧する。でも、そんなことは関係ないのかもしれない。この舞台のおもしろさは、物語の理解度ではなく、村上ワールドを彩るメタファーを、そのまま感じ取ればよいのだから。

そぞろの民
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2015/09/11 (金) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★
容赦なく切りつける鋭さ
安保関連法案が参院で強行採決された後にこれを見たので、尋常でないライブ感があった。平和と外交問題を研究してきた父、そして三人の兄弟。日本人の一人一人に今の世の中を作ってきた責任がある。黙っているだけでは、協調性があるだけでは、責任を逃れることはできないのだ、と。
父親と三人の息子たちの言葉が、観る者にも、そしておそらく演じる者にも容赦なく切りつけるような鋭さを持って降り注ぐ。これがこの舞台のストレートな良さなのだが、毎日を何となく安住する方に、楽に生きようとしていることを自覚している私(たち)も血を流さざるを得ない。
突っ込みどころ満載の舞台ではあるが、さすがに中津留章仁さんの書き下ろしである。客席にも覚悟を突きつけているような気がした。

NINAGAWAマクベス
ホリプロ
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2015/09/07 (月) ~ 2015/10/03 (土)公演終了
満足度★★★★
度肝抜かれる演出
17年ぶりの再演。前に見た人ならそうは思わないかもしれないが、私は初めて見たので、まず、その演出に度肝を抜枯れた。開幕前にどーんと鎮座する巨大な仏壇に圧倒され、2人の老女がその仏壇の扉を開いて開演となる。海外でやった時はものすごい反響だろうな、と想像される。
マクベスは市村正親、妻は田中裕子。さすがにこの2人の演技力は抜群で、柳楽優弥ら若い俳優をたちをぐんぐん引っ張っている。前回は北大路欣也と栗原小巻だったとか。このペアでのNINAGAWAマクベスも見てみたいものだ。
シェークスピアの悲劇を日本風にするとこうなるのか、という意味でも初演時はきっとエポックメーキングだったと思われる。シェークスピア劇は今でも各劇団が演じているが、そのまま輸入して演じるのでなく、日本人が作るとこうなるんだ、と堂々と演出家である自分の名前を冠して世に問うた、蜷川幸雄さんには拍手を送りたい。

その頬、熱線に焼かれ
On7
こまばアゴラ劇場(東京都)
2015/09/10 (木) ~ 2015/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
古川健 見事な脚本
オンナナ(On7)は、青年座や文学座などの若手女優が集まった7人のユニット。この夏は、劇団チョコレートケーキの劇作家・古川健さんに脚本を依頼した。歴史的な事件を題材にした社会派舞台が持ち味の古川さん。今回、テーマとしたのは広島の原爆で顔などにケロイドの傷を負い、その治療のために渡米した若い女性たち、いわゆる「原爆乙女」である。
原爆乙女、と呼ばれるのは嫌だった、と劇中でも出てくるので、この呼び名はこれまでにしよう。被爆70年のこの夏、薄れつつある戦争の記憶をとどめるという意義だけでなく、彼女たちの胸の内をストレートに戯曲化した見事な脚本だった。オンナナの公演は今日が最後だが、これで終わりにしてしまうのはあまりにも惜しい。全国各地でやってほしい公演だ。
舞台には7人の女優しか登場しない。米国に渡り、治療に臨む7人の女性が、被爆時の悲惨な記憶、かろうじて生をつないだ終戦直後に待っていたひどい侮蔑。そして、選ばれて治療を受ける身となったことによる苦悩を次々に語る群像劇。青春を生きて、恋をし、結婚して子どもを育てる。当たり前にできたであろうことを遠い夢として封印を強いられた人生を、客席はまんじりともせず見つめることになる。
客席を舞台の両側に配した小劇場で、舞台転換もなく、女優たちの演技力、会話力だけで最後までいく圧巻の舞台。戦争も原爆も経験したことのない若手たちにより、迫力の会話劇が進行する。オンナナの女優たちが、ありったけの力を出して演じた。この脚本・演出に見事に応えて見せた7人にも、拍手をおくりたい。

天邪鬼
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2015/09/16 (水) ~ 2015/09/23 (水)公演終了
満足度★★★
「演劇」が凶器に?
中屋敷法仁さんの脚本には注目していた。演劇は想像の世界に遊ぶこともできるファンタジックなものなのだが、子どもの戦争ごっこが実際に戦争に使われ、子どもが戦闘員に差し向けられるとは。いやあ、その空想と現実の融合にまずは、脱帽です。
劇場を出た後、「ああ、もう少し舞台の世界にいられたらな」という場合と、「ああ、これが現実でなくてよかった」と現実世界に安心する場合とがある。今回は、「あれは芝居でよかった」と思いながら下北沢駅の改札をくぐり、いつもの電車に安心感さえ感じてしまったのである。
舞台上はとてもシンプル。役者の演技力を真正面にぶつけて勝負するという感じだ。出演者たちは実力派揃いで、せりふも明瞭、テンポもいい。
だが、せりふの進行がとにかく速すぎてついていくのがやっとという場面や、説明調の部分もあって気がそがれたのが残念だった。
ギャグの「不発弾」も気になった。

人魚姫
Project Nyx
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/09/18 (金) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
五感を刺激する寺山ワールド
寺山修司の世界観を、女性だけの舞台で生演奏に合唱、甘美で妖艶な舞台で彩って見せた力作。寺山の盟友、宇野亜喜良が人形デザインから美術までを担当し、五感をたっぷり刺激する「美女音楽劇」が楽しめる。
新進気鋭の演出家・藤田俊太郎の仕事が秀逸だ。観客席をも海の底のファンタジーの世界に誘う仕掛け、ストーリーテラーとしてのバイオリンとアコーディオン。音楽劇と銘打っただけあり、コンサートで聴くような女性コーラスがこの上ない快さをもたらす。青野紗穂の澄んだ声に耳を、悠未ひろの長い足に目を奪われる。有栖川ソワレが舞台を泳ぐ(お魚の役なので、本当に泳いでいるような演技)のも見逃せない。
悲恋の物語をこれほどまでにファンタジックに見せてくれるとは。
「なみだは人間が自分でつくる、世界でいちばん小さい海のことだよ」
その涙がとても、美しい。

あの子はだあれ、だれでしょね
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2015/09/16 (水) ~ 2015/09/30 (水)公演終了
満足度★★★
とても怖い舞台
別役実フェスティバル参加作品、初日に拝見した。
「尼崎連続変死事件より」というサブタイトルがついている。この事件を少しでも知っている人は、この舞台の怖さがさらに深まって襲ってくるという仕掛けである。
内裏びなの首がなく、ひしゃくが差してある。まあ、この舞台装置からして不気味なのだが、「それはそうと、そこに婆さん一人、が死んでいる」というせりふの直後に暗転するなど、別役さんの不条理劇というより、ある意味、ホラーなのである。
それを、百戦錬磨の舞台俳優さんたちが真剣勝負で演じるのだから、相当な迫力だ。
客席は静まりかえり、降り始めた強い雨が文学座アトリエをたたくのが聞こえてきた。

國語元年
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2015/09/01 (火) ~ 2015/09/23 (水)公演終了
満足度★★★★
工夫を凝らした演出
井上ひさしのこの作品はあちこちで取り上げられ、かなり知名度が高い。栗山民也演出のこの舞台は、見ている人たちを飽きさせない、工夫を凝らした作品で、何回見ても楽しめる。
南郷清之輔を演じる八嶋智人だけでなく、多彩な方言を使ってでてくる人たちの個性が存分に発揮され、そういう意味での群像劇である。見ていて飽きないのは、そういう台本になっているからだとも言える。
井上ひさしが訴えてきた言葉の大切さ。例えば、政治家の言葉が今ほど軽く扱われているというか、軽い発言ばかりで自ら言葉を毀損している、そのような世の中だからこそ、國語元年を見直したいのである。

はるなつあきふゆ
劇団銅鑼
銅鑼アトリエ(東京都)
2015/09/07 (月) ~ 2015/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
モロさんできゅっと引き締まった
別役実フェスティバル参加作品。別役の不条理劇を余すところなく楽しめます。
家族として生活しているのだが、まったく違う感覚ですれ違っていく。季節を追うごとに家族があえて一緒に何かをするという姿に、笑いもちりばめられているのに、何かもの悲しさを感じてしまう。それはまるで、季節の移ろいに感じる何とも言えない悲しさのように。
1993年に木山事務所が初演してから20年以上たつが、この劇で描かれている家族の姿は、当時よりも今の方が実感として多くあるのかもしれない。劇団銅鑼は家族の肖像を演じるのはお手のものだが、モロ師岡さんが客演してぴしっと引き締まった感じがする。
銅鑼は今年3月、青木豪作の「父との旅」を一幕物で上演した。この作品を見て、今回もとても期待して見に行った。「引き締まった」というのは、前作と比べての印象です。