その頬、熱線に焼かれ 公演情報 On7「その頬、熱線に焼かれ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    古川健 見事な脚本
    オンナナ(On7)は、青年座や文学座などの若手女優が集まった7人のユニット。この夏は、劇団チョコレートケーキの劇作家・古川健さんに脚本を依頼した。歴史的な事件を題材にした社会派舞台が持ち味の古川さん。今回、テーマとしたのは広島の原爆で顔などにケロイドの傷を負い、その治療のために渡米した若い女性たち、いわゆる「原爆乙女」である。

    原爆乙女、と呼ばれるのは嫌だった、と劇中でも出てくるので、この呼び名はこれまでにしよう。被爆70年のこの夏、薄れつつある戦争の記憶をとどめるという意義だけでなく、彼女たちの胸の内をストレートに戯曲化した見事な脚本だった。オンナナの公演は今日が最後だが、これで終わりにしてしまうのはあまりにも惜しい。全国各地でやってほしい公演だ。

    舞台には7人の女優しか登場しない。米国に渡り、治療に臨む7人の女性が、被爆時の悲惨な記憶、かろうじて生をつないだ終戦直後に待っていたひどい侮蔑。そして、選ばれて治療を受ける身となったことによる苦悩を次々に語る群像劇。青春を生きて、恋をし、結婚して子どもを育てる。当たり前にできたであろうことを遠い夢として封印を強いられた人生を、客席はまんじりともせず見つめることになる。

    客席を舞台の両側に配した小劇場で、舞台転換もなく、女優たちの演技力、会話力だけで最後までいく圧巻の舞台。戦争も原爆も経験したことのない若手たちにより、迫力の会話劇が進行する。オンナナの女優たちが、ありったけの力を出して演じた。この脚本・演出に見事に応えて見せた7人にも、拍手をおくりたい。

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    2015/09/20 19:20

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