満足度★★★★★
再演を熱望
対面席の舞台。是非ともリピートしてください。両側で観てください。文字通り、違う風景に出会えます。その時にそんな表情をしてるのか…という発見が数え切れません。それがリピートさせる罠ならば、かかってしまえばいいのです。損はしません。▶あの日、被曝した人たちの呪縛。希望と絶望、幸運か不運か、理屈と一致しない心が暴れる。生きてることが悲しいなら、逃げ場がない。それでも命があるって素晴らしいというエールが、世界中に広がればいいのに。ポニーテールのスピーチが照らす未来を信じよう。醜い人間が、賢くなった暁には、美しい世界の一部になれると信じよう。トモコがトシコの帰国挨拶を見守る姿は、卒業生を見送る担任のようで温かい。けれど、アキヨを見送る目からこぼれたひと滴に、優しく気丈なトモコの絶望が唯一溢れた。美しく悲しくて、刺さった。ノブエのような存在が社会に、集団に幸福をもたらすと信じる。彼女が祖母を語る時、その視線の彼方に何を見ているのだろう。美しい世界が広がっているだろうか。溢れ出そうな愛と苦悩と後悔が見え隠れする揺らぎと平静を、小暮智美さんが好演。心奪われる。頑なで自己防衛的に意固地なヒロコを大好きな渋谷はるかさんが熱演。ホンワカしたステレオタイプの小学校教師からこのヒロコへの振り幅に驚愕。トモコの安藤瞳さんの柔らかで母のような佇まいと眼差しに、平和な未来が来ることにかけようという気持ちになる。感謝。▶3回目。最も多かった台詞はケロイドでもピカでもなく、「ゴメンナサイ」次いで「アリガトウ」だったように思う。物語の重みや深さに気を取られるけれど、ゴメンナサイの舞台だと、今更ながらに気づく。彼女たちは何も悪くないのに、奪われ囚われた人生を生き抜く。3回目なのに、今回が一番泣けた。仲間の痛みを一身に受け止めるノブエから目が離せない。彼女が見ているものを感じ考えるだけで作品の多くを受け止めることができる。そう思える小暮智美さんの情演(そんな言葉は無いけど)。人間愛に満ちて、そこに生きていた。情にたたみかける展開に、疑問と決意という本音の刃で斬りつけるトシコ(尾身美詞さん)とヒロコ(渋谷はるかさん)。仲間なんかいらないと言い張るヒロコだけど、トモコの訃報を連絡したのが彼女だったことが、サラッと語られている。全く生きるのが下手で愛おしい。演出も演技も最高の進化を遂げていた。本音をぶつけ合ったあの場所で一人になったトモコの嗚咽が無念が突き刺さる。それまで菩薩のごとく慈悲深い眼差しの安藤瞳さんだからこそ、余計に切なさが増す。仏教の四十九日の思想である、魂の存在を信じた。ニット姿のミヨコが纏う女性の美は他とは違う。宮山知衣さんが背筋をスッと伸ばした立ち姿、座り姿で醸し出す。彼女の決断を羨望の眼差しで凝視するトモコがまた可愛い。「好き」という思いは、全ての困難を超越するんだなぁ。会話劇であることは間違いないけれど、アイコンタクトの美しい作品だった。言葉以上に視線を交わす。目は口ほどに物を言う訳です。アキヨの吉田久美さんが語りかける視線がトモコとは交わらないのが泣ける。トモコの「おるよ」が拍車をかける。みんな泣くといい。フライヤーの表を飾るセツコの保亜美さん。そのお人形のような可愛らしさや美しさに吸い寄せられたお客さんは、作品の重厚さに驚いたに違いない。この作品が、全国を回り、世界へも飛び出して上演されることを強く願う。不朽の名作になると確信する。
満足度★★★★★
古川健 見事な脚本
オンナナ(On7)は、青年座や文学座などの若手女優が集まった7人のユニット。この夏は、劇団チョコレートケーキの劇作家・古川健さんに脚本を依頼した。歴史的な事件を題材にした社会派舞台が持ち味の古川さん。今回、テーマとしたのは広島の原爆で顔などにケロイドの傷を負い、その治療のために渡米した若い女性たち、いわゆる「原爆乙女」である。
原爆乙女、と呼ばれるのは嫌だった、と劇中でも出てくるので、この呼び名はこれまでにしよう。被爆70年のこの夏、薄れつつある戦争の記憶をとどめるという意義だけでなく、彼女たちの胸の内をストレートに戯曲化した見事な脚本だった。オンナナの公演は今日が最後だが、これで終わりにしてしまうのはあまりにも惜しい。全国各地でやってほしい公演だ。
舞台には7人の女優しか登場しない。米国に渡り、治療に臨む7人の女性が、被爆時の悲惨な記憶、かろうじて生をつないだ終戦直後に待っていたひどい侮蔑。そして、選ばれて治療を受ける身となったことによる苦悩を次々に語る群像劇。青春を生きて、恋をし、結婚して子どもを育てる。当たり前にできたであろうことを遠い夢として封印を強いられた人生を、客席はまんじりともせず見つめることになる。
客席を舞台の両側に配した小劇場で、舞台転換もなく、女優たちの演技力、会話力だけで最後までいく圧巻の舞台。戦争も原爆も経験したことのない若手たちにより、迫力の会話劇が進行する。オンナナの女優たちが、ありったけの力を出して演じた。この脚本・演出に見事に応えて見せた7人にも、拍手をおくりたい。
満足度★★★
今だから言える時代
戦争、原爆体験者が少なくなり次世代に語り継がなくてはいけない事を、演劇で表現する事でその時の状況が分かり苦悩が伝わりました。教科書では数行で終わってしまう事も細かい描写で演じる素晴らしさがあります。平和で生きているのが本当に幸せな事だと痛感しました。
満足度★★★★★
ヒロシマの25人
原爆乙女と呼ばれた女性たちがケロイドの治療の為に渡米したことは聞いていたが
選ばれた25人の、その選択がどれほど苦悩に満ちたものであったか、
改めて等身大の女性たちの声として聴く思いがした。
戦後70年に相応しく、また女優7人のユニットに相応しい脚本が
声高でないだけに、じわりと沁みこんで素晴らしい。
隙のない演技の応酬が見応え満点、会話劇の醍醐味を味わった。
満足度★★★★
言葉での演技
言葉での演技の競演は、役者の真剣勝負を肌で感じる印象的な舞台であった。
約2時間、舞台装置やアクション等ではなく、役者陣の言葉の力のみで表現する舞台に、頭で感じるのではなく心で感じる事が出来き、素直に感動や泪が溢れてきた。
良い時間を共有した!!
満足度★★★★★
ヒロシマガールズ
対面式の舞台にいすが4つというシンプルな舞台装置ながらも、on7メンバー(青年座 俳優座ほか)は、被爆少女の役になりきりながらも、苦悩と葛藤を繰り返しながらも、ゲロイドという原爆後遺症を少しながらも完治したいと励ましながらもひとりの女性として成長いていった姿はよかったし、原爆70年だからできた、120分でした。
満足度★★★★
真摯
小学生の頃、長崎の原爆資料館を授業の一環で見学したが、生々しさと事柄の衝撃さに途中から記憶がない。
選抜された原爆少女25人。
ヒロシマ、被爆、戦争、言葉からくる悲惨さやキツさが先立ち、泣かずに見てやる、と覚悟してたのに、片腕失っても清廉さを失わない信江さんの話から涙腺緩んでしまった。
対面式のステージだったが、頭上からぶら下がった焼き焦げたような布切れが人の疵痕や建物の痕跡のようにも思え、そちらも胸に迫る。
少し長めかな、とも感じたけど普段のチョケーの舞台と思えば苦にもならず。役者さん含め好演でした。
ここから余談。
終演後、階下ロビーは、生憎の天気で外で待機することが出来ない観客や関係者がごったがえしていた。
アンケートを記入するも、階下の回収場所までたどり着けず、結局持ち帰ってしまった。小劇場の終演後の混雑風景は見慣れてるから、それはいいんだが、観客にアンケートをお願いするのなら、回収スタッフを一人でも置いて誘導して欲しかった。
満足度★★★★★
戦争体験、
特に被爆者のそれは私達戦後の人間にとっては8月の一時期か、広島や長崎の被爆地に赴かない限り意識されることは少ない。
現地に取材し、広島弁を流暢?にあやつるOn7メンバーの気迫は対面式の観客席ではあったが、充分に伝わる。弘子(渋谷はるか)や敏子(尾身美詞)のやり取りや、それに絡む原爆乙女達。皆の様子を静かに見守る智子(安藤瞳)。
一定の選考基準の下、幸運にもアメリカでケロイド治療を受けることができた「ヒロシマガールズ」25人。舞台上で展開される彼女らの手術への不安や、選考に漏れた人達との狭間で感じる葛藤やガールズ同士の妬み。セットがシンプルな分、特殊メイクの細やかさがまたいい。
満足度★★★★
おんなななふしぎ
いつもそっけない感じのこまばアゴラの出入口あたりが、華やか。舞台のほうも、女7人の舞台は否が応でも華やかである。だが劇団チョコレートとの共同は、やはり濃く重かった。「重さ」は、そこに役ごと埋まる事で(リアルさを帯びることで)息を飲むような時間になる。 冒頭、尾身美詞の底辺から立ち上がるような声、はかなげに笑む智子役に始まり、渋谷はるかの割り入りの流れはすごみがある。 個人的には渋谷の急角度の演技の入り方は快楽である。昨年夏か、『父と暮らせば』での広島弁を思い出し、彼女にとって一連なりの仕事に見えたが、その価値のある仕事に思える。仰ぐように見る女優の一人。 他の6名はほぼ初の女優も多かったが、今回の舞台で全員、印象に刻まれた。劇団チョコレートとのコラボ、想像に違わず、重く、濃い。ノリの良さげなユニット名とはギャップのある舞台だったかも知れないが、「その頬・・」のタイトルと布の垂れた装置の意味が女優の登場と同時に氷解して以後、息詰まる時間を味わう演劇の快楽。
満足度★★★★★
原爆乙女の会話が照らし出すヒロシマ/約120分
ドタドタとして騒々しかった前作『痒み』から一転、今作は派手な動きがほとんどない会話劇。
ケロイドの手術のため渡米したいわゆる「原爆乙女」たちの、自分たちの身の上にまつわる緊迫したやり取りが細やかに描かれる。
被曝による容姿の損傷が男以上に痛手となる女性同士の会話から成るだけに、セリフの一つ一つが切実味に満ち、心がザワザワしっ放しでした。
これから観られる方のために言っておくと、置きチラシの束の中に作品への理解を助ける資料が入っている上、会話を通じて物語の背景が分かるよう、脚本がとても丁寧に書かれているので、ヒロシマのことに明るくなくても、おそらく話は分かると思います。
満足度★★★★
感動した
素晴らしい・・でも、そこでこの作品のすべてを評価してしまって良いのか。
前回のサリ氏という女性演出家から、男性の作家、演出家に変わった。
話のところどころに引っかかるところがあった、けど、全体の勢いを削ぐところはなかった。
女性の役者ゆえなのか、目線の隅々まで演技の意図、想いが漲っている。
だからこそ、なのか、頭の中で台詞を台本に並び替えていくと、この見事に完成された演出的配置の中に男性的な想像力の匂いを感じ取ってしまう。
それを、作り事の世界をひと時現出させる演劇的な要素として納得するのか、それとも女性的なリアリティの欠如と見るのか、迷うところ・・
でもこの目線から漲る女性的な熱量(嫉妬・渇望・喪失感を含む)と、台詞から匂い立つ男性的なロマンティシズム。このコラージュ、ある意味原爆乙女のケロイドと女性の美しい肌のコラージュと重ね合わせられなくもない。でもならばこそ、物語の中にこの目線と夢想とを幾何学的に美しく配置して、原爆乙女の魂の美しさを星座のように照らしても良かった気がする。
ル・クレジオが来日の際言っていたんだけど、文学というのはかつて存在した美しい魂を言葉の伽藍のなかに再配置すること云々・・そういう意味ではこのコラージュに一ひねりの遊びがあるとなおよかった気も・・
満足度★★★★
開く勇気
経験に遠く及ばぬ想像の、それでもその大きな糧となる時間。違いを違いとして許し合うことで生まれる距離感。両の足で必死で踏ん張る生命力。もたれ合うのでなく支え合う「仲間」を7ガールズが体現してくれた。
満足度★★★★★
心の芯から
戦争について直接的にああだこだいうのではなく、それぞれの自分との闘いが波紋のように拡がり戦争を観客に考えさせる。日本人の国民性とかも…。舞台の作り方とかもシンプルなのに重厚。新劇女優7人と古川&日澤コンビとのコラボレーションを観ることができて良かったです。