満足度★★★★★
五感を刺激する寺山ワールド
寺山修司の世界観を、女性だけの舞台で生演奏に合唱、甘美で妖艶な舞台で彩って見せた力作。寺山の盟友、宇野亜喜良が人形デザインから美術までを担当し、五感をたっぷり刺激する「美女音楽劇」が楽しめる。
新進気鋭の演出家・藤田俊太郎の仕事が秀逸だ。観客席をも海の底のファンタジーの世界に誘う仕掛け、ストーリーテラーとしてのバイオリンとアコーディオン。音楽劇と銘打っただけあり、コンサートで聴くような女性コーラスがこの上ない快さをもたらす。青野紗穂の澄んだ声に耳を、悠未ひろの長い足に目を奪われる。有栖川ソワレが舞台を泳ぐ(お魚の役なので、本当に泳いでいるような演技)のも見逃せない。
悲恋の物語をこれほどまでにファンタジックに見せてくれるとは。
「なみだは人間が自分でつくる、世界でいちばん小さい海のことだよ」
その涙がとても、美しい。