人魚姫 公演情報 人魚姫」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    ファンタジーな世界...見事
    寺山修司の世界観をしっかり観せているが、その耽美・幻惑という雰囲気は少し抑えられているようだ。もちろんデフォルメオブジェや象徴する小物は登場する。しかし、他の寺山作品で観られるような、比喩的な表現やその置物自体にあまり意味が感じられなかった。
    逆に、舞台は華麗にしてファンタジー色の濃い、そして誰にもわかり易い”愛と悲しみの世界”を描いていた。
    冒頭、舞台上手の壁が回転し、口上を述べる人物が「人魚姫」の台本を見せ、これからの物語は劇中創作を示す。

    この舞台の最大の魅力は、脚本の面白いさはもちろん、その雰囲気であろう。それを形成しているのが、衣装、照明・音楽という技術。特に音楽は生演奏であり、その音色は東京芸術劇場(シアターウエスト)内に心地良く響く。
    また、役者陣...特に人魚姫の新星シンガー青野沙穂、その恋焦がれる相手、元宝塚歌劇団男役スター・悠未ひろ の二人は抜群の存在感を示す(情緒纏綿)。
    その物語は...。

    ネタバレBOX

    梗概は、人魚の姫は15歳の誕生日に海上で、船にいる人間の王子を目にする。嵐に遭い難破した船から溺死寸前の王子を救い出した人魚姫は、王子に恋心を抱く。人魚姫は海の魔女の家を訪れ、声と引き換えに尻尾を人間の足に変える飲み薬を貰う。その時に、「もし王子が他の娘と結婚すれば、姫は海の泡となって消えてしまう」と警告を受ける。王子と一緒に御殿で暮らせるようになった人魚姫であったが、声を失い王子を救った出来事を話せず、王子は人魚姫が命の恩人だと気付かない。
    王子は親の決めた許婚との結婚が決まり、姫の姉たちが、髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を差し出し、王子の流した血で人魚の姿に戻れるという魔女の伝言を伝える。人魚姫は愛する王子を殺せずに死を選び、海に身を投げて泡に姿を変えた。

    物語は知られた内容通りであるが、その観せ方がファンタジックで美しく浮遊するような演出が印象深い。本筋の表層に観える”一途な(悲)恋”を超越して、普遍的な”真心の尊さ”に感動する。そこには「人魚姫」という空想上の生き物を通して、生きているもの全てに向けてのメッセージが込められているようだ。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 満足度★★★★★

    五感を刺激する寺山ワールド
    寺山修司の世界観を、女性だけの舞台で生演奏に合唱、甘美で妖艶な舞台で彩って見せた力作。寺山の盟友、宇野亜喜良が人形デザインから美術までを担当し、五感をたっぷり刺激する「美女音楽劇」が楽しめる。

    新進気鋭の演出家・藤田俊太郎の仕事が秀逸だ。観客席をも海の底のファンタジーの世界に誘う仕掛け、ストーリーテラーとしてのバイオリンとアコーディオン。音楽劇と銘打っただけあり、コンサートで聴くような女性コーラスがこの上ない快さをもたらす。青野紗穂の澄んだ声に耳を、悠未ひろの長い足に目を奪われる。有栖川ソワレが舞台を泳ぐ(お魚の役なので、本当に泳いでいるような演技)のも見逃せない。


    悲恋の物語をこれほどまでにファンタジックに見せてくれるとは。
    「なみだは人間が自分でつくる、世界でいちばん小さい海のことだよ」
    その涙がとても、美しい。

    ネタバレBOX

    宇野亜喜良の美術では、魔女が「湯ばあば」に見えます(笑)

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