まことの観てきた!クチコミ一覧

1-20件 / 138件中
死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜

死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜

世の中と演劇するオフィスプロジェクトM

座・高円寺1(東京都)

2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

”投げかけ”をしてくれる作品
 「イスラム国」の事件の期限の日、観劇を迷ったけど、観てよかったです。

<戦争>も<死刑>も、そして<テロ>勿論<犯罪>も、人が人を亡き者にするという行為に変わりがない。
『戦争は英雄で、犯罪は死刑囚』この矛盾する構図は<法>という制度を作った人間の共同体がもたらした価値観の破たんである。

ともすると<死刑反対を訴える作品>と取られるようだが、私はそうは思わなかった。

「死刑執行人」の苦しみを<権力者>と称される人間は味わった上で<人殺し>の決断を下しているのか?
<国益>という名のもとに、命令を下しているだけではないのか。

様様な憤りと不信を喚起される作品でした。

多くの人々に観て・感じて欲しい作品でした。

ネタバレBOX

オスプレイの効果音が、この作品の主題を象徴しているのだなと感じました。
非常に明確で且つ巧い手法だと思いました。

演者のまっすぐさも好感が持てました。

セットのシンプルながら効果的な空間設計にも感心しました。
(緞帳替わりの文字に劇中スポットのハレが漏れるのが気になりましたが)

パン屋が絞首台につく象徴的な展開はシュールで良いですね。

「生きる」という事も逆説的に説いている事が作品の深みになっていますね。
誰も見たことのない場所2015

誰も見たことのない場所2015

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2015/03/13 (金) ~ 2015/03/19 (木)公演終了

満足度★★★★★

これは有りですよね!
俗にいう「演劇」の定義からすると逸脱しているのかもしれません。
”物語”が戯曲の形式で存在するわけではないので。

しかし、役者の生の力を媒体として語られる内容は、オムニバス形式ながら、きちんと物語(ドキュメンタリー)を伝えてくれるし、何よりも彼等がその人々に魂の部分から成りきれているのが”力”の原動力になっています。

「病んでいる」のは彼等なのでしょうか?社会なのでしょうか?
この機会に真剣に想いを共にしてみては如何でしょう?

冒頭と終わりのステージングが要か不要かは意見が分かれるところだと思いますが…。
何かしら”作品”らしき表現が必要かと思われたのでしょうが…。

ネタバレBOX

学生援護会の奨学金の下りが特に印象的でした。
援護ではなく闇金まがいである実態はもっときちんと取り上げて欲しいと思いました。

今の日本は、大企業を保護する政策にあけくれ、国民生活を無視する風潮が顕著です。そのうちのひとつの現象がこの問題ではないでしょうか?
”地方創生”を謳いながら、有力大学が都市圏に集中し、仕送り等の負担を強い、結果、地方から若者を都市圏に吸い上げ、借金(奨学金という名のもとに)を背負わせ、未来を潰している現機構は相当に問題です。

”心の闇”の根底もそうですが、”社会構造”の不備が及ぼす”闇”は即座に紛糾すべきだと思いました。


出演者の皆さんの熱演は素晴らしかったです。
だからこそ、トークショーでのネタバレには賛同できません。
本編できっちり訴えられているのですから、蛇足になる”素”の時間を加えるべきではないと思います。
シンポジウムではないのでしょ????
それが残念です。…参加しませんでした。

お見送りやアフタートーク、バックステージetc.
余計なおまけを付けているとは思いませんか?
昨今のこの(大劇場発の)風潮には大きな疑問を感じます。
おもてなし

おもてなし

玉造小劇店

ザ・スズナリ(東京都)

2014/11/18 (火) ~ 2014/11/26 (水)公演終了

満足度★★★★★

拍手喝采
昨今の商業劇場が忘れてしまっている「芝居」を、良く書かれた本と手だれの役者の演技で愉しませてくれる公演です。
このまま商業劇場で上演しても立派に成立する公演です。
本当に素晴らしいです!
多くの方に観て欲しい作品でした。

鈴木忠志の世界 再び!『トロイアの女』・『からたち日記由来』

鈴木忠志の世界 再び!『トロイアの女』・『からたち日記由来』

SCOT

吉祥寺シアター(東京都)

2014/12/19 (金) ~ 2014/12/26 (金)公演終了

満足度★★★★★

本物、当然ながら
「演劇」を改めて素晴らしい物と思える時間です。
シチュエーション・コメディらしき物(三谷幸喜の悪影響か)が幅を効かせる現代で、本物に触れる喜びは何物にも換えがたい時間です。
「今」を見据え、伝えるメッセージを訓練された俳優が表現する。
これが本当の「演劇」であるはずだが、SCOT以外にはそれに出会えない現状を哀しく思う。
「劇的感動」を得られる唯一の公演。

ネタバレBOX

若い(自称俳優)が最前列で鈴木氏に質問していたが、周囲に気遣いなく、下らない事を言い続ける姿を見て、こんな輩が「演劇をやっています」といえるのだから、良いものは生まれるはずも無いなのと辟易。
しかし、鈴木氏の言葉からは本質論が溢れる。
金色の翼に乗りて

金色の翼に乗りて

ピープルシアター

シアターX(東京都)

2015/02/18 (水) ~ 2015/02/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

必見の舞台、まさに演劇精神満載!
日本人の青年、フィリピーナ、在日2世。
この設定で語りかけるのは、人間の生き様。

自分たちが置かれた”今”をどう受け止めるかの問いかけである。

華やかなエンターテイメントを主流とする現代の演劇界に、演劇本来の姿を骨太に誇示する作品である。
…この演劇界に於ける対比も本作が示す社会疑念のいち要素であるのだが…余談

脚本・演技ともに素晴らしいです。

是非、演劇本来の姿と本作が提示する主題を体験しに出かけて欲しいと思います。

ネタバレBOX

プロローグとエピローグに登場する「老人」は誰なのか?
世の中にモノ申さず年老いてしまう我々(観客)を示すのであろうが、「老人」であるが故に直截的に訴えてこなかった。
当初は、作者の分身なのかとも思った。

某国(亡国?)首相が、議会制民主主義を踏みにじる政治家であるという現実を「ヤジ」という最も軽率で品性下劣な行為で露呈させたことが報じられた(一部でのみ)日の感激であったため、余計に感じる事が多かった。

生きる人間各々が胸を張って生きることを欲することが、悪政・暴力・経済至上主義からの貧富の格差や拝金主義を打破し静かな平和を勝ち取る唯一の方法であるというような主張は、ともすれば夢想主義、共産主義等の言葉で切り捨てられるが、やはり心の奥底ではそれを否定しきれない心のひだも持ちながら生きているのも現代人の姿であろう。

哀しい人々にスポットが当てられた本作であるが、”普通”であると自負する多くの(勿論筆者も)人々をえぐる作品も期待したい。

役者の皆さんには大拍手でした。しっかりと客席に役の想いを届けてくれていました。

個人的には、こんな素晴らしい演技をした演者が、終焉後にお見送りをするという姿勢が逆に残念に思いました。
もう彼等はその役を自分の物にしているのだから、部隊の上での静かな「礼」だけで充分だし、かえってしらけてしまいました。

これも余談ながら、大衆芝居のように贈り物をおいたおばさん!勘弁してくれ!!!

入場時に、紙袋を持った客には主催側で目を配っていて欲しかったです。

いしださんも災難でした。

しらける要因のこの2点の改善を求めます。
砂の骨

砂の骨

TRASHMASTERS

シアタートラム(東京都)

2015/03/06 (金) ~ 2015/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

脳天気な現代人に一石!拍手!!
新聞の一面を読む度に出てくる標語「経済成長」
想えば、小泉・竹中が描いた構図が今またよりグロテスクに跋扈している。

”生きる”とは?特にサラリーマン達に対する問いかけに皆どう答えるのだろう?
「賃金を得て、衣・食・住を安定させ、できれば他人より少しは良い生活が出来れば嬉しい」
そんな答えに溢れるのではないだろうか。

株価の上昇による含み益、円安の恩恵に湧く輸出業界(特にトヨタ)
限られた場所にある富は小規模のベアに曖昧にされる。

しかし、サラリーマンは自社の利益の為に邁進し、させられる。
”裁量労働制導入”などのハードルをただ乗り越えようと奮闘する。
『すき家』問題のような労働側からの抗議はない。
賃金が生活の根底をなすからである。

”生きる”とは生活することなのか?
経済至上主義は人間に何を与え得るのか?
”幸せ”という言葉は死語になったのか?

考えさせられることは多い。唖然とすることも。

こんな演劇が生まれ、支持される土台は出来上がり、実際にこうして発表されているのに、大資本は未だに”エンターテイメント”なるものを有難がり、薄っぺらな内容の、巨費を投じた見世物を「演劇」だと言い続ける。

トラッシュのみなさん、素晴らしかったです。

ネタバレBOX

演技が叫びすぎかなと思われるきらいがあった。

吐露は叫びだけではないと思うのだが…。

観客の肚に入り込む表現を見つけて欲しい。


”先生”って何者?
誘拐事件はトリックだった?

よく理解できなかった。
泳ぐ機関車

泳ぐ機関車

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

本当に愛おしい時間
3部作すべて愉しみました!

テーマは?とかメッセージは?とかそんな事は関係なく
2時間目一杯楽しい空間に浸れる。
それが素晴らしい体験として実感できる。
そんな作品たちでした。

「生きる」事を丁寧に語り掛けてくれる、そんな本当に”愛おしい”作品たちです。

作・演出家、出演者の皆さん、ありがとうございました。

ネタバレBOX

「泳ぐ機関車」でははじめを「おばけの太陽」のヒロインが演じるというキャスティングで、それまでのはじめ役は”神様”に。
これには意表を衝かれました。が、個人的にはひとりで通してほしかったです。
勿論「おばけの太陽」のはじめは今回父親でしたが…。
キャラクターが元気いっぱいの子なのか弱々しい子なのか一定しないのには違和感を覚えます。
ずっと書いていますが、大人になっての性格と結びつかないのです。

単なる連作で後日談の連鎖ではないと云われるのかも知れませんが、3部作一挙上演では、やはり一本筋を通してほしかったです。

同じように、姉ふたりもどこかで他2作の人々に登場して欲しかったです。
母親役でも…。

この辺を期待しつつもう一度3作続けて観たいなと思います。
儚みのしつらえ

儚みのしつらえ

TRASHMASTERS

紀伊國屋ホール(東京都)

2014/11/07 (金) ~ 2014/11/12 (水)公演終了

満足度★★★★★

これぞ演劇!!!
「戦争」という非日常の中
「恋愛」という日常の中
倫理観、精神の在り様、価値観…
人間はそれとどう向き合っていて、どう行動しているのかを(勿論仮定ではあるが)我々に突き付け、問うた作品。
演劇本来の目的意識に溢れ、安っぽい理屈(屁理屈)に攻撃をしかける必見の作品です。
あまりの衝撃に2時間半ずっと緊張を強いられ、その後も深く意識から離れない作品です。
出演者も、役者の役者たる表現を提示してくれます。

ネタバレBOX

高野和明著「ジェノサイト」の衝撃感と同様のパワーを真正面から受けます。
戦争という倫理観を破壊する状況に置かれた人間の野生と、恋愛という或る種の強い欲望に支配された本能。
 何気ない日常を安穏と生きる我々にしても、そこに至る可能性とは背中合わせに生きている。
 その覚悟を問われる。
 9条を問われている現代の我々は、真摯にそれに向き合い、当事者意識を持って隣国やかの戦争国家との我が国の在り方を模索しているのか?
 現実逃避を孕んだ安直な平和主義の隠れ蓑に身を寄せ、結果すべてを回避するだけになっていないか?
 『戦争』と『恋愛』という硬軟両極にあると勝手に思われている2極の物語の提示によって、その中の狂気を描いてみせる作者のそれこそ『狂気』に満ちた、けれど冷静な語り口に圧倒される。
if

if

TEAM 6g

d-倉庫(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

一番大切な物
それは命だという事を訴える作品でした。
当たり前じゃないか…?と言われるかもしれませんが、なかなかこの直球は投げられないものです。
しかも、警察権力の腐敗構造とか、脱線しそうな仕掛けが沢山配されている中で、ぶれずに進んでいけるという推進力はお見事でした。
命を大切に思う。この表現は、表現方法こそ少し硬い路線を取りながらも、この劇団の基本テーマをきちんと踏襲していると思いました。
前作から、無駄な言葉遊びや台詞振りが無くなった筆致は、今回も冴えていると思いました。

"if"何故このタイトルだったのでしょう?
もっと母子の方に厚く物語を振っていく予定だったのでしょうか?

警察組織の集団的隠蔽体質。これは本当に問題でしょう。
ifよりも never って感じですね。

力作であり、よくコントロールされた演出だったと思います!!

ネタバレBOX

非常に気になったのは、被疑者の遺留品を触る際に、だれも手袋を付けなかったかしょでしょうか。

あれは無いと思います。

あと、対決する相手が、一刑事ではなく、検察の方が良かったなとも(個人的には)思いました。
死に顔ピース

死に顔ピース

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/03/18 (金) ~ 2016/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

終末期医療の是非
人間は例外なく誰でも死ぬ。
「癌」は年齢を選ばない病だし、3人にひとりは「癌」で死ぬのだと冒頭にも断言しているほどのポピュラーな疾患である。

既存の医療制度が悪いというのではなく、助からない命とどう向かい合うかというのが本作のテーマであろう。

当たり前のことだが、人間は息を引き取るその瞬間までが人生であり、まさにその瞬間までは生きることを謳歌する権利を持っているのである。

終末期医療の重要性を否定する観客は皆無であったはずだ。
出来得るなら皆、渡良瀬のような医師に助けられながら、家族と一緒の場で死を準備したいに違いない。

しかし、当然のごとく、往診であり、医師一人がかかわれる患者の数はたいした人数ではないのが現実だろうし、医療費そのものや、医師の収入に関しても(本作では触れられていないが)検証する必要があろう。

無理をしない。泣きたい時には泣く。この言葉が胸を打った。

この劇団の素晴らしさは、今の問題をきちんと独自取材して我々に提示してくれるところである。
お芝居としての盛り上げ要素よりも、そのテーマの伝わり方に細心の注意を払っている点は、他劇団の追随を赦さない。

「癌」に限らず、老人介護も問題になっている今、終末期医療や介護制度の整備は急をようするのである。
こう声高に訴えたくなるのも、この劇団と接したからだ!!!

追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/04/09 (木) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

圧倒的な作品
完成度の高さは他の追随を赦しません。
テーマといい、脚本、演出、演技 圧倒的です。
全く無駄のない台詞を訓練された役者が伝える。これぞ演劇!

国という観念が我々を不必要な諍いに参加させているのかも知れませんね。
個人同士の「信」で付き合えたら、多くの問題を解決に向かわせることができるのかも知れません。
正しく生きる…当たり前の事が難しいのだと改めて感じました。が、そうせずには「信」が生じない。

虚言に埋もれる現代に確実に一石を投じている作品だ。

絶対に観て欲しい。

ネタバレBOX

月影さんが出演しているのに驚いたが、出来れば黒髪で出演して欲しいなと思いました。
時代的にも、役柄的にも。
それだけが不満でした。
…重箱の隅ですが。
オバケの太陽

オバケの太陽

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/10/23 (金) ~ 2015/10/30 (金)公演終了

満足度★★★★★

愛おしい作品
しっかりした本と訓練された演技。
そして、芝居小屋を見事に再現して見せる空間。
三位一体から贈られる時間は至福であった。

「おばけの太陽」とは何か?漠然とした問いに集約された人間模様。

人は、苦労し、苦しみ、悲しみ、それでも生きていく。
傍らにはきっと言訳や悔恨の念を臨みながら。

突如現れた子供があまりに愛おしい。
そしてその子に引っ張られて、この作品は本当に愛おしく思える。

次作にも大いに期待!!

是非たくさんの方に勧めたい作品。

ネタバレBOX

客席に離風霊船の大橋氏らしき人物を発見(まちがいかも…)
一昔前の彼の展開を彷彿させる作品だったので、なるほどとひとり悦に入った。

元の幼少期が妙に明るく能弁な子として描かれているのは、今後の作品へのネタ仕込みだろうか?
ずっと彼や彼を取り巻く人々が描かれるなら、それは非常に興味深い。

「アンナ・カレーニナ」ばりの機関車は3作目への布石だろうか?

いずれにしても興味は尽きない。
『ひとよ』★【横浜公演】6月6日・7日KAAT大スタジオ!★

『ひとよ』★【横浜公演】6月6日・7日KAAT大スタジオ!★

KAKUTA

ザ・スズナリ(東京都)

2015/05/21 (木) ~ 2015/05/27 (水)公演終了

満足度★★★★★

”ひとよ”は”人よ”でもある
当事者にとっての”ひとよ=One Night”であるのだが、それに連なる物語が丁寧に書かれた戯曲。
展開のバランスが非常に良い。
しかも心の中が力強く語られている。
悩み、喜び、困惑する人の姿が見事に描かれている。
飛び道具のような吉永さんが実は神という存在なのでは…?
とか、色んな視点で人の心の中を追体験できる作品。
私には”人よ”とか”人世”に思える題名も魅力だ。

お見事! 非常に愉しめて、意義のある作品だ!!

砦

トム・プロジェクト

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

近年最高の作品!傑作!!
ダム建設反対運動の実話演劇だとのこと。
第一に、村井さん、藤田さんのおふたり。絶品の演技!集中の仕方、表現の確かさ、客席への情報の伝達力。素晴らしい。
叫ぶことがエネルギーだと勘違いしている昨今の若い俳優たちはお二人の確かな技術を観て勉強するべきだ。
藤田さんのちょっとした所作での夫に対する心情表現、女としての色気は今や誰も表現できない境地である。(しかし、山田五十鈴や淡島さん並みの所作をいつ弓子さんは取り入れだしたのだろう…?記憶にない)
村井さんの自在な強弱のコントロールの確かさ。情に溢れた役作り。失礼千万だが、こんなに上手い役者だったかな…?と最敬礼。

そのお二人の確かな演者にサポートされた本も非常に良い!
無駄な物をすべてそぎ落とした感のある力強い進行は観る側を鷲掴みにして離さない。

ダムの建設を題材にしての、民主主義への警笛、官主導の行政の危うさ、土地に生きる者の覚悟…非常に明快に現代立法府への疑問を投げかけてくれる。

こんな本当に完成された舞台を観ずして何で演劇を語れようか!!!

客席が満員ではなかった事に淋しさ痛感した。

演劇が好きだという諸氏!必見の作品を見逃すこと無きよう!!!!

ネタバレBOX

ひとつだけ…ごめんなさい
あの時代劇調のS.E <獅子脅し調のショック音>
以前はよく使われた手法だが、今回は効果的であったのは確かだが、多用に過ぎていた気がする。

多用すると耳障り感が募り、意識を引き付ける効果が無くなる。

仕様箇所を再考すべきだと思った。
みえない雲

みえない雲

ミナモザ

シアタートラム(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了

満足度★★★★★

日本国民の全てが観るべき!
 前日の『衆議院議員総選挙』
あれだけ「原発再稼働反対!」「憲法9条を守れ!戦争反対!」「特定秘密法反対!」「社会福祉特定財源の増税やむなし!」 etc.
と連呼していた世論が急に「経済の安定推進」というお題目と共に全てに耳を塞ぎ、口を閉じ、従順に政権継続を選択した。
 反対の為の棄権などとバカなことを言い出す輩も多くいた。

 行動すること、声を出すこと。無責任な人生を送らないこと。

 現代日本の病巣を突く内容であり、演劇が本来持つ役割を貫徹した作品である。

 エンターテイメントなんて、呑気で無責任な作品の垂れ流しを享受している日本の演劇ファンを自称している人こそ本作品の空間に身を置くべき。

ネタバレBOX

 主役を演じる上白石さんのピュアさは正にはまり役。
陽月さんの突き抜けた演技も見事。
 他の出演者は、もっと「言葉」を客席に運ぶための訓練を要する。アトリエ等の狭い空間で演じている訳じゃないんだから。

 後半から終盤にかけてのねっとり感を感じてしまう演出はどんなものか?
少しばかり<想い>に溺れすぎているか?

 観客にナイフを中てる緊張感は、客観性を捨てては成立しないような気がする。特にこの作品では、観客が自分を同化させる対象の役などないのだから。

 
治天ノ君【次回公演は来年5月!】

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

もし大正時代が長ければ…
日本は今どうなっていたのだろか?
昭和の帝国主義が先の大戦を招いたのだとしたら…?
或いは、大正のゆるゆる感に浸った日本を列強が根こそぎ奪ってるとしたら…?
本作を観た後に90年程過去の分かれ道の一方がどこへ繋がっていたのかを思わずにいられなかった。

帝王・帝国思想の再現の為の手練手管の描かれ方が直截的で、大正天皇の葬られ方がかくあったのかと驚愕した。

この国の来し方を考えさせられる作品であった。

昭和の到来が軍靴の足音のごとく聴こえたのは自分だけではないだろう。

また、この時期の再演によって、今”同情””哀れみ”といった感ですすめられている生前退位の実現に大きく疑問を感じざるを得なかった。

しかし、松本紀保の存在が素晴らしかった。
品の良さ、気高さ。感服しました。立ち姿の美しさに心を奪われました。

演出に関しては、さらにもっと動きを我慢する術もあったのではないかと思う。
むしろそうすることでの宮家を巡る人々の心根を深くひょうげんでき得たのではないだろうか?

いずれにしても、演劇というよりドキュメンタリー志向の、しかしやっぱり演劇的な不思議な良作に出会えたことは嬉しい体験だった。

蛇足:常連客(?)の俳優T.T うるさいです。自分だけの場ではないのですからマナーを意識し、同行の方のマナーにも気を遣ってください。

夏の砂の上

夏の砂の上

作戦会議

Ito・M・Studio(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい
「演劇」本来の姿という印象を受ける作品。
<喪失感>
我々は日々何を失いながら生きていくのだろうか。
頭の中で理屈を捏ねながら観る作品ではなく、
舞台との時間を共有することで感じる作品といえる。

春田純一はじめ、役者たちの演技は素晴らしいに尽きる。

本間さんはころばない

本間さんはころばない

九十九ジャンクション

小劇場B1(東京都)

2014/09/30 (火) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

しみじみと観れます
まずは、よくできた作品だということを伝えたいです。
世の中の出来事は、それを見る角度によって評価が変わるものですね。
誰でも体験し、知っているはずの事を改めて提示してくれます。

押し付けがましくなく、しかも丁寧な語り掛けは秀逸です。
昨今の傾向の一方的な展開(それを芝居のスピードと勘違いしている例の多さには辟易します)を拒んだ手法に好感をもてます。

突き詰めれば「善」と「悪」がどうやって決められるのか、そんな奥深いテーマが骨太に内包されています。

演者たちにも非常に好感が持てます。
吉田君の正義感がもっと青い感じで演じられたら良かったかな?多少屈折が勝っていたような…。

とにかく、お薦めの作品です!

『エレクトラ』『からたち日記由来』「鈴木演出教室」

『エレクトラ』『からたち日記由来』「鈴木演出教室」

SCOT

吉祥寺シアター(東京都)

2015/12/19 (土) ~ 2015/12/26 (土)公演終了

満足度★★★★★

残念でならない 最後
もうSCOT公演は東京では開催されないようだ。
この時期の吉祥寺は風物詩のようになっていたので残念でならない。
何故終わりになるのだろうか?
武蔵野市のかわりに何処か手を挙げてくれないものか…。

今回も、観ている間は、ただただ高尚な表現を感じるだけで、具体的に何がこんなに自分を魅了するのか解らない。
決して容易に入り込んでくるような表現ではないのに、観終わるとまたその世界が恋しくなる。
「エレクトラ」を観たが、正直<意味不明>であった。
コロスがあそこまで表に出てくると、もはやコロスではなくれっきとした役である。(勿論、コロスは役柄なのだが…比喩的に述べた)
エレクトラからも共感する想いは発せられなかった。ただただ力が感じられた。
それは哀しみを普遍化した表現なのだろうと感じられるが、それは観終わった後、息を入れてからのことであった。

研ぎ澄まされた刃物が舞台で振り回されているようで、緊張を強いられる。
しかし、それが心地いい。
なにやらマゾヒスティックな感覚に包まれざるを得ない。

ギリシャ劇は、当時の政治や権力者への風刺の面を色濃く持っている。
同時に、人間の”性(さが)”をディフォルメして抽出している。
けれど、”今”この時代に近世の作品を取り上げる事の意味はなんなのだろう?
ただ名作として存在するからなのか???

今を想う時、この古典の表現を現代人の”性”に置き換えて表現した作品を観てみたい。
歌舞伎が間違った方向へ進みだし、止まらなくなって間違いに加速がついている今の演劇界に何を期待するのか?
況や、大劇場は何やらファッションとでもいうような軽薄な作品を輸入ばかりしている昨今、日本の文化レベルを託せる存在はSCOTだけではないのか?

2,3の若い劇団は辛辣な批判をしてくれているが、ある種正当な演劇というものを作り続けているこの集団に、より多くを期待してしまう。

オッペケペ

オッペケペ

「福田善之を読む」上演委員会

西池袋・スタジオP(東京都)

2015/03/28 (土) ~ 2015/03/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

知性と情熱の作品
「演劇」それを改めて提示してくれる作品。
朗読の形式は取っているが、これは演劇である。

”正義” ”渇望” ”欲望” それらの表出とその陰に潜む感情が観客を打つ脚本。
改めて、福田善之という知性に魅せられる。

63年の作品だが、当然ながら永遠のテーマを扱っているこの作品は”今”を語る力に溢れている。

ネタバレBOX

いつも思うのですが、アフター・トークの是是非を問いたい。

福田さんの言葉を聴きたいと思う欲求から残りましたが、司会が想いを延々と述べたり、ゲストでもない人が(作品の誕生の立役者ではあるのでしょうが…)語り続けるといった趣向はやめたら如何でしょう?

「戦争と記憶」という題材はどこにいったのでしょう?

この作品の福田さんご本人の想いを聴けるのでなければ、別に参加費をとって居酒屋で思い出話大会でもやられてはいかがでしょうか?

このページのQRコードです。

拡大