満足度★★★★★
終末期医療の是非
人間は例外なく誰でも死ぬ。
「癌」は年齢を選ばない病だし、3人にひとりは「癌」で死ぬのだと冒頭にも断言しているほどのポピュラーな疾患である。
既存の医療制度が悪いというのではなく、助からない命とどう向かい合うかというのが本作のテーマであろう。
当たり前のことだが、人間は息を引き取るその瞬間までが人生であり、まさにその瞬間までは生きることを謳歌する権利を持っているのである。
終末期医療の重要性を否定する観客は皆無であったはずだ。
出来得るなら皆、渡良瀬のような医師に助けられながら、家族と一緒の場で死を準備したいに違いない。
しかし、当然のごとく、往診であり、医師一人がかかわれる患者の数はたいした人数ではないのが現実だろうし、医療費そのものや、医師の収入に関しても(本作では触れられていないが)検証する必要があろう。
無理をしない。泣きたい時には泣く。この言葉が胸を打った。
この劇団の素晴らしさは、今の問題をきちんと独自取材して我々に提示してくれるところである。
お芝居としての盛り上げ要素よりも、そのテーマの伝わり方に細心の注意を払っている点は、他劇団の追随を赦さない。
「癌」に限らず、老人介護も問題になっている今、終末期医療や介護制度の整備は急をようするのである。
こう声高に訴えたくなるのも、この劇団と接したからだ!!!