夕暮れの旅人たち
表現集団蘭舞
シアター2+1(東京都)
2024/02/10 (土) ~ 2024/02/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/02/11 (日) 17:00
西荻窪の劇場といえば遊空間がざびぃしか行ったことがないと思っていたのだが、この劇場への最後の曲がり角であるT字路で突き当りにCOOPとスーパーが並び立つ風景には見覚えがある。いつ来たんだろうと考えに考えて、かなり以前にハグハグ共和国所属の役者が一時期にそれぞれ違った劇団に客演した際に、それらの各公演をスタンプラリーよろしくサインを集めながら観て回ると景品が出る企画があって、その時に来た劇場のひとつだったのを思い出した。多分劇場名は今と違っていたと思うが…。
(以下、ネタバレBOXにて…)
Musical Collection 1 陽だまりに青
Muse:Am
シアターシャイン(東京都)
2024/02/09 (金) ~ 2024/02/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/02/10 (土) 13:00
シアターシャインというごく小さな空間でミュージカルというのにまず驚いたものの、小さな空間だからこそ電子ピアノとマイクを用いないナマ歌でのミュージカルを味わえるのだともいえる。
渡辺七海は美人だし、スタイルも良く、歌声も美しい。
ただ難を言えば、物語が純粋な兄弟愛・崇高な人間愛を謳い上げて、あまりに素直すぎる。もっとドロドロとした葛藤だってあったはずだが、それがないのでそれぞれの人物が薄っぺらく感じられる。ゴッホが自身の耳を斬り落としたことについてもその心情を深く掘り下げることもない。綺麗事すぎて人間が描けていないともいえる。
そしてもうひとつ。開場されて客席に入った時からずっと、おそらく出演者の母親とそのご友人たちの一行がぺちゃくちゃと大きな声で世間話に花を咲かせている。折角舞台奥に「ゴッホの寝室(ゴッホの部屋)」の油絵(残念ながらこの絵はアルル移住の前に描かれているのだが)が投影されて、開演前から物語世界に浸ろうとしているのに、それができない。小さな空間だからこそ、そういう点にも配慮が必要だろう。
時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』
時代絵巻 AsH
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/08 (木) ~ 2024/02/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/10 (土) 18:30
前夜に続いて2回目の観劇。今回は幕見席で後ろから2列目のセンター。
舞台装置は1週前に上演された「暁月〜あかつき〜」のものとほぼ同じながら、この作品ではあの28人に及ぶ登場人物と彼女らの着物の数…そんなに広い楽屋でもなさそうだし、大変だっただろうなあ。
この作品はシアターグリーン3劇場で実施されている演劇祭「グリーンフェスタ」の審査対象作品ではないが、もしかしたら「暁月〜あかつき〜」ではなく「葵姫〜あふひ〜」を審査対象として参加した方が良かったやもしれぬ。
ところでこの公演が華ノ壱となっているからには、今後も女性だけの舞台も続けていくということか…
時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』
時代絵巻 AsH
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/02/08 (木) ~ 2024/02/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/09 (金) 18:30
大名席(2列目)のセンターブロック下手側通路脇で鑑賞。
3日に観た同団体の「暁月〜あかつき〜」と対をなす作品。「暁月〜あかつき〜」は幕末の日本で人斬り以蔵と恐れられた岡田以蔵を中心とした、従来のAsH作品同様に男だけが躍動する物語(時代劇で女性を登場させない作劇はかなりの困難がつきまとうと思われるのだが)。
そしてこの「葵姫〜あふひ〜」はAsHとしては初めての、女優だけで描かれる幕末の大奥の物語ゆえに期待が大きかった。
因みにAsHには男女混合作が2つだけある。それ以外に源平合戦の屋島の戦いの場で小舟に日輪の扇を立てて源氏に射てみよと誘う玉虫役で灰衣堂自身が後ろ姿のみで出たことはあるが…。
【以下ネタバレBOXにて】
兵卒タナカ
オフィスコットーネ
吉祥寺シアター(東京都)
2024/02/03 (土) ~ 2024/02/14 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/13 (火) 19:00
反ファシズムのドイツ人作家ゲオルク・カイザーがナチスに弾圧され、スイスに亡命中の1940年に書いた戯曲だという。ナチスに弾圧されてスイスに亡命中だったということは、ナチス・ドイツと同盟を結んでいた日本に対しても好意的な感情を持っていた訳がない。
それは「戦場にかける橋」の原作者でもあるフランス人作家ピエール・ブールが日本軍の捕虜となり、その時の経験を基に「戦場にかける橋」を書いたのみならず、日本に占領された国を念頭において「猿の惑星」を書いた(当然ながら猿=日本人である)のを考えれば瞭然のことだ。
この「兵卒タナカ」も鋭く冷徹な眼でというよりも辛辣に皮肉たっぷりに描かれているといっていいだろう。搾取する側(天皇・国家)と搾取される側(国民)という図式も、当時のアジアにおいては白色人種が有色人種を搾取する側だったことを考えれば、ブーメランとして滑稽でさえある。
【以下、ネタバレBOXで…】
激流ノ果テ-再演-
劇団東俳
あうるすぽっと(東京都)
2023/09/30 (土) ~ 2023/10/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/10/01 (日) 15:00
昨年の池袋演劇祭大賞受賞作品。
セットの両端が切れているように見えるのは、昨年の劇場でのセットをそのままあうるすぽっとという大きな舞台に設置したためか。
(以下、ネタバレBOXにて…)
人生交換Ⅱ
劇団たいしゅう小説家
萬劇場(東京都)
2023/09/13 (水) ~ 2023/09/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/09/17 (日) 12:00
CoRichで毎公演チケットプレゼントを行なっているものの、全くといっていいほど観劇後の「観てきた!」投稿が無いため、実際にはチケットプレゼントなどやっていないに違いないとユーザー間で疑惑が囁かれている劇団。
今回の私もチケットプレゼントに応募してみたが、やはりハズレた。
劇場に入ってまず感じたのは観客層がよくわからないこと。様々な年代の幅広い客層は小劇場というより商業演劇のそれに近いかもしれない。
舞台セットが照明の効果もあって美しく、かつSF的な感じもうまく出している。
5分遅れで開演、上演時間1時間45分。
(以下、ネタバレBOXにて…)
MARIONNETTE(東京公演)
劇団The Timeless Letter
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/09/28 (木) ~ 2023/10/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/10/01 (日) 12:00
ダブルキャストのteam FAKEを観劇。
関西の劇団で、4年ぶりの池袋演劇祭参加だという。関西の劇団で池袋演劇祭といえば、2014年に池袋演劇祭初参加にして大賞を獲得した京都の劇団ショウダウンを思い出さずにはいられない。それもシアター風姿花伝という不利な立地の劇場での2時間に及ぶ一人芝居でだった。
The Timeless Letterという劇団は初見だが、シアターグリーンのBIG TREE THEATERでの公演というのにまず驚かされた。かなりの集客力がなければ赤字必至となるであろうからだ。この回は観客に指定されていたのはセンターブロックのみで、上手側と下手側の両サイドは使われていなかった。となると、6割程度の入りか。
(以下、ネタバレBOXにて…)
同棲時間
亜細亜の骨
新宿シアターモリエール(東京都)
2018/08/02 (木) ~ 2018/08/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2018/08/03 (金) 19:00
日本では上演される機会がほとんどない台湾の戯曲である。台湾人3人で演じられ、時折日本語で会話がなされるが、概ねは台湾語で日本語の字幕が出る。
(以下、ネタバレBOXにて…)
燦燦SUN讃讃讃讃
かまどキッチン
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/08/03 (木) ~ 2023/08/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2023/08/04 (金) 19:00
初見の団体だが、正直言ってがっかりした。
衣替えから始まるクローゼットの中で衣類たちが巻き起こすてんやわんやのドタバタ活劇……とのことだったのだが、全くハジケない。頭で考えただけの会話劇といった感じで、迫ってくるものも注目させるようなシーンもまるでなく、途中で飽きてしまった。
なお念のために言うが、これはあくまで高齢者の一人としての繰り言である。今の若い人はこういう舞台が面白いと感じるのかもしれないし、それを否定するものではない。
(以下、ネタバレBOXにて)
ロリコンのすべて
NICE STALKER
王子小劇場(東京都)
2015/12/24 (木) ~ 2015/12/28 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2015/12/27 (日)
2015年観劇納めという日という日にこんな芝居を(笑)。劇団名だって“ナイス・ストーカー”だなんて、相当アヤシイ(笑)。主宰のイトウシンタロウなんて、“個性的な女の子が大好きで自分がモテる芝居を演じ書くために旗揚げした”と公言しているほどナノダ。
大体CoRichではチラシの大部分が黒く塗りつぶされているが、実際のチラシは露天風呂の縁に腰かけている少女の胸と股間の部分にうっすらと湯気が漂っているだけというかなりヤバイ代物。しかも劇場の物販コーナーではその湯気すらないプリントがこっそりと販売されているのダ(さすがに買うのには相当勇気がいる。イヤ、勿論買いませんよ、ワタシは…)。
で、舞台の方はというと、これが結構面白いのダ。純愛ものと言ってもいいだろうけど、何よりもセリフが活き活きとしていて、テンポもいい。初見の劇団でこういうのがあるから、固定観念にとらわれてはイケナイと痛感させられる(固くなって痛みを感じる、ってことじゃないよ。爆)
スウィングしなけりゃ意味がない
サルメカンパニー
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/05/18 (木) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/20 (土) 18:00
題名から、ナチ占領下のチェコでアメリカからやってきたジャズに酔い痴れる若者たちの群像劇だろう程度の(不完全な)印象で劇場に足を運んだのだったが、久々にスゴイ舞台を観た。今年はこれで96本目の観劇となるが、現時点で今年のBEST1だ。
チケットにはEX列と記されていたので、通常の客席外に増設された席で見切れもあるかと思っていたのだが、2列目(A列とB列の間。B列から階段席)のセンターだった。
(以下、ネタバレBOXにて…)
劇団壱 CE A WEEK
壱劇屋
萬劇場(東京都)
2023/05/15 (月) ~ 2023/05/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2023/05/15 (月)
「壱ce a week」は「ワンス・ア・ウイーク」と読ませるらしい。
劇団壱劇屋東京支部にて作演出を務める竹村晋太朗によるワークショップで、稽古は週に一度だけの9回の稽古を経た14名が、竹村晋太朗完全書き下ろしの短編殺陣芝居を演じるのだという。
あの壱劇屋のワークショップだからと多少期待はしていたのだが、あまりのレベルの低さに唖然とした。説明には14名(全員が女性)を劇団員と書かれているが、これで劇団とは烏滸がましい。無料カンパ制だったので金銭的な損失は劇場までの交通費だけとはいえど、はっきり言って時間の無駄だった。
素舞台の中央奥に平台が13枚積み上げられているのみ。
上演時間は本編35分。
壱劇屋の男優による説明の他は一切台詞なし。35分のほとんどが、ただただ殺陣である。なぜ戦っているのか、これらの登場人物にどういう背景があるのか、一切わからない。
なのに、その要である殺陣がまるでなっていない。一部の者にはアクションシーンでもその表情に真剣さがうかがえない。次の動作がどうだったか、それしか考えていないようにもみえる。だから、殺陣にスピードや迫力が全く感じられず、相手とのタイミングがズレているのも散見される。
殺陣といっても、刀を大振りに振り回しているだけだが、基本がなっておらず、腰が入っている者は皆無で、あれでは人を斬ったりはできない。
抜身の刀を鞘に入っていると見立てているのだが、その刀を抜く身振りでまず鯉口を切っている者もいない。日本刀はまず鯉口を切らなければ容易に抜けはしないのだ。
それに真剣は竹刀や木刀と違って重いのだ。ああも大振りを続けていてはすぐに疲れてしまうし、第一、あんなに派手に打ち合っていては、余程の名刀ででもない限り、すぐに刃毀れして斬れなくなるか、折れてしまう。映画「七人の侍」での野武士との雨中での乱闘シーンで、何本もの刀を土に突き刺しておいて取っ換え引ッ換えしているのはそういう理由からだ。
一番小さい女性は斬りかかってくる相手の刀を両前腕部で受けることを何度もやっていたが、手首から肘までは素肌で何の防具も付けていなかった。だったら刀を受け止めるどころか切断されてしまうだろう。
それから両手を振って歩く者が何人もいたが、武士というのは両手を振って歩いたりしない。なぜなら振った右腕が後ろにある時にいきなり斬りかかられたら刀を抜くのが遅れてしまう。だから武士は平時でも普段から手を振って歩かないように心がけていたのだ。竹村晋太朗は殺陣のみならずそういう基礎的なことも教えられないのか。であれば時代劇のワークショップなど止めるべきだろう。いかに参加者がズブの素人だろうと、「壱劇屋がやって(教えて)いるのだから、これでいいのだろう」などと演者(参加者)や客が思うようになったら、きちんとした時代劇の伝承にとって疎外要因でしかない。時代劇を上演するというのは、そういう責任も負っているのだ。時代絵巻 AsHなどの上演姿勢を学ぶべきだろう。
本編が終わってすぐに参加者個々人の感想や感謝の言葉が述べられ、修了(卒団)証書の授与があるのだが、これが本編とほぼ同じ時間かかるのに、本編だけ観て退出はできないようにされていた。本編だけでウンザリしていた身としては全く関心が持てず苦痛でしかない。通常の公演なら本編とアフターイベントの間には興味ない人間が退出できるように時間が設けられているのに、WS参加者の家族や友人でもないのに、そういったものに無理やり付き合わされてはかなわない。
昨年、劇団チョコレートケーキ初のワークショップは無料で半年間実施され、その参加者のみによる上演を含めた公演が読売演劇大賞の大賞と最優秀作品賞を受賞したし、仲代達矢は主宰する無名塾に一旦採用したとしても3ケ月経っても見込みのない者は辞めさせたという。それが本人にとっても演劇界にとってもいいのだという信念なのだそうだ。
WSでも見込みのない者は板の上に立たせない、そういう厳しさも必要だろう。壱劇屋のWS公演からはそういった「演劇人を育てよう」という気持ちなど微塵も感じ取れなかった。むしろズブの素人相手にきちんとした時代劇を指導できなかったという点では一層罪は重い。「型破り」というのはまず「型」を学んでそれを身につけた者がやることだ。
毛皮のマリー【2023年上演/B機関】
B機関
座・高円寺1(東京都)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/04/16 (日) 18:30
舞踏メソッドを演劇に応用することを目的に2016年11月に「毛皮のマリー」で旗揚げしたB機関が、映像をも加える次なるステップのために、この公演をもって解散するという第一期ファイナル公演である。
因みに私が主宰の点滅を舞台で初めて観たのはB機関の旗揚げと同じ年のリオフェス(岸田理生アバンギャルドフェスティバル)での「詩稿・血を、噛(は)む。 ―吸血鬼、男色大鑑より―」であった。そこでの圧倒的な存在感は今もありありと思い出すことができる。
この「毛皮のマリー」は劇団天井棧敷により1967年にアートシアター新宿文化で初演され、その時にはスタッフにも著名な人物を配していたものの、さまざまな理由でトラブルに見舞われたようだ。その後何度も上演され、マリーは「黒蜥蜴」と並んで美輪明宏の当たり役となっている。94年のPARCO劇場での上演時には欣也役としていしだ壱成が舞台デビューしており、下男役は麿赤児だったが、その関係でか点滅もこの時に演劇の舞台にデビューしている。
座・高円寺1の広い舞台いっぱいに広がる岩窟の廃墟のようなセットがまず目を惹く。下手の階段をのぼった高見には十字架が聳え立つ。舞台中央奥の小高い場所に木製のボートらしきものが置かれている。
開場時から舞台上で4人の女性が極めてゆるやかに動いており、これもきちんと振付された舞踏なのだろうが、残念ながら観客はあまりこれを見ていない。
(以下、ネタバレBOXにて…)
TOP HAT
お茶の水女子大学ミュージカルカンパニーMMG
お茶の水女子大学徽音堂(東京都)
2023/04/30 (日) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/04/30 (日) 15:00
以前はほぼ毎公演観ていたMMGだったが、コロナ禍で在学生と大学関係者のみ観覧可となったこともあり、19年4月の「Je Chante -終わりなき喝采-」以来4年ぶりにお茶女の徽音堂に入った。
前述のような事情もあってか、以前は開演1時間以上前でも長蛇の列ができていたのだったが、今回は40分前でもほとんど並んでいる人がなく、2列目(最前列は使用不可)のセンターに席を取れた。
以前から場内アナウンスも宝塚劇場の開演前のそれと似せていて微笑ましかったのだが、今回は聴いていてかなり無理をしているなあとしか感じず、ちょっと不安に。
その不安は定刻に開演して、最初の曲で現実のものに。4年の間に歌もダンスも以前の公演とは比ぶべくもないほどにレベルが落ちている。冒頭の曲ではほぼ全員がステッキを扱いきれていないし、映画版でフレッド・アステアが帽子掛けを相手に伝説的なダンスを披露した場面では帽子掛けを持て余している様がありあり。全く心が弾んでこない。
演技力も低レベルで、溜息しか出ない。
緞帳の故障で急遽幕を使用しない演出に変更したとのことだったが、短いシーンを繋ぐのに長い暗転を繰り返し、その装置替えも極めて手際が悪い。幕を使わずとも装置替えを上手くやる方法はいくらでもあるのに、演出のひかり(31期)の経験不足でそういった工夫に頭が回らなかったようだ。
デイルやマッジといった主要な女役のスタイルが悪く、欧米の上流階級の女性にはみえない。外見でものを言うと今の時代はハラスメントだと批難されてしまうが、舞台上での見栄えというのは作品の出来に大きく影響する。
見栄えといえば、最もひどかったのはウェイターを演じていた時のこはる。立ち姿が悪いし、ヒールの高い靴に慣れていないのかダンスでフラつくし、そもそも振付を覚えていない。笑顔も全くみられないし、舞台にあがるレベルにはほど遠い。
この公演を観たら宝塚関係者は怒りだして、もう二度と宝塚作品のコピー上演は許さないと言い出すのではないか。
白夜
劇団演奏舞台
演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/04/14 (金) 19:00
まずチラシの美しさに惹かれた。
九段下GEKIBAというこの劇場は初めてなのだが、エレベーターがなく、5階までの階段もやや急で、腰痛持ちの身としてはたどり着くのに一苦労(笑)。ザムザ阿佐谷のように靴を脱いで入場。
舞台下手にYAMAHAのシンセサイザーとギターが置かれていて、ここが生演奏の奏者席となるらしい。
舞台上手の壁に沿ってベッドが置かれ、その上に小さな窓。中央の奥にドア、手前に小さな木製テーブルと椅子。奥のドアの横に強いタッチの裸婦像の額が掛けてある。このセット、いかにも寂れた宿屋の一室という感じが良くでている。
怪しげな宿屋に怪しげな登場人物たちが蠢くこの戯曲は寺山修司がO.ヘンリーの「すべて備えつけられた部屋」(「家具つきの貸間」)から着想を得た戯曲だということで、構成や展開、台詞の一部さえほぼ同じ中で、寺山らしさが随所に顔を出す。因みに宿の女主人が部屋について説明する際の、「ガスコンロはベッドの脇にある」という何気ない一言がラストの重大な伏線となっているのも原典通りだ。
まず言っておく。私にとってこの舞台を観た最大の収穫は女中役の池田純美だった。女中役のハジけた演技も面白いが、むしろ劇の出番外で下手の奏者席でギターを抱えている風情も実に良かった。
開場時から客席には波の音が流れているが、5分ちょっと遅れて開演。2つのギターによるオープニングの曲が素晴らしく印象的だ。
が、そこまでだった。
「芝居じみた」という言葉は、芝居における演出のように言動が大げさに感じられたり不自然に感じられたりする様を指すが、今時これほど古典的な、まさに「芝居じみた」という言葉そのままの表現方法をとる劇団があるとは思ってもいなかった(まあ、それを体験できたことはある意味貴重ではあったが)。冒頭からこの小さな空間でどうしてこんなに声を張り上げる必要があるのかと思ったのだが、それが全ての役者に共通して、大声でもってわざとらしい台詞回しと大仰な動作に終始するのだ。二人で会話する場面で、互いを見ずに二人とも客席側を向いて言葉を発することも散見される。リアリティのないこと甚だしい。猛男の独白に哀愁といった風情を感じ取ることなど出来はしない。
ただ、役者が下手という訳ではない。4ケ月もの間戯曲に取り組み、ひとつひとつの台詞や動作を突き詰めた結果の舞台だというから、これはもう劇団の作劇姿勢自体がそうなのだろうが、見方を変えれば役者の身体の内から湧き上がってくる言葉や動作ではなく、頭で考えた台詞廻しや動作であって、ひとつ間違うと段取り芝居にもなりかねない。この表現方法だと、いくら役者に力があっても現在の他の劇団では使えないだろうなあ。
世界虚仮(セカイコケ)
ゴツプロ!演劇部
小劇場 楽園(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/03/20 (月) 19:00
何をやりたいのかよくわからない。コメディとしては中途半端だし、コントならば笑いが足りない。事実役者がどれほど熱演しようが、客席からはわずかに笑い声が出るが、それも稀。
熱演と書いたが、実のところ段取り芝居に終始している。誰一人として身体の内から湧き上がる演技ではない。それは台詞を言っていない時の表情や目でわかる。小劇場演劇の恐ろしいところだ。
アンナ・カレーニナ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2023/02/24 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/03/15 (水) 18:00
当初は2023年の公演として企画されていたものの、コロナ禍により中止され、3年ぶりの復活。宮沢りえの主演舞台なだけに期待も大きかったのだが、20分の休憩を含め3時間45分という長尺の舞台はどこか散漫な感じさえ与え、やや失望といったところ。
従来はアンナを中心とした三角関係をメインに描かれるものだったのを、今回英国から招かれた演出のフィリップ・ブリーンは新解釈として、不倫に走った末に虚飾に満ちた都会の貴族社会で死に追いやられるアンナと、農村で実直に生きて純愛の結果として幸せをつかむリョーヴィンとを対比的に描いたとのことだが、文学史上ではそれが定番の解釈でもあり、ただ長編小説の世界とは異なってそれを舞台上で表現するには無理があったのだろうか。むしろ二人のアンナ(ヒロインとその娘)と二人のアレクセイ(カレーニンとヴロンスキー)に焦点をあてた方が良くはなかったか。
最大の弱点は、なぜアンナが自殺にまで追い込まれていくのか、その心理の過程の描き方が丁寧さに欠けることだ。
終盤でのアンナが列車に飛び込んで自殺する場面も、そうと知っていない人には何を描いているのかよくわからなかったろう。
第一幕の最後での出産による全身血まみれのアンナの方の印象が強烈すぎて、第二幕がどことなく気が抜けた感が自殺の場面にまで続いてしまう。アンナの悲劇性が心に響いてこないのだ。
コウセイ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/26 (日) 13:00
千穐楽を観劇。全席自由席で受付開始は開演の45分前だというので、1時間前に劇場に行ったのだったが、既に6人ほどが並んでいた。さすが「今池袋で最も売れかけている劇団」(劇団説明文の一節)だけのことはある(笑)。
ラビット番長といえば将棋・介護・草野球が三本柱だが、昨年のグリーンフェスタではこれらとは異なる路線とは異なった作品を上演する予定だったのに、コロナで残念ながら公演中止に。昨秋の池袋演劇祭参加公演では将棋に戻ってしまったので、残念に思っていた。個人的には15年春の「白魔来る」のようなスプラッター気味のドロドロとした作品を観てみたいのだ。
ということもあって、今回の「コウセイ」は将棋・介護・草野球とは違ったものになりそうで期待していたのだった。
(以下、ネタバレBOXへ)
幽霊塔と私と乱歩の話
木村美月の企画
小劇場 楽園(東京都)
2023/03/01 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/03/02 (木) 19:30
木村美月が好きな土地で好きな人と、好き勝手に演劇をする企画の第二弾だという。それにしても、なんと魅惑的なタイトルであることか。乱歩と「幽霊塔」、そこに私という存在が加味されているのだ。が、多少期待外れに終わった感は否めない。10年前のちょっと奇妙な話という非日常感はあるものの、展開にメリハリが欠けていてハラハラドキドキしない。
まあ、木村美月がカワイ~から許しちゃうけど(笑)。
あと劇場だが、下北沢の楽園よりは池袋のGEKIBAの方が立教大学のすぐ近くなので、はるかに良かったのでは…。好きな土地が「下北沢」なのかもしれないが、そういうロケーションの選択も大切だと思う。殊に「ちょっと下北ふらふらして帰ろうかって道すがら、幽霊塔があるような気がしてくる、そんな帰り道をお渡ししたいです。」とまで書いているのだから。