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将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~

将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~

E-Stage Topia

上野ストアハウス(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/10 (水) 19:00

この団体の公演は一昨年1月の江戸川崇(カラスカ)作・演出による「東京卍メロス」を観ただけであるが、今回の公演は黒薔薇少女地獄の太田守信が作・演出。
タイトルの「将棋無双・第30番」からこのシリーズ30作目かとも思えるが、「将棋無双」は七世名人三代伊藤宗看による詰将棋100番を纏め江戸幕府に献上された作品集のことであり、これらの詰将棋はなかなかその解答本が見つからなかったため、「詰むや詰まざるや」と言われたそうだが、中でも第30番は神局と称されているという。従ってその神局という第30番をモチーフにした物語ということだろう。

上野ストアハウスのさして広くもないロビーに入って、出演者の写真やトレーディングカードを購入するために、中高年の男たちが列をなしているのを見てイヤ~な気になった。若いカワイイ女優を集めてその物販で儲けようとする公演では、その内容の薄さに散々失望させられているからだ。その最たるものは高取英晩年期の月蝕歌劇団だ。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

舞台奥には教会のような十字架をモチーフとした巨大なステンドグラス、そこに開場時からパイプオルガンが響き渡り、ゴシックロマンに溢れたムードが漂う。

が、冒頭で「ねえねえ、おばあちゃん。今日もお話を聞かせて。おばあちゃんの若い頃のお話」と子供たちがお話をねだる祖母がメイクも声も若いままであり、ここで「ええ~ッ」となってしまう。要するにかわいいままの姿を見せることで、ファンを満足させようとの浅はかな目論見なのだろう。

そもそも、まだ世界が一枚の、9×9=81マスの盤面だと信じられていた時代って、どんな世界なんだよ。
その世界で神に背き仇を為す存在・吸血鬼との戦いが繰り広げられ、それは舞台床面に設置された巨大な将棋盤の上で登場人物たちが自身の駒を置いて詰将棋と重ね合わせられるのだが、これがよくわからない。
駒の動きにも何らかの意味を持たせているのだろうが、もともと「詰むや詰まざるや」と言われた第30番が基なのだから、将棋がわからない者には尚更のこと難解でしかない。ラビット番長が上演している将棋シリーズとは大違いだ。

これなら無理に将棋を持ち込まなくとも、人間対ヴァンパイアの戦いをゴシックロマンで彩って物語にした方がどんなにか良かったろう。奇を衒いすぎ。
達磨さんは転ばない

達磨さんは転ばない

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/18 (土) 18:00

この公演2度目の観劇。
こみいった内容の作品だが、ストーリーがわかった上で再見するのは、どこにどういう伏線が張られていたのかじっくり観る楽しみがある。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

達磨が言う「中途半端なハラスメント」や、刑事がオーディション参加者らにぶつける言葉の端々、自分の名前から始まる終盤の達磨の悲痛なモノローグなど、村手の思いがビンビン伝わってくる。
15年前の飲酒運転で夫婦をひき殺して刑務所に入っていた男が、自分を恨み続けているその夫婦の息子に対して「許してくれ」ではなく、「どうか俺を一生恨んでくれ」と言ってひたすらに頭を下げるのが胸に迫る。

シリアスな場面だけでなく、無論ユーモラスなシーンも挟み込まれている。達磨から指で胸をツンツンされる度に刑事の顔が強面からだらしない笑顔に変わる瞬間の可愛らしさや、プロデューサーや助監督がマンボウになって登場する(私はウルトラマンの怪獣ジャミラを思い出してしまったが)など、張り詰めた緊張感を和らげてくれる。
こうした作劇の上手さが随所にみてとれる。

それにしてもこの客席数の劇場で公演を続けるのは、運営的にはかなり苦しいだろう。内容のいい作品ばかりということに加え、その点でも頭が下がる。
達磨さんは転ばない

達磨さんは転ばない

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/15 (水) 19:00

初日を鑑賞したが、やはり村手龍太の描く舞台世界は(いい意味で)一癖も二癖も、と、そう思わせる作品だった。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

映画監督の金本達磨(女性)が5年ぶりの新作制作にあたり、スタッフやスポンサー等には相談もせず、独断でキャスト募集オーディションをSNSで告知した。スポンサーはこれでは金を出せないと騒ぐし、マスコミも密かに探りを入れている様子にプロデューサーや助監督は対応に走り回る。
一方、選考されオーディションに集まったのは演技経験もなく、心に闇を抱えた8人の男女。そこで達磨は参加者たち応募書類に書かれていた彼らの経歴をほのめかしながら、それぞれが己を曝け出すことを要求する。刑事だという男も顔をみせ、達磨と思わせぶりにやりとりしている。

劇中でも事実と真実の違いについて説明がなされるが、まさにどこまでが事実で、どこからが虚構かはっきりさせない展開が続く。そしてラストでのどんでん返しで、またさらにどこまでが事実なのか観客を煙に巻く。

達磨役の上田愛がこのトンデモキャラクターを存在感たっぷりに演じている。
刑事と思しき村手龍太やプロデューサー役として久々の舞台出演となった中村公隆は勿論のこと、ムショ帰りの男を演じた朝廣亮二(この役を以前龍門に客演した役者に演らせるとしたら和興あたりか…)など、年配の男優の演技は厚みが違う。若手役者もこうした演技を観ながら成長していくんだなあと実感した。
天の秤

天の秤

風雷紡

小劇場 楽園(東京都)

2024/03/29 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/03/31 (日) 17:00

昨年の初演時に千穐楽での観劇を予定していたのだが、コロナ禍で楽前日と楽日だけが中止となり、観ることができなかった作品。
劇団としても出演者やスタッフにしても無事着陸できなかった無念が残っていたのだろう。幸いに7ケ月半を置いて再演となったが、私も懲りずに(笑)今回も千穐楽を予約。

大阪万博が開幕して2週間後の1970年3月31日、JA8315号機(愛称「よど号」)は羽田から板付(現在の福岡空港)へ向けて、普段どおり運航されていたが、赤軍派を名乗るグループによってハイジャックされた。これが日本初のハイジャック事件、いわゆるよど号事件である。
実は赤軍派が使用した日本刀・拳銃・爆弾などは、すべておもちゃや模造品であったことが後に判明しているし、まだ飛行機での旅行が珍しかった時代であり、当初の予定日の搭乗時刻にメンバーが遅刻して延期されたことなど、今から考えるとお粗末な事件ともいえるが、当時高校1年生だった私には緊迫したTVニュースの画面に釘付けだった記憶がある。犯人グループの「われわれは明日のジョーである」という声明も話題になった。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

離陸前の機内アナウンスを模した前説から物語が始まる。

主な舞台はよど号の操縦室。ここでの機長や副操縦士と犯人グループの田宮とのやりとりが太い幹となり、ここにスチュワーデス(まだ当時はCAやFAなどという無味乾燥な言葉は使われていなかった)や対策本部の状況等が枝葉として重ねられていく。
操縦室には当然航空機関士も居たはずだが、ハイジャック後すぐに拘束され犯人グループとの交渉にもタッチできなかったため、劇中には登場していない。

劇中で犯人からスチュワーデスの一人が「カラマーゾフの兄弟」を借りて、それによって左翼思想に共鳴を覚えていく場面があるが、実際に「カラマーゾフの兄弟」を借りて読んだのは当時は聖路加国際病院内科医長の日野原重明だった。

金浦国際空港では山村新治郎運輸政務次官が人質の身代わりになって搭乗して北朝鮮へ行ったことで男を挙げたが、これが自らすすんで人質になったのではないことや、運輸大臣の橋本登美三郎と中曽根康弘とのまるで他人事のような電話のやりとりなど、当時は知られていなかったエピソードも盛り込まれている。
また、機長がその後女性問題でJALを追われることになったこと、山村が精神疾患を患っていた次女により刺殺されたことなどもそれをうかがわせる会話を劇中にさりげなく織り込んでいる。
このように、吉水恭子の脚本はよど号事件に関わるさまざまな事柄を要領よく採り入れて、人間ドラマとしても厚みのある内容に仕立て上げている。

因みにタイトルとなっている「天の秤」は「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」という言葉とともに剣と天秤を持つ正義の女神が司法、裁判の公正さを表す象徴・シンボルとされていることによるものだ。

まさに息つく暇も与えない2時間弱だった。
鬼啖

鬼啖

troupe▲antLion

東日本橋A-Garage(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/11 (土) 12:00

かつて芸術集団れんこんきすたで上演された奥村千里による衝撃の二人芝居。

まず思ったことは奥村千里の戯曲は濱野和貴の尽力によりこのtroupe▲antLionで上演を引き継がれているが、やはり素晴らしい作品が多い。それだけに主宰だった中川朝子の不実によってれんこんきすたが解散せざるをえなかったことが無念でならない。
なにしろ奥村は作者としては日本劇作家協会の新人戯曲賞で最終審査に残った6人のうちの一人だった(対象作「Gloria」は審査員の坂手洋二や渡辺えり子の評価は大きかったが、実際には上演されていたにも関わらず「これって上演するの無理でしょう」という理不尽な理由で受賞を逃したのだった)し、演出家としても日本演出者協会の若手演出家コンクールで一次審査を通っていたのだ(二次審査が「木立によせて」となり、これは演者の力不足が大きかった)。

閑話休題、トリプルキャストの内のAチーム(町田恵理子&小松崎めぐみ)を鑑賞。定刻に開演。上演時間80分。
ただ12時開演(11時半開場)に間に合わせるにはかなり早く自宅を出ねばならず、朝食抜きで出たために、入場後のポップコーン食べ放題が有難かった(笑)。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

山間の村で捉えられた人を喰らう鬼とそれを折伏して欲しいと頼まれた旅の尼僧との息詰まる会話劇。その対決の中で明かされる尼僧の過去を通じて、念と業と罪と祈りとを深く考えさせた。

最初に尼僧(町田)と縛られている鬼女(小松崎)とが対峙する時に、鬼女が多少身を引き気味に感じられ、その分村人や人間に対する恨みの念が弱いように思えたのだったが、終盤でそれが活きてきた。

小松崎のメイクは大きな傷や腫れあがった右目など村人から痛めつけられた様が痛々しいが、それに反して歯が真っ白なのが気になった。歯をもっと汚すべきだった。
れんこんきすたでの上演時は亀甲縛りにするために専門の緊縛師に習いに行ったとのことで、終演後も簡単には解けないようにされていたが、今回はそこまでのことはなく軽く縛っただけだったようだ。

それにしても町田の尼僧姿の美しいことといったら。高貴ささえ湛えて、まさに後光が指しているようだった。
それだけに武家の娘だった時に許婚を女中に奪われた悔しさを語るときの悲痛さが痛々しく伝わってきた。
因みに茣蓙のところで草履を脱ぐ仕草がとても良かったのは川田ももによる所作指導の賜物か。

緊迫した濃密な空気感に満ちた舞台だった。
ナマリの銅像

ナマリの銅像

劇団身体ゲンゴロウ

新宿スターフィールド(東京都)

2024/03/27 (水) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/03/27 (水) 19:00

重い年貢にあえぐ農民の不満のはけ口としてのパチンコ屋での煽り放送を担当していたバイトの若者を天草四郎とすることで、彼の言葉が神の言葉として受け入れられる過程を描き、島原の乱の裏側に迫った意欲作。
着想の巧みさが物語の展開と見事にマッチし、そこにパチンコ屋で落ちている玉を拾って聖像を造る孤児を絡ませて、息詰まる舞台を創り上げていた。

ミュージカル版 『五色ロケットえんぴつ』〜気がつけば恋の話〜

ミュージカル版 『五色ロケットえんぴつ』〜気がつけば恋の話〜

劇団帰燕

高円寺K'sスタジオ【本館】(東京都)

2024/04/04 (木) ~ 2024/04/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/04 (木) 19:30

4チームでの公演のうちのBチームを観劇。

初めての劇場。客席最前列にはソファが置かれている。
開場時から演技スペース面に5人の出演者全員が並び、客席と雑談を交わしている。客席を温める意味合いはあろうが、一方で声の大きな客との会話がうるさく感じられもする。一長一短だろう。

劇場版ポケモン等の脚本家・園田英樹が主宰し、旗揚げ公演に先立ってのプレ公演の第1弾という。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

スランプで落ち込んでいる少女漫画家マツリをアシスタントや幼馴染たちが盛り上げようと奮闘するというコメディだが、まずストーリーが安直。
コメディと謳いつつも、笑える場面は2つだけ。それも衣装の見た目で笑わせるといった手合いのもので、ギャグのセンスも古すぎる(例えば暗闇で女声の「ああ~ん、そこ」なんていう台詞が流れ、明転すると男が女の肩をもんでいる、といった具合だ。それって使い古された昭和のギャグだよ)。

歌も歌詞がメロディにのっておらず、そのためか、どの出演者も下手にしか聞こえないし、ダンスだって決して上手いというレベルでもない。演技力もイマイチ。

脚本・歌・ダンス・演技力のいずれをとっても客をよべるレベルにはない残念な公演だった。
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~

長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~

劇団Cheminèe

エリア543(東京都)

2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2024/02/23 (金) 18:00

前夜の東久留米に引き続いて、この上井草駅も降りるのは初めて。当然この劇場も初めてなのだが、客席ひな段の前後が比較的高く作られていて、観やすい。

この劇団、主宰の西条萌が高校生の時に旗揚げし、コロナ禍で4年ぶりの公演だという。

セットはこの小さな空間にしてはきちんと造られている。

ただ、はっきり言って役者の演技レベルが低すぎる。
特に主人公の探偵・長谷川圭一を演じた役者がひどい。終始ヘラヘラ笑っているような表情で舞台の雰囲気をぶち壊しかねないひどさだが、他の役者陣も押しなべて低レベルなので、なんとかバランスがとれている状態。役者全員が学芸会レベルでしかない。

これで(上演時間1時間にも関わらず)3千円とろうなどとは烏滸がましいにも程がある。
準備期間が十分にとれず、これでは人様に観せるレベルに達しないとして、初日の数日前に公演中止を決めた団体も知っているだけに、尚更その感を強くする。

ストーリーも謎が謎を呼ぶといった手合いのものではなく、お手軽そのもの。このCoRichの作品説明には「初めから終わりまで一瞬も見逃せない」と書かれているが、羊頭狗肉も甚だしい。

ライブショー「ザ・アイドル-THE IDOL-」

ライブショー「ザ・アイドル-THE IDOL-」

WizArt

Cafe JINDO(東京都)

2024/02/22 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2024/02/22 (木) 19:30

団体名のWizArt はWizard(魔法使い)とWith Artをもじったものだろう。が、その舞台には魔法にかけられたように魅入られるものでも、芸術的に優れたものでもなかった。
ダブルキャストの空チームを鑑賞。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

舞台はとあるアイドルオーディションの最終選考に臨む6人の控室。女子大生・主婦・オネェ・トランスジェンダー・元人気アイドルの娘に元キャバ嬢のグラビアアイドルといった異色の面々…だが、こういう面々から選抜してどういうアイドルグループを作ろうというのか、その意図は全く説明されない。要するに物語設定を面白くするだけの顔ぶれであって、その必然性がないのだ。

前半は彼女(?)らの抱える複雑な事情が自己紹介の形で語られ、後半はその最終選考、そして結成されたアイドルグループのデビューのライブショーという構成なのだが、最終選考やライブショーでも彼女らが難関を勝ち抜いてきた実力の持ち主とは到底思えない。そもそも最終選考の場でもナツキ役のステルスにゃんこなんて口パクだし…。

最近はTV地上波でもアイドルのオーデションや女優のオーディション番組が放送されている。それを少し観るだけでも、この舞台がいかにお手軽に作られているかがよくわかる。

役者の演技レベルは、オネェのトオル役の清水忠とハル役の森藤拓海がかろうじて水準点といったところ。
サロメ

サロメ

獣の仕業

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/02/25 (日) 18:00

オスカー・ワイルドの「サロメ」は昨年7月にすみだパークシアター倉で上演された無名塾の公演(演出:江間直子)も観ており、その舞台も素晴らしかったが、今回の獣の仕業による公演はそれを上回る濃密で、まさに一瞬も目を離せない、息を詰めて観入る舞台だった。

まず驚いたのが森鴎外の翻訳を使用していることだ。鴎外がこの作品を翻訳していたことなど全く知らなかったのだが、調べてみると鴎外のものが本邦初の翻訳なのだという。
そして劇場が〔シアターバビロンの流れのほとりにて〕だ。サロメの舞台となっている土地とも重なり、まさにうってつけだ。ただ、最寄駅からの距離が遠いのが難点だが、2,500円というチケット代を考えれば多少のことは…、と思いつつも冷たい雨が降っているとなればやはり辛い(笑)。

この公演の完成度の高さは、一にも二にもサロメを演じた雑賀玲衣の圧倒的な演技によることは誰も口を挟めないだろう。ただそれが素晴らしすぎるが故に作品全体としては多少の減点要素ともなるのだが…(それで★5つにできなかった。後述)

【後日、詳しく追記予定です】

夕暮れの旅人たち

夕暮れの旅人たち

表現集団蘭舞

シアター2+1(東京都)

2024/02/10 (土) ~ 2024/02/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/02/11 (日) 17:00

西荻窪の劇場といえば遊空間がざびぃしか行ったことがないと思っていたのだが、この劇場への最後の曲がり角であるT字路で突き当りにCOOPとスーパーが並び立つ風景には見覚えがある。いつ来たんだろうと考えに考えて、かなり以前にハグハグ共和国所属の役者が一時期にそれぞれ違った劇団に客演した際に、それらの各公演をスタンプラリーよろしくサインを集めながら観て回ると景品が出る企画があって、その時に来た劇場のひとつだったのを思い出した。多分劇場名は今と違っていたと思うが…。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

両親が離婚して以来会っていない父親に会うため、そして引っ越してしまった彼女に会うため、単身博多の地を訪れる中学3年生の少年・凪の物語だが、はっきり言って暗転が多すぎる。これまで暗転(場面転換)が多かった芝居と言えば上演時間2時間弱で64シーンというピープルシアターの作品があり、当時その主宰は「舞台で映画を創る」という趣旨のことを言っていたが、シーンを細切れにすれば映画になるというものじゃないだろうというのが正直な感想だった。この作品も場面転換が多すぎて、登場人物の心に寄り添いかけると転換という繰り返しでは、訴えかけるものが薄くならざるを得ない。もう少し考えた方がいいだろう。

あと、博多弁がいまひとつひどい。当日パンフによれば方言指導が居るようだが、字面だけ方言にしても(それだって満足に博多弁になりきっていない個所が散見される)イントネーションがまるで違う。そのために博多弁のシーンになると九州人の私としては白けてしまう。桟敷童子のレベルまでとは言わないものの、これまたもう少しトレーニングすべきだ。

凪の母親で刑事でもある清美が夫に向かって「こういう仕事で女性が出世するのは大変なんだから」という場面があるが、こういう会話でわざわざ「女性」と言うものだろうか。この人物のキャラクターからも、また警察社会に身を置く立場としては単に「女が」と言うのではないか。コンプライアンスを気にしすぎだ。もっとも清美を演じた小暮美幸はこの他にもおチャラけた役もこなして、存在感を十二分に発揮していた。
Musical  Collection 1 陽だまりに青

Musical Collection 1 陽だまりに青

Muse:Am

シアターシャイン(東京都)

2024/02/09 (金) ~ 2024/02/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/02/10 (土) 13:00

シアターシャインというごく小さな空間でミュージカルというのにまず驚いたものの、小さな空間だからこそ電子ピアノとマイクを用いないナマ歌でのミュージカルを味わえるのだともいえる。

渡辺七海は美人だし、スタイルも良く、歌声も美しい。
ただ難を言えば、物語が純粋な兄弟愛・崇高な人間愛を謳い上げて、あまりに素直すぎる。もっとドロドロとした葛藤だってあったはずだが、それがないのでそれぞれの人物が薄っぺらく感じられる。ゴッホが自身の耳を斬り落としたことについてもその心情を深く掘り下げることもない。綺麗事すぎて人間が描けていないともいえる。

そしてもうひとつ。開場されて客席に入った時からずっと、おそらく出演者の母親とそのご友人たちの一行がぺちゃくちゃと大きな声で世間話に花を咲かせている。折角舞台奥に「ゴッホの寝室(ゴッホの部屋)」の油絵(残念ながらこの絵はアルル移住の前に描かれているのだが)が投影されて、開演前から物語世界に浸ろうとしているのに、それができない。小さな空間だからこそ、そういう点にも配慮が必要だろう。

時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』

時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2024/02/08 (木) ~ 2024/02/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/02/10 (土) 18:30

前夜に続いて2回目の観劇。今回は幕見席で後ろから2列目のセンター。

舞台装置は1週前に上演された「暁月〜あかつき〜」のものとほぼ同じながら、この作品ではあの28人に及ぶ登場人物と彼女らの着物の数…そんなに広い楽屋でもなさそうだし、大変だっただろうなあ。

この作品はシアターグリーン3劇場で実施されている演劇祭「グリーンフェスタ」の審査対象作品ではないが、もしかしたら「暁月〜あかつき〜」ではなく「葵姫〜あふひ〜」を審査対象として参加した方が良かったやもしれぬ。

ところでこの公演が華ノ壱となっているからには、今後も女性だけの舞台も続けていくということか…

時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』

時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2024/02/08 (木) ~ 2024/02/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/02/09 (金) 18:30

大名席(2列目)のセンターブロック下手側通路脇で鑑賞。
3日に観た同団体の「暁月〜あかつき〜」と対をなす作品。「暁月〜あかつき〜」は幕末の日本で人斬り以蔵と恐れられた岡田以蔵を中心とした、従来のAsH作品同様に男だけが躍動する物語(時代劇で女性を登場させない作劇はかなりの困難がつきまとうと思われるのだが)。
そしてこの「葵姫〜あふひ〜」はAsHとしては初めての、女優だけで描かれる幕末の大奥の物語ゆえに期待が大きかった。
因みにAsHには男女混合作が2つだけある。それ以外に源平合戦の屋島の戦いの場で小舟に日輪の扇を立てて源氏に射てみよと誘う玉虫役で灰衣堂自身が後ろ姿のみで出たことはあるが…。

【以下ネタバレBOXにて】

ネタバレBOX

奥向の万事を差配する大奥随一の権力者で、表向の老中に匹敵する役職であった将軍付御年寄の瀧山を軸に、薩摩藩から将軍家に嫁いだ篤姫、皇女でありながら十四代将軍・家茂に降嫁した和宮、十五代将軍慶喜の妻・一条美賀子らが公武合体、大政奉還、江戸城無血開城といった歴史の中でどのように動いていたのかが、濃密な空気感の中で華やかさを伴なって描かれていく。

AsHの看板役者・黒崎翔晴が頭中将役で客演した芸術集団れんこんきすたの源氏物語「雲隠れシンフォニエッタ」(19年3月)に出ていた女優が多く登場するのも、れんこんきすたが解散した今となっては懐かしくも楽しい。

殊に瀧山役の生粋万鈴が圧巻だ。将軍家と大奥のしきたりを絶やすまいとの強い意志をもって動く前半と、江戸城無血開城の後にその目標と頼るべきものを喪失して一人の女となり、叔母と共に死を選ぼうとする終盤の哀れさの表現が素晴らしい。また篤姫と和宮に代わって大奥の皆に向かい江戸城から退出せねばならぬことを告げる場面での説得せんとする必死さも秀逸だ。
その瀧山に仕える仲野役の泉川萌生も舞台は久しぶりながら、存在感を発揮する。殊に終盤で瀧山たちに向かって「ドーンと任せなさい!」と腕を突き上げる場面では、前述の「雲隠れシンフォニエッタ」でいきなり鰹を取り出す場面が思い出され、一人密かにニンマリとしたのだった。

吉水雪乃は描かれる時代と座組の年齢構成からみておそらく和宮役だろうと察してはいたものの、まさかその母親・観行院を実の母親である吉水恭子が演じるとは思いもしなかったのだが、この吉水母娘の共演は所属する風雷紡でも最近はみられなくなり、なんと18年8月の「ロンギヌスの槍」以来のことだ。和宮役の吉水雪乃は前半の婚約者を想っての夢見がちな少女と、帝と民のために降嫁する道を選んでからの強さをうまく演じ分けていたし、吉水恭子も実の母親だけに和宮への思いがより強く迫ってきたのだった。
兵卒タナカ

兵卒タナカ

オフィスコットーネ

吉祥寺シアター(東京都)

2024/02/03 (土) ~ 2024/02/14 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/02/13 (火) 19:00

反ファシズムのドイツ人作家ゲオルク・カイザーがナチスに弾圧され、スイスに亡命中の1940年に書いた戯曲だという。ナチスに弾圧されてスイスに亡命中だったということは、ナチス・ドイツと同盟を結んでいた日本に対しても好意的な感情を持っていた訳がない。
それは「戦場にかける橋」の原作者でもあるフランス人作家ピエール・ブールが日本軍の捕虜となり、その時の経験を基に「戦場にかける橋」を書いたのみならず、日本に占領された国を念頭において「猿の惑星」を書いた(当然ながら猿=日本人である)のを考えれば瞭然のことだ。
この「兵卒タナカ」も鋭く冷徹な眼でというよりも辛辣に皮肉たっぷりに描かれているといっていいだろう。搾取する側(天皇・国家)と搾取される側(国民)という図式も、当時のアジアにおいては白色人種が有色人種を搾取する側だったことを考えれば、ブーメランとして滑稽でさえある。

【以下、ネタバレBOXで…】

ネタバレBOX

途中10分間の休憩を2度挟み、3幕構成で上演時間は(休憩込み)2時間45分。第一幕はタナカの故郷の実家、第二幕は妓楼、第三幕が軍事法廷となっている。

冒頭、村人たちの体操まがいのダンスが展開されるのを見ると、この舞台が様式美を交えて演出されているのがよくわかる。
だが、この第一幕から違和感がつきまとう。帰省したタナカを家族はじめ村中が最大限の尊敬をもって迎えるのだが、家族が出征兵士の帰省を喜ぶというよりも「軍人さん」をこのボロ家に迎えるなど恐れ多いという態度なのだ。タナカは士官学校出身でも学徒出陣した訳でもなく、単に赤紙で招集された一兵卒、すなわち最下級の兵士であって、村から出征したのがたった一人だということはないはずだ。
また、村人たちとの会話で天皇陛下という言葉が何度もでてくるが、その単語に対して村人は感心するばかりで姿勢を正すこともない。当時の日本人の間で天皇陛下という言葉はもっともっと重みをもっていたはずだ。

妓楼の場でも遊女一人ひとりが客の前で踊りを披露するが、そんなもの無用だ。兵士が妓楼へ来る目的はただひとつ、踊りなんかどうでもいいはず。芸者遊びとは訳が違うのだ。
この幕ではタナカの妹・ヨシコの「飢えることと飢死することは違う。お腹が減るってことはまだ生きている証拠。」という言葉が胸に迫る。

第三幕の軍事法廷でも裁判官や弁護士があのような法服を纏っているはずもない。
そして天皇に詫びを求めるなどという発想は当時の日本人にはありえない。むしろ、己が思うままに飲み食いした宴が妹を女衒に売った金で賄われていたと知ったタナカは、己の無力さに打ちのめされ、妹とともに自身も銃剣で腹を斬るといった展開の方が普通だろう。

力作であることは認めつつも、劇中のすべてに違和感が付きまとう舞台であり、テーマの普遍性などはこの違和感の中で霞んでしまった。

タナカの妹・ヨシコを演じた瀬戸さおりの可憐さが強く記憶に残った。
激流ノ果テ-再演-

激流ノ果テ-再演-

劇団東俳

あうるすぽっと(東京都)

2023/09/30 (土) ~ 2023/10/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/10/01 (日) 15:00

昨年の池袋演劇祭大賞受賞作品。

セットの両端が切れているように見えるのは、昨年の劇場でのセットをそのままあうるすぽっとという大きな舞台に設置したためか。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

現代の女子高生・咲良が自死しようとしたが、その意識が終戦の年に米軍の空襲から逃げようとして高台から転げ落ちた妙子の身体の中に転移する。記憶喪失と見做された妙子として生きながら、戦災孤児となった武子と清子の幼い姉妹の面倒をみる中で生きることの意味を見出していく…。

登場人物が多いこともあって、圧巻の舞台ではある。

が、回天という兵器(というか人間魚雷)について何の説明もないままでただ「回天」と言うだけで、現代の観客に通じるのだろうか。
また、海軍兵士の敬礼が陸軍式のものだったのは残念。海軍の敬礼は(軍艦内の狭い通路ですれ違うため)脇を締め、肘を身体に寄せて行なうのだ。演出家にそういう知識が欠けていたのか。これだけの内容の作品を創ろうというのであれば、もっと詳しく調べるべきだったろう。

高い位置から妙子を見守る咲良役の中島明子の台詞がはっきりせず、時折聴き取り辛かったのも残念だった。
人生交換Ⅱ

人生交換Ⅱ

劇団たいしゅう小説家

萬劇場(東京都)

2023/09/13 (水) ~ 2023/09/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/09/17 (日) 12:00

CoRichで毎公演チケットプレゼントを行なっているものの、全くといっていいほど観劇後の「観てきた!」投稿が無いため、実際にはチケットプレゼントなどやっていないに違いないとユーザー間で疑惑が囁かれている劇団。
今回の私もチケットプレゼントに応募してみたが、やはりハズレた。

劇場に入ってまず感じたのは観客層がよくわからないこと。様々な年代の幅広い客層は小劇場というより商業演劇のそれに近いかもしれない。
舞台セットが照明の効果もあって美しく、かつSF的な感じもうまく出している。
5分遅れで開演、上演時間1時間45分。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

地球担当を押し付けられた宇宙人が狂言回し的な役柄。
ダンサーや格闘家、ブルジョアのお嬢様、県会議員、ホームレス、トーヨコキッズにおカマ…といった9人の男女が集められ、この宇宙人から人生交換を持ちかけられるのだが、それが地球の破滅を救うことになるかもしれないという設定がまず不可解。
このレベルの、しかも少人数の日本人のテストだけで地球全体の運命を決めるということへの、説得性のある説明がないのだ。

まあ作品として面白くはあるのだが、設定に加えて内容も表面的で掘りが浅く、かつ予定調和的な展開に終始する。

何かやりきれない感じで劇場を後にしたのだった。
MARIONNETTE(東京公演)

MARIONNETTE(東京公演)

劇団The Timeless Letter

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2023/09/28 (木) ~ 2023/10/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/10/01 (日) 12:00

ダブルキャストのteam FAKEを観劇。

関西の劇団で、4年ぶりの池袋演劇祭参加だという。関西の劇団で池袋演劇祭といえば、2014年に池袋演劇祭初参加にして大賞を獲得した京都の劇団ショウダウンを思い出さずにはいられない。それもシアター風姿花伝という不利な立地の劇場での2時間に及ぶ一人芝居でだった。

The Timeless Letterという劇団は初見だが、シアターグリーンのBIG TREE THEATERでの公演というのにまず驚かされた。かなりの集客力がなければ赤字必至となるであろうからだ。この回は観客に指定されていたのはセンターブロックのみで、上手側と下手側の両サイドは使われていなかった。となると、6割程度の入りか。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

劇場に入ってまずそのセットの見事さにしばし見とれた。当日パンフの図解によれば正面の十字架と円形のステンドグラスはロザリー教会、上手はスコットランドヤード殺人捜査課の部屋、下手はローガン製薬の社長室だという。20世紀初頭という時代がかった雰囲気も良く出ている。
これらのセットについては3人の女優による前説でもギャグを交えながら説明が行なわれる。
ただ気になったのはローガン製薬社長室のデスクの上に蛍光灯スタンドのような形の卓上照明器具が置かれていたこと。20世紀初頭だとまだ白熱球の時代であり、デザイン的にああいう形のものはないはず。
時代的におかしいといえば、葉巻を吸う場面も同様。ジッポー型のライターで着火しているが、このタイプのポケットライターは米国のロンソンが1927年に、同じく米国のジッポーが1933年に発売したものがその始まりであり、20世紀初頭にはまだ生まれていないのだ。

序盤で黒いドレスの5人の女によるダンスがあり、それが終わると舞台中央に赤いドレスの女が倒れており、その傍に2本の薔薇が置かれている、という場面が秀逸だ。そして第二、第三の殺人が行なわれ、薔薇の本数も7本、13本と増えていく。物語はテンポよく進み、舞台への集中を途切れさせない。照明と音響がさらにその効果を強めている。

伏線も見事に回収され、かつ「悪魔のくちづけ」というサブタイトルもきちんと活かされている。

2時間ちょうどで終演となり、カーテンコール。事前に上演時間は2時間10分と説明されていたのだが…と思っていると、カーテンコールの最後に中央奥からハケようとした新人巡査のハンナが(千穐楽のカーテンコールということで直前まで涙を流していたのだが)十字架のところで立ち止まり、いきなり笑い出す。そして明かされる驚愕の秘密…これが更なる伏線の回収となっており、それが終わったのは開演から2時間10分後、思わずは~っという感嘆の溜息が出た。
役者陣の演技も含め(殊にハンナ役の愛恵―“まなえ”と読むらしい―が印象的)、素晴らしい舞台だった。

が、いまひとつ残念だったのはロープにダニエルの指紋が付いていたという個所。スコットランドヤードでも1901年から指紋が犯罪捜査に用いられるようになってはいたが、21世紀の現在でも布地から指紋を採取することはほとんど不可能なのだ。ましてやロープからなど…。
同棲時間

同棲時間

亜細亜の骨

新宿シアターモリエール(東京都)

2018/08/02 (木) ~ 2018/08/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/03 (金) 19:00

日本では上演される機会がほとんどない台湾の戯曲である。台湾人3人で演じられ、時折日本語で会話がなされるが、概ねは台湾語で日本語の字幕が出る。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

台湾のボロアパートの一室。ここで一人暮らしの末に死んだ父親の遺品を片づける弟。そこに日本人の母を持ち、日本でサラリーマンをしている兄がスーツ姿でやってくる。実はこの2人、以前兄が出張で台湾に来た時に興味本位でマッサージパーラーに行き、そこで彼を見染めた弟に誘われ、兄弟と知らずに同性愛にはまりこんでしまっていたのだ。
そこにこのアパートの家主で、これも同性愛者のサルサが現れ、三人三様の生き方が交錯していく…。

同性愛の濃密な描写といい、行儀のいい日本人の何気ない異国人差別の問題を根幹に置いた設定といい、かなりショッキングな内容ながら、惹きつけられ、目が離せない。
台湾演劇の力をみせつけられた舞台だった。
燦燦SUN讃讃讃讃

燦燦SUN讃讃讃讃

かまどキッチン

こまばアゴラ劇場(東京都)

2023/08/03 (木) ~ 2023/08/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2023/08/04 (金) 19:00

初見の団体だが、正直言ってがっかりした。
衣替えから始まるクローゼットの中で衣類たちが巻き起こすてんやわんやのドタバタ活劇……とのことだったのだが、全くハジケない。頭で考えただけの会話劇といった感じで、迫ってくるものも注目させるようなシーンもまるでなく、途中で飽きてしまった。
なお念のために言うが、これはあくまで高齢者の一人としての繰り言である。今の若い人はこういう舞台が面白いと感じるのかもしれないし、それを否定するものではない。

(以下、ネタバレBOXにて)

ネタバレBOX

開演前に演技スペースと客席の仕切りとして並べてある白い三角コーンを開演時に下手奥に4個、3個、2個、1個と順に重ねて仕舞うことや、全員がA4サイズの紙を何枚も重ねたものを首から下げていて、それを順に引きちぎることでそれぞれの服の種類や状況説明にするということなど面白い表現も散見されはしたのだが。しかし終演後に床に散らばった紙を見ると膨大な数である。あれを毎ステージ、重ねる順序を間違えずに作るのって大変だろうなあ。

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