時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 華ノ壱『葵姫〜あふひ〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/02/09 (金) 18:30

    大名席(2列目)のセンターブロック下手側通路脇で鑑賞。
    3日に観た同団体の「暁月〜あかつき〜」と対をなす作品。「暁月〜あかつき〜」は幕末の日本で人斬り以蔵と恐れられた岡田以蔵を中心とした、従来のAsH作品同様に男だけが躍動する物語(時代劇で女性を登場させない作劇はかなりの困難がつきまとうと思われるのだが)。
    そしてこの「葵姫〜あふひ〜」はAsHとしては初めての、女優だけで描かれる幕末の大奥の物語ゆえに期待が大きかった。
    因みにAsHには男女混合作が2つだけある。それ以外に源平合戦の屋島の戦いの場で小舟に日輪の扇を立てて源氏に射てみよと誘う玉虫役で灰衣堂自身が後ろ姿のみで出たことはあるが…。

    【以下ネタバレBOXにて】

    ネタバレBOX

    奥向の万事を差配する大奥随一の権力者で、表向の老中に匹敵する役職であった将軍付御年寄の瀧山を軸に、薩摩藩から将軍家に嫁いだ篤姫、皇女でありながら十四代将軍・家茂に降嫁した和宮、十五代将軍慶喜の妻・一条美賀子らが公武合体、大政奉還、江戸城無血開城といった歴史の中でどのように動いていたのかが、濃密な空気感の中で華やかさを伴なって描かれていく。

    AsHの看板役者・黒崎翔晴が頭中将役で客演した芸術集団れんこんきすたの源氏物語「雲隠れシンフォニエッタ」(19年3月)に出ていた女優が多く登場するのも、れんこんきすたが解散した今となっては懐かしくも楽しい。

    殊に瀧山役の生粋万鈴が圧巻だ。将軍家と大奥のしきたりを絶やすまいとの強い意志をもって動く前半と、江戸城無血開城の後にその目標と頼るべきものを喪失して一人の女となり、叔母と共に死を選ぼうとする終盤の哀れさの表現が素晴らしい。また篤姫と和宮に代わって大奥の皆に向かい江戸城から退出せねばならぬことを告げる場面での説得せんとする必死さも秀逸だ。
    その瀧山に仕える仲野役の泉川萌生も舞台は久しぶりながら、存在感を発揮する。殊に終盤で瀧山たちに向かって「ドーンと任せなさい!」と腕を突き上げる場面では、前述の「雲隠れシンフォニエッタ」でいきなり鰹を取り出す場面が思い出され、一人密かにニンマリとしたのだった。

    吉水雪乃は描かれる時代と座組の年齢構成からみておそらく和宮役だろうと察してはいたものの、まさかその母親・観行院を実の母親である吉水恭子が演じるとは思いもしなかったのだが、この吉水母娘の共演は所属する風雷紡でも最近はみられなくなり、なんと18年8月の「ロンギヌスの槍」以来のことだ。和宮役の吉水雪乃は前半の婚約者を想っての夢見がちな少女と、帝と民のために降嫁する道を選んでからの強さをうまく演じ分けていたし、吉水恭子も実の母親だけに和宮への思いがより強く迫ってきたのだった。

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    2024/02/15 12:29

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