毛皮のマリー【2023年上演/B機関】 公演情報 B機関「毛皮のマリー【2023年上演/B機関】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/04/16 (日) 18:30

    舞踏メソッドを演劇に応用することを目的に2016年11月に「毛皮のマリー」で旗揚げしたB機関が、映像をも加える次なるステップのために、この公演をもって解散するという第一期ファイナル公演である。
    因みに私が主宰の点滅を舞台で初めて観たのはB機関の旗揚げと同じ年のリオフェス(岸田理生アバンギャルドフェスティバル)での「詩稿・血を、噛(は)む。 ―吸血鬼、男色大鑑より―」であった。そこでの圧倒的な存在感は今もありありと思い出すことができる。

    この「毛皮のマリー」は劇団天井棧敷により1967年にアートシアター新宿文化で初演され、その時にはスタッフにも著名な人物を配していたものの、さまざまな理由でトラブルに見舞われたようだ。その後何度も上演され、マリーは「黒蜥蜴」と並んで美輪明宏の当たり役となっている。94年のPARCO劇場での上演時には欣也役としていしだ壱成が舞台デビューしており、下男役は麿赤児だったが、その関係でか点滅もこの時に演劇の舞台にデビューしている。

    座・高円寺1の広い舞台いっぱいに広がる岩窟の廃墟のようなセットがまず目を惹く。下手の階段をのぼった高見には十字架が聳え立つ。舞台中央奥の小高い場所に木製のボートらしきものが置かれている。

    開場時から舞台上で4人の女性が極めてゆるやかに動いており、これもきちんと振付された舞踏なのだろうが、残念ながら観客はあまりこれを見ていない。

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番の美人はだれかしら?」―ボート型の浴槽からそう問いかけて、鏡の答えに「よかった、白雪姫はまだ生まれていないのね」と安堵しながら下男にすね毛を剃らせる40歳の男娼がマリーだ。B機関旗揚げ時には観ていなかったのだが、この冒頭で驚いたのはマリー役の葛たか喜代がその裸体を曝したこと。カミングアウトして女優に換わったのだということは知っていたものの、てっきり豊胸手術しているのだとばかり思い込んでいたのだ。マリーに育てられながらも部屋の外に出してもらえない美少年の欣也が「マリーさん」と呼びかけると「マリーさんじゃないよ、お母さんだって言ったろ!」と厳しく叱責する姿とともに、男娼マリーの鬱屈したした心理が見事に表現されている。
    マリーが客の水夫に語ったところによれば、マリーは大衆食堂の子として生まれ、女ばかりの店員のあいだで店を手伝っているうちに、女装に目覚めたのだという。店員のひとり金城かつ子と、女の子としての魅力をあらそう仲になるが、嫉妬にかられたかつ子がマリーに迫り嘲笑するとマリーは男を雇いかつ子を襲わせる。かつ子は男の子を生むが難産で死んでしまう。マリーはこの子を引き取って女の子として育てているのだ。
    そんな欣也の前に、美少女・紋白が現われ、部屋の外にある人生の新しい世界を教えようとする……。

    舞踏メソッドを演劇に応用することを目的としているだけに、開演前のみならず、何か所もの場面で舞踏が登場する。が、もともと舞踏は情念の踊りであり、倒錯した美を追求する前衛的な踊りなだけに、こうした作品世界とのマッチングに違和感はないのだが、いかんせんその分上演時間が長くなる。おそらくオリジナル版より1時間近く長いのではないか。わかりづらいストーリーが更にわかりづらくなり、はっきり言って疲れる。
    舞踏と演劇を融合させる中で、上演時間をどう短くしていくかが課題ともなろう。

    0

    2023/05/03 17:45

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大