実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/03/15 (水) 18:00
当初は2023年の公演として企画されていたものの、コロナ禍により中止され、3年ぶりの復活。宮沢りえの主演舞台なだけに期待も大きかったのだが、20分の休憩を含め3時間45分という長尺の舞台はどこか散漫な感じさえ与え、やや失望といったところ。
従来はアンナを中心とした三角関係をメインに描かれるものだったのを、今回英国から招かれた演出のフィリップ・ブリーンは新解釈として、不倫に走った末に虚飾に満ちた都会の貴族社会で死に追いやられるアンナと、農村で実直に生きて純愛の結果として幸せをつかむリョーヴィンとを対比的に描いたとのことだが、文学史上ではそれが定番の解釈でもあり、ただ長編小説の世界とは異なってそれを舞台上で表現するには無理があったのだろうか。むしろ二人のアンナ(ヒロインとその娘)と二人のアレクセイ(カレーニンとヴロンスキー)に焦点をあてた方が良くはなかったか。
最大の弱点は、なぜアンナが自殺にまで追い込まれていくのか、その心理の過程の描き方が丁寧さに欠けることだ。
終盤でのアンナが列車に飛び込んで自殺する場面も、そうと知っていない人には何を描いているのかよくわからなかったろう。
第一幕の最後での出産による全身血まみれのアンナの方の印象が強烈すぎて、第二幕がどことなく気が抜けた感が自殺の場面にまで続いてしまう。アンナの悲劇性が心に響いてこないのだ。