白夜 公演情報 劇団演奏舞台「白夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2023/04/14 (金) 19:00

    まずチラシの美しさに惹かれた。
    九段下GEKIBAというこの劇場は初めてなのだが、エレベーターがなく、5階までの階段もやや急で、腰痛持ちの身としてはたどり着くのに一苦労(笑)。ザムザ阿佐谷のように靴を脱いで入場。

    舞台下手にYAMAHAのシンセサイザーとギターが置かれていて、ここが生演奏の奏者席となるらしい。
    舞台上手の壁に沿ってベッドが置かれ、その上に小さな窓。中央の奥にドア、手前に小さな木製テーブルと椅子。奥のドアの横に強いタッチの裸婦像の額が掛けてある。このセット、いかにも寂れた宿屋の一室という感じが良くでている。

    怪しげな宿屋に怪しげな登場人物たちが蠢くこの戯曲は寺山修司がO.ヘンリーの「すべて備えつけられた部屋」(「家具つきの貸間」)から着想を得た戯曲だということで、構成や展開、台詞の一部さえほぼ同じ中で、寺山らしさが随所に顔を出す。因みに宿の女主人が部屋について説明する際の、「ガスコンロはベッドの脇にある」という何気ない一言がラストの重大な伏線となっているのも原典通りだ。

    まず言っておく。私にとってこの舞台を観た最大の収穫は女中役の池田純美だった。女中役のハジけた演技も面白いが、むしろ劇の出番外で下手の奏者席でギターを抱えている風情も実に良かった。

    開場時から客席には波の音が流れているが、5分ちょっと遅れて開演。2つのギターによるオープニングの曲が素晴らしく印象的だ。

    が、そこまでだった。
    「芝居じみた」という言葉は、芝居における演出のように言動が大げさに感じられたり不自然に感じられたりする様を指すが、今時これほど古典的な、まさに「芝居じみた」という言葉そのままの表現方法をとる劇団があるとは思ってもいなかった(まあ、それを体験できたことはある意味貴重ではあったが)。冒頭からこの小さな空間でどうしてこんなに声を張り上げる必要があるのかと思ったのだが、それが全ての役者に共通して、大声でもってわざとらしい台詞回しと大仰な動作に終始するのだ。二人で会話する場面で、互いを見ずに二人とも客席側を向いて言葉を発することも散見される。リアリティのないこと甚だしい。猛男の独白に哀愁といった風情を感じ取ることなど出来はしない。

    ただ、役者が下手という訳ではない。4ケ月もの間戯曲に取り組み、ひとつひとつの台詞や動作を突き詰めた結果の舞台だというから、これはもう劇団の作劇姿勢自体がそうなのだろうが、見方を変えれば役者の身体の内から湧き上がってくる言葉や動作ではなく、頭で考えた台詞廻しや動作であって、ひとつ間違うと段取り芝居にもなりかねない。この表現方法だと、いくら役者に力があっても現在の他の劇団では使えないだろうなあ。

    0

    2023/04/18 14:56

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大