コウセイ 公演情報 ラビット番長「コウセイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/02/26 (日) 13:00

    千穐楽を観劇。全席自由席で受付開始は開演の45分前だというので、1時間前に劇場に行ったのだったが、既に6人ほどが並んでいた。さすが「今池袋で最も売れかけている劇団」(劇団説明文の一節)だけのことはある(笑)。

    ラビット番長といえば将棋・介護・草野球が三本柱だが、昨年のグリーンフェスタではこれらとは異なる路線とは異なった作品を上演する予定だったのに、コロナで残念ながら公演中止に。昨秋の池袋演劇祭参加公演では将棋に戻ってしまったので、残念に思っていた。個人的には15年春の「白魔来る」のようなスプラッター気味のドロドロとした作品を観てみたいのだ。
    ということもあって、今回の「コウセイ」は将棋・介護・草野球とは違ったものになりそうで期待していたのだった。

    (以下、ネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    ストーリーは1949年(昭和24年)に発覚した岡田更生館事件をほぼなぞっている。
    これは岡山県吉備郡岡田村(現:倉敷市真備町岡田)に存在した浮浪者収容施設・県立岡田更生館で起きた組織的な監禁・暴行傷害・殺人事件であり、施設収容者の一人(詩人を自称していた北川冬一郎)が脱走して毎日新聞大阪本社にリークしたことを契機に、同社社会部の記者であった大森実(懐かしい名前だ)と小西健吉が浮浪者に変装して施設に潜入取材した結果、社会的に知られることとなったものだ。
    その後の調査で犠牲者は開設から2年余りで76名にものぼったが、館長や県職員らへの判決の罪状は業務上横領ないし私文書偽造であり、殺人・暴行は含まれていない(ここいらにも何かキナ臭い背景がありそうだが)。

    劇中で登場人物が語る施設の内情はほぼ事実のままである。だが、ここに将棋を絡めてくるのがいかにもラビット番長らしい。
    将棋の部分でモデルとなっているのは将棋史上初の三冠王となった升田幸三名人だろう。升田(劇中では増山)がGHQから名指しで呼び出され、数名の将官と将棋について議論したエピソードもその内容が伝えられている通りに(チェスに比べて将棋ははるかに民主主義的なゲームであり、レディファーストの精神にも適っている)再現されている。もっとも、前述のように北川がリークしたのは毎日新聞、升田とGHQを取り持ったのは朝日新聞なのだが、劇中では同じ新聞社になっている。
    増山がいつも月を見ているのは、升田が戦地で食糧不足に悩みながらもライバルの木村義雄のことを思い出し「月が通信してくれるなら木村と将棋が指したい」と涙に暮れたというエピソードを反映したものだろう。

    この更生館と将棋の2つの道が終盤で交差する点は実に見事なのだが、そこまでのほとんどがネットでも調べられる事実を単に並べただけという感じであり、その点がいまひとつ掘り下げが物足りない。チョコレートケーキやJACROWといった社会派といわれる劇団との違いをはっきりと感じさせる。
    ただ収容者の最期の言葉「にいさん」が実は「2三と」だったというのはラビット番長の面目躍如。

    増山の妻を演じた江崎真澄がここ数作、本当に良くなってきた。
    またいつものラビット番長では登場しない悪役での野崎保も印象的だった。

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    2023/03/06 13:00

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  • MINo様
    「コウセイ」ご観劇いただきありがとうございます。
    私の名前も出していただにとても嬉しいです!

    2023/03/08 12:49

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