ミスターの観てきた!クチコミ一覧

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おとぎのさつじんじけん

おとぎのさつじんじけん

演劇ユニットastime

北池袋 新生館シアター(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★

脚本と演出のバランスが良かった
24日、雪はやんだが寒い夜、北池袋の新生館シアターで上演された演劇集団astimeの『おとぎのくにのさつじんじけん』公演を観に行ってきた。これは、知人の高坂汐里が出演していた関係からである。


さて、舞台はとある探偵事務所。そこに、15年前の一家殺人事件の犯人を今日中に見つけてほしいという依頼がある。依頼してきたのは殺人事件で生き残った女性を治療しているという女医。生き残った女性は、若年性アルツハイマーだという。探偵事務所は早速依頼を引き受けて捜査を始めるが・・・・・
殺された一家は、生き残った女性の母親と面倒をみていた男性。他に死にはしなかったが怪我をした男性一人。舞台ではこの一家を童話「あかずきん」に見立てている。母親が愛する男は一人放浪に旅立ち、やがて帰ってきて娘であるあかずきんの前に姿を現す。その男に恋するあかずきん。一家の面倒をみていた男性は、母親が愛する男が帰ってきたことに愕然とする。愕然としたのは、あかずきんも同じ。自分が愛し始めた男が父親であり母の愛する人だったから。嫉妬を覚えたあかずきんは、母も、面倒をみてくれていた男も刺し殺す。彼女が愛した男=父親は、自ら腹に刃物を刺す。
さて、再び舞台は探偵事務所。この捜査を依頼してきた女医が実は一家殺人事件の犯人であることが明らかにされ、探偵事務所所長は、その父親から既に女性を探して保護してほしいという依頼を受けていたことを明かす。

人を愛し、愛を拒絶され、嫉妬を覚え、行動する。
愛には種類があって、今の自分の愛はどんな種類の愛だか分からなくなる。

単純なようで難しいテーマを扱った今回の脚本は、一口に言えば凝っている。これが古根村流なのだろう。脚本担当の彼女、かなり頭の回転が速いと思われる。自分の頭の中で既に理解し次のシーン(問題)に進むのが早すぎて、展開が客にわかりにくい部分があるのだ。例えば、依頼者の女医が実は犯人だと気づくきっかけを暗示するシーンが簡単すぎたり・・・
astimeの舞台を観るのは今回が2回目だが、脚本と演出のバランスが前回観たときよりも良くなっていた。ユニットとしての息が合ってきたのだろう。
熱演は、あかずきん役の高坂汐里、おかあさん役の古根村アサミ、マリ(女医)役の里仲景、探偵・田処役の新免愛美あたりか。

こうしてみていると、このユニットの第1回公演が来年再演されるというのが気になりだした。観に行こうと思う。

恋しくて

恋しくて

デッドストックユニオン

ウッディシアター中目黒(東京都)

2016/11/22 (火) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★

もてる男の心の内が悲しい・・・・・
24日午後、雪の中、ウッディーシアター中目黒で上演されているデッドストックユニオンの『恋しくて』を観に出かけた。この劇団を観に行くのは前回公演『民宿チャーチ14』に続いて二度目。観るようになったきっかけは塚田しずくが出演しているからだったが、なかなかしっかりとした舞台を観せてくれる劇団という印象を受け、お気に入りの劇団の一つとなった。


さて、今回の公演は一口に言えばラブコメディ。父親の築き上げたスーパーを副店長として守る鎌田小百合(棚橋幸代)は、映画の仕事がしたくて家を出て行った弟・昭夫(元木和哉)が戻ったら彼を店長として店を続けていく夢を持っている。そんなスーパーに、ある日ひょっこり昭夫が帰ってきた。喜ぶ小百合と実は昭夫の元カノでベテランパートである加藤由紀子(三崎千香)。しかし、昭夫が戻ってきた目的はスーパーを止めてマンションを建て、コンビニを経営する傍ら映画を撮る計画の実行のためだった。そのため、昭夫には映画業界での恋人・松本真奈(太田知咲)も付いてきて、なんとスーパーのバイトとして昭夫の元に居座る。スーパーを止めるには姉を店長代理・藤村博(星達也)と結婚させることが早道と画策する昭夫と真奈。逆に、昭夫とパートの江頭美雪(森崎ひろか)を結婚させたい姉。昭夫を巡る由紀子と真奈のせめぎ合い。そうした動きを何気に知ってしまった元万引き犯のガードマン・岩倉衛次(渡辺熱)。渡辺の機転で昭夫の計画は頓挫するが、昭夫の持っていた父親への思いも明らかになる。父と息子の熱き親子愛を再認識させられるラストシーン。自分を慕う女性達への思いと、自分が慕う父親。昭夫の胸の内が観る者の心を打つ。


熱演は、昭夫役の元木、由紀子役の三崎、真奈役の太田、藤村役の星、そして岩倉役の渡辺であろう。作・演出は、この岩倉役を演じる渡辺であるが、作りたいと思っているテーマが大きすぎるというか、テーマを語る場の絞り込みが苦手というか、笑いを誘うポイントを押さえるのは上手いのだが、全体的に間延び(特に前半)した結果、2時間を超える作品となってしまった。前半に比べて後半の間の良さや脚本の密度が適度に良くなったのはラストを盛り上げようとする作り手側の山場設定の結果だろうが、全体的にもう少し締まった舞台を期待したい。そうすれば、2時間以内の収まる濃い作品になるだろう。まぁ、逆にやや緩い印象の舞台がこの団体の持ち味と感じているファンもいるのだろう。岩倉の成長が劇団の成長へと直結しているように思われる。トータル的には良い舞台を観せていると言える。次回公演が楽しみである。

酔いどれシューベルト

酔いどれシューベルト

劇団東京イボンヌ

ムーブ町屋・ムーブホール(東京都)

2016/11/15 (火) ~ 2016/11/18 (金)公演終了

満足度★★★★

終盤の緊張感が舞台全体を引き締めた
演劇とクラシックの融合をめざし、その接着剤としてコメディ的な要素を加えて公演を続けている東京イボンヌの『酔いどれシューベルト』の再演を観に出かけた。今回はダブルキャスト制を採用しており、自分が観に行ったのはAキャストの千穐楽。主演は、いしだ壱成。

プログラムに出演者の名前のみ記されていて、配役の詳細が分からないのはちょっと残念。

粗筋は、酒好きのシューベルトを巡って行きつけの居酒屋で起こる人間ドラマ。シューベルトは、好きだった女性が成金男(後に貴族に昇進)に嫁ぐのに耐えきれず、悪魔に魂を売って、売れる曲を量産すると共に、好きだった女性を恨み娼婦と遊ぶ生活に溺れる。しかし、その悪魔というのは実在せず自分の心の闇に過ぎず、好きだった女性は成金男と結婚しても心の中ではシューベルトを愛していることを知る。そして、悪魔が作ったと思っていた大量の曲も、実はシューベルト自身の才能によって生み出されていたことに気づく。しかし、時既に遅く、梅毒に冒されたシューベルトは愛する女性に看取られて息を引き取る。

いしだの熱演と愛する女性のけなげで静かな秀逸な演技の合間に、ハプスブルグ家の親子や家来、悪魔、天使といった脇役達が適度な笑いを提供し、節目には楽器や声楽家による音楽が舞台を満たす、一種の総合舞台。ただし、終盤、特にラストシーン周辺では初期の東京イボンヌに観られた演劇による観客の心への訴えかけという動きが強く見られ、それが観客の心を掴んでいたと思う。

また、楽器演奏者にも台詞や演技を求めたり、声楽家にも彼らにとっては初体験であろう類いの演技をさせた点は見ものであった。


舞台後方に楽器奏者を配置し、舞台前方に大道具で居酒屋を作り上げ、奏者や声楽家を随時登退場させたシステムは、一連の東京イボンヌ公演では一番成功していたように思われた。

役者陣では、いしだは別格として、悪魔役の役者の演技が光っていた。

課題としては、スタートから中盤あたりにポツポツ感じさせるコメディタッチの演技の不十分さと間取りの悪さ。これが解消されると、全体的に舞台の密度も高まのではないだろうか。

震えた声はそこに落ちて

震えた声はそこに落ちて

劇団時間制作

劇場MOMO(東京都)

2016/11/02 (水) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

密度の濃い舞台に感心
ここ数回、知人の役者が客演していた劇団時間制作の舞台を観に行った。実は今回の公演には知人は出演していなかったので最初は行こうとは思わなかったのだが、その役者が観に行くことを勧めてくれたのと、この劇団のテーマの選定が人間の生活の根源的な問題に直結する物ばかりで奥深さを感じさせられていたこと、加えてコリッチから招待券をもらえたことが重なり、11日の午後の公演に出かけたという訳だ。


ストーリーは複雑で難しい。誘拐・監禁にあって声が出なくなった三姉妹の次女が主人公。長女夫婦の営む高松食堂を舞台に、事件を忘れることが一番と信じて生きていく被害者一家。正体がバレていたいことを良いことに、高松食堂のバイトとして一家の生活の中に入り込み笑いを起こすことで被害者への謝罪とまっとうな生活を送っていると思い込みたい共犯者。もと誘拐事件の加害者一家の一人として苦しみ、今回の事件の関係者の本心を探ろうとする雑誌記者、そして、今回の事件の加害者男性の動機が被害者の親から受けた被害者意識から生み出された物だったという複雑さ。人という生き物は、時として加害者にもなり同時に被害者にもなり得る危うい世界に生きているという現実。そして、贖罪とは何をすることが正解なのか、まっとうな生き方とは何なのかという問いを観客に突きつける。やり場のない加害者と被害者の心の悲鳴に、多くの観客は涙していた。感動というか、やりきれない思いからの涙だろう。


役者では、共犯者だった佐藤凪役の倉富尚人、三姉妹の三女・神崎美鈴役の庄野有紀、加害者の周防孝道役の平岡謙一の演技が秀逸。熱演としては、三姉妹の長女の夫で高松食道の店主・高松浩司役の三関翔一郞、周防の幼なじみ・古野奈々与役の肥沼歩美が良かった。


しかし、本当のこの公演の立役者は、この密度の濃い脚本を作り上げた谷碧仁であろう。

無伴奏

無伴奏

親泊企画

Gフォース アトリエ(東京都)

2016/10/25 (火) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★

結末の脚本変更に若干不満
30日午後、Gフォースアトリエで上演された親泊企画『無伴奏』の千穐楽の舞台を観てきた。この作品の原作・脚本は、東京イボンヌ主宰である福島真也であり、初めてイボンヌ以外の外部団体がこの作品を上演するというので出かけた次第である。


ざっと当日の粗筋を書くと次のようになる。
世界的なチェリスト・寺島貴子は、ある日夫にも告げず12年前にアルバイトをしていた山の中にあるペンションを訪れる。実は彼女、このペンションのオーナーである誠とバイト中の3ヶ月間、期間限定の恋人関係であった。12年後の彼女は昔と変わらぬわがまま三昧でペンションのバイトや常連客に迷惑を掛けるのだが、なぜ12年も経って突然戻ってきたのか。それは、彼女が肩の病に陥りチェロを弾けくなったとき、心に浮かんだかけがえのない存在が誠だったから。いわゆるスポーツ肩という軽症なのか脳から来る重病なのか悩む彼女。もし後者なら一緒に死んでくれるかという問いかけに、誠は死ぬと答え貴子を号泣させる。誠の勧めで病院に行った貴子の病状は回復し、夫と別れた貴子がテレビ放送で一番大切な人へ贈ると演奏するバッハを、誠は一人ペンションで聞き入るのであった。

という、どちらかというとハッピーエンドで終わるストーリーなのだが、実は原作は違う。原作では、貴子の病気は後者の不治の病であり、ペンションの常連客であったカメラマンの「ここを訪ねてきたのには大変な勇気が必要だったはず。今度は誠君が勇気をみせて彼女の見舞いに行くべき」と東京行きを促し、本人がその気になったところに貴子病死の一報が入り、誠は心が砕けていくように呆然と立ちすくむ、という悲劇なのである。

つまり、今回の上演では脚本の結末をハッピーなものに書き換えたのだ。結果として、貴子が12年ぶりにペンションを訪れた意味や病気を告白する心情が原作とは趣を異なる物として映し出されている。
貴子や誠の思いが原作に比べ薄い物になってしまったように感じてならない。

役柄では、貴子・誠は重要な核であるが、実はペンションの常連というか長期滞在者のカメラマン・及川の存在も大きい。時にピエロ役になるが、時に誠に核心を突く意見をさりげなく吐くのである。たが、今回の舞台では原作に比べると及川のピエロ役の色合いが濃く出ていた。
誠の朴訥というか無表情というか、内心をあまり外に出さない性格を演じ切れてこそ、貴子の激情との対比が生きるのだが、今回は誠役の馳川てるやの演技は若干表情を表に出しすぎるように感じた。逆に貴子役の山田かなには及第点を与えても良いだろう。
そして、カメラマンの及川役の一ノ瀬亮太の熱演も、今回の脚本上では好感が持てた。


本作は感情の表し方が非常に難しい役が多い。今後外部団体で上演する際は、原作に近い形での上演を望みたい。
ちなみに、平日昼間の公演であったので、役者の友人達が多数客席を埋めていた。

慕情の部屋

慕情の部屋

スポンジ

新宿眼科画廊(東京都)

2016/10/14 (金) ~ 2016/10/18 (火)公演終了

満足度★★★

見終わったあと、残る物がない
18日の夜、新宿歌舞伎町の新宿眼科画廊スペース地下で上演されたスポンジの『慕情の部屋』千穐楽を観てきた。これは、タイトルが気になったこと、上演場所にまだ行ったことがなかったこと、それにブス土で気になった役者の八木麻衣子が出演しているという3つの理由からである。


話は、留置所の新人・阿久津の入所に至る回想というか、他の入所者への告白という感じ。コンビニでバイトをしていた阿久津が、人妻で夫のDVに困っていた若林翔子を好きになり、最後には翔子の頼みで夫を殺してしまう。しかし、翔子の本性は離婚歴3度、今回も夫の死の直前に多額の生命保険に入っており、警察の聴取では阿久津を単なるバイト先の知り合いに過ぎないと証言する悪女であった。結果、阿久津は捕まり留置所に入るわけだが、実は翔子の夫を本当に殺したのは阿久津ではなく翔子本人だったらしい。さみしいというか、無情な物語とでも言おうか。


劇場の縦長の作りを上手く利用し、回転・展開させる大道具で留置所・コンビニの休憩所・レンタルビデオ店・阿久津の自宅に手際よく場面転換させる工夫は、小劇場系の舞台としては楽しめるものであった。

問題は役者。役者という物は、演技だけではいけない。酷な話だが、容姿も重要である。今回の場合、役にあった演技力と容姿を備えた役者選びという点で、阿久津役の星耕介に関しては失敗しているのではないかと思った。
逆に、彼を夫殺しに導いた若林翔子役の川西佑佳は実に適役であったと言えよう。
結局、舞台の中心はこの2人な訳で、どうもどこかバランスが悪い。演技はともかく、2人が好き合うという状況が納得しにくいのである。
その微妙な雰囲気が劇全体を包んでいるようで、およそ80分の舞台に見入る瞬間、耳に残る台詞は無かった。

それと、劇中の音楽・効果音はともかく、客入れの際のライブ音楽は一考を要すだろう。いわゆるノイズ音楽のような内容だったので耳を塞いでいた客もちらほら見受けられたから。

ティファニーで朝食と昼食を

ティファニーで朝食と昼食を

東京AZARASHI団

サンモールスタジオ(東京都)

2016/10/04 (火) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

上手い構成の泣かせるコメディ
6日午後、新宿サンモールスタジオで上演された、東京アザラシ団第9回公演『ティファニーで朝食と昼食を』を観てきた。これは、前回公演を招待で観て大変面白くレベルも高い劇団だった印象があったので再度観てみたくなって出かけたのである。

出演者はやや多めで135分程度の長めの舞台であったが、一口で言えば「泣かせるコメディ」として秀逸出会ったと言えるだろう。
舞台はとある県庁。その女性職員の前田桃子(那海)が主役。県知事の公私混同の金銭感覚や愛人問題、図書館建設を巡る業者と癒着に苛立ち失脚させることを企む県政の女性ドンと知事の確執と、時空をj超えて県庁職員を巻き込み展開される桃太郎&一寸法師一族と鬼の戦い。この2つが絡み合ったコメディタッチの作品。よくこの2つの事柄を絡めることを考え出したと感心する一方で、観ていてどういうふうに2つの事柄を納めるのか関心があったのだが、鬼退治騒動はコメディ部分を盛り上げるために使った道具であり、本筋は知事が親友の死とその娘(実はそれがこの舞台の主役である県庁職員)を思って図書館建設に力を注ぐしんみりさせる話であった。上手い構成である。
最後のしんみりとコメディ部分を盛り上げた中心にいたのは、主役の那海と県庁の男性職員を演じた樋口太樹と知事秘書役の辺見和行であり、良い意味で味わいがあったのが、神様役の狩野慎太郎と、主人公の父親役と一寸太郎役を兼ねた魚建であった。
他にも、味のある役者が多数いて、観ていて飽きないテンションの高さを135分保ち続けたこの劇団の力と演出・脚本力は素晴らしい。
再度書くが、泣けるコメディとしては本年観た舞台の中で最高であった。

the Answer

the Answer

FUTURE EMOTION

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2016/09/15 (木) ~ 2016/09/19 (月)公演終了

満足度★★★★

予想以上の面白さ

17日夜、新宿シアター・ミラクルで上演された明日は純情2nd WORK公演『the Answer』を観に行った。これは、いくつかの舞台をハシゴした結果、舞台を観、ネットで繋がった役者・嶋谷佳恵の出演作だからである。ちなみに、終演後、嶋谷と挨拶を交わしリアルなつながりを持つことができた。

この舞台は、『the Code』という作品の続編に当たる。
科学者である父が娘に残した思いを保持する量子コンピューターのある場所にたどり着いた娘の西森明星。その量子コンピューターを狙うハッカー。そしてコンピューターの存在隠匿と管理を狙う警視庁公安部と内閣府調査室の暗躍。コンピューターを守りたい西森博士の同僚をはじめとする科学者たち。
結局は明星しかなしえないコンピューターの初期化を行うことで、量子コンピューターの存在を巡る様々な陰謀・暗躍は無と化すのだった。

が、である。父親がこのコンピューターに残した娘への思い(メッセージ)も同時に無となった。その重要性に、脚本はほとんど触れていないのがどうも不本意でならない。
舞台での、各役者の演技な熱が入っていて好印象。シアター・ミラクルという場所柄、大道具には期待していなかったが、質素ながら最小限の大道具の活用という点では及第点を与えられそう。
科学に興味の無い人にとっては、舞台上で交わされる専門用語に悩んだかもしれない。

役者関係では、西森明星役の宮ちあきの顔が大きいのと(苦笑)、嶋谷佳恵扮する麻生早苗という役名が、知る人ぞしる有名AV女優と同姓同名だったのが印象的だった。同時に、演技上での表情が良かった。また、明星の母親役の滝澤千恵と竹内役の三好康司が渋い演技を見せていた。
登場人物的には、この程度の人数が観る側としては観やすいのではないだろうか。
それにしても、予想外の良い舞台だと思う。

歴史これくしょん〜歴これ〜

歴史これくしょん〜歴これ〜

乱痴気STARTER

Geki地下Liberty(東京都)

2016/09/13 (火) ~ 2016/09/18 (日)公演終了

満足度★★★

登場人物が多すぎるきらいが・・・
16日午後、下北沢のGeki地下libertyで上演された乱痴気STARTERの本公演『歴史これくしょん~歴これ』を持て来た。この団体の公演には、ネットやリアルで繋がっている役者が数人出演している関係でほぼ毎回出かけている。


今回ストーリー。
地方の大型スーパーに左遷された店長が、売り上げを伸ばすためにエジプト旅行で手に入れた歴地上の有名人物を再生させられる弓矢を使って様々な人物を蘇らせて売り上げアップ。と思ったら、蘇らせた一人がその弓矢を奪ってヒトラーを蘇らせたくて手当たり次第に有名人を蘇らせ、店長や蘇った歴史上の人物が乗り移っていない店員、それにこの出来事を取材しに来たTV報道関係者を巻き込んで大騒動に。ついにはヒトラーも蘇りこの世も終わりかと思われたそのとき、TV関係者が問題の矢を誤って折ってしまい、蘇っていた歴史上の人物たちも消え去り騒動も終結へ。

20名近い出演者、10名を超える蘇った過去の偉人たち。個々の偉人たちの個性を上手くとらえた台詞・演出と、スーパーの売り上げをアップさせるためという過去の人物再生の理由付けの発想は面白かったが、若干登場人物の多過ぎがテーマを希薄にさせ、なぜかナイチンゲール(sayaka)がやたら印象深い結果となったのには苦笑するしか無かった。
それと、この団体の舞台での簡素な大道具には慣れてしまったが、今回のような中心となる舞台がスーパーの店内であるような場合、それなりの装飾を施した大道具を使っても良いのではあるまいか。予算的な問題なら、入場料を数百円上げても満足できる舞台内容なら集客に問題はあるまい。
それと、この会場は立体的に使える構造を保っているので、そうした構造の有効活用も出来る無いようだったのではないかと思う。
熱演は、大中小とsayakaであろう。店長役(役者名失念)、それに山元彩も好演だった。

うみ

うみ

西瓜糖

テアトルBONBON(東京都)

2016/09/07 (水) ~ 2016/09/14 (水)公演終了

満足度★★★

意欲か空回りしたかも
文学座系の演劇ユニット・西瓜糖の公演を観るのは、昨年に引き続き今回が2回め。前回の公演で感銘を受けたので今回も出掛けたのであったが、結果としてはちょっと物足りない印象が残った。

舞台は昭和20年。戦争で海の近くに疎開してきた作家一家。その作家をめぐり、妻、子供を生ませた愛人(飲み屋のママ)、そしてその作家担当の女性編集者を巻き込んだ四角関係に、愛人の子供と編集者の子供の連帯感、作家の両親と作家の妻との関係が複雑に絡み合った物語。
笑いのない妻の、自分をないがしろにする義母への奥深い復讐?(潮風が身体に悪いことを知りながら海の近くに疎開させた行為)、小説は女性との自由な交流から生まれるという理屈から複数の女性と関係を持つ作家、教師として教え子を戦地に送り出した作家の父親の教師としての戦時下の義務感などが約2時間にわたって繰り広げられるわけだが、全体的に散漫で間延びした感じを受けたのは脚本に由来するのだろう。演出でもう少し緊張感のあるものに凝縮出来なかったものだろうかとの思いがある。

役的には、作家の両親(三田村周三、矢野陽子)、愛人の飲み屋のママ(山像かおり)、編集者(奥山美代子)がキャリアを生かした熱演で良かった。愛人の娘(難波なう)と編集者の娘(小園茉奈)は、もう少し演技に抑揚があっても良いと思う。疎開先の家の大家役・柳屋さん生はちょっと軽すぎ。中心となる作家役の佃典彦は、役柄の核となるものがどこか希薄な所が唯一不満。良くも悪くも、西瓜糖の中心メンバーたちが目立った公演であった。
ちなみに、この西瓜糖のセットは小劇場系の舞台としてはなかなか立派である。こだわりがあるのだろう。

来年の公演は、なんと外波山率いる椿組と新宿花園神社のテントで合同公演らしい。これまた見逃せない。


白紙の目次

白紙の目次

劇団時間制作

サンモールスタジオ(東京都)

2016/08/10 (水) ~ 2016/08/17 (水)公演終了

満足度★★★★

テーマも舞台も重みのある公演
毎回、難しいテーマに意欲的に挑戦し、分かりやすい舞台設定でその難解なテーマを観客の心にしみこませて涙を誘う劇団時間制作。今回のテーマは「依存」であり、それは生きる糧でもあると言うこと。

舞台となったのは、海辺にある旅館。その経営者夫婦が中心人物。夫婦ともお互い幼いときから家庭に恵まれていない環境で育ったことから、楽しい家庭を築くことがお互いの夢であり、それを実現させるために相手に依存する度合いも高まる。その夫婦に取って理想の家庭は、知的障害者の夫の妹を施設から引き取って家族生活を営むこと。しかし、実際に妹を引き取ってから、家族内で不協和音が続出、家庭に亀裂が入っていく。その結果、妻は自殺することに。その自殺の本当の意味を巡り、夫の旧友や親友、仕事で旅館に滞在している小説家と担当編集者など、周りの人間たちを巻き込んで、互いの依存を巡り心が軋んでいく課程があからさまになっていく。タイトルは、その軋んでいく依存者の群れの一人である小説家が、この夫婦の家庭に起こった依存生活の結果をバッドエンドの小説に書こうという決意を表す台詞の一節。

登場人物個々に、依存とは何であり人に取って必要なのか、どれほど重要な物なのかを観客に喚起する台詞をなにがしか吐かせる脚本はなかなか凝っている印象。特に、夫の振るまいと心の中の葛藤、そして知的障害者の妹との関係には心を揺るがされて涙させられる。また、生きる糧としての依存の対象を失ってしまった妻の喪失感というものも、観る者の心にポッカリ穴を開けたのではないだろうか。
これだけの難解テーマを扱った結末をどう持って行くのか興味があったが、夫と妹の本当の依存関係があからさまになるというか依存関係が復活するというか、そういうシーンに小説家の彼らを見詰め依存の本質を書き表そうとする決意が絡み合ったラスト処理は「こうするしか無いだろう」的なもので、最近観たこの劇団の公演のラストシーンの中では一番納得できた。
ただ、やはりテーマが難解であることが役者たちの力を最大限に引き出しても描き切れない部分があったように思う。
それと、主人公である夫役の田名瀬偉年の台詞に聴きにくいところが多々あった反面(同様のことは、小説家担当の編集者・福島栞訳の森彩香にも感じられた部分があった)、知的障害者で夫の妹役の庄野有紀と小説家役の古川奈苗の熱演が印象的であった。

かぜのゆくえ

かぜのゆくえ

ナイスコンプレックス

ザ・ポケット(東京都)

2016/08/10 (水) ~ 2016/08/14 (日)公演終了

満足度★★★★

混沌の中の悲しみを幸せに変えたい
招待券が当たったので、ナイスコンプレックスという初めて観る劇団の公演に行ってきた。『かぜのゆくえ』と題された舞台である。場所は、東京・中野のザ・ポケット。

さて、舞台の説明をどうしようか悩む。
なかなか混沌としているのである。
2050年の東北の海沿いの町が舞台。そう、東日本大震災の影をを未だ背負って生きている人たちの住む町は色で言えばグレー一色。その町を海から山に吹き抜ける風は、人々の生活、そして心の動きを見通していた。

結婚前夜、最後の挨拶に娘が「風はどこから吹いてくるの?」と母親に行くシーンで始まる舞台。これが、全体でいうなら起承転結の起の部分。
その風の吹くく先にあるクジラ山の電話ボックスの電話がカイトという青年になって、人々が胸にしまって生きてきた心の思いを解き明かしていく承。
その中で、飲酒運転の罪をかぶって助けた女性・ミテルとの心の交流と愛情の生まれが転。
そして、再び娘と母親の会話となる結。

舞台の中心は、カイトが人々の心から様々な色を咲かせる心の扉を開くこと。そして、その集大成がミテルとの出会いと理解し合う課程。そこに、カイトも予想しないほどの色彩豊かな花がさいたこと。おして、それが愛情と言うこと。

約2時間の舞台に劇的な高揚はないけれど、何か心にサワサワと波を起こすというか風を起こすというかそういう混沌としながらも心引かれる悲しさを感じさせる舞台。脚本の力もあるが、役者の力も物を言っているはず。終盤、客席からすすり泣く様子が多々窺い知れた。まさに、納得できる舞台だからであろう。
役者は全員芸達者。個々では、主役とも言えるカイト役の鈴木勝大と。モリオカ ミエル役の八坂沙織の名前を挙げておきたい。よい劇団を知ることが出来て、心地よく劇場を後にした。

Short cuts

Short cuts

劇団ガソリーナ

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2016/08/05 (金) ~ 2016/08/07 (日)公演終了

満足度★★★

日常の理不尽が理不尽でなくなるときの面白さ
今年になって知り合った役者・塚田しずくが出演するというので、6日夜新宿シアターミラクルに立ち寄った。午後一にちょっと重い舞台を観た後だったので、短編作品のオムニバス公演は気分的にちょうど良かったかもしれない。

内容は、15分ほどの作品が6本。
詳しい内容を書くとそれだけで舞台解説のすべてになってしまうので、ここではやめておこう。
総じて、理不尽な事が出発点になっていながらそれが最後には理不尽なのかどうなのかわからなくなってしまうと言う趣の作品が多かった。
知人・塚田は1本目の『135』に出演。バイトをやめる辞める理由に先輩を翻弄させる雰囲気作りがなかなか上手いと感じた。
他に存在感のあった役者としては、やんえみ。
個々の役者の本公演を観たいと思った。

夏に死す

夏に死す

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/08/02 (火) ~ 2016/08/14 (日)公演終了

満足度★★★★

客演陣の熱演に助けられた一面も
昨年後半、怒濤のごとく炭鉱三部作の連続再演を行った劇団桟敷童子が、中核メンバー数人の退団を経ての新作現代劇を上演するというので、6日午後にすみだパークスタジオ倉に出かけてきた。もちろん、知人の役者・もりちえは、今回重要な役をこなしての出演であった。

舞台は現代の九州。2年前に病院から失踪し行方不明になっていたものの、自宅近くの蜜柑山でみつかり、その山で運営されている自然農園「Bee」で保護された元中学教師で認知症の父親を引き取りに訪れた三人の子供たちと、自然農園の従業員(そのうち一人は失踪した父親の教え子だったことから身元が判明)との交流、父親を巡る人々の感情的な行き違い、理解無理解などが入り交じった複雑な、本当に複雑な日常生活が描き出され、年をとることとは何なのか、生きていくと言うことはどういうことなのか、家族の結びつきとはどういう物なのかを何気に、時に深く問うたなかなかの秀作であった、

特に父親と母親の板挟みになり、晩年は父親の面倒を見ていた失踪した滝雄の長女・智美役のもりちえ、Beeの代表・植村役の尾身美詞(劇団青年座)、そして肝心の失踪した本人・滝雄役の山本亘はなかなかの熱演だったし、滝雄の長男・信雄役稲葉能敬も頑張っていた。
いつもとは違う客席と舞台の設定は、終盤に舞台にあった軽自動車を滝雄が運転して舞台から建物外に移動するためであることがわかり、演出面での苦労・工夫もいつもながら感心。
ただ、やはり結末のもって行き方の難しさと滝雄の動き・台詞の処理の仕方にもう一工夫あっても良かったような気がした。おそらく、脚本の東もそのあたりは苦労したのではないだろうか。

そうだ、インドへ行こう

そうだ、インドへ行こう

アナログスイッチ

シアター711(東京都)

2016/08/04 (木) ~ 2016/08/08 (月)公演終了

満足度★★★

インドに行ってみたくなった
年間数多くの小劇場系の舞台を観に行くとなると、それなりに出費がかさむ。小劇場系劇団の財政状況を少なからず知るものにとって、無料招待券をもらうことには少なからずためらいはあるものの、その劇団を好きになって今後何度か観に行くことになるきっかけになるかもしれない可能性も秘めているわけで、一概に遠慮している場合ではない。今月はそんな気持ちから無料招待の公演に複数応募したところ当たった公演の一つが本公演である。

会場は、下北沢の本多グループの一つ、シアター711。

物語の舞台は、東京・三田にあるインドビザ申請センターのある一日。
ちょっとしたミスも許さない厳しさで有名なピザセンターにやってくるインド行き希望者の面々。度重なるミスの指摘を受け、腹を立てながらもインドに行くべく申請書類の訂正に励む人たちの、インド行きの真の理由が明らかになっていく。恋人にインドでプロポーズしようとはりきる若者相手が実は人妻であることがわかったり、左遷を承知でインドで頑張ろうとしているサラリーマンがいたり、インドに行って消息不明になった彼氏を探して何度もインドを訪れている女性がいたり、不倫報道がきっかけで仕事が不調になりインド行きをきっかけに執筆業に進出しようとしている女優がいたり・・・・。そういう人たちのインド行きの熱意と審査の厳しい係官のインドへの愛着のぶつかり合い。基本はコメディなのだろうが、時折しんみりさせられたり。75分ほどのそれほど長くない上演時間は、内容にマッチしていてちょうど良かった。あれ以上短くても長くてもダレてしまいそうな舞台を適度な感じに持続させていたのは、その上演時間の長さと脚本の面白さ。そして登場人物の多彩さだろう。
面白い劇団を知る機会を得たことに感謝したい。

ヘヤノゾキ

ヘヤノゾキ

アフリカ座

TACCS1179(東京都)

2016/07/15 (金) ~ 2016/07/19 (火)公演終了

満足度★★★

女性専用シェアハウスのドタバタ劇!?
19日午後、新宿の下落合にあるTACCS119ホールで開催されているアフリカ座企画公演OFF VIVID COLOR『ヘヤノゾキ』を観てきた。これは知人の若林美保が出演していた関係からである。
このVIVID COLORというユニットは現役&元AV女優のみで結成されているのだが、今回はそのメンバーに元宝塚の女優を加えてOFF VIVID COLORとして上演した企画公演である。

舞台は女性専用シェアハウス・ハッピーライジングの住人たちの起こすドタバタ騒動を描いたもの。中心となるストーリーは、現在シェアハウスに住んでいるストリッパーの葉林美和子(演じるのは若林美保。以下、同様)と10年ぶりにシェアハウスに戻ってきた美和子の姉・桐優菜(結城リナ)の姉妹愛であるが、それに男装させたマッサージ師を自室に呼び寄せ、住人からストーカー出現だの男子禁制の場所に男性を招き入れたという騒動を起こす末早理紗(早瀬アリス)、自分の彼氏の二股相手を探すフリーター浮草にかろ(國崎馨)、子分的な住人を従えた姉御肌のOL駒本聡子(坂本ともこ)、婚活中で観客から一番笑いを取っていた合田原ゆかり(sayaka)などが絡んでの約2時間あまりのコメディタッチの内容だった。
とこう書いていて思うのは、脚本を書く杉山夕(シェアハウスの大家役で出演)の、登場人物の名付け方に対するこだわり。これは、毎回思うことで、感心するというか呆れるというか(苦笑)。

舞台の見所は、若林の踊りと結城の歌なのだろうが、それを食っていたのがsayakaの演技。劇場の盛り上がりという点では、彼女のシーンが一番盛り上がった感じ。坂本演じる駒本が結城演じる桐の姿が見えないし、桐が10年前と容姿が変わらないという点で、「ひょっとして桐は亡霊なのでは?」という印象も受け、その意味ではブラックコメディ的な要素も織り込まれていたと言える。

千秋楽であった関係からか、終演後には出演者全員によるトークイベントもあり、失敗談の披露などで場内は和んだ雰囲気。物販コーナーも盛況で、個人的には台本を購入。このアフリカ座の公演では台本を買うことが多いのだが、脚本的には今回の公演は、最近の公演の中で一番密度が濃いというか内容が詰まっていた印象を受けた。脚本家としての杉山の進歩と受け取って良いのだろう。

ブスも美人も死ねば土

ブスも美人も死ねば土

美貴ヲの劇

荻窪小劇場(東京都)

2016/06/30 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★

同じシーンの繰り返しが効果的
劇団時間制作の公演を観に行ったとき受け取ったチラシの中にあった『ブスも美人も死ねばブス』というなかなか刺激的なタイトルが気になって、結局7/1の午後に観に行ってきた。

この舞台、なぜかR-13指定。上演前日に劇団からメールが来て、開演前に舞台上で出演者が何かやっているという事だったが、行ってみてちょっとびっくり! 舞台上で、八木麻衣子と海底二万海里が抱き合ってキスの嵐の真っ最中。おまけに上演後半にはバイブも登場して、なるほどこれはR-13指定だなぁと妙に納得。

あらすじはきわめて簡単。自分はブスでしょうがないと思っていた夢川夢子(八木麻衣子)はシンデレラ、ラプンツェル、赤ずきん(舞台上ではそれぞれ夢子の勤める会社の美人で仕事が出来る同僚役も兼ねている)をうらやましく思っていながらもみんな自分より早く死んでしまい、夢子自身毎日退屈で一人卑屈に暮らす世界から死んでしまいたいと思っていた。そんな時、ただ一人の友人苺ちゃんに勧められて飲んだ酒で酔っ払い、妄想の世界へ。そこには死んだはずの美人たちがいて、本当はブスと卑下している夢子より悲惨な人生を送っていたり、職場での流行を追った会話が実務を帯びたモノだったことがあきらかにされていく。そんな彼女たちが夢子に向かって、、「ブスも美人も死んだら同じ土じゃない」。これに勇気をもらった夢子は現実世界で気分一新、男性ともつきあえるようになっていく。めでたしめでたし。

と自分は受け取ったのであるが、このストーリー、受け手によっていろいろな内容に受け取れる許容性を持っているところが面白い。
八木の演技が光っていたが、目立つという点では苺ちゃん役の苺田みるく先生も存在感があった。
ちなみに、劇団時間制作で観た女優・小島望はラプンツェル役であった。

アラジン

アラジン

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2016/06/11 (土) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

米沢唯の踊りが素晴らしかった!
新国立劇場で上演されたバレエ公演『アラジン』の千秋楽を観てきた。

当日の主立った配役は下記の通り。

アラジン:奥村康祐
プリンセス:米沢唯
魔術師マグリブ人:マレイン・トレウバエフ
ランプの精・ジーン:福田圭吾

あらすじは比較的単純で、魔術師マグレブ人に財宝をやるとそそのかされて洞窟に入ったアラジンが、魔法のランプを見つけてマグレブ人に渡すのを拒み、洞窟に閉じ込められたのがきっかけでそのランプが魔法のランプで、ランプをこするとランプの精・ジーンが現れて願い事をかなえてくれることを知る。アラジンは洞窟を抜け出し、ランプの力を借りてプリンセスと結婚。その後マグレブ人にランプを奪われたものの機転をきかせて取り返し、彼を退治して無事に故国に戻りプリンセスと幸せに暮らす・・・というもの。

アラジンの奥村、プリンセスの米沢、ジーンの福田はおのおの役にあった素晴らしい踊りを披露。特に米沢は、これまで観た公演の中で最高の出来のように感じられ、舞台途中や終演後のカーテンコールで盛んな拍手とブラボーを受けていた。
演出的にはジーンの登場するシーンや魔法の絨毯に乗ってアラジンとプリンセスが故国に帰るシーンが印象的。
オケも、小難しいクラシックの名作曲家による古典作品とは違ってか、のびのびと演奏して充実した音楽を作り上げていた。
ただ、この日はバスを使っての地方からの団体客が多数入っており、オケのチューニングが終わり指揮者登場を待つ間も劇場内がざわついていたのは、新国立劇場に行くようになって初めての経験で、素晴らしい舞台だっただけに観客のマナーの悪さが残念であった

上演時間は、途中2回の休憩を挟んで2時間40分ほど。

新・二都物語

新・二都物語

新宿梁山泊

花園神社(東京都)

2016/06/18 (土) ~ 2016/06/27 (月)公演終了

満足度★★★

リーランとさち子の存在に悩むイシハラの姿
去年観た唐十郎の『二都物語』続編である『新・二都物語』を新宿梁山泊が去年と同じく花園神社の特設テントで上演するというので初日を観てきた。主演はリーラン役が劇団の水嶋カンナ、石原が唐十郎の息子である大鶴義丹(去年の『二都物語』も同役で出演)である。

あらすじは混沌としてい難しい。一言で言えば、日本人の妹・さち子を持つイシハラを、自分の兄と思い込み韓国からやってきて追い続けているリーランとの再会と、その後の養老院・ノーパン喫茶・結婚相談所を舞台に繰り広げられる人間関係劇と言えるだろう。

水をたたえたプール状の舞台に蓋をして、時に客席に向かってその蓋を開いてプール内を使って演技するのは『二都物語』と同様のスタイル。前作ではあくまで主役はリーランでありイシハラであったのだが、今回はリーランやイシハラへの焦点の当て方がやや薄れ、その代わりイシハラの妹であるさち子の存在感が高まった作品となっている。そんな関係からか、トリプルキャストで演じられるさち子の初日担当の有栖川ソワレの存在感が、リーラン以上に印象に残っている。
また、今回は冒頭に歌手・中山ラビや下北沢の本多劇場グループの代表である本多一夫、フラワー・メグなど、いわゆる特別出演といえるような役者たち7人の紹介に30分ほど時間を使っていたのも特徴的。ちなみに、上演時間は途中10分の休憩を挟んで2時間20分程度であった。

役者たちの衣装やテント公演ならではの大道具(大量の水のプールやシャワーの扱いや、最後にリーランが木馬で空中を行き交うときに使うショベルカーなど)など、上演に際しての苦労も察せられる舞台の完成度は高に。まぁ、初日ならではのトラブルもあったのだが(苦笑)。

ミツヲ

ミツヲ

ハレボンド

明石スタジオ(東京都)

2016/06/09 (木) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★

盲目少女の悲話と姉妹のブラックコメディ
最近観る舞台で配られるプログラム。役者の経歴やフリートークは掲載されているけれど、肝心の役名が書かれていないケースが増えてきた。見終わった後、「○○役の××という役者」と舞台感想を思い浮かべられないのは残念。実は今回の舞台も、役名と演じた役者の名前と顔が一致するのは、盲目少女を演じた知人の高坂汐里のみ。ん~、後日に書く感想としては、実に書きにくい(苦笑)

タイトルにあるミツヲ。舞台に出てくるのは、3人のミツヲである。
両親に先立たれた姉妹(実は、姉は数年前に死んでいるお化けという事が、舞台後半で明らかになる)。良い子になりなさいといって姉にしつけられる妹は元ヤンキーから今では更生し、今では姉妹で不幸な人を自宅に招いてもてなすのを日課としている。そこに偶然やってきたNHKの集金人は、この家に掛けられたいた良い言葉で有名な相川ミツヲの問い言葉カレンダーを見て彼のテレビ番組が始まることを姉妹に伝え、自らも彼のスタッフの一員となる。さて、この姉妹の元に招かれた盲目の少女マサミと付き添いで彼女を慕うチンピラのミツヲ。そのマサミは近々この姉妹が保証人になって目の手術を受けることに。しかし、彼女が盲目であることを良い事に今まで彼女はブス、自分はハンサムと正反対なことを言っていたチンピラ・ミツヲはうろたえ、結局救いを求めて相川ミツヲのスタッフに。しかし、、相川ミツヲの教えに疑問を持ち、スタッフに後頭部を殴られて・・・その姉妹の更生した妹は、同じく更生した昔のヤンキー仲間だったミツヲとの結婚を姉に反対され、死なないお化けの姉をバラバラにして海(川?)に沈める。
問題は、盲目のマサミ。手術を終え目が見えるようになった彼女は、今まで一緒に過ごしていたチンピラ・ミツヲを探すが、どこにもいない。そして、彼女は例の姉妹の妹と、今では不幸な人をもてなす生活。そんなある日。記憶喪失になった盲目の男性がやってくる。姉妹の妹が驚く中、彼の口からチンピラ・ミツヲの口癖「ベロリンチョ」という言葉の出るのを聞いて、彼を抱きしめ泣き崩れるマサミであった。


この舞台の中心は、姉妹と、盲目の少女&チンピラの4人と胃って良いだろう。正直、相原ミツヲやそのスタッフたちの演技は未熟であるし、演出的になにかもう一工夫ほしかった。
映像にしろ舞台にしろ、動物を出すか何らかのハンディキャップを持った人物を出すと感動と涙を引き出せるというのが一種の常識となっているが、今回の舞台は盲目というハンディキャップを取り上げており、結果として結末で目の見えるようになった女性と今まで世話をしていた男性がどのような形で対面するのかが感動の度合の分かれ目になった。その意味では。この女性役である高坂とチンピラ役(役者名がわかりません)の二人の演技が物を言った。最終場面で会場の多くの観客が泣いていたのは、演技だけでなくハンディキャップを扱った工夫の重なりから感動した結果。こうした感動の常套手段を安易に使わずに観客を感動させられるかが、この劇団に課せられた課題であろう。
個人的には、終盤の高坂の演技には拍手を送りたい。

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