酔いどれシューベルト 公演情報 劇団東京イボンヌ「酔いどれシューベルト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    終盤の緊張感が舞台全体を引き締めた
    演劇とクラシックの融合をめざし、その接着剤としてコメディ的な要素を加えて公演を続けている東京イボンヌの『酔いどれシューベルト』の再演を観に出かけた。今回はダブルキャスト制を採用しており、自分が観に行ったのはAキャストの千穐楽。主演は、いしだ壱成。

    プログラムに出演者の名前のみ記されていて、配役の詳細が分からないのはちょっと残念。

    粗筋は、酒好きのシューベルトを巡って行きつけの居酒屋で起こる人間ドラマ。シューベルトは、好きだった女性が成金男(後に貴族に昇進)に嫁ぐのに耐えきれず、悪魔に魂を売って、売れる曲を量産すると共に、好きだった女性を恨み娼婦と遊ぶ生活に溺れる。しかし、その悪魔というのは実在せず自分の心の闇に過ぎず、好きだった女性は成金男と結婚しても心の中ではシューベルトを愛していることを知る。そして、悪魔が作ったと思っていた大量の曲も、実はシューベルト自身の才能によって生み出されていたことに気づく。しかし、時既に遅く、梅毒に冒されたシューベルトは愛する女性に看取られて息を引き取る。

    いしだの熱演と愛する女性のけなげで静かな秀逸な演技の合間に、ハプスブルグ家の親子や家来、悪魔、天使といった脇役達が適度な笑いを提供し、節目には楽器や声楽家による音楽が舞台を満たす、一種の総合舞台。ただし、終盤、特にラストシーン周辺では初期の東京イボンヌに観られた演劇による観客の心への訴えかけという動きが強く見られ、それが観客の心を掴んでいたと思う。

    また、楽器演奏者にも台詞や演技を求めたり、声楽家にも彼らにとっては初体験であろう類いの演技をさせた点は見ものであった。


    舞台後方に楽器奏者を配置し、舞台前方に大道具で居酒屋を作り上げ、奏者や声楽家を随時登退場させたシステムは、一連の東京イボンヌ公演では一番成功していたように思われた。

    役者陣では、いしだは別格として、悪魔役の役者の演技が光っていた。

    課題としては、スタートから中盤あたりにポツポツ感じさせるコメディタッチの演技の不十分さと間取りの悪さ。これが解消されると、全体的に舞台の密度も高まのではないだろうか。

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    2016/11/18 20:20

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