満足度★★★
意欲か空回りしたかも
文学座系の演劇ユニット・西瓜糖の公演を観るのは、昨年に引き続き今回が2回め。前回の公演で感銘を受けたので今回も出掛けたのであったが、結果としてはちょっと物足りない印象が残った。
舞台は昭和20年。戦争で海の近くに疎開してきた作家一家。その作家をめぐり、妻、子供を生ませた愛人(飲み屋のママ)、そしてその作家担当の女性編集者を巻き込んだ四角関係に、愛人の子供と編集者の子供の連帯感、作家の両親と作家の妻との関係が複雑に絡み合った物語。
笑いのない妻の、自分をないがしろにする義母への奥深い復讐?(潮風が身体に悪いことを知りながら海の近くに疎開させた行為)、小説は女性との自由な交流から生まれるという理屈から複数の女性と関係を持つ作家、教師として教え子を戦地に送り出した作家の父親の教師としての戦時下の義務感などが約2時間にわたって繰り広げられるわけだが、全体的に散漫で間延びした感じを受けたのは脚本に由来するのだろう。演出でもう少し緊張感のあるものに凝縮出来なかったものだろうかとの思いがある。
役的には、作家の両親(三田村周三、矢野陽子)、愛人の飲み屋のママ(山像かおり)、編集者(奥山美代子)がキャリアを生かした熱演で良かった。愛人の娘(難波なう)と編集者の娘(小園茉奈)は、もう少し演技に抑揚があっても良いと思う。疎開先の家の大家役・柳屋さん生はちょっと軽すぎ。中心となる作家役の佃典彦は、役柄の核となるものがどこか希薄な所が唯一不満。良くも悪くも、西瓜糖の中心メンバーたちが目立った公演であった。
ちなみに、この西瓜糖のセットは小劇場系の舞台としてはなかなか立派である。こだわりがあるのだろう。
来年の公演は、なんと外波山率いる椿組と新宿花園神社のテントで合同公演らしい。これまた見逃せない。