満足度★★★
リーランとさち子の存在に悩むイシハラの姿
去年観た唐十郎の『二都物語』続編である『新・二都物語』を新宿梁山泊が去年と同じく花園神社の特設テントで上演するというので初日を観てきた。主演はリーラン役が劇団の水嶋カンナ、石原が唐十郎の息子である大鶴義丹(去年の『二都物語』も同役で出演)である。
あらすじは混沌としてい難しい。一言で言えば、日本人の妹・さち子を持つイシハラを、自分の兄と思い込み韓国からやってきて追い続けているリーランとの再会と、その後の養老院・ノーパン喫茶・結婚相談所を舞台に繰り広げられる人間関係劇と言えるだろう。
水をたたえたプール状の舞台に蓋をして、時に客席に向かってその蓋を開いてプール内を使って演技するのは『二都物語』と同様のスタイル。前作ではあくまで主役はリーランでありイシハラであったのだが、今回はリーランやイシハラへの焦点の当て方がやや薄れ、その代わりイシハラの妹であるさち子の存在感が高まった作品となっている。そんな関係からか、トリプルキャストで演じられるさち子の初日担当の有栖川ソワレの存在感が、リーラン以上に印象に残っている。
また、今回は冒頭に歌手・中山ラビや下北沢の本多劇場グループの代表である本多一夫、フラワー・メグなど、いわゆる特別出演といえるような役者たち7人の紹介に30分ほど時間を使っていたのも特徴的。ちなみに、上演時間は途中10分の休憩を挟んで2時間20分程度であった。
役者たちの衣装やテント公演ならではの大道具(大量の水のプールやシャワーの扱いや、最後にリーランが木馬で空中を行き交うときに使うショベルカーなど)など、上演に際しての苦労も察せられる舞台の完成度は高に。まぁ、初日ならではのトラブルもあったのだが(苦笑)。