無伴奏 公演情報 親泊企画「無伴奏」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    結末の脚本変更に若干不満
    30日午後、Gフォースアトリエで上演された親泊企画『無伴奏』の千穐楽の舞台を観てきた。この作品の原作・脚本は、東京イボンヌ主宰である福島真也であり、初めてイボンヌ以外の外部団体がこの作品を上演するというので出かけた次第である。


    ざっと当日の粗筋を書くと次のようになる。
    世界的なチェリスト・寺島貴子は、ある日夫にも告げず12年前にアルバイトをしていた山の中にあるペンションを訪れる。実は彼女、このペンションのオーナーである誠とバイト中の3ヶ月間、期間限定の恋人関係であった。12年後の彼女は昔と変わらぬわがまま三昧でペンションのバイトや常連客に迷惑を掛けるのだが、なぜ12年も経って突然戻ってきたのか。それは、彼女が肩の病に陥りチェロを弾けくなったとき、心に浮かんだかけがえのない存在が誠だったから。いわゆるスポーツ肩という軽症なのか脳から来る重病なのか悩む彼女。もし後者なら一緒に死んでくれるかという問いかけに、誠は死ぬと答え貴子を号泣させる。誠の勧めで病院に行った貴子の病状は回復し、夫と別れた貴子がテレビ放送で一番大切な人へ贈ると演奏するバッハを、誠は一人ペンションで聞き入るのであった。

    という、どちらかというとハッピーエンドで終わるストーリーなのだが、実は原作は違う。原作では、貴子の病気は後者の不治の病であり、ペンションの常連客であったカメラマンの「ここを訪ねてきたのには大変な勇気が必要だったはず。今度は誠君が勇気をみせて彼女の見舞いに行くべき」と東京行きを促し、本人がその気になったところに貴子病死の一報が入り、誠は心が砕けていくように呆然と立ちすくむ、という悲劇なのである。

    つまり、今回の上演では脚本の結末をハッピーなものに書き換えたのだ。結果として、貴子が12年ぶりにペンションを訪れた意味や病気を告白する心情が原作とは趣を異なる物として映し出されている。
    貴子や誠の思いが原作に比べ薄い物になってしまったように感じてならない。

    役柄では、貴子・誠は重要な核であるが、実はペンションの常連というか長期滞在者のカメラマン・及川の存在も大きい。時にピエロ役になるが、時に誠に核心を突く意見をさりげなく吐くのである。たが、今回の舞台では原作に比べると及川のピエロ役の色合いが濃く出ていた。
    誠の朴訥というか無表情というか、内心をあまり外に出さない性格を演じ切れてこそ、貴子の激情との対比が生きるのだが、今回は誠役の馳川てるやの演技は若干表情を表に出しすぎるように感じた。逆に貴子役の山田かなには及第点を与えても良いだろう。
    そして、カメラマンの及川役の一ノ瀬亮太の熱演も、今回の脚本上では好感が持てた。


    本作は感情の表し方が非常に難しい役が多い。今後外部団体で上演する際は、原作に近い形での上演を望みたい。
    ちなみに、平日昼間の公演であったので、役者の友人達が多数客席を埋めていた。

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    2016/10/31 20:38

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