満足度★★★
脚本と演出のバランスが良かった
24日、雪はやんだが寒い夜、北池袋の新生館シアターで上演された演劇集団astimeの『おとぎのくにのさつじんじけん』公演を観に行ってきた。これは、知人の高坂汐里が出演していた関係からである。
さて、舞台はとある探偵事務所。そこに、15年前の一家殺人事件の犯人を今日中に見つけてほしいという依頼がある。依頼してきたのは殺人事件で生き残った女性を治療しているという女医。生き残った女性は、若年性アルツハイマーだという。探偵事務所は早速依頼を引き受けて捜査を始めるが・・・・・
殺された一家は、生き残った女性の母親と面倒をみていた男性。他に死にはしなかったが怪我をした男性一人。舞台ではこの一家を童話「あかずきん」に見立てている。母親が愛する男は一人放浪に旅立ち、やがて帰ってきて娘であるあかずきんの前に姿を現す。その男に恋するあかずきん。一家の面倒をみていた男性は、母親が愛する男が帰ってきたことに愕然とする。愕然としたのは、あかずきんも同じ。自分が愛し始めた男が父親であり母の愛する人だったから。嫉妬を覚えたあかずきんは、母も、面倒をみてくれていた男も刺し殺す。彼女が愛した男=父親は、自ら腹に刃物を刺す。
さて、再び舞台は探偵事務所。この捜査を依頼してきた女医が実は一家殺人事件の犯人であることが明らかにされ、探偵事務所所長は、その父親から既に女性を探して保護してほしいという依頼を受けていたことを明かす。
人を愛し、愛を拒絶され、嫉妬を覚え、行動する。
愛には種類があって、今の自分の愛はどんな種類の愛だか分からなくなる。
単純なようで難しいテーマを扱った今回の脚本は、一口に言えば凝っている。これが古根村流なのだろう。脚本担当の彼女、かなり頭の回転が速いと思われる。自分の頭の中で既に理解し次のシーン(問題)に進むのが早すぎて、展開が客にわかりにくい部分があるのだ。例えば、依頼者の女医が実は犯人だと気づくきっかけを暗示するシーンが簡単すぎたり・・・
astimeの舞台を観るのは今回が2回目だが、脚本と演出のバランスが前回観たときよりも良くなっていた。ユニットとしての息が合ってきたのだろう。
熱演は、あかずきん役の高坂汐里、おかあさん役の古根村アサミ、マリ(女医)役の里仲景、探偵・田処役の新免愛美あたりか。
こうしてみていると、このユニットの第1回公演が来年再演されるというのが気になりだした。観に行こうと思う。