ミスターの観てきた!クチコミ一覧

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さよならニーナ~僕は生きることしか知らない~

さよならニーナ~僕は生きることしか知らない~

演劇企画ユニット劇団山本屋

ウッディシアター中目黒(東京都)

2019/12/26 (木) ~ 2019/12/30 (月)公演終了

満足度★★★★

今日観た山本屋の『さよならニーナ』。

犯罪者の近親者はいつまでその事実から身を隠さねばならないのかという核心に、作家における作品の生みの苦しみを絡めた重いテーマの作品。重いテーマではあったが、荷名の存在が重さを適度に中和してくれていた。最後がハッピーエンドだったことで救われた感が大きい。

存在の気になった役者は男性1名女性4名。名前を挙げるなら、藤原習作、小針あかね、南出めぐみ、伊澤恵美子、花瀬琴音。

登場人物の役名がややっこしいのには参った。感想を書く参考に、物販で台本を購入。

獣唄

獣唄

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2019/12/03 (火) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

15日、東京・錦糸町のすみだパークスタジオ倉で上演された劇団桟敷童子の『獣唄』千穐楽を観てきた。これは、知人の役者・もりちえが出演出演していた関係からである。
今回の作品は、劇団主宰者で脚本家の東憲司が俳優・村井國夫主演を想定して書き下ろした作品で、自分も当初は公演中日あたりの日程で観劇する予定であったのだが、村井が公演前半に軽い心筋梗塞のため降板し、数日間の休演の後に主役を副座長である原口健太郎が代役として演じ、一部配役を変更して上演再開という自体となり、鑑賞日程を千穐楽に振り替えたという次第であった。

舞台は貴重な種類の蘭の花が採取出来るというとある山村。そこでハナトと呼ばれる蘭採収人である梁瀬繁蔵と彼の3姉妹トキワ・ミヨノ・シノジの間で起こる愛憎悲劇。そのきっかけを作るのが、東亜満開堂という花屋で、時代は太平洋戦争中。花で東亜の繁栄を夢見る満開堂社長の望みは、蘭の中でも最も珍しい品種「獣唄」であった。その獣唄を観たことのある繁蔵と、蘭採取人の後を継ぎたい長女トキワ。この二人の葛藤は、満開堂だけでなく妹たちや村人達をも巻き込み、最後には3姉妹がそれぞれ命を絶っていく。
いやぁ、悲しい。実に悲しい。その悲しみを舞台から観客全員に伝える繁蔵役の原口、3姉妹を演じる板垣桃子、増田薫、大手忍の熱演が特筆される。
もりちえは、満開堂社長夫人の役を熱演。キノコ取りの名人役・鈴木めぐみの怪演も光っていた。

久しぶりに差し入れなどを持って行ったのだが、うっかり役者と言葉を交わすと泣きそうになりそうだったので、挨拶も簡単に劇場を後にした。
将来、村井國夫での再演を期待したい。

兎の姉妹

兎の姉妹

兎座

小劇場B1(東京都)

2019/12/17 (火) ~ 2019/12/22 (日)公演終了

満足度★★★★

優になる夢を追うため、姉・彩音の反対を押し切り葬儀にも帰郷しなかった妹の夏美が、短編映画の監督となって実家で映画を撮るため帰郷する。そこで家族との交流や役者の役作りの過程役者との関わり合いから、姉・彩音の夏美に対する愛情に気付かされていく、笑いと涙の交差する人情劇。いやぁ、笑わされたし泣かされました。筋の展開がややストレート過ぎるのが唯一の難点かも。上演時間100分が短く感じられた。

一滴のしずく

一滴のしずく

アンティークス

「劇」小劇場(東京都)

2019/12/11 (水) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★

演劇情報サイト「コリッチ」の招待券プレゼントに当たり、13日午後、下北沢の劇「小劇場」でアンティークスの『一滴のしずく』を観てきた。初めて観る劇団の公演だっらが、15周年と言うことから、そこまで長く活動を続けてきた劇団の舞台なら外れはないだろうという思いで出かけたのだった。

舞台は、父しげおと娘三人が営む民宿。母親は、三女を産んですぐに亡くなり、娘達は父親一人に育てられている。そこに、次女で小学校の教師をしている美樹の紹介で、10歳の時に記憶喪失になり施設で暮らしを経て学校の給食係だったゆうさんが住み込みで働くようになる。
そこで、実はゆうさんのいた養護施設でしげお妻、三人娘の母親でもあるはるかが働いていたことが分かり、それがきっかけとなってゆうさんは喪失していた子供の頃の記憶が蘇る。
と同時に、はるかが生前に残した娘達へのビデオレターが発見され、娘達は、母親の思いに浸る。

タイトルの「一滴のしずく」とは、はるかがビデオレターの中で娘達に語った「一滴のしずくは、やがて大きな海にかわる・・・」からつけられている。
人々が様々な出会いを経て別れていき、更に新たな出会いにめくり合う。その人の生きる、そして出会いの営みの大切さを、この劇では民宿を通して観る者に伝えようとしていた。

劇の序盤は台詞の行間がややスカスカ、つまり脚本が粗くてどうなるかと思ったけれど、中盤から終盤にかけての登場人物の対峙のさせ方はなかなか上手かった、さすがに15年という活動実績のある劇団。ラストシーンでは思わず目頭が熱くなった。
次回公演は、是非自腹で鑑賞してみたい。

『GUNMAN JILL 』&『GUNMAN JILL 2』

『GUNMAN JILL 』&『GUNMAN JILL 2』

チームまん○(まんまる)

萬劇場(東京都)

2019/10/03 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了

満足度★★★

下ネタを使って舞台を作り上げていくという劇団・チームまん○の10周年公演の一つ、『GUNMAN JILL2』を観てきた。これは、知人の役者・高坂汐里が出演していた関係からである。

タイトルは「ガマン汁」をもじった物で、舞台は西部劇風。金が採れる谷ホーミーバレーでギャングの悪政に苦しんでいたバレーの人たちは、ギャングを退治する助っ人を探していた。そこに現れた拳銃の名人でもあり変態でもあるジルはその話を受け、7人の攻めてる(変態)助っ人を集め、ギャングと対決。と思ったら、その助っ人達が裏切ってギャング側について万事休す。そこでジルは急遽バレーに人たちの中から変態を探し出して新たなチームを作りギャング団と対決。ギャングのボスの死もあって、バレーの人たちはギャングから谷を取り戻すことに成功する。

ややドタバタ感と変態度を誇張するシーンが多くて、核心のバレーの人たちの結束と勧善懲悪ストーリーが薄くなってしまった感があった。登場人物の名前も下ネタを使った物が多かったり、変態をやたら安物的に扱っているところが変態を自認している自分に取ってはやや不満ではあったが、娯楽西部調の劇としては面白く鑑賞できたように思う。
知人・高坂はバレーのバーのママで人々の相談役という役回りであったが、相談役のイメージは沸きにくいキャラだったように思う。
登場人物の中では、筋肉フェチの女盗賊のペネロペ・ロペスを演じた相馬光が気になる存在であった。

星々のお祭り

星々のお祭り

coconkukanunity

ワーサルシアター(東京都)

2019/07/31 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★


知人の役者・高坂汐里が出演する舞台、coconkukanunityの第9回公演『星々のお祭り~記憶の中のジャルダン~』を観に行ってきた。会場は、京王線八幡山駅に近いワーサルシアター。

劇団公式サイトの書かれた、いわゆる粗筋的な文章を引用しておきたい。

この世界のどこかに、

記憶のトラウマを癒す保養所「星々のジャルダン」があるという。

少年カミルもまた、記憶をなくしながら、保養所の中庭の手入れを任されていた。

ある日、カミルの前に、

仕事に疲れた男、

学校嫌いの少女、

高学歴の引きこもり青年など、

次々と現れる。

カミルは彼らに、

保養所に住む面々を引き合わせると、

世代を越えた、奇妙な交流が始まった。

そうして、

思い出された、それぞれの記憶が鍵となり、

忘れていたカミルの、

深く、悲しい記憶もまた、よみがえるのだった。

すべては、

とても大切な「星々のお祭り」に向かうためにーー。

これは、

「生まれた命の意味」を思い出す物語。

更に、当日のパンフレットの中には、ファンタジーではあるが、実際にあったニュースや事件を題材にしているという。

確かに、劇中にドイツでのユダヤ人虐待(本作の主人公であるカミルはそのなかの一人であろう)、ガダルカナル島における日本兵的な男性などが登場し、更にやや宗教ががったシーン(キリスト教)もあって、個人的な思想信条を若干逆なでされるようなシーンもあったため、「人の命や尊厳を大切にしたい価値観にそぐわない人々のあり方」を問題視した作品であるという本作の核の部分に賛同できずに終わった。
まず、第一にテーマが大きすぎて焦点が定まらないところがあった。
それは、扱う題材の多さにも関係しているように思う。
第二に、役者達がテーマをしっかり消化した上で演じているのか疑問の残る部分があった。

正直な話、この舞台で上演され主張されるようなテーマは、普遍的な問題なのだろうけれど、自分が演劇に望み感動を呼び起こしてくれるようなものではなかった。

ちなみに、観客の中にはラストシーンで涙する方もおられたようであるが、この舞台の評価は賛否がハッキリ分かれるものではなかったろうか。
こういう言い方を舞台評価には使いたくないが、個人的には嫌いな舞台であった。

無伴奏~消えたチェリスト

無伴奏~消えたチェリスト

劇団東京イボンヌ

サンモールスタジオ(東京都)

2019/07/17 (水) ~ 2019/07/21 (日)公演終了

満足度★★★★

 長年の知人とも言える脚本・演出家の福島真也が主宰する劇団東京イボンヌの公演を観てきた。今回の公演は、朗読劇公演として行われた第14回公演の演目『無伴奏~消えたチェリスト』の舞台上演形式での公演であった。
 実は東京イボンヌという劇団は過去に2回の休団時期がある。その活動時期を第一次、第二次、第三次と捉えるなら、今回の公演は第三次時期最初の本格的舞台上演といえる。その作品である『無伴奏』は、第一次活動最後の舞台として取り上げた作品の改訂版といえる作品であり、この劇団で上演された作品の中で個人的に一番好きな作品である。


さて、そのあらすじをコリッチに掲載された文章に補足を入れて解説しておこう。


◇ あらすじ
過去に生きる男と未来を見続けた女。
長野の山奥深いペンションに世界的なチェロ演奏者がやってきた。
彼女は12年前のアルバイトであり、オーナーの「3ヵ月限定」の恋人であった。
「住む世界が違うの。ここいにる3ヵ月だけ。それでもいいの?」
気まぐれにアルバイトで来た貴子、ここでの生活しか知らない圭。
そして3ヵ月が過ぎ、彼女は去った。未来を見続けるために。
圭はその過去だけで生きようと思った。
そして12年後、突然貴子がやって来た。


※今作はラストシーンの違う二つの世界観を、二人のヒロインによって上演します。
「無伴奏」・・・圭の決断
「消えたチェリスト」・・・貴子の決断

 貴子が12年振りに圭に会いに来たのは、離婚問題もあったが右手に力が入らないという病気に直面し、夫ではなく自分の一番大切に思える男性、つまり圭に会いたかったから。自分の病気が死に直結する難病ではないかという不安を告白する、その告白シーンが劇としてのクライマックスであろう。

 第一次活動期での本作は、貴子の病気は貴子の予感通りの難病で、結局圭が会いに行こう決心するのと同時に死亡し、圭が呆然と佇むシーンで幕を下ろしたが、今回の公演では貴子の病気は完治し、「無伴奏」では圭が一大決心をして貴子のコンサートを聴きに出かけるシーンで、「消えたチェリスト」では演奏会の放送の中で、「この演奏を一番大切な人(=圭)に贈ります」と行って演奏するのを圭が聴き入る、というシーンで幕を下ろした。

 本作の成否の鍵は、貴子役と圭役の力によるところが大きい。今回、貴子役を「無伴奏」では香取佑奈、「消えたチェリスト」では葉月美沙子が演じ、圭役はどちらも樋口大悟が演じた。個人的に2つの終わり方のどちらが好きかと問われたら、「消えたチェリスト」だろう。あくまで朴訥とした性格を崩さない圭が貴子の気持ちを感じ取るという意味では、やはりチェリストである貴子の演奏の流れるラジオに聴き入るというシーンにしみじみと感じ入った。貴子の気持ちに応えるという意味合いを強く出すには、圭が貴子のコンサートに行くことでお互いが自分の気持ちに五分五分の行動を起こすという結末になるのだが、12年という時間を隔てての二人の気持ちの変化という面からみて、「自分はあのときの3ヶ月で生きていける」という台詞を生かす意味からも「消えたチェリスト」の結末に心を動かされた。

 ただし、貴子役の葉月美沙子の演技はちょっと張り切り過ぎる場面もあり、時に心の内を表出せず内に秘める場面もあって良かったのではあるまいか。その点では、平均的に「無伴奏」の香取佑奈の演技が光った。
圭の演技は相手役に上手く反応して違いを出していたが、心情の振幅の表現は「消えたチェリスト」に強く感じた。

 そのほかの出演者としては、重要な登場人物の一人であるカメラマン・及川役の森山太が味わい深い演技を見せた。また、貴子の友人役二人の内、香苗役の水瀬まなみもなかなかの演技であったように思う。

次回公演は、第二次活動期に上演した『酔いどれシューベルト』だとか。これまた期待したい。

長耳と甲羅 ~SFR0x~

長耳と甲羅 ~SFR0x~

MANIAX

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2019/07/10 (水) ~ 2019/07/21 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2019/07/12 (金) 14:00

以前観た舞台で気になっていた役者・井上茜の出演する舞台・劇団MANIAX公演『長耳と甲羅』マルチBヴァージョンを、12日午後に観てきた。

さて、演劇情報サイトに掲載された本公演の解説を引用しておこう。

今回は、『近い将来ありそうな、少し変わった恋愛物語』として、コメディータッチに【MANIAX】独自の世界観で創りあげていきます。また、そのエンディングは公演回によって毎回変わるマルチエンディング※を採用しております。

※マルチエンディングとは・・・
このライブは、公演回ごとに作品が異なります。作品が変わることにより、人物の関わり方が変わり、「エンディングも変わってしまう」ということです。


これだけでは分かりにくいが、神と人間と複数種の地球外生命体が登場して互いに牽制し合って・・・という感じの不条理メディーといった感じの舞台で、笑える箇所は何カ所かあったものの、全体的に何を言っているのかよく分からない舞台だった。前説で「深く考える舞台では全くないので気軽に観て笑って欲しい」と行っていたが、かといって気軽に笑えて面白かったというものではなかった。笑いにはオチがないと落ち着かない。そのオチがはっきりしないのだ。

唯一の収穫は、登場してきた役者達の力というものがなんとなく分かったと言うくらいかな。
演劇を娯楽として観るぶんには、まぁ成功なのかもしれない。

ご馳走

ご馳走

西瓜糖

ザ・スズナリ(東京都)

2019/05/18 (土) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★

21日午後、下北沢のザ・スズナリで上演された西瓜糖第七回公演『ご馳走』を観てきた。この劇団は、2015年の第五回公演『モデル』を観て以来気に入り、毎年公演を観るようになった。発足当時は演出の松本祐子もメンバ00であったが、現在は脚本家としては秋之桜子・女優としては山像かおり、女優の奥山美代子の二人で運営され、演出は毎回客演演出家による上演という形をとっており。今回の演出は花組芝居の加納幸和が担当した。

かつての同人誌仲間で、今はそれぞれが結婚して家庭を持っている男女二組の間に交錯する、男女の情愛と作家としてのジレンマが舞台の核となっているのだが、登場人物の抱えているわだかまりというか悩みというか秘密というものの絡み合いが、どことなく空回りしてしまっている印象を強く受けた。これは、登場人物達の関係性を考えすぎた脚本の隙間風とでも言うものだろう。演出は、それをなるべく感じさせないように自然と、というか黙々と話を進行させてはいるが、観ていて舞台で繰り広げられている世界に没入できなかったのが残念。もう少し。単純な内容にしても、登場する二組の男女の関係性は上手く描けたのではあるまいか。

とはいうものの、二組の夫婦を演じた井上和彦、山路和弘、そして山像かおり、奥山美代子の演技はなかなか充実してと言うか円熟したものであったことは確か。つまらぬ踊りなどを折れず、会話で推し進めてくれるともっと良かった。登場人物達にとっての「ご馳走」とは何だったのか。考えさせられた舞台であった。

次回公演でどのような作風を示してくれるのか。それを楽しみに待つとしよう。

無伴奏~消えたチェリスト

無伴奏~消えたチェリスト

劇団東京イボンヌ

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2019/05/02 (木) ~ 2019/05/05 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/05/03 (金) 14:00

3日午後、池袋の木製劇場で上演された劇団東京イボンヌ第14回公演『無伴奏~消えたチェリスト』の「消えたチェリスト」編を観てきた。これは、劇団主宰者で脚本・演出を担当している福島真也氏との関係からである。

東京イボンヌの公演は、途中海産状態にあった時期を挟んでかなりの舞台を観てきた。その中でl、この『無伴奏』という作品は劇団の代表作であり、ちょっと前には初の外部団体上演も果たした作品で、今回は上演に際して結末を2通りに改訂しての上演であった。

話のあらすじを、福島氏による文章から引用しておこう。

過去に生きる男と未来を見続けた女。
長野の山奥深いペンションに世界的なチェロ演奏者がやってきた。
彼女は12年前のアルバイトであり、オーナーの「3ヵ月限定」の恋人であった。
「住む世界が違うの。ここいにる3ヵ月だけ。それでもいいの?」
気まぐれにアルバイトで来た貴子、ここでの生活しか知らない圭。
そして3ヵ月が過ぎ、彼女は去った。未来を見続けるために。
圭はその過去だけで生きようと思った。
そして12年後、突然貴子がやって来た。


この舞台のクライマックスは、12年後に離婚問題もあるが死に向かう難病かもしれない病に冒されたときに「3ヶ月限定」の恋人だった圭に会いに来て病のことを告げ、圭が死ぬなら一緒だと貴子の首を一時絞める、双方の本心を暗示した場面。このときの二人の高揚する気持ちをいかに表現するかが役者の見せ場でり、その気持ちの高揚感を舞台結末でどう納めるかが脚本の見せ所だろう。今回は、圭が貴子に会いに行く「無伴奏」編と、放送で圭を念頭に置いて「大切な人に捧げる」と演奏して終わる「消えたチェリスト」編の二つが用意されていて、自分が観たのは後者。
難しいのだが、この後者の終わり方だと、病の結果や貴子の圭に対する思いの果てに用意されたものとしてはインパクトが弱いように感じてしまった。それは、貴子の元に行こうと思った矢先にラジオから貴子病死の知らせが流れ、圭が呆然と立ちすくむという初期の上演で魅せられた、かつての結末のインパクトの強さが頭に強く残っているからなのかもしれない。
そういう意味では、今回の結末では圭が貴子に会いに行く「無伴奏」編の方がしっくりしたかもしれない。

結果として、圭役と貴子役の役者に課せられた演技は難しい。特に、感情のままに生きる貴子より、感情を内に秘めた圭を演じることの難しさは並大抵はあるまい。そういう意味で、今回の圭役を演じた後藤啓吾は、やや荷が重すぎたかもしれない。貴子役の葉月美沙子の演技も、もっと感情の振り幅が大きくても良かったように思う。
実はこの劇には重要な陰の立て役者が存在する。圭の経営するペンションに長期滞在するカメラマンである。今回は米倉啓が演じていた。まぁ、もう少しチャラいキャラでも良かったかもしれないが、なかなかの存在感を醸し出していた。
7月には今回の脚本に更に手を加えての上演があるという。このときは、2通りの結末の違いをこの目で観て感じたいと持っている。

Second you sleep

Second you sleep

ENG

d-倉庫(東京都)

2019/04/17 (水) ~ 2019/04/28 (日)公演終了

満足度★★★

演劇情報サイト・コリッチのチケットプレゼントに当選したので、4月26日午後、日暮里のd-倉庫で上演されてENG第九回公演『Second you sleep』を観てきた。この公演は出演23人11人が
ダブルキャストで行われ、自分が観たのは碧チーム。

物語の主人公はカイマであり、彼の存在を浮き出させるのがトキとクイナ、そしてカイマの医師としての師匠である官軍派の村医者と御典医松本であり、あらすじにあっる新撰組三番隊隊長斉藤の存在は、思っていたより思いものではなかった。
総じてテンポの良い台詞回しと殺陣で舞台は生き生きとしてはいたが、残念ながら脚本が大雑把過ぎて、気持ちが物語にのめり込んで行くにはちょっと力不足の感があった。ただ、自分と違いのめり込めた観客もかなりいたようで、舞台終盤には鼻をすする(つまり涙ぐむ)音が耳に入った。
自分が不満だったのは、舞台の結末。どうも話を広げすぎて締めくくり方を難しくしてしまったように思えた。なぜ幕末の出来事なのか、カイマが周りの人々から距離を置かれていたのかが曖昧だったのが悔やまれる。そのあたりを丁寧に描いてしまうと、2時間をゆうに超える作品になってしまうだろう。もう少し、焦点を絞った作品作りが望まれた。
役者たちの演技はなかなか。特に、クイナの楠世蓮とトキの松本わかはの存在感が目立ったように感じた。

モルディブの星 モルディブの月

モルディブの星 モルディブの月

劇団東京イボンヌ

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2019/01/29 (火) ~ 2019/02/05 (火)公演終了

満足度★★★★

この数年活動を停止していた劇団東京イボンヌが活動を再開するということで、その公演を観てきた。作品は主演女優がダブルキャストで、孝島佑香が主演を務めるのが『モルディブの月』、坂口彩が主演を務めるのが『ノルディブの星』で、他の役はシングルキャストで話の内容は全く同一。主演の女優が変わるだけで舞台がどう違ってくるのか、それを楽しめる貴重な公演であった。

主人公は宇都宮でキャバクラ嬢をしていた田中布美。キャバクラを辞め、海と星の美しさに惹かれてモルディブに行きダイビングのインストラクターを目指していたが、子供が欲しくなって日本に帰り結婚し一児の母に。しかし、夫を愛しているわけではなく子供が欲しかっただけの布美は専業主婦に飽きてきていた。そこで地元の飲み屋で知り合った会社員と仲良くなり、布美は再び自由を求めて子供を連れてモルディブに。彼女には、新たなパートナーとして会社員だった男がそばにいた。
途中、布美の妹や宇都宮のバーのマスターなどの絡みもある、90分の作品。

フライヤーに「何かを選んだら何かを手放さなければいけない」「人生は、選択の繰り返し」と書かれていたが、まさにその選択の苦悩をしんみりと演じていたのが主演の女優二人。孝島佑香はどちらかといえば精神的な表現に長けていて静的な雰囲気で、反対に坂口彩は動的な演技で田中由美を演じていて、共演者はそれぞれの持つ雰囲気に引っ張られて月と星を自然と演じ分けていた。
個人的な好みのから言えば、坂口彩の演技に見入っていた。
それと、男優陣でモルディブのインストラクター役を務めた森山太と、布美の夫役を務めた米倉啓は、独特の存在感があって興味深くその演技を観させてもらった。

過去の東京イボンヌの作品の『無伴奏』にどこか精神的に通じるところがあるように感じたこの作品。演じる女優を変えて再演したら、さらなる発見があって面白そう。

この公演を機会に、東京イボンヌの活動再開を祝したい。

happiest

happiest

みどり人

新宿眼科画廊(東京都)

2018/12/14 (金) ~ 2018/12/18 (火)公演終了

満足度★★★★

12月18日午後、新宿眼科画廊地下で上演された、みどり人 #18公演『happiest』を観た。これは、前回の公演を観て気になる劇団だったのと、今月上旬池袋で観た朗読ライブ『ショパンの馬鹿』の初演の演出が、みどり人主宰さいじょうゆきであったことを偶然知ったからである。

登場人物は、交通誘導員(警備員)で舞台好きな独身中年の丸茂照美、同じアパートで丸茂の隣室の住人でFTMである表駆流、丸茂がファンである劇団の面々。それぞれが孤独の中でささやかな幸せを見つけて頑張って生きている生き様を、90分の中で描いている。その中心となる存在が、丸茂であった。

セットや客席の配置など、新宿眼科画廊地下の狭い空間を上手く生かした演出の加え、登場人物の幸福感と孤独感をしみじみと演じきる役者達の存在感が秀逸。特に、丸茂役そぎたにそぎ助は独特の雰囲気を持っていたし、ベテラン辻川幸代の存在も大きかった。小劇場界という狭い世界の中ではあるけれど華やかに見える役者の孤独感、その演劇にささやかな幸せを見つけていた丸茂。いやぁ、演出と役者の演技がしみじみと融合し、大きく心を動かされた訳ではないのにラストでジワッと目頭が熱くなる。くも膜下出血で急死した丸茂に思いをはせる劇団員たちや駆流の存在は、死んでも実は孤独ではなかった丸茂の幸せな一面を垣間見るようであった。
作・演出さいじょうゆきの力が物を言った作品である。

その恋、覚え無し

その恋、覚え無し

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2018/11/27 (火) ~ 2018/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

11月30日夜、すみだパークスタジオ倉で上演された劇団桟敷童子『その恋、覚え無し』を観た。これは、知人の役者・もりちえが出演した関係からである。この劇団は自分のお気に入りの劇団の一つ。毎回最後に見せる大がかりな舞台転換が一つのウリにもなっていて、今回も最後にどのようなセットが現れるのか期待しての観劇であった。


舞台は九州のとある山村。その村では、年々かに一度訪れる盲目の祈祷師の一団をもてなし、祈祷をしてもらって神隠しをはじめとする災難を避けることを常としていて、今年もその村に4人の盲目祈祷師達がやってきた。物語は、彼女たちが村に滞在していた間に起こる、複数の事件が交錯してあらわとなる祈祷師たちと村人達の間に芽生えた恋。そして悲しい結末。祈祷師達の頭であるタケは老齢で村に到着してすぐに病に倒れ、医者の勧めもあって村に定住することになる。祈祷師達の二人目のコマメは4人の中で一番若いが、病のタケに代わって村のために祈祷を行う。彼女は村人の1人に好意をもっていたが、今は相手に婚約者がいることを知らされる。そんな折、村の娘が行方不明となり、コマメは自分の祈祷が不十分だったからと自分を責め、最後に1人山の中で自らの命を絶つ。3人目の祈祷師・ウタは盲目になったきっかけとなった銃の暴発事故を起こしたかつての連れ合いが今はこの村にいて、ハルという女性に銃を教え、ハルはイノシシ猟の中心的存在となっていた。一番新入りの祈祷師・カイ口が悪く粗暴なところもあるが、村人と良い仲になっていく。しかし、祈祷師達は定住は出来ない存在で、一定の期間村に滞在した後、祈祷師を辞めて定住するタケ、村人達には神隠しにあったことにしたコマメを除く2人に、水車の事故で盲目になったハルを加えた3人のグループとなって紅葉が美しい村から旅立っていくのであった。

舞台に作られたセットは、祈祷師達の寝起きする小屋が上手に、その世話人の詰め所が下手に、そしてそのセットと客席の間に池という手の込んだもの。嵐の場面では池に向かって水が振る注ぎ、最後のシーンではセットが左右に移動して舞台後方全体に美しい紅葉が現れ、観る者は息をのむ。
役者では相変わらず女優達が素晴らしい演技を魅せてくれた。特にコマメ役の大手忍、カイ役の板垣桃子、ハル役の松本紀保は熱演であった。男優ではハルに銃を教えた不知火役・深津能暁が、難しい役を上手くこなしていたのが印象的だった。

劇中歌も印象的(作曲・もりちえ)。上演時間は約2時間。笑いあり涙ありの演技と素晴らしいセットは今年観た舞台ではトップクラス。来年は3作品を上演予定だそうだ。この劇団は、今後も観続ける事になるだろう。

こっちとそっち

こっちとそっち

劇団時間制作

萬劇場(東京都)

2018/11/14 (水) ~ 2018/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

17日の午後、大塚の萬劇場で上演された劇団時間制作『こっちとそっち』のBチーム公演を観てきた。この数年観続けている劇団でもあり、今回は久しぶりに知人の古川奈苗が出演するとあって、期待を大にして出かけたのであるが、まさしく素晴らしい作品であった。

ネタバレBOX

上演後にあった劇団員によるアフタートークでの作・演出の谷碧仁によると、最近作品を書くときには題材とテーマを別に考えているとか。それから考えると、今回の作品は題材が「地域差別」であり、テーマは「孤独を含めた人と人の交わり」という事になるのだろう。
舞台は地域差別を受けている谷々皆にあるアパート。大家夫婦の妻・秋与は何かにつけ地域差別を意識し差別をなくそうとしているが、逆にその行動が差別を受ける側として差別する側に対して壁を作っている事に気付かない、高校生の長男慶太は引きこもりがちであったが、地域差別をなくそうという運動を行っている学校の生徒会の会長と級友によって、徐々に心を開き始める。
101号室の一流漫画家志望の二人の女性のうち美奈子の実力が花壇のそれより優れていることから担当編集の女性の動きもあって、美奈子は有名漫画家のアシスタントのなり、二人の友情は壊れていく。ちなみに、この漫画家達のエピソードのは地域差別はほぼ無関係だ。
102号室には、地域差別によって単純労働の日雇いしか働き口のない日本人とその同僚の中国人とインドネシア人が仲良く共同生活をしていた。しかし、外国人労働者の麻薬と暴行問題で三人はちりぢりに。孤独に悲しむ日本人労働者・裕也だったが、消え去っていた中国人労働者が裕也を慕ってアパートに戻ってきた。
202号室の今村真奈は地元・谷々皆地区にいた恋人と別れ東京で暮らし、新たな恋人を伴って戻ってきたのだったが男と価値観の違いに喧嘩ばかり、結局は男がアパートを去ることに。そこに、元恋人が新しい戸籍を買って名前も変えて現れる。元恋人と去って行った男の間で揺れ動く真奈は、結局去った男を追っていく。残された元恋人は、名前も戸籍も変えたのに地域に取り残されて孤独感にうちひしがれる。

いやぁ、毎回のようにこの劇団は重いテーマを2時間という枠の中に上手く収める芝居をしてくれて脱帽である。舞台上にセットを4面作って4つのエピソードを同時進行の形で展開していく演出とセットの巧みさは評価できよう。途中から目頭が熱くなってくる。これは話の内容に感動してというのではなく、登場人物達の抱く切なさというか運命の重さに、観る者として無力感というか絶望感というかそういう感情からこみ上げる涙なのだ。
唯一の救いは、大家の長男・慶太が学校の同級生ゆいと仲良くなる結末か。しかし、ゆいはその代償として生徒会長の紗子との関係が切れ、同時に他の生徒からのいじめの対象にされるかもしれないということが想像できるから、すっきりとした結末ではない。切ない結末の一つなのだ。

役者たちはみな演技達者であったが、そんな中で大家一家の妻役・岡村多加江、漫画家花壇役・古川奈苗、今村真奈役・松嶋沙耶香の演技が光っていた。そうそう、男優では相変わらず田名瀬偉年が難役を上手くえんじていた。
B型の女たち7

B型の女たち7

三ツ星キッチン

小劇場 楽園(東京都)

2018/11/06 (火) ~ 2018/11/11 (日)公演終了

満足度★★★

演劇情報サイト・コリッチのチケットプレゼントに当たったので、11日午後、下北沢の小劇場楽園で上演された三ツ星キッチンpresents第13弾『B型の女たち7』を観てきた。これは、血液型がB型の女優の中川菜緒子、たむらもとこ、そして伊東鈴の三人が毎年1回上演している作品で、タイトルに7とあるように今年で7年目を迎えた公演だそうだ。個人的にいろいろな公演情報を見てきたつもりだったが、こうした公演があるのを今回初めて知って期待して出かけた。

舞台はとあるマンション。偶然の出会いから、たむらもとこ演じる北川祥子(老舗和菓子店社長)の部屋に集まる中川菜緒子演じる高杉旭(政治家を目指す幼稚園の教員)と伊藤鈴演じる堀口裕子(デパ地下のスーパーバイザー)は三人とも血液型がB型という共通点の持ち主。今回は、旭の妹が、年齢が離れている上にがんで余命半年と宣告された男性と交際のけじめとして結婚したいという悲しくも感動的なエピソードを中心に、コメディ色の濃いB型女性ならでは?のドタバタあり歌ありのシーンで包み込んだ80分のステージ。個性的なマンション管理人も存在感がある。

舞台構成や話の展開はどちらかと言えばよくあるパターンで、目新しさはないものの、観客が舞台に集中できたのは、中川、たむら、伊藤の演技力と歌唱力の賜物だろう。言葉的に的確かどうか分からないが、いわゆる「娯楽」として楽しめる芝居だ。三女性のカラミや結婚話に深みはあまり感じられなかったのが、せっかくのシリーズ物舞台としては残念な気がした。

夜を、徘徊。

夜を、徘徊。

ものづくり計画

萬劇場(東京都)

2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了

満足度★★★

演劇サイト・コリッチの招待券プレゼントに当たったので、知人と11日午後に大塚の萬劇場で上演された、ものづくり計画『夜を、徘徊。』公演を観てきた。この団体の公演を観るのは初めてである。

題名から事前に劇の内容が予想しづらいのだが、8月のある日、高校時代の同級生の結婚式に余興を頼まれたOL・榊、専業主婦・小林、パチンコ屋店員・笹良、映画監督・神田の四人が故郷熱海の居酒屋に集まって一夜飲み明かす場面から始まる。そして舞台は高校を卒業からこの日までの回想が始まる。榊は女優業をやっていたが挫折してOLとなり、小林は子供を作らず優雅な夫婦生活を送っていたのが経済的に困るようになり、笹良は結婚せずパパ活をしていたが相手を好きになり振られ、神田は自分の思った映画が作れずプロデューサーや駆け出しアイドルに馬鹿にされながら映画を撮らなければならない現実に直面し・・・という過程を、途中に居酒屋のシーンを挟みながら断片的に次々と主人公を変えたシーンを繋いで構成なさた内容。まぁオムニバス的と言えば言えないこともない作りで、上演時間はおよそ110分。

登場する四人の苦悩、そしてこの四人だけでなく居酒屋の従業員達までも加えた登場人物全員が間接的に繋がっている輪廻的な作りは演劇にありがちな手法で、見所は苦悩する四人の心情をどう演技で表すかという演技上の点と、各人のつながりをどう関係付けるかという脚本的な点。場面がくるくる変わるのだが、それを上手く処理できているかと言えば、まぁ破綻無く見せていたと思う。一つの舞台で居酒屋、会社、パチンコ店、家庭、撮影原画を表さなければならないので、大雑把な作りの大道具も苦心の結果であろうと許せるレベル。居酒屋のシーンは、やや堅苦しさのある四人の生き様描写に対する息抜きシーンとなっている点で、アルバイト従業員(実は姉妹)の店長に対する横柄な態度もこれまた許せるレベル。終わってみれば、110分の舞台、飽きること無く見入ることが出来たのは、さて役者の力なのか脚本・演出の巧さなのか不思議な印象。思うに、余興を頼まれた四人の女性達を演じた役者の演技が十分ではないにしても上手く働いた結果なのだろう。個人的には、OLを演じた田中佳奈子と映画監督を演じた丹由美子の演技が気に入った。作品タイトルは、劇中で居酒屋の店長がつぶやく台詞の一部分なのだが、四人の生き様を徘徊と言えるかどうかは、実は観る側である観客の人生経験の濃淡で感じ方に違いがあるだろう。

この劇団、不思議と気になる。次回公演も観たくなった。

ハラミ

ハラミ

チームまん○(まんまる)

萬劇場(東京都)

2018/09/26 (水) ~ 2018/09/30 (日)公演終了

満足度★★★

9月28日午後、大塚の萬劇場で上演されたチームまん○第19発目公演『ハラミ』を観た。これは、知人の役者である高坂汐里が出演していた関係からである。開場時間と同時に会場に入ると、既に舞台上で役者による前説が始まっていて、以前この劇団の公演を観たことがあるのを思い出した。
 
さて、肝心の舞台だが、今回の作品は劇団旗揚げ公演のリメイクだそうだ。精子が卵子に到達するまでの様子を擬人化したものを核に、人の優劣は精子の優劣できまるのか?という問題にも触れていて、役者達は人間キャストと精子キャストに分かれての演技。中には一人で役をこなす役者もいて大変そう。
下ネタを得意とする劇団らしい題材を、上手く消化していたところは評価できるだろう。
ただ、総じて安直な演出だなぁと思われたのが残念。これは、たぶん扱うテーマやシーンが多すぎることが原因だと思われる、もう少し的を絞ってドラマが進行していれば、更に面白く、かつ有意義な舞台になるのではないだろうか。

二階から目薬

二階から目薬

劇団東京ドラマハウス

シアター風姿花伝(東京都)

2018/09/20 (木) ~ 2018/09/23 (日)公演終了

満足度★★★

コリッチのチケットプレゼントに当選したので、9月21日午後に目白のシアター風姿花伝で上演された劇団東京ドラマハウス第28回公演『二階から目薬』を観てきた。この舞台を観たいと思ったのは、タイトルに興味を覚えたから。文字通り目薬を巡る面白い話なのか、はたまたことわざを元にした出来事を扱った物語なのか。結果として、前説で後者の内容の舞台であることが明らかになった。ちなみに「二階から目薬」ということわざは、どちらかというと西日本で多く使われているもので、東日本出身者にはあまり馴染みが無いかもしれない。自分も関東地方出身在住なので、使ったことも聞いたことも稀である。

舞台は、今にもつぶれそうな大林製薬。起死回生の目玉として主力商品の水虫薬の改良を任されていた研究員・大源静一は会社では研究一筋のまじめな男として知られていたが、裏では研究内容をダメ社員と見られていた根津を使って独自に特許を取り、特許料で一儲けを企む顔を持っていた。しかし、彼が手下として使っていた根津は、親が考えた水虫薬の特許を大林製薬の社長に横取りされ自殺した事への復讐を企んでおり、大源に使われているように見せかけて実は大源を利用していた。彼は情報漏れの元凶ではと疑われ民事裁判にまでもつれ込んだ事案を探偵事務所を使って勝訴。というのも、探偵事務所の女性助手が根津の手下だったら。根津は結局大源と探偵事務所の探偵を死に追いやり、探偵助手の女性と計画の成功を祝う。舞台裏に消えた二人。わき起こるグラスのかける音。根津が探偵助手を殺害したのか、逆に探偵助手が根津を葬ったのかは観客の想像に委ねられた。

プログラムによると、この劇団は有限会社となっておりアクターズスクールも経営していることからしっかりとして演技の出来る役者が揃っているのではと思われたが、実際に舞台で演じる役者のレベルはごく普通というかありきたりの出来替え。敢えて言えば二面性を持つ登場人物である大源を演じた川瀬誠と根津を演じた北垣内将之の演技は良かった。反対に平凡だったのが小林製薬の専務役を演じた岩田裕弘。探偵助手役の清水愛菜は今ひとつ壁を越えたら良い役者になるだろうと思われた。そうした役者達による舞台が面白く思えたのは、恐らく話の展開に依るところが大きい。その展開の仕方が、まさに「二階から目薬」なのである。
ちなみに、この公演は出演者のうち大源役、専務役、老人役の3人のみシングルキャストで、たの登場人物はダブルキャストになっており、それぞれにフラスコチーム、ビーカーチームという名前が付けられていた。自分の観たのは、そのうちのフラスコチーム。役者達のさらなる精進を望みたい。

売春捜査官-熱海殺人事件-

売春捜査官-熱海殺人事件-

稲村梓プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2018/08/07 (火) ~ 2018/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/08 (水) 19:00

役者・稲村梓がつかこうへいの『売春捜査官』に出会い、プロデュース公演を初めて今回が5回目だとのこと。今回自分はコリッチのチケットプレゼントに当たって招待券で観ることになったのだが,前回の公演も観ており、2年連続で稲村のこの作品の舞台を観ることとなった、前回とは演出も共演者も異なる今年の公演で、稲村が役者としてどのように変化したかを確認したかった。

舞台の粗筋は、今回は省略する。毎年どこかの劇団が上演しているほど、このつかこうへいの作品は彼の代表作の一つと言える。

この作品の見所としては、2点挙げられるだろう。一つは、前半に見せる、木村部長刑事(稲村梓)が部下でゲイでもある万平(及川せいぞう)と転任してきた熊田刑事(田谷野亮)に突っ込まれてボケをかまして観客に笑いを起こさせるシーンと、二つ目は中盤から始まる熱海殺人事件の三人の関係者、リー先輩(及川の二役)、殺人犯の大山(小中文太)、殺されたアイ子(稲村の二役)の大山が殺人を犯すまでの三人のやりとりの緊迫感だろう。対称的な役柄を如何に稲村と及川が演じるかがポイントだったのだが、今回は前回公演よりもその対比が明確になっていたように思う。その明確さを創り出したのは、及川と小中の熱演であった。その二人に引っ張られて稲村も前回を上回る役者としてのパワーを見せた。ただ、張り切り過ぎて台詞を大声でがなり立て、台詞が明瞭に聞き取れない瞬間があったのが悔やまれる。その責任は、演出家に帰する問題であろう。
それにしても、稲村がプロデューサーとして選んだ役者達の質の高さには驚かされる。彼女はこの作品の上演を自分のライフワークと言い切っている。来年も上演するのだろうが、どのような役者達と演じてくれるか、今から楽しみである。

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