満足度★★★★
鑑賞日2018/08/08 (水) 19:00
役者・稲村梓がつかこうへいの『売春捜査官』に出会い、プロデュース公演を初めて今回が5回目だとのこと。今回自分はコリッチのチケットプレゼントに当たって招待券で観ることになったのだが,前回の公演も観ており、2年連続で稲村のこの作品の舞台を観ることとなった、前回とは演出も共演者も異なる今年の公演で、稲村が役者としてどのように変化したかを確認したかった。
舞台の粗筋は、今回は省略する。毎年どこかの劇団が上演しているほど、このつかこうへいの作品は彼の代表作の一つと言える。
この作品の見所としては、2点挙げられるだろう。一つは、前半に見せる、木村部長刑事(稲村梓)が部下でゲイでもある万平(及川せいぞう)と転任してきた熊田刑事(田谷野亮)に突っ込まれてボケをかまして観客に笑いを起こさせるシーンと、二つ目は中盤から始まる熱海殺人事件の三人の関係者、リー先輩(及川の二役)、殺人犯の大山(小中文太)、殺されたアイ子(稲村の二役)の大山が殺人を犯すまでの三人のやりとりの緊迫感だろう。対称的な役柄を如何に稲村と及川が演じるかがポイントだったのだが、今回は前回公演よりもその対比が明確になっていたように思う。その明確さを創り出したのは、及川と小中の熱演であった。その二人に引っ張られて稲村も前回を上回る役者としてのパワーを見せた。ただ、張り切り過ぎて台詞を大声でがなり立て、台詞が明瞭に聞き取れない瞬間があったのが悔やまれる。その責任は、演出家に帰する問題であろう。
それにしても、稲村がプロデューサーとして選んだ役者達の質の高さには驚かされる。彼女はこの作品の上演を自分のライフワークと言い切っている。来年も上演するのだろうが、どのような役者達と演じてくれるか、今から楽しみである。