バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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毒花ーDOKKA-

毒花ーDOKKA-

危婦人

駅前劇場(東京都)

2015/01/08 (木) ~ 2015/01/13 (火)公演終了

満足度★★★★

コミカルだけど、ちゃんとミステリーでした。/約120分
劇団初見。

演出や演技に粗さが目立ったものの、“客をくすぐってでも楽しませてやろう!”ってな飽くなきサービス精神がひしひしと伝わってくる、好感の持てる団体でした。

お陰でミステリーなのにギャグがてんこ盛り!

ほとんどは楽屋オチか役者頼みの力技ギャグで、半分くらいは失笑でしたが、それでも笑ってしまうこと度々で、私が会場内で一番ウケている客だったかもしれません。

駄ギャグでも、フルスロットルで演じられるとやっぱり笑ってしまう。


それでも後半はギャグを抑えめにしてしっかりミステリーとしてまとめ上げてくれ、ミステリー慣れしてないことも手伝ってか、謎が明かされていくプロセスを無心に堪能。

笑ったし、謎解きも楽しめたし、小野真弓さんも見られたし、きっちり元は取らせてもらいました(笑)。

新年工場見学会2015

新年工場見学会2015

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2015/01/02 (金) ~ 2015/01/04 (日)公演終了

満足度★★★★

二団体とも大衆娯楽作品のパロディを上演/約210分(休憩込み)
五反田団の本拠地・アトリエヘリコプターで毎年行われている新春興行を去年に続いて観劇。
五反田団とハイバイ、それぞれの演劇作品を主体にした3時間半。
スシ詰めの客席でこれだけの長丁場に付き合うのはかなり消耗するものの、観ているだけでヘロヘロになるほどの長時間興行を正月返上で稽古して見せてくれる二団体には感謝あるのみ。

演目は二団体とも大衆娯楽作品のパロディ。
とはいえ、同じ大衆娯楽作品でも全然異なるジャンルのものを元ネタにしているので、それぞれに楽しめた。

五反田団主宰の前田司郎と黒田大輔、齋藤庸介の3人がダラダラと駄弁を繰り広げる幕間のトークにも笑わせてもらいました。

ネタバレBOX

五反田団は持ち前のグズグズ、グダグダした演技体でヤクザ映画のパロディを上演。
しかし、締めるべきところは締めてあるのでちゃんと緩急がついており、90分間退屈せず。
二つの暴力団の抗争を軸に話は進み、一方の前田組は主に裏ビデオの製造・販売で金を得ているという設定。
前田司郎演じる組長が組員たちに“売れる裏ビデオ”の案を出させる大喜利風のコーナーが面白く、組員役の役者たちが役を超えて各自の性癖を吐露する展開には爆笑!

実在のRPG演劇を基に作品を創ったハイバイは、シリアスなようで実はかなりバカバカしい物語を、主役男性の「熱演」によりバカバカしさを強調する形で上演。
主役男性が普通のセリフを言うだけでその都度笑いが起きていたのは、この岩井流演出に依るところ大であるはず。

ヤクザ映画にもRPG演劇にも疎い私は、両作品のストーリーそのものに引きつけられ、時に笑いながらも終始前のめりで二作品を鑑賞した次第。


ギターとテルミンの男女デュオ・プーチンズのミニライブで印象的だったのは、冒頭に演奏された『summer samba』。
テルミンが主旋律を奏でることで、耳あたりがいいだけで大した印象を残さないあの曲に幽玄な味わいが加わって、うっとりと聞き入ってしまった。

うぇるかむ★2015〜革命の夜明け〜

うぇるかむ★2015〜革命の夜明け〜

革命アイドル暴走ちゃん

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2015/01/02 (金) ~ 2015/01/04 (日)公演終了

満足度★★

最後まで冷静さを捨てきれず。できれば狂いたかったなぁ…。
この団体を観るのは前作『騒音と闇』に次いで二度目。

冬という時節柄を考慮したのか、会場が許さなかったのか、あるいはその両方なのか、今回は水の放射もひゃっこいワカメや豆腐の投擲も無く、最後まで冷静なまま鑑賞。

醒めた意識で観るお祭り騒ぎはただの狂騒にしか感じられず、残念ながら前作ほどには楽しめなかったというのが正直なところ。

この団体が作り出す集団的躁状態が、水や食物を浴びせる演出にどれだけ多くを負っているかがよく分かった。

冷たい水や食物にまみれるという共通のショックを味わうことで作り出される連帯感が望めない分、キャストは劇場あげての一体感を作り出すべく、もっともっと客に働きかけ、狂乱に導く必要があったのではないだろうか?

無論そういう努力は見受けられたが、まだまだ足りないと思われた。

私同様、冷静さを捨てきれずにいるお客さんは他にも多くいた印象。

ネタバレBOX

今作は水や食べ物の飛来こそなかったが、男女混成の若手集団がクールジャパン的アイテムやポップな小ギャグを繰り出しながら狂騒的に踊るのも、しまいに皆がスクール水着姿になるのも、前作と一緒。
作品ごとに趣向を変えていかないと、そのうち一見さんと推しメンのいるお客さんしか喜ばなくなってしまうのではないだろうか?

あと気になったのは、水や食べ物の代わりに巻かれた紙吹雪。
一片一片が大きく、しかも素材が固いので、
目を傷つける恐れあり。
もっとやわらかい紙を細かく千切って撒かないと危険。

止まらずの国

止まらずの国

ガレキの太鼓

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/12/19 (金) ~ 2014/12/30 (火)公演終了

満足度

旅人たちが内輪で盛り上がっているだけの自閉演劇/約95分
今回、2度目の再演だという。

つまり、もう3度も上演しているということ。

そこまでの作品だろうか、というのが正直な思い。

中東某国の日本人向けゲストハウスで旅人たちがウダウダとくっちゃべったり空騒ぎを繰り広げるばかりで、ともかくドラマ性に乏しい。

交わされる会話も海外旅行や諸国の事情にまつわるトリビアルなものがほとんどで、普遍的な面白味に欠け、海外を舞台にした柄の大きい作品というより、旅オタクが内輪で盛り上がっているだけの自閉演劇という印象。
外に対して開かれている感じがしないのだ。

しかし、ドラマ性に乏しいのは当然っちゃあ当然で、ハウスに居る者らはしょせん行きずりの関係に過ぎず、そこにはしがらみもなければ深刻な利害対立もなく、ドラマが生まれる素地がない。

演劇に限らず多くの劇が会社やイエ、学校、国家など、広義の組織を作品の舞台に据えている理由がよく分かる。
しがらみ、厳しい掟といった縛りのないところにドラマは生まれにくいのだ。

日本人向けのゲストハウスという、人間関係が流動的で固定せず、大したしがらみもない場所でこれといったドラマが生まれないのは当たり前なのである。

しかも、旅慣れている者らはトラブル慣れしていてマイペンライな気風の者が多いのか、些事にぐじぐじ思い悩まない。
これがドラマ性の乏しさに拍車をかける。
MCRの作品なんて、些事をぐじぐじうじうじと思い悩む女々しい人物しか出てこないが、嫉みやそねみ、憎しみなどに支配された小人物同士のぶつかり合いがなんとも面白いドラマを生んで、とても見応えがある。
ところが本作の主要人物は小さなことを気にしない「立派」な人たちばかりなので大きな諍いは起きず、したがって大したドラマも生まれない。

作・演出家は自身、海外経験が豊富なようで、本作でゲストハウスに長居している“旅の達人”たちに近い人なのかもしれないが、彼らのような“細かい事を気にしない寛大な人物”を目指すのでなく、もっと小姑みたいな人物を目指したほうが良いのではないだろうか?

些事にいちいち固執したほうがいろんな事を考えるだろうし、そういう生活を送ったほうが作品のアイデアも生まれやすくなると思うのだ。

しかし、海外経験が豊富なのも考えものだ。
その場合、作り手はどうしたって国外での貴重な経験を作品に生かそうとするだろうし、そうした創作態度は結果として作風を狭めることになる。
事実、海外経験を礎にした本作は3度も上演されているわけで、2度も再演する代わりに全く別趣向の作品を1本でも2本でも作っていれば、それだけ作風も広がったはずなのに。。
まったく、残念と言わざるをえない。

とはいえ、海外経験に材を取る本作のような演劇が少なからず作られてしまうのは、海外経験が豊富な者を“広い見聞を持つ豊かな人物”として崇めがちな日本人の国民性にも一因があろう。
海外行きだけが見聞を広げるための方途ではなかろうに。。
海外通にしか見出しえない人生の真理があるのと同様、仕事のできないサラリーマンにしか見出しえない真理、引きこもりにしか気づきえない真理、破産経験者にしか知りえない真理…等々、世の中には色んな真理があるはずで、それぞれの真理に至るための道筋は様々。
単純に海外へ飛べばいいってもんではないのである。

ネタバレBOX

本作は登場人物も魅力薄。どころか、「旅の達人」2名にいたっては大いに鼻についた。

まず、ヒゲ面。自分を大きな人物に見せたいのか、わざと「呑気を気取る」勿体ぶった態度にイライラ!

次に、何かにつけ「悟ったような」物言いをするサンさん。
ちょっとばかし海外経験が豊富なくらいで偉そうにするな!!

空想科学

空想科学

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2014/12/21 (日) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★

色んな観方ができそうな一作/60分弱
人生を大局的に捉えた場合の青春期の儚さ、儚いがゆえのきらめきが切なくも美しく描かれていて、ジ~ンとさせられた。。

青春を謳歌するカップルと、喪服姿の三人組がどう交わるのかも見モノ。

『空想科学』というタイトルが呼び起こすものからは大きくかけ離れた内容だったが、空想に多くを負った劇であるのは間違いない。

ネタバレBOX

飲み会帰りにエッチして名前も知らないままに付き合い始めた、チャラ男とチャラ子から成る若いカップル。

地味に生き六十数歳で独身のまま死んだ叔母の遺品整理にあたる姉妹と、姉のほうの夫。

無関係に思えた二組が交差して判るのは、恋とは一生無縁だったと姪たちに思われている地味な叔母の若き日の姿こそ、他ならぬチャラ子だということ。

私はこの点に感動!

その人生に楽しいことなど無かったと思われている叔母にも、行きずりのセックスから恋に落ちるような青春の一ページがあったと判り、私は正直、救われた思いがした。

馴れ初めこそチャラくとも、斉藤マッチュ演じる遊び人風の男・ユウスケに川田智美演じる若き日の叔母が一途に惚れ込んでいく様子は健気で微笑ましく、そんなキラキラしたひとときを束の間でも持てた叔母を私は「良かったですね」と言祝いであげたい気分に。
叔母は「ユウスケが淋しい思いをしないように、私はユウスケより長生きして大往生するんだ(笑)」とさえ言っており、その一途さには心打たれた。

「束の間」と書いたのは、ユウスケは行きずりのセックスを終え眠っている間(ま)に斧を頭に振り下ろされて惨殺されており、ほどなく天に召されるのは間違いないから。

そう、ここまであえて書かずにおいたが、若き日の叔母が惚れたユウスケは幕が開いた時点ですでに死んでおり、頭に斧が刺さったまま叔母とホテルで過ごしているのだ。そして叔母は相手が死者であるのを承知の上でユウスケと過ごしている。

死んでいるユウスケが煙草を吸ったり叔母と口を聞いたりとまるで生きているかのように振る舞うのも不思議なら、叔母の年長の姪であるのぞみの夫が殺害者であることもおいおい判って、話はますます混迷。

接点などあるはずのない二人は夢の中で出会い、のぞみの夫は夢に出てきたユウスケを妻の叔母の元カレだとはつゆ知らないまま殺してしまったらしい。

いや、「妻の叔母の元カレ」も何も、話がここまで荒唐無稽だと叔母とユウスケのセックスもそこから始まる交際も現実の出来事だったのか疑わしく、二人が出会ってなかった可能性も、そして叔母もその遺品整理をする姪たちも誰も彼もが存在してない可能性も否めなくなってくる。

そう、演劇なんて所詮は空想の産物であり、舞台上で起きることはすべて現実なのだと客が思いなすことによってかろうじて成立しているに過ぎないのだ。

しかし、演劇というものがそこまで恣意的に作られているのなら、それを客が恣意的に解釈する権利だって認められていいはず。

そこで私は本作をこう解釈する。

死んでいるというのは劇を面白くするための設定に過ぎず、ユウスケはあの時たしかに生きていたし、叔母はたしかにユウスケと幸せなひとときを過ごしたのだと。

いや、そうとでも考えないと、あまりにも叔母が浮かばれない。

山笑う

山笑う

僕たちが好きだった川村紗也

新宿眼科画廊 スペース地下(東京都)

2014/12/19 (金) ~ 2014/12/24 (水)公演終了

満足度★★★★★

川村紗也が松本哲也と組んで宮崎弁演劇に挑戦/約90分
ちょっぴりワケありな家庭が舞台の一幕劇。

骨子だけを取り出すならば話はかなり王道的で、まかり間違えば凡作に終わっていた可能性も。

しかし、作・演出を手がけたのは小松台東の松本哲也。
実家に不義理していた妹が男連れで帰省して兄と揉めるという、どこにでもありそうでなおかつ苦い話を、ちょいちょい入るおマヌケな脱線トークとドタバタ騒ぎでショーアップし、とても面白く見せきる。

松本作品は少なからず観ているが、一、二を争う傑作。

主宰兼主役のあの人が可愛いのはもちろん、荻野友里という青年団所属の女優さんがまた絶世の美女ときて、男性満足度の高い一作でもあります。

なお、会話がほぼ宮崎弁でなされる松本作品ゆえ、津軽弁劇団・野の上を率いる山田百次もキャストの一人として宮崎弁でお芝居。
津軽訛りが入った独特の宮崎弁は聴きモノ。

ネタバレBOX

宮崎から上京後ほぼ音信を絶っていた妹が、母の通夜に出るため久々に、しかも10コ上の兄と同い年の婚約者を連れて実家に戻る。

これに怒った兄・伸夫と妹・菜々が和解するまでの話。

母に溺愛されていた伸夫と、兄びいきの母を憎んでいた菜々の間の溝はなかなか埋まらないが、修羅場を覚悟して帰ってきた菜々に優しく接する兄嫁、赤ちゃんの頃から菜々を可愛がっていた兄の親友・英二らが兄を懸命になだめにかかり、兄妹は最後の最後に仲直り。

二人きりで話し合っても果たされなかったに違いない兄妹の和解が、周囲の人々の協力によってなんとかかなうところに人間ドラマとしての醍醐味があり、私は大いに引きつけられた。

そしてまた終幕がいい。

兄との雪解けが成ったあと部屋に一人きりになった菜々は、憑き物が落ちたかのような清々しい表情で自分のために茶を淹れる。

これだけでもジ~ンとくるのに、なんと菜々は、“お茶が美味しくなるおまじない”として母が生前やっていた、掌で茶碗に蓋をするような仕草を晴れやかな笑顔でひとりやってのけるのだ。

それまでの話を通じて母との確執を知らされていただけに、これには感動!

一人芝居で劇を締めるのはハンパない緊張が伴うはずだが、菜々役の川村紗也はこれを立派にやりこなしていて、お見事。

この素晴らしいラストシーンあっての5つ星です。
象はすべてを忘れない

象はすべてを忘れない

ままごと

象の鼻テラス(神奈川県)

2014/12/05 (金) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★

昨年に比べると...
昨年の好評を受け、今年もこの催しをやることになろうとはたぶん柴さんは考えていなかったはず。

それゆえの苦労がひしひしと伝わってきた。

好評ゆえの第二弾なのだから大きく中身は変えたくないが、去年と大差ないと私はじめ去年もこの催しに触れた者から不評を買いかねない。

そんな悩める心情が手に取るように伝わってきたのだ。

結果、柴さんが取った道は、たぶん去年いちばんウケた象の鼻スイッチをはじめ数企画のみを残し、ほとんどは新企画で勝負するというもの。

その意気や良し!

ただ、出来映えはと言えば、星の数で示した通り。

私がこの催しに触れるのが去年に次いで二度目であり、一見さんほどには新鮮味を感じにくいことを考慮しても、やはり星は3つ。
高評価はしづらい。

その理由はネタバレにて。

ネタバレBOX

まず、テーマがはっきりしない。

去年から引き継がれた『象はすべてを忘れない』という表題に込められている“記憶”というテーマへのこだわりが、今年は去年よりも薄いのだ。

記憶というテーマが弱まった分、それを補うかのように今年は“旅”というサブテーマが打ち出されており、「○○ツアー」と題された小ツアーがいくつか用意されているのだが、
これもちょっと頂けない。

キャストによるガイド音声が客を不思議なお散歩へと導くツアーが10種近く、キャストが象にまつわる物語を語りながら象がらみの名所へと直接案内してくれるツアーが2種とコンテンツは豊富ながら、内容の重複が甚だしいし、後者のツアーはそれぞれ所要時間二、三十分、前者のツアーも所要時間十分超えのものが複数あるなど、気軽に参加しづらいのだ。

時間が十分以上もかかるとあってはいささかハードルが高く、会場の象の鼻テラスをたまたま訪れた人が参加する可能性は低い。
これでは「演劇とすれ違う」というこの催しの趣旨に反するのではないだろうか?

演劇と無縁に暮らす人々の興味を少しでも演劇に向けることがこの催しの一番の目的であるはずなのに、これではその狙いが果たされない。

それに、音声ファイルがガイド役となる前者のツアーは、客がイヤホンから聞こえてくる声に従い会場付近を一人で歩く羽目になり、とても淋しい。
私も体験したが、一人行動には慣れっこ(爆)の私でさえ冷え冷えした気持ちになったほどなので、一見さんがこのツアーを体験した場合の心淋しさといったら想像するに余りある。

新機軸としては他に短編演劇の上演があり、上演がある日を選んでテラスに出向いた私はこれを鑑賞。
しかしながら、短編演劇というよりは“寸劇的余興”といった感じで、正直、食い足りなさが残った。

この公演を観るためだけにわざわざ横浜まで来た人も大勢いたようだが、果たして彼らは満足したのだろうか?

さらに言うなら、二十分という上演時間は演劇ファンには短くても、たまたまテラスに立ち寄った、これから演劇に出会うべき人にとってはやや長く、これもやはり「気軽に楽しめる」代物だとは言い難い。

事程左様に、新規の企画で大成功に終わったものは一つもなく、それが星3つの所以。

「出前ダンス」「出前紙芝居」など、去年は気軽に楽しめるコンテンツがもっと多く、たまたまテラスにいた皆さんがどんどん「注文」を出して「演劇とすれ違」っていたのに、なぜあれらの企画をなくしてしまったのだろう?

なくなったと言えば、私が去年最も感銘を受けた企画「人間モニュメント」が消えていたのも惜しまれる。

象の鼻テラスの所在地・横浜の港を彩るモノたちをテラス内外に散ったキャストたちが一斉に身振りで表し、しばし静止するあの試みは“記憶の形象化”の試みといってよく、テーマに合致しているし、何より、夕闇に浮かぶキャストたちのシルエットがとても美しかった。

去年から大幅に中身を変えた柴さんの気概は
素晴らしい。

とはいえ、やはり、いいモノは残しても良いではないだろうか?

中身の変化が乏しいと私のような演劇好きが文句をつけるかもしれないが、ゾウノハナシアター目当てでなくたまたまテラスに寄った人が何年も連続でゾウノハナシアターに触れる可能性はかなり低い。

ならば、優良な企画はマイナーチェンジをつけさえすれば連年やってもさして問題はないはず。

私はそう思いました。
○○階から望む 〜集合住宅編〜

○○階から望む 〜集合住宅編〜

Baobab

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了

満足度★★★

ソロダブルビル/約60分
 Baobab主宰の北尾亘とメンバーの米田沙織が順にソロダンスを披露。
 
 じつは本公演に先立ってこちらのほうも観てました。

 なんでも、各自の世界観を尊重すべく互いの作品には一切口出ししなかったそうで、それぞれがそれぞれの舞踊世界を展開。

 ツカミが強烈だったこともあり、どちらかと言うと私には北尾作品のほうが楽しめた。

ネタバレBOX

『鴨が葱しょって』と題された北尾作品では、葱ならぬリュックをしょって現れた北尾さんがJ-POPのヒットチューンをバックにのっけからフルスロットルで踊り出してビックリ!
操り人形の如き機械的でギクシャクした動きの中にどこか柔軟性をも感じさせるユニークなダンスを超高速でエネルギッシュに踊りきって、その圧倒的な演舞に目は釘付けに!!

このキャッチーなオープニングパフォーマンスから一転、以後は床に這いつくばって身悶えるように踊ったりとやや取っつきづらいダンスが続いたが、オープニングでつかまれたので余勢で観ることができた。

米田沙織の『舌足らず、ダリア泣ク。』は、電車で立ったまま寝入った人が右へ左へ身を傾がせる様子を舞踊化したような独特のダンスからスタート。

これが面白くて期待したものの、以後のダンスは最初のダンスに比べると具象性に欠け、残念ながらよく分からなかった。

ダンスは理解するのでなく感じるものなのかもしれないが、ダンスを見慣れてない私はどうしたって意味を求めてしまう。
 
○○階から望む 〜集合住宅編〜

○○階から望む 〜集合住宅編〜

Baobab

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了

満足度★★★★★

群舞によって都市に生きる人々を生々しく表現した素晴らしいダンス公演。劇伴音楽も◎。/約70分
都市部のマンションの各階、各部屋に住む住人達の生態をキャスト6人が群舞で表現。

ダンス公演は見慣れていないが、ここまでの表現がダンスには可能なのかと驚き入った。

群舞と言っても、一部の場面を除いて動きは揃っておらず、むしろ、てんでバラバラな動きを通して住人達の生活サイクルの違い、相互不干渉、といったものを表現している印象。
そこに家族世帯はなく、皆が単身者のように見えるのがいかにも都市部のマンションらしい。

客席から住人各自の暮らしぶりを一望のもとに眺めるのは、実際にはありえないスケルトンのマンションに暮らす彼らを少し離れた場所から観察しているかのようで、ずっと見続けるうち想起されるのは、当日パンフでも言及されていた蟻の巣穴キット。

樹脂が詰まった透明な板の中で蟻たちが樹脂に巣穴を掘り、巣穴を拠点に暮らす様子が一望できるあのキットを見ている気分にさせられながらも、しかし私には、キャストたちが蟻というよりゴキブリに見えた。

本作は床を這いずりながら身悶えるように踊るダンスが目立ち、粘着的に踊るその姿が逆境にもめげずしぶとく粘り強く生き続けるゴキブリを私に想起させたのだ。

しかし私はこれに打たれた。

ネタバレに記したアクションを色んなキャストが繰り返すことにより、本作は一方で死を強く想起させるが、まだ死なない者らは厳しく淋しく味気ない都市生活という逆境に耐えながら頑張って生きている。

私はそんなメッセージを本作から勝手に受け取り、大きく力づけられた次第。

生命力の乏しさをかねてから痛感している私だが、そんな私も神の目には、ゴキブリのようにしぶとく生きる野蛮な生き物に見えているのに違いない。

ネタバレBOX

本作は、特に終盤、飛び降りを思わせるアクションが頻出。
しかしその動きにすら生の躍動感が感じられ、自殺に駆られる人間とても事切れるその時までは生きる力に満ち満ちているのだと感じた私は妙な感動を覚えた。

シンデレラの一部

シンデレラの一部

ダックスープ

ザ・スズナリ(東京都)

2014/12/11 (木) ~ 2014/12/17 (水)公演終了

満足度★★★★

言わば企画モノ。なれど、蓋を開ければ、毎度ながらのブルー&スカイ流どナンセンスコメディ(笑)。/約100分
原作では数行で処理されるが、実際にやるとなればそう簡単に事は運ぶまいということで、ガラスの靴が合う女性を王子の家来達が探すくだりだけで一本の長編芝居を作ろうという試み。

ブルー&スカイらしい、とても素晴らしい発想。

ただ、蓋を開けたら、シンデレラのあのくだりとは無関係に成立しているボケやギャグが結構あって、「これじゃあ毎度ながらのブルー&スカイ流コメディじゃん!!」とツッコミを入れたくなった次第。

ここはもっと原作に寄せた作りにして、他のブルー&スカイ作品にはない独自性を出して欲しかったところ。

とかなんとか言いながら、随所で笑ってしまったのですが…。

ネタバレBOX

好きなシーンは、原話に出てこない医者のもとへ、これまた原話に出てこない薄汚い青年が「医師免許を取ったんで働かせて下さい」と訪ねてくるくだり。
その「医師免許」とやらが、ハンドボール大のピカピカした只の黒い球体なのには死ぬほど笑った。

しかるべき事が書かれた紙切れが医師免許だという動かしがたいこの常識に揺さぶりをかけるこのぶっ飛んだ発想は一体どこからくるのか!?

度胆を抜かれた。
あの子と旅行行きたくない

あの子と旅行行きたくない

月刊「根本宗子」

BAR 夢(東京都)

2014/12/13 (土) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

とにかく楽しい!!! この1年の憂さ晴らしに最適な、頭を空っぽにして楽しめる忘年演劇!/30分強
ちょっとネガティブ寄りなタイトルがついてますが内容は全然暗くなく、ある事を決めるため女子4人が話し合いを持ち、オバチャンみたいなアホトークをフルスロットルで繰り広げるとってもハジけた会話劇。

もちろん脚本は根本宗子が書いてるので、交わされる会話はそこらのサ店で耳にするオバチャントークよりもくだらなさとバカバカしさに磨きがかかっていてずっとずっと面白いし、話の脱線が相次ぐあたりもオバチャントークっぽくて楽し。
ちょっとだけ観客参加の要素が入っているのも楽しさに拍車をかける。

オチも見事で、ほんとほんと大満足!!
時を追うごとに盛り上がりが増していく、コメディのお手本のような一作でした。

そういえば前回のバー公演は根本さんが作・演出に徹していて、キャストも兼ねたほうがいいとこちらで述べさせてもらったが、本作を観てそのことを実感。

中立的位置からみんなをいさめる役回りで根本さんが出ているほうが話が安定し、劇が観やすくなる。

ネタバレBOX

同じ職場で働く女子たちが社員旅行の行き先を決めるため始業前に話し合いを持つ会話劇。

ユニフォームなのか、4人が4人とも赤地にAマーク入りのダサいポロシャツを着ているのがツボでした(笑)。
トーク中、ポロシャツのことに誰も触れないのがまたいい(笑)。

あれは誰の見立てなのか??

ナイスなダサさに打たれました(爆)。
【ご来場ありがとうございました!!】媚媺る、

【ご来場ありがとうございました!!】媚媺る、

ロ字ック

小劇場B1(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★

あの女性キャラクターは果たして必要だったのか?/約120分
 不条理劇やコメディならともかく、人間ドラマの登場人物として、イカれきったあの女性キャラクターは有りなのか?

 性格付けが極端すぎて現実離れしており、あそこまでアクの強い女が身近にいない多くの観客は、“私の住む世界と劇世界は別”と考え、舞台との間に心理的距離を置いてしまうのではないだろうか?

 これでは劇にのめり込めない。

 事実、私がそうだった。

 あの女性キャラクターを出すのなら、もうチト“まとも寄り”なキャラ付けをし、ギリギリ身近にいそうなリアリティをまとわせないと、客は劇中の出来事を“我が事”とは感じず、人間ドラマとしての本作の吸引力は大きく減じてしまう。

 ある連続殺人事件の被疑者女性がモデルだそうだが、モデルが実在の人物でも、その人物を基にした劇中人物の言動・行動が常軌を逸しすぎていれば、客は劇にまともに取り合わなくなる。

 しかも、曲者すぎるその女はおのずから物語の攪乱役を担わされて悪目立ちし、思うようにいかない現実に苛立つ2人の女性キャラクターの存在を霞ませる。

 あの2人こそ、もっとしっかり描かれるべきではなかったのか?


ネタバレBOX

「あの2人」とは、入浴剤メーカーに中途入社したくだんの狂女・森谷に、幸福からはほど遠い人生をさらにメチャメチャにされる白石とマリ。
 
 内気な性格を直し腹が立ったら怒(おこ)れる人間になろうと努める社内の日陰者・白石は、後輩社員となった森谷の口車に乗せられて悪事を働き、性格の克服云々以前に職場での立場をさらに悪くし、クビ一歩手前の状態に。

 男を寝取ることを生き甲斐とし職場恋愛中の男子社員とつぎつぎ関係を持つ森谷に学生時代、カレシを奪われたことのあるニートのマリはひょんなことから森谷と再会し、森谷に怯えてますます家に引きこもるようになる。

 こうして、白石とマリの人生はメチャメチャにされ、2人の葛藤の物語という性格を強く持っていた本作自体もメチャメチャに…。森谷に生活をかき乱されて、葛藤もへったくれもなくなってしまうのだ。
 2人の心模様に最注目しながら鑑賞していた身としては、誠に残念。
 
 
 

 ここであらためて言う。
 
 森谷という登場人物は果たして必要だったのか???

  
超天晴!福島旅行

超天晴!福島旅行

笑の内閣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★

フクシマの扱いづらさを扱った野心的コメディ/約105分
ぶっちゃけ、今の日本でフクシマのことはとても扱いづらい。
その扱いづらさそのものを、会議劇の形を借りて真っ向から扱ったチャレンジングな一作。

しかも意気込み倒れには終わっておらず、論戦を通してフクシマの扱いづらさを分かりやすく表現するかたわら、単調になりがちな会議劇に派閥抗争劇や男女のドラマを織り混ぜたストーリーは役者勢の力演・熱演も手伝って吸引力大。

コメディとしても風刺的なネタ、ドタバタギャグ、ニッチな小ネタ、アゴラグループをいじくる楽屋オチなど種々の笑いが詰まっていて面白く、役者勢のメリハリの効いた演技が可笑しみに拍車をかける。

あひるなんちゃらがベスト劇団の私にとってどストライクな作風ではなかったものの、かなり楽しませてもらったので★は4つ。

あの名曲のパロディソングも、詞・曲ともに出来がよいうえ、歌い手の女優さんの歌唱力もグンバツで、堪能!


原発問題への斬り込みがやや浅いかな?って気はしたが、あまり深く斬り込みすぎると話が重くなりそうだし、コメディとして成り立たせるにはあれくらいで丁度良かったのではないだろうか?

ネタバレBOX

修学旅行の行き先を例年通り北海道にするか、副校長らの提案する福島にするかで教師達が激しくやり合う会議劇。

そんな中、ただひとりブルガリア行きを主張する天然女教師に扮した楠海緒さんに引きつけられた。

彼女のホンワカしかキャラクターは、全体的にハイテンションでアッパー系なこの劇の良い中和剤になっていたと思う。
濵中企画「かげろう」

濵中企画「かげろう」

濵中企画

アトリエ春風舎(東京都)

2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★

『かげろうための』より高水準
福島は久ノ浜の被災女性がインタビューに答えて語った、あの大災害からの3年半ー。
その語りを女優2名、男優1名、計3名の役者が再現する試み。

これと同趣旨の作品『かげろうための』も4か月前に観ているが、今作のほうが出来がいいのは、取材相手の違いだけに起因するものではないだろう。

役者勢の背後に映し出される久ノ浜の映像、映像と語りの相性、反復や同時発話によるフレーズの強調、強調されるフレーズの選択。
前作より見応えがあったのは、おそらく、以上すべてが前作よりも高水準だったからに違いなく、スキルアップの痕跡がありありと見て取れた。

進境著しいのは役者も同じで、殊に、語っている被災女性の心の移ろいを繊細に表現した横地梢さんの“表情の演技”には強く引きつけられた。

濱中企画 『久之浜ワークインプログレス:能 弱法師/かげろうための』

濱中企画 『久之浜ワークインプログレス:能 弱法師/かげろうための』

濵中企画

アトリエ春風舎(東京都)

2014/08/10 (日) ~ 2014/08/12 (火)公演終了

満足度★★★

たかだか200円のことでげんなり。。。
2本立て公演。

一人芝居『能 弱法師』をより面白く鑑賞。演じ手の若手女優の狂気の舞に魅せられた。

ただ、200円也のせんべいを買わないと終演後の茶話会に出られないのはいかがなものか?
客の意見をもらってその上せんべいまで売りつけようなんて、演劇を始めて間もない若手のすることではない。

そもそも、せんべいの嫌いな客だっているはずではないか?

結局茶話会には出ずさっさと帰った。

漏れて100年

漏れて100年

突劇金魚

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/11/29 (土) ~ 2014/12/02 (火)公演終了

満足度★★★

正直、あまり取っつきやすい劇ではありません。/約100分
思いっきり抽象的で作品につかまるための安定した取っ手がなく、かなり取っつきづらいお芝居。

笑い、恐怖、謎といった取っ手がしっかりと付いていれば、それらをよすがに鑑賞できるが、それらの取っ手は劇に身を固定するにはいずれも脆すぎた。

サリngROCK作・演出の芝居を観るのはOn7『痒み』に次いで2度目だったが、ちっぽけな人間の営為を対象から遠い場所からまるで観察記録でもつけるように淡々と描く作風は2作品に共通。

ただ、前半に日常劇の要素があり、全体に笑いも多めな『痒み』のほうが、本作『漏れて100年』よりもずっと取っつきはいい。

一方、本作は神話さながらにスケールがでかく、描かれる世界は我々の暮らす日常から大きくかけ離れていて、“大きな世界の中のちっぽけな人間”を描いてはいながらも、どうにも取りつく島がない。

ゆえに私も“対象から遠い場所から”眺めるように劇を観ざるを得ず、引き込まれるまでには至らなかった。

ただ、劇中に登場する不思議な生物や植物が面白く、また、とても好きなギャグが2つほどあったので、★は3つ。

ネタバレBOX

「さち」という名の少年が“終末以後”を思わせる荒涼とした世界で「仙人」と呼ばれる老婆や「無限」と呼ばれるオッサンら数少ない人間たちと関わりながら100年を生きる話。

半径3メートルの世界のことで頭の中がいっぱいな私ゆえ、これだけ柄の大きい話には正直ついていきづらかった。

ただ、スケールのデッカイ話は人間というものの卑小さを否でも応でも意識させ、“人間なんて宇宙から見りゃゴミみたいなもんなんだからどう生きたっていいんだ”と勇気づけてくれるようなところがあって、少しばかり力をもらったのも事実。

そういう効能がこの劇には確かにある。
トロワグロ

トロワグロ

城山羊の会

ザ・スズナリ(東京都)

2014/11/29 (土) ~ 2014/12/09 (火)公演終了

満足度★★

最後まで居心地の悪さを拭いきれないまま鑑賞/約95分
城山羊の会との初手合いとなった本作は、これといった主張もテーマも特に無さげな、会話主体のちょっぴり毒っぽいコメディ。

このテの芝居は大好きなはずなのに、本作とは馬が合わず、全体に漂う小洒落た感じ、ソツのない脚本・演出、そして劇団とお客さんとが形作る内輪的なノリに反発を感じてしまいすんなりと劇世界に入っていけず、最後まで居心地の悪さを拭いきれないまま鑑賞。

なかんずく、内輪ノリ。
どうやら大半のお客さんは固定客で劇団のシンパと化しているらしく、作者が笑って欲しそうなところであたかもリハーサルでもしたかのように声を揃えて笑う。
これが私には気持ち悪くてならなかった。

なお、「ソツがない」のは中盤過ぎまでで、終盤の30分ほどはソツだらけ。というか、はっきり言って蛇足。
“上演時間60分”では格好がつかないからと水増ししたのがバレバレ。
それまでは会話の運びもきめ細やかだったのに、1時間を過ぎた頃からいきなり大味になって、無理やり話を引き伸ばしたのだとはっきり判る。

かくかくしかじかで尻すぼみな印象は否めなかった。

ネタバレBOX

某社の専務宅で開かれたホームパーティのバックヤードを描いた会話劇。

パーティ会場にあてられた大広間からその脇のロビーに家主夫妻、専務の部下とその奥さん、等々が三三五五集まってきて雑談を交わすうち、専務と部下の細君同士がくだらないないことから口論をおっ始め、これを契機に様々な小騒動がロビーで繰り広げられる。

奥さん同士の口論のくだりは異様にウケていたが、可笑しみよりも毒っ気のほうがより強く感じられて、私はほとんど笑えなかった。

そもそも、舞台となるのがアッパークラスの家庭というのが気に入らない。小金持ちが暇にあかして引き起こす空騒ぎを描こうというその姿勢がなんだか80年代的、バブル期的で、格差社会化により貧困層も増えつつある今と言う時代がまるで反映されていない。

作者は「普通に生活することを普通に描けないものだろうか、と思い立ち」本作を作ったそうだが、家主一家が送っている生活は明らかに“普通以上”であり、これを「普通」と呼べてしまう、世間との感覚のズレにもげんなりさせられる。

しかも、アッパークラスのノリというのがなかなかリアルに表現されていて、上流とは無縁な私はますます不快になってしまった。

…と、ここまで、ほぼ否定的なことしか書いていないが、じつはとても気に入ったシーンが一つあって、それは専務の部下の奥さんがソウルミュージックに合わせて活き活きと踊る場面。
その振り切れた踊りっぷりと身ごなしのなまめかしさ、そして動きのバリエーションの豊かさに魅せられた。

思春期中年39号

思春期中年39号

気晴らしBOYZ

ザ・ポケット(東京都)

2014/11/26 (水) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★

もっと石井ちゃんに花を持たせて欲しかった/約110分
キャスト表の筆頭に名前のある石井ちゃんの影が薄い。

長めのコントのようなワンシチュエーションコメディにしたほうがコント師でもある石井ちゃんは活き活きしただろうし、掛け合いにもドライブ感が出て、劇自体も盛り上がったのではないだろうか?

なのに本作は複数のエピソードから成り、ワンシチュエーションコメディからはほど遠い。
エピソードが多過ぎると話が散漫になって渦のようなものが生まれず、劇に没入しづらくなるし、いきおい場面転換が増えて盛り上がりが寸断され、ドライブ感も生まれづらくなる。

これでは、コメディとしての爆発力に欠けた作品になるのは当然。


だいいち本作、テーマが重い。

テーマを手短に表現するなら“中年男の再生”ということになろうが、ユーモアというオブラートにくるまれていながらも劇中の中年トリオの置かれている境遇はやっぱりキビシく、同じく中年の私は身につまされてしまった。

でも、全体的には楽しい印象の劇でした。

ネタバレBOX

そもそも、中年トリオは伊豆でロングバケーションを過ごすことで“こじれた人生”を少しは改善できたのだろうか?
私にはそうは思えなかった。

それどころか、人によってはさらにこじらせていたような。。。

これでは、何のためのロンバケだったのか分からない。
狂犬百景

狂犬百景

MU

Vacant(東京都)

2014/11/23 (日) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★

狂犬騒ぎへの意味づけはほどほどで良かったのでは?/180分弱(休憩込み)
狂犬ひしめく東京某区の人間模様を描き出した、四話から成る連作短編集。

“狂犬の氾濫”は密室状況を生み出すための方便と割り切り、その上で作劇したほうが良かったんじゃないだろうか?

これが、観終えての率直な感想。

事実、そう割り切り、狂犬騒ぎに捉われすぎずに某オフィスの出来事を描いてみせた第二話が一番楽しめた。
犬がひしめく外には出られず、会社に連泊中の社員たちは始終顔を突き合わせるうち互いを知りすぎてしまい、そこには自然とひと悶着が起きる。
狂犬騒動との繋がりは薄いものの、これは狂犬騒ぎ無しには生まれえなかったドラマであり、狂犬たちが間接的に引き起こしたドタバタ劇は私のみならず多くの観客の顔をほころばせていた。

ただ、劇全体としては狂犬騒ぎにこだわり過ぎの感。
狂犬の異常発生を意味づけようとしたところで、それは架空の出来事なので説明は無理筋になるし、それが人にもたらす災厄を意味づけようとしたところで、話は説教臭くなるばかりで、観る者を鼻白ませる。

狂犬の氾濫は密室状況を生み出すための少々不条理な設定と割り切り、その意味づけは程々にとどめたほうが良かったのではないだろうか?

ネタバレBOX

狂犬の氾濫の本作での意味づけは、ペットに無責任な人間への罰、というもの。
無理くり意味づけをしようとすると、こういうところに落ち着いてしまう。
ヒトヒトヒト

ヒトヒトヒト

キリンバズウカ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2014/11/23 (日) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★

キリンバ史上、最も暗い一作/約100分
近ごろ流行りの設定下で展開される、緊迫感みなぎる群像劇。

キリンバズウカには珍しくSF的設定が一切なく、笑いも薄めで、息の詰まるような深刻な物語を何の混ぜ物もなく生(き)で味わわされた感じ。

人物造形と人物描写の生々しさは相変わらずで、引きつけられはしたものの、軸を成す人物二人が常人離れしすぎていて、普遍性がなく、共感しづらく、残念ながら個人的にはあまり心を動かされなかった。


最後に一言言っておくと、かなり謎に満ちた話です。

ネタバレBOX

主要人物二人というのは、舞台となるシェアハウスの管理人・ハナと、住人である弟を頼ってハウスに転がり込んできたその兄・サトシ。
住人達に教祖様のように振る舞って高潔ぶってはいるもののどこか胡散臭いハナと、わがままで粗暴なサトシ。
自分にも似たところはあるのだろうが、前者は怪しさが、後者は荒っぽさが強調されすぎていていずれにも己を投射しづらく、彼らと感情を共有することは最後までかなわなかった。

これが私が本作にいまいちのめり込めなかった主原因か?

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