象はすべてを忘れない 公演情報 ままごと「象はすべてを忘れない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    昨年に比べると...
    昨年の好評を受け、今年もこの催しをやることになろうとはたぶん柴さんは考えていなかったはず。

    それゆえの苦労がひしひしと伝わってきた。

    好評ゆえの第二弾なのだから大きく中身は変えたくないが、去年と大差ないと私はじめ去年もこの催しに触れた者から不評を買いかねない。

    そんな悩める心情が手に取るように伝わってきたのだ。

    結果、柴さんが取った道は、たぶん去年いちばんウケた象の鼻スイッチをはじめ数企画のみを残し、ほとんどは新企画で勝負するというもの。

    その意気や良し!

    ただ、出来映えはと言えば、星の数で示した通り。

    私がこの催しに触れるのが去年に次いで二度目であり、一見さんほどには新鮮味を感じにくいことを考慮しても、やはり星は3つ。
    高評価はしづらい。

    その理由はネタバレにて。

    ネタバレBOX

    まず、テーマがはっきりしない。

    去年から引き継がれた『象はすべてを忘れない』という表題に込められている“記憶”というテーマへのこだわりが、今年は去年よりも薄いのだ。

    記憶というテーマが弱まった分、それを補うかのように今年は“旅”というサブテーマが打ち出されており、「○○ツアー」と題された小ツアーがいくつか用意されているのだが、
    これもちょっと頂けない。

    キャストによるガイド音声が客を不思議なお散歩へと導くツアーが10種近く、キャストが象にまつわる物語を語りながら象がらみの名所へと直接案内してくれるツアーが2種とコンテンツは豊富ながら、内容の重複が甚だしいし、後者のツアーはそれぞれ所要時間二、三十分、前者のツアーも所要時間十分超えのものが複数あるなど、気軽に参加しづらいのだ。

    時間が十分以上もかかるとあってはいささかハードルが高く、会場の象の鼻テラスをたまたま訪れた人が参加する可能性は低い。
    これでは「演劇とすれ違う」というこの催しの趣旨に反するのではないだろうか?

    演劇と無縁に暮らす人々の興味を少しでも演劇に向けることがこの催しの一番の目的であるはずなのに、これではその狙いが果たされない。

    それに、音声ファイルがガイド役となる前者のツアーは、客がイヤホンから聞こえてくる声に従い会場付近を一人で歩く羽目になり、とても淋しい。
    私も体験したが、一人行動には慣れっこ(爆)の私でさえ冷え冷えした気持ちになったほどなので、一見さんがこのツアーを体験した場合の心淋しさといったら想像するに余りある。

    新機軸としては他に短編演劇の上演があり、上演がある日を選んでテラスに出向いた私はこれを鑑賞。
    しかしながら、短編演劇というよりは“寸劇的余興”といった感じで、正直、食い足りなさが残った。

    この公演を観るためだけにわざわざ横浜まで来た人も大勢いたようだが、果たして彼らは満足したのだろうか?

    さらに言うなら、二十分という上演時間は演劇ファンには短くても、たまたまテラスに立ち寄った、これから演劇に出会うべき人にとってはやや長く、これもやはり「気軽に楽しめる」代物だとは言い難い。

    事程左様に、新規の企画で大成功に終わったものは一つもなく、それが星3つの所以。

    「出前ダンス」「出前紙芝居」など、去年は気軽に楽しめるコンテンツがもっと多く、たまたまテラスにいた皆さんがどんどん「注文」を出して「演劇とすれ違」っていたのに、なぜあれらの企画をなくしてしまったのだろう?

    なくなったと言えば、私が去年最も感銘を受けた企画「人間モニュメント」が消えていたのも惜しまれる。

    象の鼻テラスの所在地・横浜の港を彩るモノたちをテラス内外に散ったキャストたちが一斉に身振りで表し、しばし静止するあの試みは“記憶の形象化”の試みといってよく、テーマに合致しているし、何より、夕闇に浮かぶキャストたちのシルエットがとても美しかった。

    去年から大幅に中身を変えた柴さんの気概は
    素晴らしい。

    とはいえ、やはり、いいモノは残しても良いではないだろうか?

    中身の変化が乏しいと私のような演劇好きが文句をつけるかもしれないが、ゾウノハナシアター目当てでなくたまたまテラスに寄った人が何年も連続でゾウノハナシアターに触れる可能性はかなり低い。

    ならば、優良な企画はマイナーチェンジをつけさえすれば連年やってもさして問題はないはず。

    私はそう思いました。

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    2014/12/20 21:57

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