空想科学 公演情報 うさぎストライプ「空想科学」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    色んな観方ができそうな一作/60分弱
    人生を大局的に捉えた場合の青春期の儚さ、儚いがゆえのきらめきが切なくも美しく描かれていて、ジ~ンとさせられた。。

    青春を謳歌するカップルと、喪服姿の三人組がどう交わるのかも見モノ。

    『空想科学』というタイトルが呼び起こすものからは大きくかけ離れた内容だったが、空想に多くを負った劇であるのは間違いない。

    ネタバレBOX

    飲み会帰りにエッチして名前も知らないままに付き合い始めた、チャラ男とチャラ子から成る若いカップル。

    地味に生き六十数歳で独身のまま死んだ叔母の遺品整理にあたる姉妹と、姉のほうの夫。

    無関係に思えた二組が交差して判るのは、恋とは一生無縁だったと姪たちに思われている地味な叔母の若き日の姿こそ、他ならぬチャラ子だということ。

    私はこの点に感動!

    その人生に楽しいことなど無かったと思われている叔母にも、行きずりのセックスから恋に落ちるような青春の一ページがあったと判り、私は正直、救われた思いがした。

    馴れ初めこそチャラくとも、斉藤マッチュ演じる遊び人風の男・ユウスケに川田智美演じる若き日の叔母が一途に惚れ込んでいく様子は健気で微笑ましく、そんなキラキラしたひとときを束の間でも持てた叔母を私は「良かったですね」と言祝いであげたい気分に。
    叔母は「ユウスケが淋しい思いをしないように、私はユウスケより長生きして大往生するんだ(笑)」とさえ言っており、その一途さには心打たれた。

    「束の間」と書いたのは、ユウスケは行きずりのセックスを終え眠っている間(ま)に斧を頭に振り下ろされて惨殺されており、ほどなく天に召されるのは間違いないから。

    そう、ここまであえて書かずにおいたが、若き日の叔母が惚れたユウスケは幕が開いた時点ですでに死んでおり、頭に斧が刺さったまま叔母とホテルで過ごしているのだ。そして叔母は相手が死者であるのを承知の上でユウスケと過ごしている。

    死んでいるユウスケが煙草を吸ったり叔母と口を聞いたりとまるで生きているかのように振る舞うのも不思議なら、叔母の年長の姪であるのぞみの夫が殺害者であることもおいおい判って、話はますます混迷。

    接点などあるはずのない二人は夢の中で出会い、のぞみの夫は夢に出てきたユウスケを妻の叔母の元カレだとはつゆ知らないまま殺してしまったらしい。

    いや、「妻の叔母の元カレ」も何も、話がここまで荒唐無稽だと叔母とユウスケのセックスもそこから始まる交際も現実の出来事だったのか疑わしく、二人が出会ってなかった可能性も、そして叔母もその遺品整理をする姪たちも誰も彼もが存在してない可能性も否めなくなってくる。

    そう、演劇なんて所詮は空想の産物であり、舞台上で起きることはすべて現実なのだと客が思いなすことによってかろうじて成立しているに過ぎないのだ。

    しかし、演劇というものがそこまで恣意的に作られているのなら、それを客が恣意的に解釈する権利だって認められていいはず。

    そこで私は本作をこう解釈する。

    死んでいるというのは劇を面白くするための設定に過ぎず、ユウスケはあの時たしかに生きていたし、叔母はたしかにユウスケと幸せなひとときを過ごしたのだと。

    いや、そうとでも考えないと、あまりにも叔母が浮かばれない。

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    2014/12/22 10:19

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