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月光条例 ~かぐや編~【全公演満員御礼!ありがとうございました!】

月光条例 ~かぐや編~【全公演満員御礼!ありがとうございました!】

カプセル兵団

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/09/27 (日) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

「スゴイスゴイスゴイスゴイスゴイ!」色々がスゴイ!
あの熱気に当てられての興奮がまだ覚めやりません。

まず前作である「月光条例」が舞台上での表現力豊かかつ
迫力があって、そして泣けるとても面白い演劇でした。

で、後編もちろん期待してましたが、
前作「月光条例」を吉久版月光しか観れていなかったので、

今回(逆に)青木版月光しか観れない状況で、
「ちゃんと気持ちの上で物語つながるかな?」
など観劇前は心配していました。

(ネタバレは避けるとして)
でも開演してみると、
「ただ後編」ではなくちゃんと1本のお芝居として、
そこまでに至る経緯も(軽くですが)流してくれていたので、
青木版月光のイメージが胸の中にストンと入ってきた
上での本編観劇となって良かったです。
※ でも前作「月光条例」を直接あるいは
  DVDで観れているに越した事はないと思いますが( ´ー`)


元々カプセル兵団といえば
「ビジュアルイマジネーション演出(パワーマイム表現)」
「飛び出す演劇(笹塚ファクトリー最終奥義)」で有名ですが、
今回良席だった事もあり、

・ 劇場中を飛び出しまくる50数人の役者・パフォーマー陣

・ 多彩なビジュアルイマジネーション演出の数々

・ (普通にすごい)アクション、立ち回りの数々

・ (色々な要素が絡んで)胸に突き刺さる
  (はっきり言って泣ける)各役の台詞/語り

・ 小気味よく、時に豪快に差し込まれる笑いネタ

・ 何よりも有り余る役者とパフォーマーの熱量

・ そして「月光条例」を表現する衣装から小道具からの素晴らしさ

これらに当てられて「興奮」「感動」「笑い」など
いろんな気持ちでグングン舞台上に引っ張られていきました。

2時間45分なんて時間が全く感じられませんでした。
もう涙腺も緩みっぱなし、
「これは上手い!」という笑いネタには拍手も飛び交い、
「月光条例」の世界にみんな夢中でしたね( ´ー`)


10月時点、今年度一番引きこまれた演劇です。

これも、
カプセル兵団+笹塚ファクトリー、そして藤田和日郎が
組んでこそ実現出来た超名作かなあと。

ネタバレBOX

【思った事】
台詞トチリは結構ありました。
飛び出す演出で外へ飛び出すパフォーマーさんが転んでしまう
というトラブルもありました。

でも、表に書いた通り「良さ」が「スゴイ!」。

トラブルにもまったくお芝居から気持ちをそがれる事はありませんでした。


特に「飛び出す演劇」、
真ん中通路側の良席だった事もあり
飛び出す演者陣面々の熱気と圧力がガンガン、グングン感じられました。

※ やっぱり「飛び出す演劇」は笹塚ファクトリーが最高ですね。
  笹塚ファクトリーが閉園した後、
  同様の劇場があると良いのですが・・・それだけが心配です。


カプセル兵団の良さは表に書いたもの以外にも、
「カット割りの上手さ」があると思います。

印象的な一瞬/台詞の為に(10秒にも満たない)1場面を差し込んだり、
という場面転換の妙味は、カプセル兵団の場面転換法
(「ギュルルルルーン」の効果音と共にみんながダッシュでハケる、入る)
じゃないと多分表現出来ないんじゃないですかね。

ああいう「一瞬のカット」の差し込み方って、
お芝居というよりアニメ/映画や漫画的表現なのかな?
とも思ったりします。


【原作について】
サンデーで「月光条例」が始まった当時、
ちょうど「そろそろ漫画雑誌やめるか」と思っていたのと
「月光条例」がお伽話が題材、
という所になにかマイナスイメージを感じてしまい、
数話読んだきりだったんですよね。

しかし、カプセル兵団での前作舞台化で
「こんなに面白くて泣ける作品だったんだな」と知り、
すぐにも全巻揃えようと思ったのですが、

「後編も舞台化する」との事だったので、
ネタバレを避ける為今まで(1年?)待ってしまいました。

フライヤーによると舞台での終わり方はあくまでも
作/演出吉久さん独自らしいですが、
これで安心して「月光条例」全巻を集められます( ´ー`)
関ヶ原で一人 〜lonely SEKIGAHARA〜

関ヶ原で一人 〜lonely SEKIGAHARA〜

ENG

六行会ホール(東京都)

2015/09/30 (水) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

自分の調子が悪かったのかな?
だとしたら単に自分が悪いだけなんだけど。
とりあえず思った事は感想に書いておきます。

ひさびさ舞台全体が観える観客席真ん中付近を取ったのですが
(六行会ホールは座席が段差式なので結構後ろからでも舞台自体は良く観える)、
演技も台詞もその熱量も遠いなあ、と感じてしまい
観客の笑い声に「今の台詞の何が笑いどころ?」と置いてけぼり感すら感じました。

更には自分の観劇スタイル(集中する)では珍しいのですが、
物語に気持ちを引っ張られないせいか、
空調のせいか、体調悪かったのか、序盤かなり睡魔に襲われてしまいました。


不勉強ゆえ「関が原の戦い」辺りの歴史/各人物の相関
(誰が誰の側か、など)を知らなかったのが悪いのか、

実際お芝居の中でもちゃんと説明されているのですが
人が多くて誰が喋っているかも良くわからず、
中盤までは「何がなんだか分からない、という空気」の
まま時間が流れてしまいました。

結構胸に来るシーンもあったのですが、
全体的には演技も台詞回しも初日ゆえか
かたさを感じてしまいました(ミスもそれなり)。


あと1回観劇予定ですが、Wikipediaなどで勉強していった方が
物語がすんなり頭に入って楽しめるかも知れません。

席位置や体調(?)の関係もあるのかも知れませんが、
自分的には今回は珍しくちょっと残念な気分になりました(´・ω・`)

席位置変わったら感想が180度変わるかも分かりませんが、
とりあえず今回は「自分的にはNG」かなあ、と。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 殺陣は武器の当て方などに迫力もありましたが、
  後半のスローな殺陣まわしシーンがあまりに
  長く続けられているのに見飽きてしまいました。


・ 群舞について劇場/舞台の広さに対してなんとも
  縮こまった感のあるその内容に気持ちが盛り下がってしまいました。


・ ガラシャさんの死の覚悟あたりはいい熱を感じられたのですが、
  物語全体としては(序盤特に)起伏にとぼしい内容だったかなあ、と。

  そんなこんなでお芝居に気持ちが引っ張られない状態で考えると、
  「落雷によるタイムスリップと世界の修正力(?)」の設定を
  多用しすぎているんじゃないかな、と思いました。

  主人公、妻、石田三成ぐらいで止めておけば、
  それぞれの役の「想い」についてもっと感動出来たのかなあ。


・ 物語自体なのか役者の演じ方のせいなのか、
  なにか「単調」だな、と「時間の長さ」を感じてしまいました。

  物語がそれほど大きく動いている感じもないので、
  主要部分に絞れば2時間以内に出来たんじゃないでしょうか?


残念(´・ω・`)

PS.この物語って歴史の教科書で簡単に書かれてしまっている
  史実上の各人の行動の謎について、

  実は「生きた人間達の様々な葛藤があった」という事を描き、

  それを主人公に「もう簡単に”戦国時代が好き”なんて言えない」
  と言わせる事に意味があるのだと思いますが、
  妻を亡くして、更に石田三成その他の人物それぞれの
  行動の理由を知って語られるその言葉に、

  しかしやっぱり「重みが足りない」、
  単なるトリッキー物語に走り過ぎているなあ、と感じます。
ふたりカオス

ふたりカオス

劇団6番シード

シアターKASSAI(東京都)

2015/09/24 (木) ~ 2015/10/05 (月)公演終了

役者さん自身はどう思われるか分かりませんがやはり公演期間中こそ舞台は「伸びる」
3回めの投稿失礼しますm(_ _)m
前回の感想と同じ組に対して
今回はまた違う感想を抱いたので投稿させていただきます。

詳細はネタバレに。


初見で
「うーん、ちょっと役者の個性が役と合わない感じ」とか
「テンション高すぎて、2人の息が合ってない感じ」など
思った組について、2度目を見たら
前回と全然違う感想(もちろん高評価)を抱きました。

お芝居を複数回観劇するようになってからずっと思ってましたが、
役者さん自身としては「初日を焦点/目標に稽古をしている」
というスタンスなのでしょうが、
やはり実際の舞台上で観客を前にお芝居を行う度に
役者さん/お芝居は更に伸びる(進化/変化する)ものなのだな、
と思いました。

自分の中の「ベスト回」が揺らぐなあ( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
・ ①高橋×栗生ペア
  前回、栗生さんは柚月さんとほぼ同じレベルのテンションの高さで
  カフェ店員を演じていたと思うのですが(どちらが良いかは好みの問題?)、

  高橋さんについては個性としての「若さ」「活力・元気の良さ」が
  表に出過ぎてしまっていて、
  椎名さんに比べ「疲れはてたウェディングプランナー」の
  イメージに合っていないかな、と思っていました。

  しかし、本日は「若さ」こそあれど要所要所での
  肩が凝っているかのような
  「疲れ」「ため息」のような所作(?雰囲気?)に

  「ああ、この人は営業職から夢を持って
  ウェディングプランナーになったものの
  今その仕事にすら不満とストレスを抱えてしまった人だ」と
  ちゃんと感じられました。

  どの部分の演技が変わった、という所までは分かりませんでしたが、
  全体的な雰囲気が変わったのかな?
  
  そのおかげもあってこのペアの物語もまた

  笑い⇒涙

  への見事な連携が取れていたと思います。

  ? 3面舞台での観劇位置の違いも関係してるんですかね?


・ ④図師×小沢ペア
  お2人の初回を観た時、
  両方も「おもしろキャラ」かつ
  ・ 狙った笑いを放り込んでくる「笑いのプロ」
  と
  ・ テンション激しく高めの小沢帝国
  という事で、その掛け合いは面白いと思ったのですが、
  テンションの高さと会話/台詞の早さが勝ちすぎて
  会話が案外噛み合っていない/噛みトチリが結構多い、
  と思いました。

  ※ その点、藤堂×高田ペアは落ち着きがあった分、
    そういうズレのようなものは感じませんでした。

  ただしこちらのペアも今日観てみると、
  かなり会話(呼吸?)が噛み合ってきている、
  ちゃんと(演者が)狙った箇所で笑いが取れる(自分も笑わせられた)、
  と納得の出来だったと思います。

  元々相性自体は悪くないんでしょうね、
  多分初回は勢いが勝ちすぎていて
  その相性を活かしきれていなかったのかな、と。

  という事で、泣きのないこの物語も
  楽しく観劇できました。


・ ⑤柚月×土屋ペア
  柚月さんの初回を観た時、
  シャドーと腹筋、最後のファイナルブローそれぞれの所作が
  「ボクサー」ではないな・・・と思ってしまいました。
  
  ? 結局の所、ボクサーがやる腹筋として正しいのは
    栗生型、柚月型どちらなのか自分は分かりませんが

  シャドーは「吐く息に合わせ打つ事が重要」と。
  そこが栗生さんに比べてあまり上手く出来ていないなあ、という感じでした。

  しかしたった2日程度で全然出来が変わっていました。

  元々気合は十分入っていたと思いますので、
  各所作が「ボクサー」っぽくなれば十分に
  このシリアスな女ボクサーの役に合うのかと。

  ※ それでもなお、カフェ店員が一番似合う人だと思うのですが( ´ー`)
    可愛くてそれでいてテンション高い関西系、という
    イメージが、でしょうか?

  合わせる側のトランペッター兄については、
  案外イケメンならどの人でも合う、という感じがあったのですが、
  今日の土屋さんの飄々ぶりと
  短編後編部分の自分語りはかなり「役に入っている」空気を
  台詞吐きとその表情などから感じました。

  そして女ボクサーのファイナルブロー「イエローハンマー」を
  食らって(実際当たってないと言ってましたが)、
  鼻血出したのにはマジで驚いてしまいました。
  (椎名さんも出したらしいですが、役者さんは出そうと思えば
  鼻血も出せるもんなんでしょうか???)

  そんなこんなでこの2人もまた、
  この⑤を飾るにふさわしいペアなのかなあ、と。


そんなこんなでどんどん各ペアが良くなってくると
「DVD買うなら公演日程後半の作品の方がいいのかなあ?」などと思えてきました。


そしてまだ野中さんだけ観れてないという・・・
ふたりカオス

ふたりカオス

劇団6番シード

シアターKASSAI(東京都)

2015/09/24 (木) ~ 2015/10/05 (月)公演終了

作/演出から「ふたりカオス」の深みを聞く
作/演出松本さんのトークイベントがあると
今更ながら知り、急遽当日券にて観劇。

※ 既に2回観劇していたのですが、それで感想書くと
  「2組(2日)のうちのどちらがいい」みたいな
  かなり不毛な感想になりそうだったので
  感想投稿の連投を避けていました。

今日で3面舞台の3面すべてから観劇出来た事と
松本さんから作/演出についての面白いお話が聴けた事、
そして自分の観劇では「この組がやっぱりベストかな」と
今の所定まって来たので(まだ早いですけど)
二度目の感想投稿をさせていただきますm(_ _)m


まず、
①椎名×柚月 ③宇田川×松田 ⑤栗生×福地ペア、
これらは2度目の観劇なのですが、
初日組だけあってやっぱり安定感を感じました。

演技は他のメンバーももちろん良いのですが、
特にこれらの組み合わせについて
「役とキャストの個性がマッチしている」
「組となる2人の会話劇(のかみ合わせ)がマッチしている」
と、今日の観劇にて再認識しました。

※ 他の方々についても演技の違いなど
  比較する面白さはあれど、
  全回DVD販売について観たい組を選ぶなら
  上記3組は外せない、ベストな組だと思いました。

  単に「初回で観てるから印象が強い」
  「複数回やってるから経験値が上がってる」という
  可能性もありますが。。。


感想評価は初回と変わらず☆4つです。
(空欄にしておきます。)

ネタバレBOX

【思った事】
・ ①椎名×柚月
  他キャストのウェディングプランナー、
  本キャストの別話も観ましたが、
  やはりこの2人が、
  ウェディングプランナーとカフェ店員として
  テンションの高さ/低さ、
  疲れ具合その他とってもベストな気がします。
  (年齢的なものもあるかな、と思ってます。)

  テンションの高い柚月さんにお疲れ椎名さんのコンビが
  非常にマッチしていると思いました。


・ ③宇田川×松田
  さびれた街の裏道での会話劇と考えた時、
  熟女キャバ上宇田川さんと嘘つき地蔵松田さんの
  コンビでの会話のやりとり、地蔵さんを泣かせるその流れ、
  物語の本筋へ迫っていくさまが一番涙腺に刺さったかと。
  (客引き(男)版もいいですが、
  自分は熟女キャバ嬢(女)版が何故か泣けるんですよね、
  亡くなった娘と同性だからでしょうか?
  嘘のメールを読む姿に泣かされてしまいます。)


・ ⑤栗生×福地
  まず女ボクサーを演じる栗生さんの
  シャドーと腹筋がサマになっている、
  兄を殴るパンチがちゃんと「近い」
  (これ結構重要です、離れていると
  「いかにもお芝居」という空気になってしまうので)。

  そして家族の金を盗んで逃げて、自分の幸せを掴みかけた所で
  再び家族の影に出会う、というシリアスさを
  飄々としたキャラで演じる福地さんのトランペッターが
  これまた「殴られなきゃ分からない感」があっていいなあ、と。
  (どんな感だ…)

  この2人のやりとりから最後に「奇跡」の存在に気づき
  リングへの扉へ向けて歩き出すサマが良かったです。

  ちょうど扉の対角線上の席だったので、
  扉の向こうの未知の光(照明)を真正面から(自分も)受けて、
  かなり印象的な光景に仕上がっていたと思います。




そして作/演出松本さんトーク、

・ 最初は単なる短編オムニバスにしようとしていたが、
  それぞれに起承と転結を持たせる為にループさせる事にした。

  ※ 自分は初回観ていた時、1話、2話が起承・・4話、5話と転結が
    描かれるものと思っていて、完全に騙されました。


・ セットなどの少ない2人会話劇を選んだ理由が、
  役者の演技力と熱量によるシンプルな勝負を観てみたいと思った、
  という点、すごく共感しました。

  セットから物語から技工に凝ったものももちろん好きですが、
  たまにはこういう「役者」の力量/熱量自体を
  メインディッシュとして味わう(それも全16(?)皿)というのも、
  色々なお芝居を楽しみたい自分からすると
  非常に贅沢な舞台だと感じられました。


・ 単なるWキャスト(複数キャスト)が同じ芝居をするのでは面白く無い、
  と同じ短編を演じる人達も別々に演技指導した。

  その上、それぞれの個性に合わせて芝居にも変更を入れ、
  または各役者の変更を受け入れ、とした事が
  「複数の回、複数の組、を楽しむ」という本質に迫れる作品になったのかと思います。

  ②SUMIO×色々 は握手しないのに
  ②樋口×色々 は変な握手したり、
  という役者の個性に合わせた所作/行為の違いが
  また「あっ!ここが違う!」という
  間違い探しのような楽しみを生み出しているかと思います。


・ 3面舞台の観せ方に対して、色々考えそしてこだわった。
  1面対象の場合と3面対象の場合とで、
  役者に「いつもの表現」とは違う所作を求めた、
  など、3面全体を楽しませる為の工夫を聴けてよかったです。


自分は3面それぞれの面と①~⑤話について、
「この話はこの面が一番面白い」など
勝手な解釈をして観ていましたが
そういう観劇スタイルの自由を許すのも、
この三面舞台の楽しみなのかな、と感じました。

残念な事( ´ー`)
あんなにあんなに沢山松本さんへ「質問事項」を送ったのに
1通しか読んでもらえませんでしたΣ(゚Д゚

サイゼリヤで悩みに悩んで(単に酔っ払って)
Twitterに連投したのに。




「これで全員観劇出来たかな?」と思っていましたが、
まだ野中さんを観れてないんですよね、
あと④風俗編の女子バージョンがどうしても観たいです。

あと10/5(月)観たいなあ、
でも仕事がピンチで早く帰ったら叱られそうなんですよねえ…

うーん
長文失礼m(_ _)m
笑う朗読

笑う朗読

水島裕プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2015/09/24 (木) ~ 2015/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★

プロデューサー始め全読み手の「笑って、気持ち良く観劇してもらいたい」という気持ちに溢れた朗読会
自分は全く知らなかったんですが
読み手ほぼ全員がかなり有名な声優陣なだけあって
どうにも大人気だったらしいです(ヤフオクでチケットが高騰していたり)。

朗読(劇)って普通のお芝居と比べて
「視覚」の芝居は基本なくてよし、
「聴覚」が完全優先される為、
マイク音響さえ気を使えばかなりの大箱劇場で公演出来
(=多くの観客を集客出来る)

※ 演者が有名人であればあるほど、
  観客からすれば豆粒大の人影が見えるだけでも大喜び

それなりの評価を得る事も出来るんですよね。
(昨日観てきたSUPER SOUND THEATREがある意味そうでした。
1000人級の箱だったかな?まあアレは視覚的にもすごかったですが)

それをわざわざサンモールスタジオという
超小箱を選んでもらえたのが自分には嬉しかったですね、
演者(読み手)の熱気/感情が
直接伝播する超近距離舞台の劇場なので。


そして朗読劇というと
観る(聴く)側も少し堅苦しい雰囲気の中で、
「文学」的なものを楽しむというよりも「嗜む」、
といったイメージがあるのですが、

本劇は開場時点から水島裕プロデューサーと手品師の方が
(TVのバラエティ番組などで言う本当の「前説」として)、

観客が出来るだけ朗読を気軽に楽しめるように、
笑いたいだけ声をあげて笑えるようにと、
場を温める為に軽妙なトークや手品で皆の気持ちをリラックスさせ、
調度良いぐらいに笑いやすい空気感を作ってくれていました。

劇前ですが見事なホスピタリティ精神でした。


そして肝心の朗読(短編5本)の方は
「笑いの朗読」とうたうだけあって、
基本的に深さ/隠された裏の設定よりも
物語のそこここに仕込まれた笑いのエッセンスを、
それぞれの読み手陣がこれまた「笑い」への(?)
情熱を持って演じてくれていたので、

聴きながら、その表情/所作を眺めながら、
しっかり笑いどころでは声をあげて笑わせていただきました。

ネタバレは避けますが、
非常に良い気分で始まり、更に良い気分で終われた、
という感じでしょうか。

こういう一風変わった朗読(劇)、
これからも色々なメンバーと続けていって欲しいですね。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 5編それぞれの感想は長くなるので置いておいて。


・ 全話通してそれぞれの読み手
  (声優さんから成田童夢さんってスポーツ系の人でしたっけ?まで)
  が、この笑いの短編5編について、
  「真剣」にかつ「笑わせたい」という固くはない
  やさしい気持ちを抱いた状態で演じてくれていたのか、
  かなり楽しい感情が伝播して来るのが分かりました。


・ 2話で妊婦/主婦を務めた寿美菜子さん、
  可愛いですよね。
  まあそれは置いておいて、
  今までお芝居、朗読劇(1人1役を演じる群読)を
  数本観せてもらっていたのですが、
  イマイチアニメで楽しませていただいているほどには
  「感情」が伝わってこない、という印象があったんですよね。
  (演技を観せる方(ほう)/ミスをしないようにという方(ほう)に
  意識が行き過ぎて気持ちがこもっていなかった?)

  ですが本劇では今までとは全く違う印象を受けました。

  まず「本当の朗読(1人で物語の全役を演じ分ける)」をやられた訳ですが、
  産気づく妊婦、医者、泥酔した亭主、看護婦などを
  上手さはともかく、それぞれの気持ちを見事に表して
  演じ分け(読み分け)していたかと思います。
  (聴いていて「コメディ」としての楽しさが感じられました。)

  更に生まれた赤ちゃんとのやりとりは、
  赤ちゃんの愛らしさが視えるようで、
  「笑い」よりも微笑ましい気分にもなりました。

  こういう演技/読みが出来るのなら、
  今後も活動を追っていきたい役者さんの1人だなあ、
  と思いました( ´ー`)
  ? 上から目線?


・ ほとんどの物語は「笑い」に始まり「笑い」に終わる、
  あまり深い裏設定などはつけないで
  「気軽に楽しめるように」と作られているのかな?
  と思っていたのですが、

  5話の(娘含め)町の皆から嫌われていたお父さんが死んだお話、
  「何故、父(大塚明夫さん)は皆から嫌われようとしたのか?」
  
  その理由が
  「母の死があまりにも悲しくて、自分が死ぬ時は周りを
  こんな気持ちにさせない、逆に喜ばれてしまうような死に方がしたい」
  だった事を知った時、娘(寿美菜子さん)同様
  ちょっと涙腺が緩みかけました。

  更に、
  最終話だった事もあり「いい話」で終わらせるのかな?
  と思っていたら、
  死んだ父「娘にすぐに会いたい!転生したい!」と願ったら

  ゴキブリに転生し家に帰ってきた娘に新聞紙で殴られる、

  というやはり「笑い」を優先したオチの付け方、
  一貫性があって良いですね。

  他の色々な団体その他が行う朗読劇とはまったくテイストの違う、
  どんなに気分が沈んでいた観客も
  「笑い」の気持ちを持って帰れるような、
  というプロデューサー/脚本家と演者陣の気持ちが伝わってくるようでした。


基本考えさせられるような深い話ではない為、
「人を選ぶ所はあるかな?(単純さを嫌う人もいるかな)」とは思いましたが、
自分は満足させていただきました。
ふたりカオス

ふたりカオス

劇団6番シード

シアターKASSAI(東京都)

2015/09/24 (木) ~ 2015/10/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

思わぬ深さと全員カオスぶりに感激!
ぶっちゃけ自分の中で6Cさんって
「超名作」と「そうでもない作品」の混在している劇団、
というイメージがあります(今のとこ)。
※ 名作が超名作過ぎてFC入ったりしたのですが( ´ー`)


今回は再演との事でしたが
「面白そうな役者さんがいくつもの喜劇っぽい短編で
絡み合うのが観れればそれだけで満足」と
前情報ほぼ0での観劇でした。


いやあ、想像をはるかに超えて深かったです。
自分の中で「これはいったい誰が、どう締める?」など
物語の先を想像せずにいられない上、
単なる喜劇ではない、
一筋縄ではいかないそれぞれの物語、
そしてそれらの中心となる「アレ」にもう

「よくもまあ、”2人芝居”の名の元にこんなお芝居を作ったな」

とひさびさ感激させられ、
涙腺は緩むし笑いは止まらないしで
大満足させていただきました。

?ネタバレしてないですよね( ´ー`)

また、こういうマルチキャストなお芝居だと
間(あいだ)を開けずに連続して観ても
(普通同じお芝居のWキャストぐらいだと、
少し気持ちを整理してから次の観劇をしないと
「妙に知ってしまっている自分、楽しめない自分」がいるものですが)
組み合わせの妙による更なる面白さや
自分の中での「誰が一番泣かせる」「誰が一番笑わせる」などの
ランキングを想像するのも楽しそうで
明日以降の観劇が待ち遠しいです( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
・ タイトルに小さく入っていた
  「黄色いハンマーを持った女と花瓶を頭に乗せた男」、
  完全に忘れてました。

  短編1本20分で、最後に「謎の動画」のオチで締めるのかな?
  と思っていたら、まさかの(各短編の)続き展開。
  (短編5編が1周回った時点では、「まあネタ的には面白かったから☆4つかな」
  なんて思ってました。)


  まさか「シンクロニシティ(共時性)」の名の元に
  まったく違ういくつもの答えを持って
  それぞれの短編につながりを持たせ、
  涙なしでは観れない、そんなラストに繋げるとは思ってもみませんでした。

  風俗編以外は完全に泣き入りました(´;ω;`)

  ※ 風俗編は風俗編で重要な箸休め的な存在だと思いますよ。


・ 3面舞台のこれまた一風変わった面白さ。
  四面舞台といえばX-QUESTさん。
  ズンさんおよびSUMIOさん、藤堂さんは
  あの四面舞台にも慣れているかと思います。

  ただ、X-QUESTの四面舞台との違いは、

  ・ X-QUESTは全面に観える形での(円の動きを行う?)
    お芝居をする=自分は1面観ただけでもかなりの満足感を得られる
    (言ってしまえば1面だけでも十分かな、と思ってしまうかも)
  
  ・ 今回のシアターKASSAI、劇団6番シードでの3面舞台は
    「観えない所が多い」
    「この面だからこその楽しさもある」
  
  という事で3面全面を制覇したくなりました。

  今日の面で一番面白かったのは、
  2話でSUMIO×土屋コンビのちょうど向かい合う2人の真後ろにいた為、
  ・ 土屋さんと話しているSUMIOさんの気分
  ・ SUMIOさんと話している土屋さんの気分
  それぞれが味わえた事かなあ、と。

  全面楽しませるX-QUESTの方が技工的には難易度が高く
  「上手い」と言ってしまう事も出来るのでしょうが、
  僕は今回の(役者)視点が初めての体験だったので
  ちょっと感動してしまいました。

  こんなに熱く語ってるんだな、って。


・ 「黄色いハンマーを持った女と花瓶を頭に乗せた男」という謎の動画に
  いろいろな解釈が入り、
  そしてそれがそれぞれの短編の「解(かい)」とも呼べる
  存在になって各物語が展開していく、
  本当に見事でした。

  自分は5編のうち、どれかが正解(オチ)を出して終わってしまうものかと
  思いましたが、5編ともシンクロニシティ的なつながりはあれど
  この動画の作者の本当の解(かい)(そもそもそんなものがあるのか)、
  とは異なる自分達の抱えている物語への答えを持って物語を終える、
  あの全員集結の舞台シーンがまさに「ふたりカオス」ならぬ
  「全員カオス」状態で、「匠」な短編集の終わり方だな、と感激しました。

  こういう余韻を残してもらうと、
  「じゃあ、いったいあの動画を作った人間の目的はなんだったんだろう?」
  など、物語の終わりが更なる謎を呼ぶようで楽しいですよね。


最初、単なる短編集的に考えていたので、各編の良い所/悪い所を
投稿しようと思っていましたが、「ふたりカオス」はまさに
「動画」を中心とした全編のつながり、それぞれが持った別の「解(かい)」の
巧みさの妙が面白い、これはこれであくまでも1本の作品なんだな、と思えました。

いやあ、まだ観ぬコンビ達の回が楽しみです( ´ー`)
BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

劇団バッコスの祭

萬劇場(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

ニュースの向こう側の事件にスポットを当てた考えさせられる作品
テロリストって、
・日本には存在しない
・海外で無差別に爆破テロとかを実行する
・恐ろしい凶悪にして狂信的な(人間性の壊れた)怪物達

今までニュースの向こう側の事件を目にする度に
そんなふうに思っていました。

しかし、
(全てが正しい主張とは言えませんが)
そもそもは現状の自国や世界の状況を憂い、
それを改善しより良き状態に持って行きたいと思いつつも、
政府その他の状態からまっとうな手段が通じない/使えない状況下において、
最後の手段としての武装蜂起その他の手段に出た人達、
でもあるんですね。
(単なる悪人ではなく、一番に国と国民の事を考えた人達、といえるのかも…)


本劇の中のテロリスト達は本当に「人間」でした。
(ペルーのリアルな現状は把握していませんが)
貧富の差および国民全員がまっとうな教育を受けられない
現状を憂いてテロリスト集団を率いたリーダー。

そして今日食う金にも困る、ただそれだけの理由で
アルバイトとしてテロリストメンバーに引きこまれた人まで。

そこに居るのは、この犯行を犯したのはあくまでも「人」でした。


「ストックホルム症候群」
立てこもり事件などの異常な状況下において、
犯人と人質達の間に一種の信頼関係が産まれた状態、
でしたっけ?

それが関わってくるのは当初から予想がつきましたが、
確かに目の前で”テロリスト”と呼ばれる人達が
(自分達の行動やその目的、犯人と人質という人と人との関係に対して)
苦悩/葛藤し、「単なる人」としての夢を語り討論しあう姿を見ていて、
彼らを「単純な悪」とみなす事は
観客の視点であっても出来ないと思いました。
(自分が日本という比較的ぬるま湯な国に産まれたのでなければ、
多分に共感出来る考え方であったとも思えます。)


実際
・「日本大使公邸で起きた」という点
・当時のフジモリ元大統領が日系人であるという点
以外において、
本事件を日本人として深く考えた事はありませんでした。

しかし、「強行突入にて人質死傷者0、軍隊死亡者2名」という
強行突入ではありえないような幸運とも思われる結果について、

背景が本劇の通りであったとしてもおかしくない、
そう思える「骨太(説得力のある)」物語であり、
各人間達の思考と行動だったと思います。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 最初は配役/単純な出演者数などから
  テロリスト達が数百人の人質をとって立てこもった、
  という状況を「うまくは表現出来ていないなあ」など、
  演出面での不満もありました。

  実際人質となった主要メンバーについてすら
  その設定を「覚えきれるかな?」などの不安もありました。

・ 物語が展開していくにつれて、
  人質だけではなくテロリスト達も
  それぞれが「人間」として動き出し、
  人質達との関わり方が変わっていく様を見て、
  「ストックホルム症候群」もので
  お涙頂戴的に終わるのかな、とラストを想像しました。

・ しかし、単なる「一緒に暮らして来たから仲良くなった」ではなく、
  テロリストのリーダーと(架空の存在である)フジモリ大統領の娘の
  「本当にこの国の現状を変えるにはどうしたらよいか?
  軍隊は必要なのか?そしてその維持費は国家予算のどれほどが妥当か?」
  など、テロリストという単なる凶悪集団であったはずの人(達)が、
  この国(ペルー)の未来について本気で理想を持った上で
  人質相手であっても真面目に討論しあう光景に
  涙腺に来るものがありました。

  「ああ、この人は(決して間違いではない)”夢”を持っているんだな」と。

・ 最終局面に入り、人質とテロリスト達の中に信頼関係が産まれ、
  午後テロリスト達が運動不足の解消の為にサッカーをしている、
  と突入チャンスを伝えられる光景を見ていても、
  「本当に時と場所、国の状況が悪くなければ
  この人達は普通に生きられた”ただの”人達だったのに…」
  と、ノンフィクション題材ゆえに定められた結末へ向かう様にも
  何か悲しみが漂いました。

・ 実際当時考察のあった事なのでしょうか?
  フジモリ元大統領が
  立てこもりの長期化による「ストックホルム症候群」の発生、
  テロリスト達が人質を守る盾になる事を狙っていたというのは。
  (ジャーナリストの言葉に強い説得力を感じました。)

・ テロリストのリーダーが最後に残した命題、
  「もし自分達の理想とする国が出来たとして、
  それに武装し向かってくるものがあったらどう対処したらいい?」
  難しすぎる問題だと思います。

  とってはいけない手段を取った以上、
  それに対しては「テロには屈しない」という姿勢を見せなければいけない、
  というのは理解できます。
  しかし、その意図したもの/目的が真に正しいものであった場合、
  その思想までも無碍(むげ)にしてしまって良いものかどうか…

・ ジャーナリストの言う「国民の知る権利」、
  この言葉を使って色々な人達から「自分だけが」
  知りたい事、売れる事、を知ろうとする態度、
  「ああ、これぞ日本で最も毛嫌いされるマスゴミの姿勢(本性)」
  なんだろうなあ、と思いました。
  
  劇中の女性ジャーナリストを含め、まっとうなジャーナリズム精神にもとづき、
  ではなく、単に他社の先を越して売れる為に、
  どんな場面でも「知る権利」などという言葉を
  使う連中こそ成敗されてしまえばいいのに、
  なんて考えたりもしました。

・ タイトルの「BIRTH」(誕生)、こう名付けた理由について
  考えてみましたが、
  テロリストのリーダーが、当時のペルーという国に対して、
  その問題を投げつけた、国家としての命題が「産まれた日」、
  という事でいいんですかね?

  劇中ではフジモリ元大統領の娘と
  日本大使館大使の2人がそれを受け止めていましたが、
  実際の「日本大使公邸人質事件」では
  このテロを起こした理由/目的を誰が受け止めてくれたのでしょう…


なんて事を考えたりしました。
劇団バッコスの祭さんは毎回刺さる「テーマ」で攻めてくるなあ( ´ー`)

お芝居中の細かい出来事やそこに凝らされる技巧などといった点を
あまり気にせず見られるので、後々の感想をまとめるのは楽なのですが、
「演出」(セット/照明/音響その他)面では
ちょっと物足りない、と感じているのかも知れません(自分が)。
黄金のコメディフェスティバル2015

黄金のコメディフェスティバル2015

黄金のコメディフェスティバル

シアター風姿花伝(東京都)

2015/08/20 (木) ~ 2015/08/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

(自分的に)組み合わせではチョキチーム、最有力はアガリスクエンターテイメントさん
黄金のコメディフェスティバル2015、
自分はこれで2年目、
今年も千穐楽にしてぶっ通しスペシャルに参加。

結果発表にて、
最優秀作品賞はアガリスクエンターテイメントさん、
最優秀俳優賞は福地教光さん(バンタムクラスステージさん)、
どちらも順当な所ですね。

まあ、去年よりもどんどん賞を増やして
どのチーム、どの俳優/女優にも賞をやろう、
という形になった気がしますが、
それが小劇場演劇の世界にとっていい方向に働くといいですなあ( ´ー`)

あ、もちろん丸1日楽しみきれたイベントなので
☆5つで来年もぜひ観劇したいです。

ネタバレBOX

【思った事】


■グーチーム
●Peachboys『大奥の奥』
開演前に前説で「ぶっちゃけ下ネタです」と
ぶっちゃけてくれたのまでは良かったけど、
大事な物語とお芝居がどっちも雑で、
ガンガン投げられる下ネタも
単に小学生の会話のような冗談レベルにしか受け取れず、
はっきり言って笑えませんでした。
これも笑いの1形態なのかも知れませんが、
「演劇」である以上お芝居として成立させた上で
下ネタをガンガンぶっこんで欲しいものです( ´ー`)


●バンタムクラスステージ『クロッシング・ハニーズ』
バンタムさん元々の色であるハードボイルド/ガンアクションな感じを
今回は完全に表に出してきましたね。

ショッキングな場面から始まり、シリアスさもありつつ
そこにガンアクション(ギャングアクション?)ならではの
笑いの込め方をしてくるという。

お芝居としては一番上手さがあったと思います。

コメフェスぶっ通しで観た場合、同じような笑いが続かないように、
という一種の清涼剤/箸休め的な存在でもあります。
今年は優秀賞/最優秀俳優賞まで取るという躍進ぶりですが、
来年以降もどんどんコメフェスに出てほしいです。

※ ただ、昨年のコメフェスで感想の多くに
  「コメディ作品のみでの選考を求める」と
  いうクレーム的なものがあり、
  その対象の一つとなった演劇でもあるのかなあ…
  (笑い自体は去年の方がぶっこんでた感じしますけどね。)
  他の観劇者がどうとらえたかはわからないなあ・・・


■チョキチーム
●劇団鋼鉄村松
去年も参加してましたよね、頭がちょっと薄い村松さん。
去年は全く芝居/笑いとも評価出来るレベルにない、と思ったので、
今年もはっきりいって期待してませんでした。

しかし、始まりからもう面白い!
結構ブラックな合衆国と連邦双方が核を向け合う冷戦状態から始まり、
核ミサイル発射ボタン人間と大統領の表情劇、
ボタンを押したくてウズウズしてくるバカ大統領、
そして、「驚いて」、、、ただそれだけで核ミサイルを
連邦へ向けて発射してしまった大統領
(このキャラ好きですわ、僕は気に入った俳優に投票しました)。

それを知り色々と対策を打とうとする連邦側。

SDI(戦略防衛構想)とSOD(ソフトオンデマンド)を勘違いして、
アダルトビデオを真面目に見たり、
(「下の口から機密情報がただ漏れよー」、こういう下ネタは大好きです(´∀`*))

そして、「滅びる前に合衆国への復讐を」と
連邦書記長に合衆国への核ミサイル発射を迫る面々、
それに対して「大統領の滑稽さ、人間らしい一面」を
見てしまったからボタンを押せないという書記長。

大統領本人との電話会談で
大統領本人に「いいから押せよ!俺らだけ生き残るなんてやだよ!」
というように言われても、
「美しかった連邦の事を忘れないでくれ」と
書記長が語る場面は涙腺ゆるみました。

コメディとして、自分は今回の6作品中○(二番手)評価でしたね。


●スズキプロジェクトバージョンファイブ『隠ザクローゼット』
ある部屋にいた、誰にも見えない謎の男の存在に始まり、
そこへどんどんと集まってくる面々、
そして「男は幽霊らしい」、
「男の部屋のあるモノを探している」という流れになって、と
どんどんとシチュエーションコメディとして面白くなっていく
(昨年のアガリスクエンターテイメントさんに近い雰囲気を感じました)。

最後には男は意識不明の重体だがまだ死んでいない、
という事から、その彼女が部屋で男の無事を祈る場面で
かなり涙腺を緩まされて終わるかとおもいきや、
そんな彼女すら捕まえていく刑事。

と泣かせかけてそれでも無理矢理笑いに向けた、
そういうポリシー的なもの、嫌いじゃないですね。

上手さはこれから、でも笑わせる気は満々、準備も万端、
といった感じでしょうか?


■パーチーム
●モーレツカンパニー『にこにこたまたま』
演劇人だけあって、その演劇の場を舞台にする、というのは
これからの展開にすごく期待が持てたのですが、
無口くん⇒イケメン君
のキャラを立たせるだけで、後の物語が上手くなかったかなあ、と。
(元スターを始め他のキャラの立て方がよろしくない…
適当すぎる所で切り上げちゃった感じで)

ラストの舞台上収集がつかない場面を演じている場面、
本当に観客側の気持ちも収集がつきませんでした。
(笑いの入れ方に「上手さ」がないから、笑いようがない。)

女子高生が「演劇って、コメディって楽しい!」と締める場面、
実際この劇で女子高生はそんな事言わないんじゃないかな、
と残念な気持ちに。


●アガリスクエンターテイメント『七人の語らい/ワイフ・ゴーズ・オン』
前説での「海外の名作シチュエーションコメディを演じます」に始まり、
2人の妻に男が右往左往、までは
去年の演目にかなり似てるなあ、そしてアメリカンコメディの
コテコテさが前に出すぎで、
去年感じたアガリスクエンターテイメントならではの
「巧みさ」がないな、と残念な気持ちを持った所での、

大どんでん返し!

いきなり笛を吹いて
「今の場面、”シチュエーションコメディ”の定義からすると無理があるのでは?」
と駄目だしを始める面々。

そう、この作品はモーレツさんと同様、「演劇」、それも「シチュエーションコメディ」
自体を題材にしたものでした。

当初、「よくもまあ、海外の名作をぶった切るもんだ・・・」と感心していたら
その設定自体が嘘だった、との事。

大トリにして「シチュエーションコメディ」についてその定義を語り、
その定義にそぐわない自分達の演技すら切って見せる、
いやあ、すごい発想の転換だなあ、と。

はっきりいってここまでの6劇団で初めて噴き出して大爆笑してしまいました。

※ 去年のPMC野郎を初めて見て感じたのと同じ感覚。

今年は完全にアガリスクエンターテイメントさんだな、
「そうじゃなきゃ審査に問題あるわ」とまで思いました。

もちろん自分は評価◎1位に入れました。

観客賞、最優秀演劇賞とも受賞されて、まさに
TV放映を始めこれからノリにノってくる劇団だと思います。

※ 去年も「正統派コメディならアガリスクエンターテイメントだろう!」
  と感想がかなり荒れたんですよね。




【その他】
表にも書きましたが、各審査員それぞれが賞を用意するなど、
賞の大盤振る舞い状態、
プロデューサー登紀子さんへの表彰は良かったですが、

自分としては「どうかなあ?」と思うようなお芝居(劇団)についても
ガンガン賞を上げていくのが、
各人各劇団「それをウリ(?)にしてもっとガンガン演劇を頑張ろう!」と
前向きな方向に生きるならいいのですが、
思わぬ慢心(達していないにも関わらず、褒められて上達を怠る)に
つながらないかが心配です。


そして「黄金のコメディフェスティバル」での受賞をたよりに
その劇団を観劇に行くお客さんを失望させる事があっては、
来年以降の「黄金のコメディフェスティバル」自体の存在意義にも繋がってしまうかと・・・
時をかける206号室

時をかける206号室

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

熱回
3回目の投稿失礼しますm(_ _)m
(本日の観劇でついまたまた投稿したくなってしまったので)


本日で4回目の観劇、観劇前会社にて、
そろそろ自分でも「シナリオ全容はほぼ把握し、
舞台上の明(メイン場面)と暗(その他の場所)での
各役者の所作も見えてきた。
そろそろさすがに”飽き”という感情が来るかな?」
と思っていました
(忙しくない人がいればチケット譲ろうかな、とか思ったり)。

今まで何度か千穐楽の舞台を観て、その熱量の違いなどに
「千穐楽はやはり特別なんだなあ」とは思っていました。

で、本日は撮影回でした。
(多分ですが)撮影回もまた役者達にとって
特別なものなんだなあと認識しました。


「ミス出来ない」という緊張からか、
序盤こそ逆にミスが目立ってしまったものの、
熱量のこもり方が半端ない。

先日のトークショーで齋藤彩夏さんが
「役に入りきってる時」の話をしていましたが、

各役についてまさにその「役に入りきっている」演技が
今まで以上に展開されて、
今までの観劇回で理解し覚えた事自体を忘れたかのように、
「舞台自体」にまさに惹きつけられてしまいました。

そして、その中で情熱的な役についての熱の込め方、
その熱量が観劇側にも伝播してくる事は
今までの色々な舞台で知っていましたが、

それ以外の演技、狂気や優しさなど
「情熱」を込めるのとはまた違う役についても、
やはり「熱」は込められるし
「魂」を込めて演じているというのを
感じられるという事を再認識しました。
(演技の世界ってやはり奥が深いなあ( ´ー`))


終演後イベントでRose in many colorsのAlphaさんが、
声帯の手術をしたばかりでしばらく歌は歌えない、
というのをおして、
ファンの為に「イタイイタイイタイ」を歌ってくれたのは
(さすがに手術後今日ひさびさに歌ったという事で声は出ていませんでしたが)、
その行為自体に、そして歌に合わせた無声芝居を観ていて、
なんだか泣けてしまいました。

Rose in many colors with ボクラ団義でのPVが実現するといいなあ( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
・ ストーリーテラーのメイン側を張る今出さんの成長がすごいなあ、と。

  初回観劇時、本劇はストーリーテラー2人”男”と”女”の
  説明含め台詞の比重が完全に”女”側(今出さん)にあった事からも
  (”男”側は大神さんが言うように毎回空っぽの状態から始め、
  場面と”女”の投げかける台詞にリアクションする形で段々真に迫っていく)

  (大役ゆえに)今出さんの演技が安定しないと
  それがそのまま観劇側に伝わってしまい
  観劇の集中が切れてしまう、
  という文句(?)を書きました。

  初日はノレる場面ノレない場面があったのか、
  その辺り「演じている」から「ただ台詞をつないでいる(読んでいる)」まで
  演技に不安定さを感じました。

  しかし、本日は噛みトチリの有無はともかく、
  とにかく「役に入りきる」(些細なミスで自分を崩さない)
  そういう姿勢が見えるように、
  見事に「役」のまま1舞台乗り切ったように思えます。

  1日目、2日目(自分の初回観劇は2日目)辺りで観劇し、
  自分と同じような感想を抱いた人にこそ、
  今の姿を観てほしいなあ、
  観劇を後半に合わせてきた人にとっては
  「今(今日)が一番脂の乗ったいいタイミングだなあ」と思いました。


・ 熱量の込め方がハンパない。
  まず情熱的な役どころの皆さんの
  今日の熱量はハンパなかったと思います。

  ”漫才師”2人、”オカマ”、”妻”齋藤彩夏さん、
  の演技がいつもに増して「迫真の演技」とでも言うのでしょうか、
  舞台上から演技の体当たりをくらっているかのように、
  すごい熱量を感じました。

  そして、いつも前半は空(から)、
  後半は(自分の理解を超えた)衝撃の事実に
  驚き混乱するという”男”大神さんの熱量もすごかったです。


  そして何より、
  (怒りなどの感情を中心とした)
  情熱的な役どころ以外の面々も
  その役に応じた「熱」を込めて演技をしている、
  という事を改めて理解(?)出来たような気がします。

  ”二重生活の男”が、”嫁”が誰の子とも知れぬ子を宿して現れ、
  三つ巴の様相を呈してへたり込んだ後、

  (この時既に「逃げる」事を決めていたのかは分かりませんが)
  立ち上がって「3人で暮らそう」~実際行方をくらますまでの演技に

  「狂気」と言っていいのかこれが”男”の「逃げ」という思考の始まりだったのか
  (それまでも考え方などにおかしな部分のあった”二重生活の男”ですが)、

  「まともさ(理性)」的なものを失ったかのように、
  演技が切り替わる部分をみて、

  ※ 各観劇回ごとに、いい意味で「なんて嫌な奴なんだ」とは思っていましたが

  演技への役者としての意気/熱の込め方には、
  こういう形もあるんだなあ、と改めて思いました。

  そうして観た時、その他の各配役についても、
  「優しい」「温かい」役どころの各人も、

  その気持ちを深く持つ/込める、という事をやっているんだな、
  と今までの観劇ではあまり共感する事もなく観ていた部分について、
  「こういう熱量、演技への魂の込め方もあるのか」と、
  感情に刺さってくるものを感じられるようになりました。

  ? 観劇者レベルが上がったのでしょうか(??)
    いい体験をさせてもらいました。


そういう意味で「4回目」とはいえ、
今回はいつも以上の良回だったなあ、と( ´ー`)
時をかける206号室

時をかける206号室

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

意味ある「盆」セット
二度見感想失礼します。
(1度目の感想と評価は変わらずなので、評価欄は空欄とします。)
二度見でやっぱり色々謎が解けた部分、
伏線に気づけた部分、沢山ありました。


でネタバレ避けるとして書けるのは、、、
「盆」まではもうTwitterその他でネタバレOKになってるようなので。

今回全ての部屋を構成する「盆」セット
(部屋自体と、部屋の壁)の動きがすごいですね。

(他劇団で、1つの盆上に島全体を構成するというのは観た事はありますが)
複数の盆が回る事で
・ 部屋の外と中
・ ご近所さんとの関係(的なもの)
・ 人の移動
・ (今回重要となる)部屋位置の特定をさせない
・ 同じ部屋の場面/視点転換的なもの
その他色々なものを表現する、というのは
初見では「めまぐるしいスーパーマリオのようだ」と思いましたが、
二度見で見直すと中々にうまいアイデアなのかと。

物語が見えてきた時、部屋から部屋へと移動する
”マリオ”が物語を繋げていく姿が「すごい!」と。


あとは初見から思っていましたが
ボクラ団義および他劇団の看板俳優陣が
今までにやってきた役とまったく違う役に挑戦する、
というのも本人達のTwitterで「新たなる挑戦」として
情報はあがっていましたが、

実際に観ると、いままで観た各劇では
「感情移入出来る悲しい主人公/ヒロイン」などの役にあった彼ら/彼女らが、
「こんな奴に感情移入できるか!」と怒り心頭になるような
「ダメ人間」だったりする事
(それもまた悲しい感情移入対象ではあるのですが)、

そして他劇でのいかにも「主人公」的なかっこよさを完全に打ち消して
観ている側(観客)にちゃんと嫌悪その他の念を抱かせるのが、
本当に「演技上手」だなあ、と思わせられました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 初見よりヒロインの方などはすごく台詞回し良くなってましたが、
  ベテラン勢が
  ・ のどを痛めかけている
  ・ 台詞トチリなどが増えた
   (公演期間中盤まで来た事による気の緩みかあるいは疲れか?)
  など、ちょっと今日初見の人には残念な部分があったかも知れません。

・ 二度見だからこそ、
  ・ 201~203号室の事実+主人公がねじ曲げたフィクション
  と、主人公なりの懺悔的な意味合いを持った
  ・ 204、205という書きかけの物語(娘と完成させる)
  との、つくり/結末の方向性の違いが際立って見えました。
  
・ やっぱり漫才師コンビとオカマの関係性には、
  (こちらは主人公と娘の想像であるとわかりつつ)
  涙腺を強く引かれます。

  ※ 初回観劇後+本パンフレット読破後も
    漫才師(図師さんの方)が
    太った父親に従う理由部分と位置づけが
    「アレ?(ちゃんと理解出来ていない)」の状態だったのですが、
    本日二度見で確かめて、
    ・ 父でもなんでもない存在だが、実の子であるオカマを守り
    ・ オカマの代わりに、漫才師(加藤さん)に対しての全ての(父の)罪を引き受ける
    という位置づけだった事を「ちゃんと」理解しました。

・ 他の方の感想で、
  今回は凝り過ぎ
  (過去のボクラ団義公演でも沢山あったけど、
  ここまで来てはボクラ団義初見は「唖然」とするばかりで
  多分話の半分も理解出来ないのでは?)
  というようなものがありましたが、

  自分もボクラ団義の演劇を観て数回という所では
  (「PlayAgain 嘘ツキたちの歌」「さよならの唄」など)
  まさにその感想と同じ気持ちを持ったんですよね。

  この劇団は確かに壮大ではない世界の中に
  すごく入り組んでいてトリッキーな
  ロジカルミステリ空間を作り上げて、
  パズルで一度ハマったピースを起承転結の「転」で
  全部バラして別のピースとして組み直す、
  観客を騙しまくって最後の最後で思いもしなかった方向に
  完結させるという、
  ハマればすごい面白いけど、ハマれない人には
  「ちんぷんかんぷん」な物語を作るなあ、と。

  何種類かあるボクラ団義の色の中で

  ・ ファンタジー色の強い作品(名作多々)
    比較的分かりやすい物語展開が多い

  ・ ロジカルミステリ色多々(怪作多々)
    1度で理解出来る人は本当に少ない

  の状況において、
  観客に友人知人を誘わせどんどん一般層へボクラ団義を広げていくなら
  「分かりやすい方向」を目指す、
  「トリッキー度(久保田唱さんのこだわり度合い)」を減らす、
  などが必要なのかなあ、と自分も思っていました。

  しかし、本劇初見でひさびさに久保田唱色に完全に染まった
  ロジカルミステリ作品を観てしまうと、
  この色に特化した劇団でもあってほしいなあ、と思うんですよね。
  (「観劇脳」自体がこの色を待ち遠しく思ってしまっている感があります。)

  もういっそ、
  「今回は非常に分かりやすい感動作品です」
  「今回は完全ロジカルミステリです、1回じゃ理解できません、好みは分かれます」
  というのを、フライヤー時点で表記してしまうぐらいの方が、
  ・ 今回は1人でボクラ団義作品を楽しもう
  ・ 今回は友人連中を誘ってみるか(観客の挑戦)
  という感じで観客側も動きやすいのかも知れません。
時をかける206号室

時をかける206号室

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

待ちに待った久保田唱/ボクラ団義アハ体験!!
何を書いてもこれから観劇の人の楽しみを奪う
ネタバレになりそうなので。。。

「スーパーマリオもビックリ!」
「ひさびさ久保田唱/ボクラ団義の真骨頂演劇!」
と。


本日の終演後イベントのトークショーにて
役者加藤凛太郎さんのお話を聞いて、
「本当に久保田唱さんは鬼才にして天才、
本気を出した時、
脚本/演出家として物語は脳内で既に
視覚/聴覚的に全て完成イメージがあり、
演出はあくまでもそれを具現化する作業なんだなあ…」と
改めて感心。

そしてそれを有能な表現者集団として
100%、いや120%の出来で
現実に具現化するのが企画演劇集団ボクラ団義演者陣、
スタッフ、そしてゲストの皆様なんだなあ( ´ー`)

と、役者さん自身の感想を聞いて改めて
その実力に納得させられました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ Rose in many colorsさんの往年の名曲を
  完全に演劇とシンクロさせてのオープニング、
  綺麗に決まったなあ、と。

・ そして開演前、
  アパートの一室の入り口だけと見せておいて、
  セットがグルグルグルグル中も外も回って回って、
  演者もそれに合わせて回って飛び乗って、と
  アトラクション的要素まで含むセットとそこでの演出/演技に驚き。

・ 物語について
  「何故かこの部屋を見たい」と
  アパートの内見に訪れた男性と、
  そこに現れこの部屋のいわくを語る謎の女性。

  そして語られる現実ともフィクションともつかない
  それぞれの部屋の
  「愉快では済まない」出来事すら
  笑いに変える序盤の展開。

  企画演劇集団ボクラ団義は自分が知ってからもどんどんどんどん
  演目とその方向性を広げていっていたので、

  この序盤の展開に「今回は喜劇的な会話劇なのか」と思っていました。

  しかし「この物語を作っているのは、実は男性側」、
  そして各部屋と登場人物達の関係が明らかになるにつれて見えて来る
  サイコサスペンスに大いに混乱させられました。

  ※ 観劇者の頭の中に1度描かれた物語が転じて完全に崩壊し、
    そして再び真実の視点で組み直されていく、
    (脳内で)1万ピース超のパズルをバラして再び組み上げるようなこの体験が、
    ボクラ団義式「アハ体験」とでも言うのでしょうか、
    1度ハマるとたまりません
    (普段経験する事のない感情というか感触というかがクセになります)。

    これぞロジカルミステリの鬼才久保田唱と企画演劇集団ボクラ団義の
    一面にして真骨頂かと。

  そして、親子であった2人は未完の204号室(漫才師)と205号室(他人同士)を
  「救いのある形で完結」させ(205号室については構築自体を取りやめ)、
  自分達の人生と再び向き合って行く、と。

  笑いあり涙あり恐怖あり混乱あり、本当に色々なものが入り混じった
  一大巨編、その名が「時をかける206号室」なのが
  小劇場演劇ならではの自由奔放さなのでしょうか、
  タイトルからは誰もこんな展開予想できないと思います。
  (ボクラ団義を知っているファンの面々ですら、
  毎回「今回はこう来たかー!?」と騙されていると思います。)

・ この大混乱をひさびさに味わったからこそ、
  観劇後全てを知った「神の視点」での二度観が待ち遠しい。

  「アレがこうして、つまりこの人が実は…、
  あっ、隠されてた伏線また見つけた!!」
  が楽しみでなりません。


・ ほんのちょっとの間でしたが、残念だったのが
  ヒロインにしてストーリーテラーを務めるアイドルの方
  (ボクラ団義は基本、ヒロインにアイドル系女優さんを置きますね)の、
  演技が安定しなかった事でしょうか。
  ・ 発声
  ・ 演技自体
  序盤などのノレている時は問題なかったのですが、
  中盤ちょっと乱れた時など不安定さを感じ、

  せっかく自分が浸っている良い「混乱」の物語から、
  集中を解かれかけてしまいました。
  ※ 多分、それほど多くのミスではないのですが
    他が本当に集中して演技出来ていた感じだったので
    ほぼ全編通して存在し続ける2人の所作、台詞などには
    大注目の状態だった為、かなり気になってしまいました。

  それもあり、一大巨編にして自分の一番好みのタイプの
  お芝居だが、本日は「集中力そがれ」で☆4つかな?
  と途中お芝居から気持ちが離れてしまった時、
  そんな事を考えていました。

  でも、まだまだ公演序盤という事もあり、きっと場慣れその他で
  きっと変わっていく/良くなっていくものと思います。
  (今までのヒロイン陣もみんなそうでしたから( ´ー`))

・ 親子2人で仕上げた204号室の漫才師コンビとオカマの
  やりとりが急激に涙腺を刺激されました。

  そのちょっと前までは恐ろしいサイコサスペンスの様相を呈していたのに、
  男性(小説家)の未完の空想(物語)でしかない
  この漫才師達の結末をどう仕上げるのか?

  観ているこちらも気になり、
  それが
  ・ 俺の親父が相方の母親を轢き殺した、と父親を名乗る男に脅された
  ・ そんな事漫才の前に言えよ
  ~
  ・ その親父はオカマの父でもあり
  の怒涛の涙の連携プレーに、(設定に多少の無理は感じつつ)
  役者陣のあまりの演技の良さに
  一気に涙が溜まりました。

  物語の展開が本当に素晴らしい、山も谷も光も闇も、
  色々なものを備えた一大大冒険活劇、
  それが「時をかける206号室」(タイトルがまったくその世界観の広さにあってない( ´ー`))
  かと。。。


PS.一身上の都合で劇団を離れられた竹花さんと
  ひさびさの新メンバーの18歳(名前??)が
  揃った光景は何か嬉しいものがありました。
15 Minutes Made Volume13

15 Minutes Made Volume13

Mrs.fictions

王子小劇場(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/25 (火)公演終了

満足度★★★★★

これは楽しい名刺交換会
複数劇団で短編を上演し競い合うコメフェスは知っていましたが、

それよりも更に更に昔から複数劇団による
「15分演劇」の演じ合いにこだわった
イベントがある事を初めて知りました。

フライヤーに「各劇団の『名刺』となるような舞台を」、

とありましたが、巧みから稚拙まで、
15分という制限の難しさはあれど、
色々な劇団(の一面を)を知る、
「名刺交換」のまたとない機会となったと思います。

今回は「知っている劇団がいたから」、
という理由での観劇ですが、
次は「新しい劇団を知る為に」観劇したいです。

イベントとしてとても楽しめたので評価☆5つとしたいです。

ネタバレBOX

【思った事(各お芝居)】
●ベンチ(タイタニックゴジラ)
・ フライヤーに
  「高校野球の最後のベンチ枠18番を取り合う」という面白そうな
  設定があり期待したのですが、

  ・ 物語が展開していない、動かない

  ・ 笑いを取りきれていない
    (折角のネタの数々に対してバカになりきれていない感あり)

  と、シチュエーションコメディ枠だと思うのですが、
  自分は最初から最後まで「素」の気持ちのままで
  観てしまいました。
  
  「笑い」のネタとなるきっかけは大量にあったのに「もったいない」。


●停電の夜に魔が差して(アナログスイッチ)
・ 設定の勝利。
  照明のありなしを逆転させての停電中(本来真っ暗闇だが、こちらが明転)を
  ネタにしたシチュエーションコメディ。

  設定が上手い。
  その時点でもう観客として舞台に引き込まれてしまいました。

  こういう「何か1つ」光るものを用意出来ると
  お芝居ってとたん輝き始めますね。

  笑った笑った(ノ∀`●)


●全肯定少女ゆめあ(DULL-COLOERD POP)
・ シューーーーーーーーーール、というぐらいに
  シュールな世界観表現だったのですが、
  「笑い」ネタの方がだんだんと異常な世界観に飲まれて
  「笑えない」方向にスイッチが入ってしまったような。

  物語自体「テーマ」の存在を感じつつ、
  「うーん、結局大人になる事、大人の世界」などに対して、
  どういう意味合いを含んでいたのかが
  あのお芝居の構成では理解しきれず。

  ちょっと残念。


●ブルーベリー(Straw&Berry)
・ ダークホースと言っても良いのかも知れません。
  最初大学生~25ぐらいまでの若者4人での山手線ゲームなどの
  単なる内輪騒ぎ系イベントの段では、
  はっきりいって観客側の空気感と
  舞台上とでかなり温度差があったかと思います。
  (舞台上のハイテンションに対して少しも笑えない。)

  このまま15分経ってしまうのか?と残念に思っていたら、
  メガネ女性の奏でるギターと歌に
  泣き出すもう1人の女性(眼帯付き)。

  この眼帯付きの女性が舞台に背を向けた状態で、
  この内輪騒ぎが始まった時から、
  既に仕掛けられていたのか・・・

  物語がどんどん動き始める。
  ・ トイレ、または「女性2人にして」と追い出されていく男性陣
  ・ 今回のイベント主催はこの眼帯女性だった
  ・ 眼帯女性は結婚している、「旦那と何かあった?」と心配する友人女性

  そして、メンバー2人が去り、眼帯女性が1人になった所で、
  いきなりの「生着替え」。

  (こういう場面を観たの自体初めてなので)
  本来なら少しはHな気分になってしまいそうな所、
  あまりにも痛々しい身体中の傷跡(間違いなくDVの跡)。

  今までの物語が全部コメディ方面だった事から、
  本イベント自体コメディオンリーかと思っていた所に
  この展開ははっきりいって血が引くようでした。

  しかし気持ちの方は舞台上にぐいぐい引っ張られていきます。

  ※ この時点で、少し部屋を空けた男性と
    このDV被害者女性の関係が
    ・ 単なる友人
    ・ 夫婦(=男性がDVした張本人)
    判断出来ず、この先の展開に恐怖すら感じていました。

  そこから、物語序盤で語られた女性のかつての
  子供の頃のお別れ会?に男性がなぐさめようとした行為、

  女性は「自分の事を好き?」と尋ねる、など、
  この男性は「友人(互いに?好意は持っていた)」と分かり、
  更に女性がDV亭主を殺してきた、と暗に告げる事、

  その上でこの男性が「待っている」と告げ、
  更にはかつてのようにパッチンガム?
  (名前分かりません、あの指を挟むガム)の
  ネタで女性を笑わせようとするが逆に(かつてのように)
  泣かせてしまい、
  (女性の扱いが得意ではなさそうな)男性が更に色々はげますほどに
  女性が涙して・・・

  という物語の流れが、伏線含め15分に凝縮された
  まさに「ドラマ」として、
  観劇している自分の涙腺に突き刺さりました。
  (15分中半分にも満たない時間の物語の動き/変化だけで
  まさかここまで泣かせられるとは・・・)

  そういう意味で、ある意味一番の収穫だったのは
  Straw&Berryさんでした。

  ※ 上演台本300円、買って帰れば良かったなあ・・・


●近すぎて遠い(ポップンマッシュルームチキン野郎)
・ レベル違いの巨匠

  ※ こちらが慣れている、あるいは(笑いや物語の作り、役者の演技を)
    信じきっているが故かも知れませんが

  最初から「笑い」でまず裏切らない。

  サイドストーリー、小ネタで笑いを取りつつ、
  メインの物語が「明るめ」「だけど先が見えない」形で展開していく
  (物語が動く動く)。

  そして、たった15分の展開のラストにこんな衝撃が、
  それもオカマのカツ子をこんなにも上手く活かした形で
  暴かれるとは思いませんでした。

  「単に女性が過去の記憶を取り戻し混乱する」などのラストを
  想像していましたが、やはり自分の想像の枠外を攻める劇団、
  PMC野郎。

  「そもそもが逆だった」、というラストには本当に驚かされました。

  毎回毎回、
  定番とも言えるブラックユーモアと笑いと涙と衝撃的な展開などのエッセンスを
  今回のイベントでPMC野郎という名の劇団の
  「名刺」として15分に全て盛り込んだ、
  まさに作品としてのレベルは他劇団を完全に圧倒していました。


●ミセスフィクションズの祭りのあと(Mrs.fictions)
・ なんかやさしい、ほっとする安心感、温かいやりとり
  うらぶれた町のガールズバー(!)裏のゴミ捨て場で、
  バーのママと店の金を持ち逃げしたホステスミケ、
  そしてもう2人のホステス(どちらも猫名)、
  のなんてことはない会話劇。

  だけどママが温かいし、
  ミケやその他2人も色々な事はありつつも
  それでも何かやさしさを感じさせるやりとり、会話が続く。
  (会話劇中に物語としての大きな変化を求めるのではなく、
  その空気感、暖かさをそのまま観客にダイレクトに伝えてくる、というか。)

  本イベントのトリは外せない(失敗出来ない)、
  その上で15分という時間に挑み続けた劇団が持った

  お芝居の見せ方、場の空気の作り方の上手さには、
  他劇団とはこれまた違う「巧みさ」を感じました。


長々書きましたが、各劇団それぞれ15分の短編、
かつセットも持ち込みと制限は多く、
色々苦労されている面も多かったと思います。

そこに巧みさや稚拙さが現れ
(見せたかった面ではなく)見せたくなかった面だけを
観せてしまった劇団もあったかと思います。


そういう事があった上でも、
本イベント(15Minutes Made)については、
色々な劇団を知る新たなチャンス

※ 過去色々な劇団を試して、結構多くハズレを引いてしまい
  「定番劇団」しか観なくなった自分にとっては

もう一度色々な劇団を開拓してみようかな?
と後押ししてくれるようなイベントでした。


小劇場演劇応援イベントとしてもかなり良いイベントだったと思います。
ぜひ次も観劇したいです。
ガールズトーク☆アパートメント -2010.ver&2015.ver-

ガールズトーク☆アパートメント -2010.ver&2015.ver-

UDA☆MAP

シアターKASSAI(東京都)

2015/07/29 (水) ~ 2015/08/09 (日)公演終了

満足度★★★★

いい「予定調和」的脚本
2015ver観劇。

2010ver、2015verとも
グズグズガールズトークから始まり、
四季を通したその中で、

「どこかの誰かに普通にありそうな出来事」を
観客の心に刺さる形で盛り込む事で、
物語に見事な起伏を作ってくれています。

観劇している時間を忘れ、
シェアハウスする彼女たちのガールズトークに耳を傾けるのは、

気を張って観る「一大スペクタクル」な大(おお)お芝居とはまた違う、
気持ちも緩く涙腺も緩い、やさしい時間なのかな、と。
(ネタバレだらけなのでこんな感じでしか感想書けませんでした( ´ー`))

ネタバレBOX

【思った事】
・ 2010ver同様、新入りさん(今回は2名)の登場からスタート。

  しかし、新規脚本の設定上の事とはいえ、
  2010ver時代のメンバー、
  大学生はともかく
  ずっと居座っていた水商売のお姉さんまで含めて
  みんな退寮しちゃってるんですね。

  なんかお芝居と関係ない所で感慨深かったです( ´ー`)


・ 2010ver同様といえば同様なのですが、
  ・ 2015verの方がメンバーのテンションの高い?

  ・ 2010verが2000年代を描いたものだとしたら、
    今回の2015verは2015年をピンポイントにターゲットにしている?
    (ゲイカップルのメジャー化、渋谷区の同性婚条例、
    DV問題など)

  という事で少しお芝居の導入に違いがあったかな、と。

  ※ 自分としては2010verよりも最初から
    メンバーが揃っている分、
    グズグズ感が強く、
    「あれ?構成としては2010verの方が良かったかな?」
    など序盤は思ってしまいました。


・ (ネタバレ禁止令が出てますが)
  宇田川さんの愛犬チクワちゃん(役名チクワ子)、
  演劇に動物を入れちゃうのか!と可愛さに癒やされつつも、
  
  チワワ自身がかなり「弱い」動物なので、
  下手に演技で引っ張りだされて怪我をしてしまわないか?
  と、別の意味でドキドキしてしまいました。

  あと9公演、本当にチクワちゃんにだけは怪我のないように・・・


・ 同様にロウソクも、とてもきれいな演出なれど、
  本数が多い事、部屋が散らかっている事、などもあり
  誰かが倒したら大変な事になるぞ、とちょっと怖かったです。


・ (ネタバレ禁止令が出てますが)
  ゲイカップルネタは「最近のトレンド」でもあるけど、
  お2人の演技/所作には結構驚きました。
  
  お芝居200本近く観てきて、
  ガチなキスシーン観たのこれで2度目です。


・ そんなゲイ2人が「○○記念日」に
  お互いがお互い、別の事を考えあっていた。

  ・ 渋谷区に行って結婚しよう

  ・ 「俺の為に俺の為に」という重さが嫌だ、別れよう

  しかし、その彼(両方彼だけど)の重さの理由が

  ※ 週刊モーニングに「きのう何食べた?」というゲイカップルをライトに
   描く漫画があって、丁度同じようなネタに触れているのですが

  ゲイカップルは遺産相続も年金も今までは受け取れなかった、
  でも、渋谷区の英断(と言っちゃいますが)のおかげで
  「同性婚」する事で年金その他を配偶者に引き継ぐ事が出来るようになった、

  自分の愛する「彼」に、自分にもしもの事があった場合の
  「年金」を引き継ぎたいという「優しさ」からの事だった、と。

  ただ、「未来」を考える彼と(未来よりも)「今」を考える彼との
  痴話喧嘩はどんどん大事になって、「別れよう!」とまで。。。

  しかし、老朽化激しい??荘の停電問題から、
  奇しくも雰囲気は良い方に転じ、
  
  お互いはお互いを再び想い、擬似結婚式で幕を閉じる。

  ※ 時間の感覚なかったので、2015verはこれで終わりかと思っちゃいました。


・ そして2010verでのシングルマザーの出産の件と同様、
  ゲイカップルが本当の結婚式をあげる、という流れで
  締めくくるかと見せて、

  まさかの亭主のDVから逃れる為に??荘にやってきた
  DV妻がDV亭主から繰り返された謝罪のLINE攻撃。

  最初は「一度手をあげた男はまたやるよ!」と懐疑的に
  反対するガールズ達も、

  シンガーソングライターの(見事にグズグズなギターと歌の)
  「いつ出て行ってもいい、いつ戻ってもいい」というフレーズに

  DV妻が一度DV亭主の元へ戻る事を認め、
  また何かあったら戻って来なさい、と。


・ 本物語、前半はグズグズ展開(自己紹介をかねて)で笑わせて、
  後半はほんと泣き通しでした。


・ いい締めくくりだなー、と思わせておいて、
  更に
  冒頭でのメンバー全員寝落ちのくだりの再現で、
  最後の最後に「親方さん」までも
  この??荘に入れますか?
  と。

  ぬくもりのあるシェアハウス生活に、
  ぬくもりを求める人がやってくるエンディング、
  いいものですね、
  「ガールズトーク★アパートメント」。

  これで2020年その他オリンピックなどがやってきて
  また時流をとらえたverが作られて行ったら
  楽しいんだろうなあ。

  その時は、今までの入居者達のその後も
  追ってみて欲しいですね。
  同窓会的に( ´ー`)
ガールズトーク☆アパートメント -2010.ver&2015.ver-

ガールズトーク☆アパートメント -2010.ver&2015.ver-

UDA☆MAP

シアターKASSAI(東京都)

2015/07/29 (水) ~ 2015/08/09 (日)公演終了

満足度★★★★

「リアル」を抱えた女性達のシェアハウス生活1年会話劇
2010Ver観劇。

劇場パンフの「グダグダ会話劇」の通り、
下は18歳(?)から上は30代後半(?)までの
女性たちのシェアハウス生活での
グダグダトークのやりとりによる、1年間が描かれる。

「グダグダ」というフレーズを前面に出すからこその
色々なグダグダ面はあれど、

この女性たちはこのシェアハウスの生活の外にも
「人生(リアル)」を抱えている事がだんだんと見えてきて、
単に笑いだけでなくそこに泣けたり考えさせられたりとしました。

また、演出と芝居の巧みさもあって、
見事にLDK(ロングダイニングキッチン)だけで
四季を描いて観せたかと。


大家さんの懐の広さも含めて、
女性たちの交差点的シェアハウス、という感じかしら( ´ー`)

※ 終演時の舞台挨拶で「UDAMAPはどしどし色々(アドリブを?)入れていく」の
  言葉からも、(基本設定はありつつ)
  観るほどに変化/進化していく舞台なのかしら?
  という期待が持てました。

ネタバレBOX


【思った事】
・ LDK(ロングダイニングキッチン)のセットは
  かなり良く出来ていたかと。
  (うちの壁の穴を直して欲しいくらい。)


・ 序盤、基本的に楽天家ぞろいの女性たちの
  「楽しい」会話劇が春、夏と続いた時、
  「面白い」「時間を忘れて引き込まれる」という面はあれど、
  「物語に起伏がないと☆3つの凡作という所かなあ」、
  なんて考えていました。

  しかし、
  (不倫中の女性の話から始まり)
  秋、妊婦となって海外留学から帰国した女性の

  「シングルマザーになる(妊娠させた相手との結婚は考えていない)」
  という、なんともクールというか潔いというか、
  今風な女性を描いたようでありながら、

  周りの女性達の会話の中で
  「(子供が)幸せになれるの?」
  などの台詞、

  暖炉/煙突に向けて叫んだ
  「元気に生まれてこい!」
  という言葉の中になんとも複雑で、
  それでも「シングルマザー」となる事を認めた
  女性の強さと子供に対する愛情が感じられて涙腺がゆるみました。
  
  こういう、キレイ事だけではない、
  「女性が人生を生きていく」というシェアハウスの外での
  それぞれの「リアル」が見えて来た事によって、
  「(自称)グダグダ会話劇」にいっきに深みが増しました。

  そして、冬の「体育教師」の
  生徒からの「スパイ」呼ばわりされた事についてのくだりなど、

  最初衝撃を受けてしまっていた「体育教師」が
  自分の言った発言を思い出し、
  生徒が「スパイ」と言った、その本当の意味を捉える所など、
  これまた心に刺さるなあ、と。


・ 場面転換の「グダグダ」感が面白く、
  また四季を上手く観せたかと。

  春→夏の時、暗転その他なしで
  全員がセットを片付けて夏道具を持ち込んで、
  とバタバタした様子に、
  「これはさすがにグダグダだ」と感じつつも、
  それが許される会話劇、という気持ちもありました。

  そのバタバタシーンの中に、ガスパッチョの人の告白シーンを盛り込むなど、
  単なる「作業」シーンにしてしまわない所がまた良いかと。

  そして最後、冬のラストで窓を開けたら1面の雪景色、
  あれは凝りようはともかく、「上手い観せ方」をしたなあ、と。

  女性達の会話(お芝居)と、小道具その他を巧みに使う事によって、
  単なるLDKの中で四季折々を感じさせる、
  そういった部分が見事でした。


・ どんな深い(シングルマザーのお話など)それぞれの物語に対しても、
  大家さん(宇田川さん)が深入りするのではなく、
  あくまでも見守るというスタンスを取る事で、
  それぞれの女性がそれぞれに深く悩んでしまわず、
  「シェアハウス」という生活を続けていけたのかなあ、と。


2010verでこれだけ物語の詰まったお話、
2015verでは今度は何が起こるのか、
本当に気になりますね。
LAST SMILE  ラストスマイル

LAST SMILE ラストスマイル

ENG

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/07/22 (水) ~ 2015/07/27 (月)公演終了

「伏線回収」以外にも二度観ならではの「あの世界に戻る」懐かしさが
二度観感想失礼します。
先日が「空」キャストで今回が「宙」キャスト、と。


既に初見で「知っている」事が影響してか、
舞台が開幕する以前から色々な事を考えてしまい、

また観劇中の役者の台詞や各所作などについても
初見時の「ストレートな観方でのもの」とは
また違う色々な想いを抱きました。

何よりも結構早い段階から涙腺が緩みっぱなしで、
「アノ場面/展開」にはもう目から涙が引っぱり
出されるような感覚が止まりませんでした。

初演~3回目までの再演を観た人達って今回の観劇で
こういう感覚を味わってたんですかね
(なんというか懐かしさのような)。

評価は前回☆5なので今回は空欄としておきます。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 「アノ場面/展開」
  3回目のループで総督がやっと「戦争をやめよう」と西船橋に同意してくれたのに
  その後すぐに村上に殺されてしまい、
  西船橋も絶望の中で銀次に腹を刺されながら笛を吹き(大いなる絶望)、

  時間を移動する間、
  西船橋が「どうして2人とも何も言ってくれないんだ!」
  と平井、津田沼に話しかけても返事がもらえない、その後、

  戻った世界で西船橋の「戦争なんてやめよう!」の一言に
  総督が「やめよう!」といきなり返して観客をびっくりさせるあの流れ、

  あの悲しみから救いまでの流れは
  感情的に涙腺に「グワアーーーっ!」とくるものがありました。
  (初見以上に今回の方が泣かされてしまいました。)


・ メイズンが大砲を作ってた流れについて思ったのですが、
  「大砲を正しく完成させて青の国(名前忘れてしまいました)を完全に倒した」としても
  ある意味戦争は終わり、次に向える(もう1つの大気圏藻海を目指す)
  流れにはなるんだなあ、と。

  ただし、赤の国、青の国、いずれかの勝利で、
  勝ったものだけが未来を手にする、
  というそれを嫌って赤の国へ来たメイズンだからこそ、
  「大砲の照準をずらした」のだなあ、と。

  ※ 丁度最近「ファイアーエムブレムif」というゲームが出たんです。
    主人公が暗夜王国、白夜王国、いずれかの側について
    その側の国の「正義」で勝利を目指す、という。

    そして、このゲーム、第三のルートが公開されたんですね。
    「どちらか片方の国につかずに、全員が幸せになれる道を探す」という。

    ビックなニュースではありませんが、
    丁度時事ネタ的な意味合いもあったんだなあ、と。


・ 初見時も気にはなりましたが、
  集中を切らされるほどのマイナス点でもない(他の舞台でも良くある事)、
  と思っていた青い(強い)照明とその光が残っての
  青暗いぐらいの中途半端な暗転について、

  他の方の感想などで指摘されていたのもあって
  よくよく見てみるとやはり結構気になるものですね。

  裏方さんが舵その他を片付けている姿や、
  斬り合いで倒れた役者が退場していく姿などが
  「(結構はっきり)観えてしまう」。

  あの照明については何かの狙いがあってのものなのでしょうか?
  そうでないのなら完全な暗転で良かったんじゃないかな?
  (あの退場していく姿を見て、集中を切らす観客がいてもおかしくないかな?)
  と思いました。


・ 今回多くの人が喉を痛めていたのか、開演から早い段階で
  結構発声に無理が出てたかと(しゃがれたり、声が細くなったり)。

  THRee'Sの時も1人喉痛めてましたが、
  DMF/ENG公演の演出(演技指導)の要求する「熱さ」がすごいのか、
  夏場の暑さと冷房が喉に悪いのか、
  結構皆さん苦労されていた感じですね。

  中盤戦を越えましたが、喉をいたわって
  これからの観客にも素晴らしい舞台を提供して欲しいです。

  せめてDVD/BD収録は「いい声」の時に録ってほしいなあ( ´ー`)


・ (前も書きましたが)殺陣がほんと
  上手い人は上手く、そうでない人も個性を活かして、
  それぞれが映えるように演じられてたのですが、
  2回観てやっぱり残念に思ったのが、
  「集団戦」中心なので全員の殺陣とそこにある小芝居の良さを追い切れない、
  という事でした。

  舞台上で上手、中央、下手と3組の殺陣/斬り合いが演じられてたとして、
  中央1組に注目すれば上手下手の動きを見逃すし、という感じで。


  特に今回、後半青の国側が「殺さない戦いをしよう」と団結した後、
  ジャンが相手を止む無く槍(?)で突き刺してしまったシーン、

  ジャン(内田智太さん)が「悔しそうな悲しそうな」
  なんともいえない表情をしてたんですよね、

  こういう役者の細かい小芝居が好きなのにそこに注目しきれない、

  舞台上殺陣が溢れてる状況はちょっと惜しかったかなあ、と。

  殺陣の中でそれぞれメインとなる見せ場ではその1組に中央に大きく置く、
  (観客の視線を釘付けにさせて、見逃しをなくす)など、
  
  殺陣を楽しませる舞台だからこそそういう工夫がもっとあった方が
  良かったのかも知れません。

  十分「見せ場」として成立していたシーンも多かったですが( ´ー`)


・ 初回観劇ではオープニングダンスが長すぎて、
  「お芝居の全体構成のバランス崩さないか?」との疑問を持ちましたが、

  1度観劇してストーリーを知った上でオープニングダンスを見直すと
  その中に含まれた物語全体の各シーン(の凝縮された姿)が
  そこここに含まれているのを感じて気持ちを引きこまれ、
  「長い」という感じはなくなりましたね。


・ 「伏線」という訳じゃないんでしょうが、1度観ているからこそ
  あの演技の理由が分かる、というのはやはり二度観の良さでしょうか。

  序盤浮浪者がいきなりぐったりとした後、
  メイズンとして西船橋に語りかける所、

  あそこはつまり
  別の枝の世界線で「挑戦に敗れた」メイズンが、
  笛を吹いて飛んできた瞬間だった、と。

  そして、
  「とうとう(何回繰り返したのか分かりませんが)
  自分の力での解決を諦めてしまったメイズン」が
  今回一体どのような物語を繰り広げてきたのか?
  がすごく気になりました。


・ THRee'Sではオープニングに映像を使い、
  今回はオープニングをロングのダンスにしましたが、
  「大気圏藻海」
  「空の上の船(その大きさすら想像できない)」
  については、
  ちょっと映像も使ってみて観客の想像のみでなく、
  「正解」を観せてもらえると良かったかなあ、と。

  ※ フライヤー、パンフレットなどに一部記述されていましたが、
    船の上の「国」だったか「街」だったか、
    つまり
    かつて倭寇として争った船は拡張に拡張を続けてどのような
    姿になっていたのか、そこはセットなどからは
    イメージを汲み取れなかったので、
    いっそ映像化してしまって欲しかったです。


・ Wキャスト3名が「空」と「宙」で変わる訳ですが、
  初見から4日経過してしまっていた事もあり、
  「空」回での演技の詳細をはっきりは覚えておらず、
  「宙」回メンバーとの役者の違いによる差異(それぞれの個性の出し方)は
  大きくは分かりませんでした。

  すみが「男の娘」から「本当の女性」になった事による、
  中性的から女性的な演技への切り替わりや、

  アキが(大友さん、斉藤さん、どちらが、なのか分かりませんが)
  力強さ/溢れる感情などを全面に出していたり、といった

  役者自身の元々の演技術での個性を出していたのかな?
  とかは思ったのですが。


・ 開演前の舞台上には舵を置いておいて、
  開幕そうそうのJRのシーンでは隠す、
  という細かい演出に、

  開演前の舞台を眺めている観客には、
  「ラストスマイル」の空の海のイメージを描いていて欲しい

  という配慮を感じました。


・ (考えてみたら)西船橋、平井、津田沼3名+JRご利用のその他大勢、
  衣装からヘアースタイルからみんな結構な短時間で
  早替えしてるんですよね。

  特に平井⇒銀次って髪型全然違うよな、
  でも消えてる時間ってダンスその他ほぼ一瞬だったような、
  ヘアースタイルの変更はとても大変じゃあ・・・

  と思ったのですが、よく考えたらアレ、かつらですよね、髪の長さ違うもの。
  

  2つの全く異なる世界観の中を短時間で切り替えるって、
  観てる方は忘れがちですが、すごく大変な事なんだなあ、って思いました。


・ ラストの駅員西船橋がミンシャー似の女性とぶつかって「LINE教えてください!」って
  言っちゃうシーン、初見では「似た女性に会った」ぐらいに思いましたが、
  よく考えたら西船橋:モンロンと同じで
  枝分かれしたそれぞれの世界での同一人物、
  って事なんですよね。
  (まあ、そこは本当に「ミンシャーに似てるだけの人」って可能性もありますが)
  
  終幕(同然)のご挨拶の中にそんな世界背景と繋がった場面を
  仕込むとは良く考えたなあ、と。


観劇中もっともっと色々な事を想像し、また感じたのですが、
さすがに全部は忘れてしまいました。

後で買えば(かつDVDでいいか)と迷ってましたが、
今回の二度観であまりに涙腺に来るので、
つい(映像の美しい)ブルーレイの方を予約してしまいました( ´ー`)


長文失礼m(_ _)m
Gokko!

Gokko!

はらぺこペンギン!

BAR BASE(東京都)

2015/07/23 (木) ~ 2015/07/26 (日)公演終了

満足度★★★

小スペース(バーの片隅)、小人数でもお話は動く動く
初めてバー公演というのを観ました。

3ヶ月連続公演で内容にも少し繋がりがあったようですね、
前2作も観ればもっと楽しめたかしら。

入場時にもらったパンフレットにて、
「Gokko」という言葉とゲームが関係しそうな事は分かったのですが、
さて始まってみると・・・

店に集まった人達の何気ありすぎな会話振りの理由がつかめるまで、

「普通のアレの物語」なんだな、と理解し、
それはそれで興味があったので素直に楽しもうと思いましたが、
そこから50分、短編なのに話が動きに動いて驚かされました。

観客との0距離演劇って、
役者さんにとっても舞台度胸をつける上で
とてもいい経験が積めるんじゃないかな?
と思いました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ (残念なのが)0距離ゆえにささいなミスも観客に完全に伝播します。

  バーに集まった面々の会話の中での
  台詞のトチリに結構集中を遮られてしまいました。

  狭いスペースだけに一度空気を掌握すれば
  観客全員の気持ちを持っていけるのでしょうが、
  ミスが繰り返されてしまうとそこで完全に
  集中がリセットされてしまうかと。

  それがなければ「良作」扱いだったのですが・・・

・ もろ「ライアーゲーム」ノリでしたね。
  「T-RPGの話」として始まった所で、

  ・ ロードス島戦記やら、
  ・ 日本ではT-RPGが余り根付かなかったやら、

  結構本格的な説明があったので、
  自分も1度だけやった事があるT-RPGの物語なのかな?
  とそれはそれで序盤楽しみにしていました。

  この時点では「Gokko」=役になりきる=T-RPG、
  という意味で素直に理解し
  本当にT-RPGの話なんだろうなあ、
  と思っていたのですが、

  いきなりの謎の採点、
  そして序盤初めて会った相手に
  「兄だの弟だの」と言い合っていた理由。

  「Gokko」という名の借金返済ゲームだと明かした後も、
  更に2転3転し(本当にゲームなのかゲームじゃないのか)、
  更に戻ってきた所での
  舞台女優の「ごっこ!」の叫び声で暗転して~ Fin ~

  これは上手かったと思います。

  役者全員が「Gokko」に乗るが故に、
  「Gokko」なんてゲームは本当はないのか?
  と思わせるような演技の切替が繰り返されて
  「アレッ?」また「アレッ?」と、
  何度も騙されてしまいました。


はらぺこペンギンさんは、
この3ヶ月連続公演を終えて、
次の長編(?)に期待したいですね( ´ー`)
LAST SMILE  ラストスマイル

LAST SMILE ラストスマイル

ENG

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/07/22 (水) ~ 2015/07/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

2時間半の「幻想世界」の旅
なんと4回目の再演(=5回目公演)との事でしたが(自分は初見)、

フライヤーより抜粋の単語
「大気圏藻海(たいきけんもかい)」、

この言葉だけでも
「厨二レベル高すぎ!」
「少年時代の空想癖そのままに描かれたようなこの物語(?)に、
おっさんもおっさんな自分は逆に引いてしまわないだろうか?
ドップリつかれるものなのだろうか?」
とちょっと心配してました。


しかし全く心配ナッシング、
はっきりいって素晴らしい吸引力を持った
「ファンタジー(幻想世界)演劇」でした。


(内容の詳細はネタバレになるとして)
自分が特に気に入った点として

・ 役者がみんな「活き」がイイ!
  いい作/演出が先でそれに役者陣がノッタのか、
  役者達のノリの良さが物語を更に底上げしたのか、
  どちらが先かは分かりませんが、
  アンサンブルキャスト含め、
  みんなお芝居のその台詞から所作までが
  「ノリにノッてる!(やる気に溢れてる)」と感じました。
  (初日なので、実際は緊張でドキドキだったのかも知れませんが…)

・ 物語が素晴らしい。
  フライヤーでの説明もあって、非常に分かりやすく
  世界の切り替わりから、
  その中での主人公(達)を中心とした
  喜怒哀楽と葛藤がすごく伝わって来ました。
  (多方向ドラマティック演劇とでも言うような)

  涙腺も緩むし、ラストに向けてのドキドキ感もハンパなかったです。

・ 衣装、武器、小道具からお芝居はもちろん
  殺陣/アクションまで、
  個々の役者の個性(身体能力から体の大小など)を活かしまくってる。

  例.殺陣上手には殺陣上手の動きを、
    そうでない人も十分練習された、
    見てて「気持ちが冷めない」、
    役者達の「闘い」としてのぶつかり合いを
    見事に表現していたかと。
    (どう見ても練習不足、という殺陣に出会うと
    「なんでこの人選んだの?」って
    気持ちがお芝居から離れちゃうんですよね。
    それが本劇中では感じずに済みました。)


思い出すほどに褒めどころ沢山で、☆5つは当然です。

よく「今年1番」って言葉を使っちゃいますが、
「今年1番ハマれるファンタジーな作品」だったと思います( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
・ 最初心配してしまいました。

  劇場内での待ち時間、
  舞台セットの舵などは「船の物語なんだよね」と
  納得出来るいい雰囲気のものでしたが、

  舞台開演直後のあまりのノリノリな車掌さんの演技
  (これはちょっと雰囲気的に浮かれすぎ?)や、

  その後のダンスパートが余りに長かったので、
  「バランスの悪いお芝居なのかな?」
  と不安になりました。


  でも実際「本編」的な物語が始まってみれば、
  「えきいん」がいきなり「モンロン」になっていて
  しかも中身も「モンロン(別人)」そのもので、

  それがある時いきなり意識を失ってから
  「えきいん」に入れ替わる、など
  とても分かりやすく表現されていて
  最初の(??)な場面がいい形で
  観客自身の(??)な感覚/思考と噛み合った形で展開し、

  段々と自分(主人公)の置かれた世界と
  その中で主人公がなすべき事が見えてきて、、、
  ととても良い物語の展開でした。

・ 表でも書きましたが
  (お芝居の配役での個性もそれぞれ表現されまくってましたが)
  何より殺陣/アクション部分が物語と同様に
  リズミカルに起伏が入っていて良かったかと。

  単に止まって斬り合い殴り合いを続けるのではなく、
  時に足元にスライディングして懐へ入ったり、
  大柄の女の人は女だてらに豪快に大太刀を振るったり、

  十人十色の殺陣/アクションパートは、
  その「動き」を観ているだけでも楽しめました。

・ (同じく)表にも書きましたが
  役者の皆さんの「活き」がイイな!と感じさせる何かがありました。

  いいネタ(役者)だったのか、
  作/演出が役者のヤル気を引き出したのか。

  お寿司で言えば

  板前「これだけいいネタ揃ってて、
    マズイ寿司握る方が難しいですよ」

  と言いたくなるような、ベストなキャストを揃えたなあ、と( ´ー`)

  年齢差こそあれ、みんな脂が乗ったいい役者さん達でした。

・ ループもの(ループサスペンス)の名作「シュタインズゲート」(ゲーム、アニメ)は
  何十時間という主人公の悲劇のループを
  プレイヤー/視聴者にも実際(の時間で)経験させる事で
  「主人公の心境」を経験/実感させる事が出来たのですが、
  本劇のすごい所はお芝居の時間的制約の中で(本編2時間30分)

  0.主人公のとまどい(始まり)
  1.軽い悲劇(ミーシャの死)
  2.軽い悲劇(ミーシャの死)
  3.ものすごく重い悲劇
    今度こそやり遂げるぞと主人公が頑張った挙句
    (観客すらも「3回目でもう成功?」と思わせておいて)、
    主人公含め誰も生き残れないという一番の悲劇になるという。。。

    ※ ラスト、主人公が首を斬られながら吹く
      か細い笛の音が本当に胸に刺さりました。

  で、短い時間の中で、十分過ぎるほどに主人公(+メイズン)が経験したのと
  同じ心境(喜怒哀楽、葛藤)を観客に伝える事が出来た事ではないでしょうか?

  自分は、ループ4回目、
  「スリ」と「スラれた女」がやっと現れてからの1回を
  
  ※ 提督が「スラれた女」に変わってた時が一番驚きましたが

  「このまま誰も死ぬな!誰も死ぬな!」と
  場面場面痛いほど手に汗握って観劇してしまいました( ´ー`)

  ここまで主人公の心境にシンクロ出来るお芝居ってすごい!

・ 主人公が笛を吹いて過去に戻る度に選ぶ別の選択で、
  争う2勢力、しかしそれぞれの人物は
  実は「同じ想い」を抱いていた。

  しかし、それをまとめようとする主人公に対して、
  思い通りに動いてくれない各人に対して、
  ・ はがゆかったり
  ・ 悲しかったり
  ・ もうこの人達はどうにもならないのか?(死ぬ以外にない)と思ったり
  と色々と主人公同様に葛藤させてもらいました。

・ ヒロインその他の女優さん達も可愛いですが、
  モッキーさんの可愛さに驚いてしまいました。

  受付そばで宙キャスト、空キャストを確認してて
  「あれ?モッキーさんのWキャスト、男女だぞ??」と思ったのですが、

  実際舞台でモッキーさんを目にすると
  メイズンの弟子にして知に優れる女性、
  というのが本当に良く似合う。

  はっきりいって、この「男の娘」を使って
            =====
  もう1本作品作れちゃうんじゃないだろうか?

  とまで思ってしまいました。

  ヒロイン宮島さんも可愛いけど、
  今回はモッキーさんに1票ですね( ´ー`)

・ (今日はパンフのみ購入でしたが)
  ただの写真でなく、かっこよく役名その他が表記されている、
  あんなブロマイドなら買ってもいいかな、と思いました。
  (何十年もただ”生写真”を売るのではなく、
  ああいう凝り方を見せる事が重要な気がします。)

・ あと、「えきいん」はすぐにモンロンと入れ替わりましたが、
  提督、ぎんじ?、が「スリにあった女性」「スリ」と入れ替わってからの
  2人の演技、本当に別人のようで良かったです
  (芝居も殺陣も、見てて「そうだよ、もう剣の達人じゃないんだよ!」と
  慌ててしまう自分がいました)。


いい所は思い出すほどまだ書けるのですが、
とりあえず
・ パンフレット読み
・ 2度観
まで楽しみはとっておくとして。


PS.「えきいん」とミーシャの永遠の別れの際のスマイルが、
  「ラストスマイル」だったのでしょうか?
  初日は、終演後「えきいん」と「ミーシャ(似の女性)」だけの
  出会い頭の小芝居がありましたが、
  ああいう「再会系ラスト」もいいかなあ、と( ´ー`)
壊れかけの恋唄

壊れかけの恋唄

LIVEDOG

新宿村LIVE(東京都)

2015/07/15 (水) ~ 2015/07/20 (月)公演終了

満足度★★

プロデューサー、作/演出は「何」を観せたかったのか(??)
タイトルおよび出演者陣に、
「歌」と「演奏(ピアノその他)」が得意な人達がいたので
演奏が芝居に絡んでくる事を期待していたけれど…

2000年台、不良やらカラーギャングやらが
徒党を組んで勢力争いをしていた頃、
懐かしくもある時代なのにその「懐かしさ」すら感じられない。

チャンバラ殺陣ではなくステゴロの殴り合い、
舞台上の人数も多く最初こそ迫力を感じたが、
その小競り合いが物語中何度も繰り返されると
(まあ盛んに小競り合いがある事こそがリアルなのかも知れないけれど)
はっきり言って飽きる。

その上で、メインとなるストーリーの方が全然描ききれていない感じ。
(多分)
「100分の本劇中のメイン部分だけ抜き出したら10分ないのでは?」
と思ったぐらい。


これを観る観客が各場面で「何」を感じ取って、
どう共感/反感するか、プロデューサーと作/演出は
まったく考えていないのではないだろうか?

と思ってしまうぐらいに、「何」も心の琴線に触れる事なく、
「あっ!」と驚かせてただ終わった、という感じ。


これだったら今は懐かしのヤンキー漫画の方が
よっぽどバトルだけでなく起承転結しっかりしてて
感動もオチも見事に入っていると思う。。。

ネタバレBOX

【思った事】
頭に来るほどの事があった訳でもないので、
最初☆3つ(凡作)扱いしようと思ったんですが、
よくよく考えると
「下手か!」と突っ込みたくなるぐらいに
作/演出に力が入ってないひどい作品。
(プロデューサー、作/演出はこの舞台を
客観的に観ていて「何」を感じたのだろうか?)

・ 繰り返されるカラーギャングと不良学生の集団同士の乱闘。
  体捌きその他運動神経に優れる一部役者のその「動き」には
  すごさを感じたものの、本劇1本の中で繰り返されれば
  はっきりいって飽きる。

  その上、この場面以外に出番のない「モブ」が多すぎ。
  
  悪く言ってしまえば
  1.集団戦闘
  2.主人公達の物語
  3.集団戦闘
  4.主人公達の物語
  の繰り返し。芸が全くない。

・ 本劇100分との事だが、その中で「メインストーリー」として
  描かなければならない事がもっとあったのでは?

  せめてあと20分使って
  ・ 「クラッシャー」と呼ばれた主人公が
    「歌」を目指した理由とその気持の強さ

  ・ その友人である少女との「恋」について

  ・ ピアノ少女のピアノにかける想い

  ・ ピアノ少女の双子の兄弟の「孤独」と「仲間」に対する想い

  そういった物語としての芯をもっと太く描いて欲しかった。

  本劇ははっきりいって薄い。

  友人少女の死に「あっ!」とは驚いたものの、
  物語的にはどんな理由であれ、
  ここで「死」なんて重いものをこんな形で入れちゃうと
  後で収集つかなくなるよ?
  と観劇していて思ったぐらい。

・ しかも公園からカラーギャングを追い出したい、と動く主人公父達の
  行動理由が「裏金として使う偽札の隠し場所」の為、
  というなんともしまりのないオチ。

  これだと主人公は、カラーギャング、不良達、
  結局は公園のトイレを燃やした、という行動よりも
  「東京都」やその実行犯たる父達に対して怒るべきなのでは?
  と論点のズレを感じた。

・ そして、「歌」「ピアノ」、ちょい出ししただけで
  結局物語の本筋として何も活かされなかった。
  (ラストに1番歌って終わりとか・・・)

  もうちょっと効果的な使い方とその為に
  背景設定を描いておくべきだったのでは?

・ 「壊し屋(クラッシャー)」のイメージが全然描かれないので、
  フライヤーだましだなあ・・・と思ってたけど、
  最後の最後、見事な体術を使って
  クラッシャーぶりを描いたのは良かった、
  と思いつつも、
  「この程度だったら不良のボス達の方がよっぽどいい”動き”してたよ」
  という感じ。

  「壊し屋(クラッシャー)」という言葉で引っ張ったんなら、
  ありえないぐらいの破壊屋ぶりを描いて欲しかったし、
  何よりピアノ少女がその手を壊された事に
  まず怒って欲しかった。。。

・ 自分の中で最後まで盛り上がらなかったストーリーに
  主人公父の部下の
  「9.11で裏金全部燃えてしまいました」。
  
  はっきりいって、何の盛り上がりも感じていなかった自分からすると
  「あー!最後の最後にやっちゃったー!」(狙いすぎたのでは?)
  と思うだけでした。

結局、物語というよりも集団同士の喧嘩物語、
かつドロドロした気持ちが収まらない、という感じでしたね。

自分は、「作/演出で舞台を観るのをやめよう」と
思うに十分な作品でした。。。。
自由を我らに

自由を我らに

カプセル兵団

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/07/07 (火) ~ 2015/07/12 (日)公演終了

満足度★★★★

共感させられるネタ(憲法の面白解釈)と右往左往の討論展開が「良」
(初日ゆえの固さ/台詞トチリなどが序盤ありましたが)

文語調(ぶんごちょう)の固い条文を口語調(こうごちょう)に直す、
という表のメインテーマ
(フライヤーに書いてあります)が始まった辺りから、

「そうそう、確かに憲法の条文って書いてある内容
普通に読んでもさっぱり分からないよね!」という同意/納得と、

固い条文をほんと軽い口語調に直していく様に
「このくらいフランクなもの言いにしてくれたら
一発で理解できるのにね」と共感する気持ちが大きかったです。


今回の会話劇のウリの1つである
「ライブアクション演劇」が単なるアドリブを使う事なのか、
いくつかの引き出し(台詞群/会話群)を用意しておいて、

毎舞台その場の空気次第で使い分ける事なのかは
まだ初見なので分かりませんでしたが、
1つのネタに対して2人の役者が返事しようとかぶった時など、
「今がライブアクション演劇」のきっかけのタイミングなのかな?
とちょっと気になってました。

今後、2回3回と観ていくと回ごとに
会話の流れの違いなどがあって面白いのかも知れません( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
表にほとんど全部書いてしまいました。

・ ライブ感覚(生っぽさ)を活かした会話劇、の討論劇という感じ
  国会答弁よりも更に主題を置き去りにして会話が
  右往左往していく様を楽しむという


・ ただ、劇場自体がかなり大きいのですが、
  「この会話劇にこの大きさが必要だったかなー?」
  とちょっと疑問に思いました。

  ? 自分は前で観てたので演者の表情やリアクションなど
    細かな所作まで見えましたが、後ろ(上)の方の人達まで
    見えてたのかしら?


・ 「ライブアクション演劇」だからこそ、
  もっと皆さん個性を出して行って欲しいかな、と。
  
  演者について、積極的に会話に参加するメンバーと
  そうでないメンバー、
  そういう役付け(役作り)ともとれますが、
  それぞれに面白そうな背景を持ったメンバーなので、
  どんどん会話劇に混じっていって欲しいなあ、と思いました。

  明日以降、そのバランスが変わっていくようなら
  今日の観客達も「新しいお芝居」を観るように
  また楽しめるのかと思います。


・ 物語序盤の説明、
  中盤の各条文などについてのドタバタ会話劇、
  と来て
  ラストに来る真のメインテーマである「憲法第九条」
  (と、その他国家「君が代」国の象徴「天皇」など、
  結構普通に触れていいのか迷ってしまうようなネタの数々)、

  結局討論するだけしたあげくGHQが作成した条文(文語調のもの)を
  そのまま提出しよう、という
  現実的展開に落ち着きましたが、
  
  僕個人の感想としては、この物語はドタバタ喜劇や共感するものを持った上で
  吉久さんの「想う」締め方で締めてしまっても良かったかと思います。


・ (現代の問題でもある)憲法第九条の是非、「戦争」の是非について、
  結局過去の人達は悩んだ末に
  後(のち)の未来に生きる人達(丁度今の自分達)に、
  その考えが正しかったのかどうか、
  の審判を任せたのかな、という感慨のあるエンディングでした。

  戦後70年のこのタイミングで、
  一番ホットなこの話題を本劇として
  提示してきた事自体がカプセル兵団の意志表示だったのでしょうか。


・ あと、笑いの取り方について、
  前の劇がキン肉マンその他のジャンプネタなどに
  走りすぎていて、物語のファンタジー性にそぐわない、
  という感想を書いたのですが、
  今回の劇では「笑いの取り方」として初心に立ち返ったかのように
  「物語/会話に連動した笑い」として
  見事でした。


面白かったです、
もう1回観て、初見との違いを味わいたいですね( ´ー`)

PS.あ、ワーサル八幡山では言ってましたが
  「タバコを使う演出」は事前説明した方が良いと思います。
  嫌う人も多いので。
映日果-アンジール

映日果-アンジール

XZM

遊空間がざびぃ(東京都)

2015/07/01 (水) ~ 2015/07/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

腐敗世界のダークヒーローの「プライド」こそが細川流「男の美学」?
(ネタバレなしで言える点はと…)
フライヤーと一緒に配られる無料パンフレットに
記載されているプロデューサーの
「かっこいいスーツの男たちを細川流脚本/演出で観たい!」、
観劇していて痛いほどその気持ち
(男たちの渋さ、ハードボイルドさ、それら醸しだされるかっこよさ)が分かりました。


(物語を褒める前に)
まず本作、(細川流演出の基本なのか分かりませんが)
照明の使い方が素晴らしい。

「派手さ」ではなく、ハードボイルドが映える
少しうす暗い舞台を基調として、

完全なる闇(暗転)と
「青(?)黒くスーツが影に映える程度の薄闇」とを使い分け、
物語自体、そして観ている観客達の心情に
見事な「抑揚」を与えているかと。


そして音響/BGMが素晴らしい。
「望郷」「哀愁」その他舞台上の各場面と
登場人物達の心象を見事に表した楽曲群(とその音の高低)、
そして時に役者の演技というお株を奪うほどに
「情景」を観客の心象に観せる音響効果。


そして(無料パンフレットに載っているのですが)
「スーツの男たち」が織りなすハードボイルドにして、
現実世界の真実にも見えてしまう、
ほどよく腐敗した世界(警察機構)。

登場する人物のほとんどは
「全くの善」でも「全くの悪」でもない、
よく言えば中庸、ほどよく悪にも浸った連中。


その中で唯一の「善」と呼べる刑事の行動から物語が始まり…


潔いほどの冷酷さと、
観客の想像力の入る余地(余韻)とを
同時に示して締める漢(おとこ)の世界のロマンチシズム。


ああ、何言ってるのか自分でも分かりませんが、
とにかく「細川流ハードボイルド脚本/演出」に触れると
自分も「かっこいい感想が言いたい、書きたい」と
思わされてしまう(感性を刺激されてしまう)、
そんな舞台でした。


1点、この物語の主要人物(中庸から凶悪まで)全てについて、
「共感できる一面」が存在する事にも驚かされますね( ´ー`)

この「薄汚れ具合」こそ”人間”なんでしょうか

ネタバレBOX

【思った事】
物語の全部を書くと長くなってしまうので、
とりあえず思った事をポチポチと抜粋。


・ 会長の語る「ポリス」のそもそもの語源の話が
  会長の目的とする行動とうまく噛み合っていて良かったです。

  (詳細は忘れましたが)「統制(を取る集合体)」という意味合い?

  警察内部に犯人がいる(=統制がとれていない)状態を解決し
  更には自分の手駒として
  ドラッグ「アンジール」を管理する者として、
  「ねじめ巡査」そして「ひろき巡査」にその役が回ってきた、
  という。。。


・ 冒頭、警察機構唯一の良心とも言える「でと警部」が、
  死んだ「りゅう かつまさ」を見ながら
  「これで良かったんだ・・・」と。

  そこから「正当防衛(あるいは過剰防衛)」レベルで済む話をも、
  「唯一の良心」(でと)の為にもみ消そうと動く、
  「さくま巡査」達。

  そこにこの警察機構の連中と同じ程度には
  心が「腐敗」している
  「ひろき巡査(主役)」が現れてから、
  物語が動き始める。。。


  「完全な正義」ではなく、
  同じ「闇に浸った存在(ダークヒーローと言って良い?)」が
  己のプライドに目覚め、

  ・ (先輩刑事「ねじめ巡査」の仇を取り)真犯人を暴いていくさま

  ・ 悪の誘いをつっぱね、「正義」すらもみせる様

  そこに「ハードボイルド」の美学があるような気すらしました。


・ 各人のそれぞれの行動に共感出来る部分が本当に多いんですよね。

  ・ 中国から来た謎の男「りゅう えいめい」、
    その弟「りゅう かつまさ」は
    不良グループの幹部で自らもかなりの悪事に手を染める、
    「良心」など存在しないかのような「悪人」。

    しかし、その悪人ですら、
    ・ 兄の前でみせる本心
    ・ 故郷中国に対しての想い
    について語られる場面では、
    観劇していてつい涙腺を緩ませられてしまう。

    しかもそれは、「りゅう えいめい」がある曲を聴いている時にだけ
    現れる、今は亡き幻影(亡霊)。

  ・ ヤクザ達の悪事を見逃す代わりに賄賂を受け取る
    悪徳刑事「さくま」巡査とその子分達。

    しかし、この人の中にも「唯一の良心」である
    「でと警部」に対しての尊敬その他
    決して譲る事の出来ない想いが・・・
    (最終的には「でと警部」が本当に守ろうとしたものをも
    知っていたのかと)


  ・ 「でと警部」が隠したかった事実、
    「りゅう かつまさ」を殺した本当の犯人、
    娘婿の「石井巡査」。

    石井巡査「自分には良い妻と産まれたばかりの子供(でと警部の孫)がいる、
      そんな世界を汚す悪党など死んでしまえばいい」と、

    本当の悪人「りゅう かつまさ」を死なせる、
    この行為は自分にとっては否定できない、
    同じ気持ちが心のどこかにあるものでした。

    しかし、「ひろき巡査」に
    「りゅう かつまさの今までの悪事の数々からすれば、
    正当防衛で済んだかも知れない話だった、
    なぜその場から逃げた?」
    と質問され、
    (自分は悪くない、という思い込みからか)
    自分の思考を無くしたように
    「でと警部」が「逃げろ」と言ったから、と。

    共感出来たはずの人物は、単なる「カス」に成り下がったと・・・

  などなど、「悪人」もまた「心を持った人である」という事を
  場面場面でうまく表現し、涙腺その他を緩ませてしまうのが
  「上手いなあ」と( ´ー`)

  まさかあんな悪い連中、いかつい連中の行動の1つ1つに
  「涙要素」が隠されているとは想像も出来ません。。。


・ ラストが本当にかっこいい。
  真犯人の一件は「でと警部」預かりとなった後、
  「さくま巡査」の部下として今まで甘い汁を吸ってきた刑事達と
  ヤクザの子分とで、
  「でと警部の事を会長/りゅう えいめいに報告して、
  (ドラッグ)アンジールの
  売人としての権利をもらって甘い汁を吸おう」
  
  そう思った所に、ヤクザの兄貴分が現れ、
  刑事達と自分の子分を有無を言わせず抹殺していく、

  これぞ冷酷なほどの「ハードボイルド」。

  「悪」も「部下の裏切り」は許さない、という。。。


  それと対比されるかのような、
  「ひろき巡査」が国へ帰る「りゅう えいめい」と
  「会長」に対して挨拶に訪れ、

  会長/りゅう えいめい「(ドラッグ)アンジールの権利をやろう」
  と言うのに対して、
  「そんなものはいらない、警察をなめるなよ」と
  銃をつきつけられながらも飄々と語り、、、

  ~ 終幕 ~

  想像の世界ですが、
  あそこは「さくま巡査」を始めとした”仲間”達が
  突入してくる場面を想像しました。
  (中庸とした悪人である警察連中も、
  「プライド」は捨てていない、という事を見せる意味でも)

  そういう想像をさせる余地を残した意味で、
  いい「余韻」でした。


・ これは私事ですが、自分は
  ・ 元から期待していた作品が凡に近かった時には手厳しく
  ・ 元から期待していなかった作品が凡を超えた時の評価は高く
  とつけてしまっているようです。

  1つ前のあの作品が☆4つ、という事は
  「その時確かに思った事」なので良いとして、
  本作「アンジール」について良点を比較しても
  同列、という事はありえない。

  本来ならば☆4.5をつけたいのですが、
  指定できないので、☆5つとさせていただきました。


・ 本当は☆4.5で☆4つを付けたかったんです。
  理由としては、

  「アンジール(いちじく)」をタイトルとして生かすには
  ちょっとパンチが弱かったかな、と。

  ・ 犯人探しのエサとして出された「(ドラッグ)アンジール」の件に、
    「ねず巡査」その他がもっと奔走する姿が欲しかった

  ・ 「りゅう」兄弟が望郷の念にかられ、
    故郷を思い出していた場面、
    「故郷の一面に垂れたあの真っ赤ないちじくが食べたかった・・・」

  など、何か「アンジール」を強調する要素が「もう1つ」欲しかったです。


腐敗した警察機構、汚職刑事達の「犯罪もみ消し」から始まった
1つのハードボイルドストーリー、
かっこ良すぎでした。

とりあえず舞台近場で観たい、
という事で座布団席で観ましたが、

少し後ろの全体俯瞰できる場所で観たら、
これまたどう展開し、自分がそれを感じとるかが
すごく気になります。

PS.7/3(金)夜に思い出していたのですが、
  巨悪な連中(りゅう えいめいなど)とそれに使われる形で動く
  小悪な「ひろき巡査」、
  その間にもいつの間にかなんらかの理解しあう、
  「友情」にも似た関係が産まれている事、
  これもまた「ハードボイルド」的な(敵と敵が通じ合う)
  かっこよさを持ってますよね。
  
  はっきり言っちゃえば「日本」の事を考えなければ
  「ひろき巡査」はアンジールに手を染めてしまっても、
  これまた1つのエンディングになったのかな、とも思います( ´ー`)

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